勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2018年11月


    文政権は、最低賃金大幅引き上げが、韓国の経済成長を高めると固く信じている。周囲がいくら批判しようとも馬耳東風だ。信仰にまでなっていると諦めの声も聞かれるほど。だが、この暴走が、確実に支持率を引下げている。ついに、就任以来50%を割って、48.8%にまで落ちてきた。それでも、歴代大統領支持率から見ればまだまだ高い。

     

    『中央日報』(11月29日付)は、「文大統領の支持率48.8%、50%台割れ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「世論調査専門機関のリアルメーターは26~28日に実施した世論調査結果、文大統領の国政遂行支持率が前週より3.2%ポイント下落した48.8%となったと29日、明らかにした。30~40代の事務職と進歩層は依然として核心支持層だが、中道層の否定的な評価が肯定的な評価に追いついていると分析した。歴代2年目の支持率としては依然として高いが、危機として受け止めるべきだという指摘もあった」

    文大統領への高支持率の「メッキ」が急速に剥がれてきた。高い理念を語るが、現実の経済問題の解決能力が伴わないからだ。韓国経済の悪化は誰が見ても明らかだが、それを認めようとしない頑迷さを見せている。何が、そうさせているのか。誰も確たる理由が分らないのだ。

     

    (2)「民主党も文大統領とともに9週連続で下落、前週より1.6%ポイント下落した37.6%だった。これは昨年1月第4週目(34.5%)以降1年10カ月ぶりの最低値だ。一方、第一野党である自由韓国党は5週連続で上昇、前週より3.3%ポイント上がった26.2%で、30%を目の前にしている。その他、正義党(8.2%)、正しい未来党(5.9%)、民主平和党(3.0%)は一桁の支持率からそれぞれ騰落にとどまった」

     

    与党の「共に民主党」も支持率を低下させている。野党の自由韓国党が、じりじりと支持率を上げている。それでも差は、10%ポイント以上もある。保守党がさらに支持率を上げ、与党に危機感を持たせない限り、経済政策の転換はないのだろう。

     



    11月29日、まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。

    https://www.mag2.com/p/money/590125

    ここをクリックしていただければアクセスできます。


    年一回の広州モーターショーが開幕した。これまで、ヌードに近いようなコンパニオンを配置して批判を浴びてきたが、すっかり様相は変ったようだ。

     

    メーカーが展示する重量級車種が激減し、自動車製造の新顔はほとんどが欠席し、来場者も例年のように押し寄せることはない。『人民網』(11月29日付)が伝えた会場の雰囲気である。今年の新車販売台数は、1990年以降で初のマイナスを記録する見通しが強くなった。それだけに、メーカーも来場者も盛り上がり感がないのだろう。

     

    『人民網』(11月29日付)は、「モーターショーの冷え込みが映す自動車市場の低迷」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「今回のモーターショーでは『市場が飽和状態』『スリム化の競争』、『増加した生産量がストックに』といった見方に対する議論が多く聞こえてくる。実際、各メーカーが発表した製品をみると、より大きな市場の開拓を追求するというより、ライバルの『パイ』を黙々と奪おうとする傾向が強い。中国自動車市場で今最も人気があるのはスポーツ用多目的車(SUV)で、販売量の伸びは鈍化しているが、それでも各メーカーは『市場の救世主』として希望を託す。これまでは独自ブランドが強かったが、今は合弁メーカーも力を発揮している」

     

    中国自動車市場は、ようやく他国市場並みの落ち着きが見られるようになったのだ。市場の飽和化である。2年前から政府の補助金政策がなければ、増加を維持できない状態だった。無理して販売を伸ばしてきたに過ぎない。習近平流に言えば、「新常態」が到来したということだ。

     

    メーカーの出荷と販売店の実績には乖離が出ている。販売店の落込みにもかかわらず、メーカーが押し込み販売を続けていた。この咎めがこれから表面化する。「パイ」の食い合いが始るのだ。メーカーの財務力の強弱が、奨励金などの形で販売面に現れるのであろう。その意味では、先進国と同じ販売構造になった。


    (2)「今回のモーターショーでは国内外のメーカーが新エネルギー車150台を出展し、このうち海外メーカーのものが44台を数える。北京汽車がまもなく打ち出す小型電気自動車(EV)のクロスオーバー新車「EX3」の量産タイプが初お目見えした。メイン会場の広州汽車はEV新車「アイオンS」を発表し、コンパクト車種との位置づけだ。ヒュンダイは今年初めに発売した量産タイプの燃料電池車(FCV)「ネクソ」を展示し、長城汽車はEVブランド「オラ」を初めて国際モーターショーで披露した。

    時代の動きを反映して、新エネルギー車が数多く出品された。EV(電気自動車)では、蓄電池の容量問題が、まだ抜本的に解決されていない面はあるにしても、ユーザーが徐々に慣れ始めていることが救いである。ガソリン車との端境期(はざかいき)でもあり、ここ数年は停滞期入りするのだろう。

     

     

     

     



    インド洋に浮かぶ小国モルディブで今月発足したばかりのイブラヒム・モハメド・ソリ新政権は、中国からの債務がどの程度に膨らんでいるのか見当もつかないと述べた。モルディブで起きた建築ブームの裏側で過去5年間に膨らんだ債務が持続不能となるリスクを懸念している。 ロイターが伝えた。

     

    中国には、大国としての度量はないのだろうか。小国に法外な請求書を突き付けている。黄河の中原から始った漢族が、現在のような広大な版図に広げた経緯は、こうやって小国を食い物にしながら拡大してきたのだろう。その「あくどいやり口」をモルディブで「再演」していると思えば、貴重な歴史の体験をさせて貰っていることになる。

     

    『ロイター』(11月27日付)は、「中国への借金は一体いくら 小国モルディブの困惑と警戒」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「17日に就任したソリ大統領の参謀役を務めるモハメド・ナシード元大統領によれば、駐モルディブ中国大使Zhang Lizhong氏は、モルディブ政府に対し32億ドル(約3600億円)に上る『請求書』を渡したという。これは国民1人当たり約8000ドルに相当する額だ。ただし中国側はこれを否定しており、金額は15億ドルに近いと述べている。『あれはまさに請求書だった。32億ドルという金額だけが記載されていた。衝撃的だった』とナシード氏『単なる会話ではなく、文書を突きつけられた。はっきりと、あなた方はわれわれにこれだけ借金があると告げていた』」

     

    モルディブの実質GDPは、30億6900万ドル(2016年)である。この国に、32億ドルの請求書を突き付けられたというナシード元大統領。中国大使はウソだと言うが、ナシード元大統領は、金額だけ書いた請求書を持って来たという。不思議な話だ。中国大使が、わざと意地悪な気持ちで過大請求書を出してからかったのか。いずれにしても不謹慎な振る舞いだ。親中派の前大統領が落選した意趣返しであろう。中国人のやりそうなことである。

     

    (2)「9月の大統領選挙で親中派のアブドラ・ヤミーン前大統領を破り、驚くべき勝利を収めたソリ大統領は、10月6日に行われた会談の席で中国大使からこの通達を受け取った。ナシード氏はそう明かすが、正確な文面については、詳細を明らかにしなかった。この発言について、中国外務省は、駐モルディブ大使が『事実ではない』と声明で否定していると指摘。ニュースサイト『アバス』で、対中債務報道が『ひどく誇張されている』と語った同大使のインタビューについて言及した」

     

    こういう行き違い起るとは、モルディブ新政権と中国の関係が悪化している証拠だろう。

     

    (3)「Zhang中国大使は、「アバス」のインタビューで、モルディブの対中債務は6億ドルで、首都マレと空港を結ぶ海上橋の建設、空港の拡張、埋立地でのタワーマンションの建設に投じられたと述べている。同大使によれば、これとは別に、発電から住宅に至るさまざまなプロジェクト資金として9億ドルが複数の国有企業向けの銀行融資として確保されているが、その融資の多くはまだ実施されていないという

     

    中国大使は、あとからモルディブの対中債務は6億ドルと発表した。騒ぎが大きくなったので、実際の数字を出したのでないか。モルディブ新政権が気付かなければ、32億ドルで通そうと考えたのでないか。中国という国は、これほど信用がならない国である。相次いで「債務漬け」にして平然としている国であるからだ。

     

     



    今朝、下記の目次で発行しました。ご購読よろしくお願い申し上げます。

     

    「中国製造2025」が壁

    26年前に米国は騙された

    中国の早まった世界覇権論

    3大業病抱える中国の末路

    香港不動産下落が象徴する

    米中金利逆転は来年3月に

     

    米中首脳会談は、今週末(11月30日~12月1日)のG20サミットで開催予定です。米中貿易戦争が、「一時休戦」するのかどうか注目されます。事前の事務レベルの折衝では、肝心のハイテク技術をめぐる問題で溝が埋まりません。この点が、米中貿易戦争の核心部分です。米国には、対中貿易赤字の改善も大きな問題です。ただ、中国が米国企業の技術窃取を是正しない限り、米中貿易戦争は解決しないのです。

     

    米通商代表部(USTR)が、米通商法301条に基づく中国の知的財産権・技術移転政策に関する最新調査で、次のような行為が継続されていると指摘しました。

     

    1.   サイバー空間での米知的財産権の侵害行為やそれを支援する政策・慣行を継続している。

    2.   差別的な技術ライセンスの制限を引き続き行っている。

    3.   外資規制を利用して米企業に中国部門への技術移転を強制したり圧力をかけたりする。

     

    「中国製造2025」が壁

    米国の基本的な立場は、中国が前記3点の行為を中止することを求めています。これに対して、中国が回答を渋っている理由は、習近平国家主席の肝いりで始った「中国製造2025」計画の実現が遅れることにあります。この計画は、7年後の中国の産業構造をハイテク化して、海外からのハイテク製品輸入に頼らずとも、自立できる体制を目指したものです。

     

    米国といえども、中国の計画を阻止はできません。内政干渉に当ります。米国の言い分は、米国を初めとする先進国技術の窃取行為を止めることを求めているだけです。ところが、中国は前記の3つの手段で窃取計画を継続する意思を鮮明にしているのです。これでは、制裁を加えるしかありません。米国企業の技術を窃取して製造した製品には、高い関税を科すという大方針を中国に突き付けているのです。ただ、ハイテク製品以外にも対象品目が拡大されています。家具などはそういう好対照ですが、「流れ弾」が当ったような被害を被っています。

     

    中国は、必死になって来る米中首脳会談で、「一時休戦」に持ち込みたいと米側に申入れています。米国の関税第3弾2000億ドル相当製品の上乗せ関税率25%(現在は10%)が、来年1月1日から実施予定です。トランプ米大統領は、米中首脳会談で米国の望むような解決案が提示されない限り、第3弾関税上乗せ分を実行する。同時に、第4弾として残り2630億ドル相当製品に関税をかけ、中国からの全輸入品を対象にすると迫っています。ここまで事態が悪化すると、世界経済への影響が大きくなります。その前に、中国経済が金融的に破綻するリスクを抱えます。(つづく)

     

     


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