米中貿易戦争は、中国経済にどの程度の影響を与えているのか、米中は9月24日、互いに追加関税を発動しており、10月はちょうど1カ月経過したところだ。10月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は、予想以上の悪化となって中国経済に襲いかかっている。
『ロイター』(10月31日付)は、「中国製造業PMI、約2年ぶり低水準で予想下回る、輸出受注低迷」と題する記事を掲載した。
(1)「中国国家統計局が31日に発表した10月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.2と前月の50.8から低下し、市場予想を下回った。国内外の需要が減退し、米国との貿易戦争激化による経済への影響が強まっている可能性が示された。製造業PMIは2016年7月以来の低水準。業況改善・悪化の節目となる50は27カ月連続で上回った。ロイターがまとめたアナリストの予想は50.6への小幅な低下だった。今回のデータは中国経済の一段の減速を示唆しており、当局は景気支援に向けさらなる措置を講じる可能性がある」
10月の製造業PMIは、50.2と9月の50.8から大幅に低下した。市場の事前予想では50.6と小幅な低下。予想をかなり下回る低下は、中国経済の末端が相当な冷え込みとなっている結果だ。マネーサプライ(M2)が、名目GDP成長率を下回る異常状態を反映したものであろう。「信用収縮」が、確実に起っているはずだ。
(2)「ANZの中国担当チーフエコノミスト、レイモンド・ユング氏は『きょうのPMI統計の数字は全て、経済活動の全般的な鈍化を裏付けるものだった』とし、民間セクターの状況は統計が示しているより『はるかに悪い』と指摘した。ただ『1月に見込まれる預金準備率引き下げ以外では、一段の景気支援策は控えめになると予想している。政府の優先課題は金融市場の混乱を回避することだ』との見方を示した。生産に関するサブ指数は52と9月の53.0から低下。新規受注を示すサブ指数は52.0から50.8に低下した。新規輸出受注を示すサブ指数は46.9と9月の48.0から低下、5カ月連続で50を下回った」
民間セクターの状況は、統計が示しているより「はるかに悪い」という指摘は正しい。不思議に思うのは、前記のマネーサプライ(M2)が、名目GDP成長率を下回るという異常さに、誰も言及していないことだ。私は、この点にこそ中国経済の抱える問題点があると固く信じている。「同好の士」はいないのだろうか。
10月の新規輸出受注を示すサブ指数は、46.9と9月の48.0から低下した。5カ月連続で50を下回ったことは、中国の輸出が停滞するシグナルである。当然、貿易収支は悪化するので、来年の経常収支は赤字に転落する公算が大きい。その時に何が起るか。人民元相場投機と外貨準備高の3兆ドル台割れ。中国経済の脆弱性が、一挙に明らかとなろう。