米中通商交渉は、ワシントンで行なわれているがどういう結果になるか。中国は、すでに製造業PMI(購買担当者景気指数)が、昨年12月に好不況の分岐ライン50を下回っており、一刻も早く合意にこぎ着けたいところ。1月の製造業PMIも、50を下回ったことが判明した。米国は、中国の足下を見透かしており、ファーウェイを23の罪で起訴するなど中国包囲に向けて万全の体制だ。
『ロイター』(1月31日付)は、「中国製造業PMI、1月は2カ月連続で50割れ、非製造業は加速」と題する記事を掲載した。
(1)「中国国家統計局が発表した1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.5と、業況改善・悪化の分かれ目となる50を2カ月連続で下回った。前月の49.4から小幅上昇したものの、節目の50は引き続き割り込んだ。ロイターがまとめたアナリスト予想は49.3だった。政府による経済活動の支援策にもかかわらず、米国との貿易戦争がさらに長引けば、中国は想定を超える大幅な成長鈍化に見舞われる危険があるとの懸念は強まっている」
中国政府は、本格的な景気テコ入れを行なう見通しだが、信用機構の収縮という大きな障害が発生している。預金準備率は、リーマンショック時を下回る線まで引下げている。だが、末端まで金融緩和効果が届かない状況だ。信用機構という経済の「心臓」に疾病現象が起っている以上、どうにもならない。
米中貿易戦争にメドがつかない限り、銀行は安心して融資できない事態に陥っている。不良債権発生で、資本の棄捐が大量発生しているからだ。ここまで事態を悪化させながら、米中貿易戦争に突入した習氏の判断ミスである。信用機構が立ち直るまでにはかなりの時間を必要とする。バブル経済崩壊は、こういう事態に耐えることを強制するのだ。日本の例が、それを示している。
(2)「製造業PMIの内訳を見ると、指数の悪化は、今後の動向を示唆する新規受注の減少が要因であることが分かる。政府は支援策強化を検討する中、製造業者が雇用削減を継続している点を注視している。新規受注指数は49.6と、昨年12月の49.7から低下。国内外の需要が引き続き弱い中、50を2カ月連続で下回った。新規輸出受注指数は46.9と、8カ月連続で50を下回ったが、12月の46.6は上回った。受注の減少にもかかわらず、生産指数は50.9で、12月の50.8から上昇した。一方、産出指数は12月の50.8から50.9に小幅上昇した」
新規受注がなぜ低迷しているのか。発注する側が、過剰在庫を抱えている結果だ。その在庫資金手当てが大きいので金融が逼迫している。在庫をさばくにはどうするか。自転車操業を止めれば良いものの、資金繰り上、それが不可能である。ペダルは、踏み続けなければ自転車が倒れるのと同じ理屈である。
「受注の減少にもかかわらず、生産指数は50.9で、12月の50.8から上昇した。一方、産出指数は12月の50.8から50.9に小幅上昇した」と記事は指摘している。問題は、まさにここにあるのだ。自転車操業の哀しさが、ここに余すところなく描き出されている。中国経済は、倒産を避けるべく最後の「あがき」をしていると見るべきだろう。
(3)「欧州を中心に需要が世界的に低迷していることを踏まえると、米中間の通商協定は中国の輸出のための解決策にはならないと多くのアナリストは指摘している。国際通貨基金(IMF)は先週、世界の経済成長率予想を下方修正し、保護主義の問題を解決できなければ、既に減速している世界経済を一段と不安定にするとの見方を示した。IMFは中国の2019年成長率予想を6.2%に据え置いたが、通商摩擦が長引けば予想を下回る可能性があるとした。中国の成長率は2018年第4・四半期に6.4%を記録したが、19年上期には6%を割り込み、その後年末にかけて安定すると一部のアナリストは指摘する」
IMFによれば、中国の今年の成長率予想は6.2%である。だが、米中貿易戦争が永引けば、さらに悪化すると見ている。中国政府は、6.0%を「マジノ線」にしている。そうしないと、失業率が高まり、社会不安に結びつくからだ。中国政府も追い込まれている。習氏が、「世界覇権」などと余計なことを言わなければ、こういう苦労をすることもなかったであろう。口は、災いの元である、