勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年02月

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    南米のベネズエラには、「二人の大統領」が現れた。現大統領のマドゥロ氏と、グアイド国会議長である。実は、ベネズエラを舞台に現政権を支援する中国と、暫定大統領を宣言したグアイド国会議長には米国とEUが支援しており、「米中代理戦争」の様相を呈している。

     

    中国は、「一帯一路」プロジェクトで各国を債務漬にしてきたことで評価を落としている。ベネズエラでも汚職と腐敗が深刻化している。マドゥロ大統領が、その腐敗政治の張本人とされ、その裏に中国がうごめいているという構図だ。中国は、ベネズエラの石油資源を狙って最低で500億ドル(約5兆5000億円)、あるいは620億ドル(約6兆8200億円)の資金を投入したと指摘されている。

     

    この巨額資金が、グアイド国会議長が率いる新政権が実権を握った暁は、果たして全額返済されるのか分らない。中国は、南米の一角に橋頭堡を築いて米国を牽制できると思ったのだろうが、大変な誤算になった。

     

    『ブルームバーグ』(2月4日付)は、「中国との透明性ある関係求めるーベネズエラのグアイド氏」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ベネズエラの暫定大統領就任を宣言したフアン・グアイド国会議長は、対ベネズエラ投資国として最大級の中国との『透明性ある関係』を求めた上で、マドゥロ政権が結んだ取り決めについては合法的になされたものであれば尊重すると表明した。書面インタビューに応じたグアイド氏は『国会承認の適正手続きが守られたこれまでの合意であれば、受け入れられ尊重される』と説明し、この点で『私は非常に明確だ』と記した」

     

    グアイド国会議長は、中国がベネズエラ政府と結んだ開発契約で、国会承認を受けたものについて尊重するとしている。言外に、国会が承認していない「隠れ契約」の存在を示唆している。中国が、「一帯一路」でやっているような汚い手を多用しているとなれば、新政権では返済されないリスクが高まる。

     

    (2)「政局が混迷を極め大統領が2人並び立つ状況の中で、グアイド氏は米国やブラジルなどから支持を得ており、石油・金輸出や国家独占事業からの収入などの資金をマドゥロ政権側が入手できないよう探っている。同氏は、『われわれは中国との透明な関係を構築し、マドゥロ政権下で横行していた資源の略奪を終わらせたい』とコメント。『ベネズエラでの中国の開発プロジェクトは腐敗と債務不履行にまみれ破壊され、破綻しつつある』と指摘した」

     

    中国の開発したプロジェクトは、「腐敗と債務不履行にまみれ破壊され、破綻しつつある」という。これでは、中国のメンツは丸つぶれである。中国が関わるプロジェクトは100%、おぞましいものばかりという悪評が定着する。中国は南米まで出かけて、悪事の片棒を担いでいたのだろうか。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月4日付)は、「ベネズエラ情勢混迷、中国はいかに見誤ったか」と題する記事を掲載した。

     

    中国は2012年、500億ドル(約5兆5000億円)以上の融資をつぎ込んだが、ベネズエラの政治危機が今、その投資の回収を脅かし、中国を代理戦争へと引きずり込もうとしている。中国は、米国が権力の座から引きずり降ろそうとしているニコラス・マドゥロ氏を支持しているためだ。景気の足かせとなっている米国との通商摩擦問題を解決しようと取り組んでいる中国にとって、できれば避けたい問題だろう。

     

    (3)「ベネズエラ情勢の混迷は、中南米における中国の信頼低下につながる一方、他にも中国の融資により『債務の罠』に陥る国が相次ぐ中で、中国の対外融資に対しては海外で批判があるほか、国内でも議論を呼んでいる。米国をはじめ複数の国が、野党指導者のフアン・グアイド氏を暫定大統領として認める意向を表明した後も、中国は表向きには、ロシアとともにマドゥロ氏を支持する姿勢を示している」

     

    中国は、ベネズエラでミソを付ければ、信用ガタ落ちになる。「一帯一路」でも信用失墜しているからだ。中国は、地政学的理由で南米まで手を伸ばしたことが失敗の原因である。米国の力を甘く見た結果だろう。トランプ政権は、ベネズエラと密接な関係にあるキューバと再断交を目指しており、「反米勢力」一掃に動き出している。

     

    (4)「専門家らによると、中国は水面下で、ベネズエラへの融資に関する批判や投資の回収を巡り、懸念を強めている。一部では、グアイド陣営との対話経路の構築に動いているとの指摘もある。中国外務省の耿爽報道官は1日、中国はグアイド氏と連絡を取っているかと問われ、中国政府は『関係者すべてと、さまざまな手段を通じて緊密な接触を続けている』と答えた。その上で『今後の状況にかかわらず、われわれの協力が損なわれることはない』と述べた。中国商務省の推計によると、ベネズエラは中国に対し、200億ドル程度の債務返済が残っている

     

    中国はこれ以上、米国と揉めごとを起こしたくないのが本心である。ベネズエラでも、貸金の回収が最大目的で、暫定大統領宣言をしたフアン・グアイド国会議長とも話合う姿勢を見せている。現政権支持に固執しない方針だ。

     

     


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    中国政府が、景気テコ入れで躍起になってきた。米中通商交渉中で、米国に足下を見透かされることは承知の上で、迫り来る不況対策を講じざるを得ない事情が透けて見える。毛沢東の説によれば、中国には失業者が出ないことになっている。だから、公表される失業率は実態よりも低くい。今回発表の減税策には、大学新卒者の事業失敗の救済も含まれている。不安と不満が、社会の至る所で噴出してきたことを窺わせている。

     

    『ロイター』(2月4日付)は、「中国が消費刺激策、北京で家電購入時に補助金支給」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国国家発展改革委員会(NDRC)は1月29日に、ここ数カ月販売が落ち込んでいる自動車や家電製品などの購入を後押しする措置を公表していた。国営メディアが30日に伝えたところによると、テレビや冷蔵庫などを購入すると北京の消費者は最大120ドルの補助金を受けることができる。期限は3年で、省エネ型の15のカテゴリーの家電が対象になる。プログラムの詳細や、他の都市でも同様の促進策が実施されるかなどは明らかになっていない」

     

    家電購入で、最大120ドル(約1万3000円)の補助金がつく。期間は3年間である。この期間に注目していただきたい。消費不況は、3年は続くという前提である。事態は相当に深刻化している証拠だ。問題は、北京市で実施することである。他の都市は不明である。これは、北京で試験的に行なうことか。あるいは、中国政府の地元で、デモでも起ったらメンツが潰れるからそれを回避する目的なのか。動機は不明である。発表した機関が、中国政府の中国国家発展改革委員会(NDRC)」である。北京市政府でない点に注目すべきだろう。

     

    『ロイター』(2月4日付)は、「中国、大学新卒者や低所得者向け税額控除を発表、景気支援へ」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「中国は、景気支援に向け、大学新卒者が運営する小規模事業や低所得者を対象にした税額控除を実施する。財政省や国家税務総局などが共同声明で発表した。大学新卒者のほか、個人事業主、6カ月以上にわたって失業状態にある人が対象。期間は2019年1月1日から2021年末までで、この3年間に世帯ごとに総額1万2000元(1779.73ドル)の税額控除が受けられる貧困者を雇用する企業も、1人当たり年6000元の税額控除の対象となる」

     

    大学新卒者が運営する小規模事業や低所得者を対象。半年以上、失業している者に税額控除を実施する。期間は今年1月から21年末までの3年間だ。ここでも3年間としている理由は、景気低迷が最低このくらいは続くという前提であろう。世帯ごとに総額1万2000元(約19万2000円)の税額控除である。収める税金からこれだけ控除するもの。

     

    中国では、大学新卒が一攫千金を夢見てヴェンチャー・ビジネスを立ち上げるのが流行っていた。バブル・マネーが支援してきたもので、これら企業は金融逼迫で急速に淘汰されている。今までの好景気が噓のように、資金が一斉に消えてしまったのだろう。これぞまさに、不動産バブル崩壊の第一歩。これから本格化する不況にどう立ち向かうのか。


    ムシトリナデシコ
       

    昨年12月1日、ファーウェイ副会長はカナダで米司法省の委託を受けて逮捕された。その後、中国とカナダの外交関係がギクシャクしている。中国はファーウェイ副会長の釈放を求めて種々の圧力を加えているからだ。カナダ人二人の「人質逮捕」や、カナダ人被告を再審によって禁固刑から「死刑宣告」するなど目に余る報復である。

     

    カナダでは、こうした中国側の圧力に反発している。世論調査にその結果が出てきた。

     

    『レコードチャイナ』(2月3日付)は、「ファーウェイ副会長逮捕、カナダの世論調査で過半数が支持」と題する記事を掲載した。

     

    『仏RFI 中国版サイト』(2月2日付)は、カナダが昨年12月、米司法当局による身柄拘束要請を受け、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟(モン・ワンジョウ)副会長兼最高財務責任者(CFO)を逮捕した問題に関連し、カナダで行われた世論調査で、過半数が孟氏の逮捕を支持していることが明らかになったと報じた。


    (1)「記事は、香港・東網の報道を引用。『カナダの調査会社アンガス・リードが1日発表した調査結果によると、回答者はカナダが米国の要請に応じて孟氏を逮捕したことを正しいと認識している。回答者の90%が現在のカナダと中国との関係が『かなり深刻』と考え、過半数が両国関係におけるトルドー首相の対応に不満を示し、44%は同首相が中国に対しより強硬な対応をとることを望んでいる』と報じた」

     

    この世論調査によると。カナダでは、「過半数が両国関係におけるトルドー首相の対応に不満を示し、44%は同首相が中国に対しより強硬な対応をとることを望んでいる」としている。これは、米司法省がファーウェイを23の罪で訴追したことが影響していると見られる。また、前記の通り中国政府が、カナダ国民に報復していることの反発もあるだろう。

     

    中国は、次ぎのような圧力をカナダに行なっている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月15日付)は、「中国、カナダ人に死刑判決、ファーウェイ幹部巡り圧力か」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「中国遼寧省大連市の中級人民法院(地裁)は、麻薬密輸罪に問われたカナダ人のロバート・シャレンバーグ被告に対し、死刑判決を言い渡した。米国の要請でカナダ当局が華為技術(ファーウェイ)最高財務責任者(CFO)を逮捕した件を巡り、釈放するようカナダ側に圧力をかける狙いがあるとみられている。シュレンバーグ被告は約4年前に逮捕され、昨年暮れの一審判決で15年の禁錮刑を言い渡されていた。被告は罪を否定している。再審の審理が行われたのは1日だけで、被告は国際麻薬密輸組織への関与した罪で有罪となった。上級裁判所は約3週間前に、被告の上訴を棄却した上で、再審を命じていた。中国の法律の専門家は再審などのプロセスは、異例のスピードだと指摘。米当局からファーウェイ幹部の身柄引き渡しを求められているカナダ当局に対して、圧力をかける狙いがあるとの見方を示している。カナダのジャスティン・トルドー首相は14日、中国当局による死刑判決を深く懸念していると述べた」

     

    再審の審理が行われたのは1日だけ。被告は、国際麻薬密輸組織への関与した罪で有罪となった。これは、余りにも粗雑な裁判である。人間を極刑に処するという重大判決が、たったの1日で判決が下されることなどあり得ない。明らかに報復である。

     

    『ロイター』(1月17日付)は、「駐カナダ中国大使、5G技術のファーウェイ排除に警告」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「中国の盧沙野・駐カナダ大使は17日、カナダ政府が次世代高速通信「5G」ネットワークに技術提供する企業から中国の華為技術(ファーウェイ)を排除した場合、何らかの影響があると警告した。記者会見で『反動があると考えている』と述べたが、詳細には触れなかった。その上で、カナダ政府は本件に関して『賢明な判断』をすべきだと述べた」

     

    カナダ当局は現在、5Gネットワークのセキュリティー対策を検討しているが、一部の同盟国のようにファーウェイを排除する正式決定はしていない。ただ、カナダは「ファイブアイズ」(米・英・豪・カナダ・ニュージーランド)の一員として、諜報機関で情報交換している。この関係から言えば、他国同様にファーウェイ排除は決定的である。だが、中国がこういう内政干渉をしてくることに驚く。中国の横暴さは際限がない。

     


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    中国人の貯蓄好きは昔のこと。90年代生まれの若者は「一人っ子政策」で大事に育てられてきた層である。かつて、所得の半分は旅行に消えるという話しを取り上げたが、中国社会の末端は確実に変ってきた。

     

    『人民網』(2月3日付)は、「過剰消費陥る中国の1990年代生まれが『負豪』に親が肩代わり」とだいする記事を掲載した。

     

    「オフィスで共に働く3世代、70後(1970年代生まれ)は貯金し、80後(80年代生まれ)は投資し、90後(90年代生まれ)は負債する。そして、90後の両親は子供の借金返済肩代わり」、これは中国のネットで流布している書き込みで、ここから90後や00後(2000年以降生まれ)を中心とする若者の過剰消費と負債を抱えながらの消費という実態を垣間見ることができる。若者たちは今、若くして、大きな負債を抱える「負豪」となっているという。

     

    人間は、育った環境によって確実に変ることを証明した話しである。実は、もっと「恐ろしいこと」が、中国に起っているかも知れないのだ。それは、社会主義だとかマルクスとか政治的なことに関心を持つ層の減少が想像できる。中国共産党はこれを監視すべく、全土に監視カメラを設置している。それでも、人間の心を変えることは不可能である。90年代生まれの若者は、旧来の中国人ではなくなっている。

     

    (1)「金融会社・融360の調査統計によると、大学生の53%が買い物のために借金している。その主な使い道は化粧品、服、電子製品などで、大半が分不相応の過剰消費となっている。それら消費財のほか、若者たちは友人との食事や旅行などにもお金を使い、大学生は1カ月1000元(約1万6000円)ほどでは全くやっていけず、借金して消費するほかない状態だ。十分な収入源もなく、過剰消費をやめることもできないという一部の学生は借金を抱え、毎月、最低限の返済をして、また、新たな負債を抱えるようになり、その利子が翌月の返済に加わり、負債が雪だるま式に増えている。そのように、常に支出超過の状態で、債務が増えていく。複数の在学中の大学生は取材に対して、『いろんな所からお金を借りて、今では負債が1万元(約16万円)以上になっている。毎月最低1000元(約1万6000円)は返済しなければならず、ほとんどお金が回らない状態になっている』と打ち明けた」

    大学生のほか、90後を中心とする働く若者の消費意識も、80後などとは大きく異なり、過剰消費に陥っている。90後は1990 年代生まれだから、成人したころは不動産バブル真っ最中に該当する。金回りが良かった時代背景がある。大学生は1カ月1000元(約1万6000円)の小遣いでは足りないと言うのは驚く。学生の本分は「学業」という昔流のスタイルから言えば、明らかに逸脱している。

     

    (2)「海爾(ハイアール)消費金融がここ3年の統計をまとめて発表した中国338都市の450万人をカバーした『消費金融報告2018』によると、70後や80後が主に家庭のためお金を使っているのに対して、90後は、生活の質の向上を重視して『自分のため』にお金を使っており、過剰消費状態になっている。消費者金融を利用したことがある人のうち、最も多いのは26~30歳で、26.56%を占める。また、月收が3000~5000元(約4万8000~8万円)、年收が8万元以下の人が8割を占めている。借金して買い物をする人が多いのは三線都市で、その借り入れ件数が全体の74.44%を占めているのは注目に値する」

    中国で、対GDP比でみた家計債務が増加している。その増加スピードは韓国に次いで高い。私はこれまで住宅ローンの債務増と見ていた。それだけでなく、過剰消費による債務増が明らかになった。これは、決して看過すべき問題でない。過去の中国に見られた過剰貯蓄も困るが、過剰消費も厄介な問題を引き起こすのだ。

     

    銀行に預金が集まらない現象が、昨年10月から顕著になっている。MMF(マネー・マネジメント・ファンド)に預金が流出しているとされてきた。だが、それだけでなく、貯蓄する前に消費してしまう90後という存在があった。銀行に預金が集まらなくなると、銀行の貸出能力低下によって、経済活動が収縮する重大問題が発生する。習近平氏もさぞや頭が痛いであろう。


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    けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    韓国革新派の横車

    身勝手な理想主義

    信念過剰で現実見ず

    最賃で雇用を破壊

    世界不況に無防備

     

    韓国は、文在寅政権の出現で大きな曲がり角に立っています。「86世代」と言われる民族主義グループが、大統領府の実権を握っているからです。「86世代」とは、1960年代生まれ、1980年代に学生時代を過ごし、強烈な学生闘争に参加人たちのことです。政治意識が先鋭で、北朝鮮の「主体(チュチェ)思想」に心酔しています。政治思想は、「反日米・親中朝」路線が鮮明です。

     

    文政権が生まれた2017年5月以来、日韓関係はすべてご破算になったのは、この「86世代」による「反日路線」の結果でしょう。となると、文政権が続く2022年5月までは、日韓外交の冷却化が続くものと見るほかありません。

     

    問題は、この間に韓国経済が世界経済の激変について行けず、通貨危機に遭遇した場合、どこへSOSを打つのか、です。日本が、韓国の問題について心配する必要はありません。ただ、過去二回の通貨危機では日本へ資金の緊急支援を求めてきました。現在の日韓関係は、冷却状態です。その日本へ「お願いします」とは言えないでしょう。

     

    このように、韓国政府はアマチュア集団と言えます。韓国外交部(外務省)には過去、日韓交渉に関わった「ジャパン・スクール」と言われる人々が、文政権によってすべて追放されました。日本との交渉を「積弊」(積年の弊害)扱いしている結果です。文大統領は、口を開けば「日韓関係は未来志向」と言っています。現実は「過去志向」で、未来の問題は何一つ語っていません。本腰を入れた「日韓首脳会談」は一度も開かれていないのです。両国は、近くて、最も遠い国の関係となっています。

     

    韓国革新派の横車

    文政権は、日本に対してだけ「独善主義」を貫いているのではありません。韓国国内でも、同じような姿勢を取っています。大統領府も与党「共に民主党」も、自らの反対派には容赦ない攻撃を加えています。これが、「革新派」の看板を掲げる政党の言動だろうか。そういう疑問を持たせるほどです。

     

    文大統領の腹心とされる金慶洙(キム・ギョンス)慶尚南道知事は、文大統領が当選した2017年の大統領選挙に関する世論操作事件でつい最近、2年の実刑判決を受けました。金被告が国会議員だった2016年から、不正プログラムを使ったインターネット上の世論工作を元「共に民主党」党員に指示し、17年5月の大統領選で文氏に有利になる操作を行って、その罪が問われました。

     

    この事件は、発覚後の警察捜査がずさんだった点も問題になりました。大統領側の圧力か、警察の忖度かは不明ですが、この事件をうやむやに葬り去る動きが鮮明でした。韓国司法が、権力に対していかに迎合的であるか。それを示す典型例でした。さらに驚くべきことは、この事件の担当裁判長へ「弾劾」という個人攻撃を始めているのです。日本であれば、「判決を真摯に受け止め、国民に謝罪する」というコメントが出るものです。そういう気配が全くないどころか、韓国与党は要旨、次のような挑戦的な談話を発表しました。

     

    「前大法院長の逮捕に対す報復裁判であり非常に遺憾に思う。我が党は『司法介入勢力・積弊清算対策委員会』を構成するだろう。前大法院長の司法介入にかかわっている判事の人的清算が行われなければ司法改革は難しい。法的手続きである(裁判官)弾劾を含むさまざまな方策を考えたい」(『朝鮮日報』1月31日付)

     

    前大法院長(最高裁長官)が、朴政権当時に旧徴用工問題の判決遅延に関与した、という文政権の強引な主張により逮捕されました。前記の裁判長は、この前大法院長の秘書役をやったという言いがかりを付け、無罪にさせようという魂胆です。暴力団並の難癖です。

     

    身勝手な理想主義

    韓国は、道徳主義を標榜しています。慰安婦問題で、徹底的に日本を批判する上で、道徳主義は最高の「攻撃武器」になっています。韓国の道徳主義は、自らが教養を高め修練を積んで、他人に寛容になるという意味ではありません。相手を攻撃する手段に使っているのです。前記の裁判長は、朴槿惠・前大統領の裁判で有罪判決を下しました。この時、「共に民主党」は素晴らしい判決であると裁判長を激賞しました。ところが、自分が不利になると「弾劾だ」と騒ぎ立てる。韓国の道徳主義とは、この程度のものです。(つづく)

     

     


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