中国のハイテク企業は、めざましい業績を上げて注目されてきた。だが、昨年秋頃から幹部社員の整理が報じられるようになって注目されている。中国経済の減速が背景にあるのだ。この中年社員受難は突然、始まったことでなくこれまでもあったのだ。ロイターの報道で明らかにされた。
『ロイター』(3月25日付け)は、「中国テク企業が『新陳代謝』、憂き目にあう中年社員」と題する記事を掲載した。
(1)「中国の大手テクノロジー企業は、活力にあふれた若者への求人を強化している。ベテランのマネジャーたちがその犠牲になる場合もある。テクノロジー各社は、年長の従業員の一部が懸念している動きについて、年齢に基づく差別によるものではないと否定する。多くの国では年齢に基づく露骨な差別は禁止されているが、中国では違法ではない。中国テクノロジー企業の『若者優先』は有名だ。理由の一端は、いわゆる「996」、つまり午前9時から午後9時まで、週6日間働くことが求められる厳しい労働条件にある」
中国の雇用条件では、年齢に基づく差別は違法でないという。儒教社会の「長幼の序」を重んじる社会では、考えられないことが起っている。ただ、人権蹂躙が公然と行なわれている国だから、こういう「年齢による差別」は当然かも知れない。これは、中国特有の「権力を握った者は何でも可能」という風潮の反映かも知れない。いずれにしても、中国企業に勤務するには、「若い時代だけ」という限定がつく。これでは、技術の伝承など不可能だろう。技術窃取もこういう背景で行なわれているのだろう。はた迷惑なことだ。
いわゆる「996」、つまり午前9時から午後9時まで、週6日間働くことが求められる厳しい労働条件も問題である。こういう違法就業が放置されている。中国雇用の前近代性を示している。
(2)「中国のインターネットサービス大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)は21日、マネジャー層の10%を入れ替える計画があることを認めた。「マネジャークラスの年長メンバーの一部には、現在の地位から退いてもらう」と同社のマーティン・ラウ社長は語った。「そのポストを引き継ぐのは、もっと若い人材、より情熱的と思われる、新たな仲間たちだ」
。この再編についてさらに詳しい説明を求められたテンセントは、同社の雇用慣行が法令を遵守しているとする年次報告書の記述に触れ、「ジェンダー、民族、人種、障害、年齢、信仰、性的志向や婚姻状態に基づく差別は行っていない」としている。
テンセントの雇用慣行は、法令を遵守しているとする年次報告書に、「ジェンダー、民族、人種、障害、年齢、信仰、性的志向や婚姻状態に基づく差別は行っていない」としている。現実には、年齢を条件に差別し解雇している。米国であれば、企業が訴えられて敗訴は確実である。中国では、放置されているから堂々と「年齢差別」が行なわれている。
(3)「若手をマネジャーに登用しようという動きは、1つには、中国で新世代のインターネット企業が台頭していることを意識したものだとアナリストは指摘する。たとえば拼多多(ピンドゥドゥ)や北京字節跳動科技(バイトダンス)といった企業の経営陣の主力は、1980年代─90年代生まれの起業家だ。『米国や欧州では、企業が1年おきに構造改革を実施するという例はめったにない。だが中国では、それが当たり前だ。中心的な経営陣でさえ、非常に短期間のうちに入れ替わる可能性がある』と指摘されている」
IT企業家が、「80後」や「90後」であることに注目したい。一人っ子世代で甘やかされて育てられた「小皇帝」である。他人の痛みなど知る由もない世代だ。こういう世代が、たまたま、中国の不動産バブルの波に乗って起業に成功したに過ぎない面もあろう。これからの「中国経済冬の時代」に生き残れるか、保証の限りではない。今後が、見物である。
ファーウェイ(華為技術)の雇用契約は数年という。凄い「年齢搾取」企業である。中国の少子高齢化は、日本以上のスピードで進む。いずれ若者が減ってくる。その時は、ファーウェイの成長も止む時で
もある。長期的な視点での人材育成を考えない。そういう刹那主義が、中国の特色である。