韓国は、WTO(世界貿易機関)二審において、「棚ぼた」で命拾いした福島産海産物の輸入規制「勝訴」に得意絶頂である。世界の正義が、すべて韓国に味方しているような雰囲気である。この調子でいけば、日本が旧徴用工問題で国際司法裁判所(ICJ)に韓国を訴えても、韓国が勝てるという意見が現れた。これまでは、ICJで韓国敗訴が予想されるから、韓国は裁判には同意しないと逃げていたのだ。
26日に開かれたWTO会合では、日本「敗訴」に疑問の声が上がった。
『共同通信』(4月27日付け)は、「WTO会合で日本敗訴に疑問の声」と題する記事を掲載した。
(1)「韓国による日本産水産物の輸入規制を巡り、世界貿易機関(WTO)の紛争処理の「最終審」に当たる上級委員会が日本の主張を退けたことについて、WTOで26日開かれた会合では、各国から『これでは紛争の解決にならない』と疑問視する声が相次いだ。WTOの紛争処理制度の問題点を指摘する意見も多く出た。通商筋によると、会合で『第三国』として意見を表明したのは、米国、欧州連合(EU)、カナダ、中国、ブラジルなど10カ国・地域。米国は『一審』の紛争処理小委員会が日本の言い分をおおむね認めたのに、上級委で逆転敗訴となったことへの疑念を示した」
韓国は、「最終審」で敗訴を覚悟していた。それが、玉虫色の勝訴のような形になって得意になっている。例の調子で日本を見下した記事が掲載された。
「日本の“最後の負け惜しみ”は最近、政府が相次いでみせた『ごり押し』行動に表れている。韓国が勝訴した直後の12日には、河野太郎外相が李洙勲(イ・スフン)駐日韓国大使に会って『韓国政府が輸入規制を緩和してほしい』と要求した。菅義偉官房長官はこれよりさらに一歩踏み込み『わが国が敗訴したとの指摘は当たらない』としつつ『韓国に対し規制撤廃を求めるという立場に変わりはない』と強調した」(『中央日報』4月23日付「WTO水産物禁輸訴訟で韓国に敗れた日本の最後の負け惜しみ」)
WTOは、玉虫色の決定であった。日本が敗訴したわけでもない。だが、韓国の輸入規制を認めるという宙ぶらりんな決定である。26日のWTO会合で、10ヶ国の「第三国」がこの決定を批判したのは当然である。米国は「一審」の紛争処理小委員会が日本の言い分をおおむね認めたのに、上級委で逆転敗訴となったことへの疑念を示した。
韓国にとっては、この「第三国」10ヶ国がそろってWTO決定に疑念を呈したことはショックであろう。「韓国勝訴」で勝ち誇った記事を書いてきただけに、WTO26日の動きに沈黙している。
『朝鮮日報』(4月26日付け)は、「韓国の専門家ら強制徴用、ICJで韓国勝訴の可能性十分」と題する記事を掲載した。
韓国の外交・国際法専門家らが25日、国会で行われた日韓関係に関するセミナーで、日本による植民地時代の強制徴用被害者への賠償問題について「国際司法裁判所(ICJ)への共同提訴」が解決策になりうると提案した。韓国政府は現在、日本側が求めている「二国間協議」を拒否したまま状況を放置しているが、ICJに提訴すれば韓国が勝訴する可能性が十分にあるため、ICJの判断を仰ぐべきというのだ。
(2)「国民大日本学科のイ・ウォンドク教授は、『両国関係のさまざまな悪材料のうち、徴用問題の解決が最も急がれる』として、ICJへの共同提訴などを代案として提示した。特にICJ提訴については『最終的な結論が出るまで3-4年以上を要するため、歴史をめぐる摩擦に歯止めをかける効果がある上、両国が合意すれば法的な強制執行も保留できるため、平和的解決策となり得る』と述べた。これまで韓国政府は、敗訴の可能性などを懸念し、ICJへの提訴について否定的な立場を維持してきた」
(3)「かつて旧ユーゴ国際刑事裁判所に勤務したシン・ウジョン清州地裁部長判事は、『韓国政府がICJで勝訴する可能性がある』と述べた。シン氏は『現行の国際法では、個人が国際法の主体として権利・義務を有するという『個人の国際法主体性』を認めるというのが重要な流れ』だと指摘した。特に、強制徴用のような反人権的行為は『国際的な強行規範』に違反するため、国家間の合意によって個人の請求権が消滅することはない、というわけだ」
ここでの議論は、すでに決着を見た問題と、現在起っている問題を混同している。「一事不再理」という言葉がある。ある事件について、判決が確定した場合、同一の事件について公訴できないというものだ。
日韓基本条約(1965年)によって、両国は合意して「賠償」という言葉ではなかったが、「経済協力金」という名目で決着がついている。韓国政府が、その金銭を個人に支払わず、「着服」したに等しい。よって、日本は再度の支払いに応じる義務はないのだ。まさに、「一事不再理」に等しい事案である。「着服」した韓国政府が、その責任を果たせば問題は解決するもの。日本企業を巻き込む必要はない。