勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年04月

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    韓国は、WTO(世界貿易機関)二審において、「棚ぼた」で命拾いした福島産海産物の輸入規制「勝訴」に得意絶頂である。世界の正義が、すべて韓国に味方しているような雰囲気である。この調子でいけば、日本が旧徴用工問題で国際司法裁判所(ICJ)に韓国を訴えても、韓国が勝てるという意見が現れた。これまでは、ICJで韓国敗訴が予想されるから、韓国は裁判には同意しないと逃げていたのだ。

     

    26日に開かれたWTO会合では、日本「敗訴」に疑問の声が上がった。

     

    『共同通信』(4月27日付け)は、「WTO会合で日本敗訴に疑問の声」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国による日本産水産物の輸入規制を巡り、世界貿易機関(WTO)の紛争処理の「最終審」に当たる上級委員会が日本の主張を退けたことについて、WTO26日開かれた会合では、各国から『これでは紛争の解決にならない』と疑問視する声が相次いだ。WTOの紛争処理制度の問題点を指摘する意見も多く出た。通商筋によると、会合で『第三国』として意見を表明したのは、米国、欧州連合(EU)、カナダ、中国、ブラジルなど10カ国・地域。米国は『一審』の紛争処理小委員会が日本の言い分をおおむね認めたのに、上級委で逆転敗訴となったことへの疑念を示した」

     


    韓国は、「最終審」で敗訴を覚悟していた。それが、玉虫色の勝訴のような形になって得意になっている。例の調子で日本を見下した記事が掲載された。

     

     「日本の最後の負け惜しみは最近、政府が相次いでみせた『ごり押し』行動に表れている。韓国が勝訴した直後の12日には、河野太郎外相が李洙勲(イ・スフン)駐日韓国大使に会って『韓国政府が輸入規制を緩和してほしい』と要求した。菅義偉官房長官はこれよりさらに一歩踏み込み『わが国が敗訴したとの指摘は当たらない』としつつ『韓国に対し規制撤廃を求めるという立場に変わりはない』と強調した」(『中央日報』4月23日付「WTO水産物禁輸訴訟で韓国に敗れた日本の最後の負け惜しみ」)

     
    WTOは、玉虫色の決定であった。日本が敗訴したわけでもない。だが、韓国の輸入規制を認めるという宙ぶらりんな決定である。26日のWTO会合で、10ヶ国の「第三国」がこの決定を批判したのは当然である。米国は「一審」の紛争処理小委員会が日本の言い分をおおむね認めたのに、上級委で逆転敗訴となったことへの疑念を示した。

     

    韓国にとっては、この「第三国」10ヶ国がそろってWTO決定に疑念を呈したことはショックであろう。「韓国勝訴」で勝ち誇った記事を書いてきただけに、WTO26日の動きに沈黙している。

     

    『朝鮮日報』(4月26日付け)は、「韓国の専門家ら強制徴用、ICJで韓国勝訴の可能性十分」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の外交・国際法専門家らが25日、国会で行われた日韓関係に関するセミナーで、日本による植民地時代の強制徴用被害者への賠償問題について「国際司法裁判所(ICJ)への共同提訴」が解決策になりうると提案した。韓国政府は現在、日本側が求めている「二国間協議」を拒否したまま状況を放置しているが、ICJに提訴すれば韓国が勝訴する可能性が十分にあるため、ICJの判断を仰ぐべきというのだ。

     

    (2)「国民大日本学科のイ・ウォンドク教授は、『両国関係のさまざまな悪材料のうち、徴用問題の解決が最も急がれる』として、ICJへの共同提訴などを代案として提示した。特にICJ提訴については『最終的な結論が出るまで34年以上を要するため、歴史をめぐる摩擦に歯止めをかける効果がある上、両国が合意すれば法的な強制執行も保留できるため、平和的解決策となり得る』と述べた。これまで韓国政府は、敗訴の可能性などを懸念し、ICJへの提訴について否定的な立場を維持してきた」

     

    (3)「かつて旧ユーゴ国際刑事裁判所に勤務したシン・ウジョン清州地裁部長判事は、『韓国政府がICJで勝訴する可能性がある』と述べた。シン氏は『現行の国際法では、個人が国際法の主体として権利・義務を有するという『個人の国際法主体性』を認めるというのが重要な流れ』だと指摘した。特に、強制徴用のような反人権的行為は『国際的な強行規範』に違反するため、国家間の合意によって個人の請求権が消滅することはない、というわけだ」

     

    ここでの議論は、すでに決着を見た問題と、現在起っている問題を混同している。「一事不再理」という言葉がある。ある事件について、判決が確定した場合、同一の事件について公訴できないというものだ。

     

    日韓基本条約(1965年)によって、両国は合意して「賠償」という言葉ではなかったが、「経済協力金」という名目で決着がついている。韓国政府が、その金銭を個人に支払わず、「着服」したに等しい。よって、日本は再度の支払いに応じる義務はないのだ。まさに、「一事不再理」に等しい事案である。「着服」した韓国政府が、その責任を果たせば問題は解決するもの。日本企業を巻き込む必要はない。


    テイカカズラ
       

    トヨタが、ハイブリッド車(HV)の基幹部品・技術を無料で世界へ公開する話は、このブログでも取り上げた。HVの技術は、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)にも活用が可能とされている。トヨタは、HV技術の公開で量産によるコスト削減や投資抑制、電動化技術の「デファクトスタンダード(事実上の世界標準)」を狙い収益向上を図る戦略である。

     

    この大胆な基幹技術の無料開放によって、世界技術の標準になっている先例がある。業務用空調機のダイキンである。中国メディアが紹介した。

     

    『サーチナ』(4月26日付け)は、「無料で特許を開放する日本企業、互いに足を引っ張り合う中国には真似できない」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディア『今日頭条』(4月24日付け)は、空調分野で世界標準を定めた企業としてダイキンを紹介する記事を掲載した。ダイキンと言えば、業務用空調設備で日本のみならず、世界中で有名な企業である。1994年には中国市場へも本格的に参入した。

     

    記事が紹介している『空調分野の世界基準』とは、新冷媒のR32のことだ。これは、R410Aに代わるもので、環境負荷が小さい特徴があり、エネルギー効率、安全性、経済性において優れているとされる。とりわけ、二酸化炭素の排出削減に大きな効果が期待され、「世界をリードしている」と記事は手放しで絶賛した。



    (1)「ダイキンの公式サイトによると、2012年11月にR32を使用した家庭用空調機を日本で販売したのを皮切りに、現在ではR32を使用した空調機を1700万台以上世界に投入しているという。他メーカーもそれに続き、R32を使用した空調機の販売台数はこれまでに6800万台以上になると推定され、二酸化炭素の排出抑制効果は約1億トンになると試算されている。記事は、世界的に見たダイキンの販売台数は少なく感じるものの、重要なのは『台数ではなく貢献度』にあると指摘。特に『EUではダイキンのR32が業界規格となっている』ほか、インドやロシア、台湾などでも広く採用されていると伝えた」

    ダイキンの新冷媒R32は、技術の無料公開によって、世界中の二酸化炭素の排出抑制効果が約1億トンになると試算されているという。トヨタのHV技術が無料公開され、これがEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)として拡大採用されれば、ダイキン同様に世界への貢献大といえる。

     

    (2)「ダイキンはこの技術について、無料で特許を開放しているが、このおかげで販売台数と知名度を上げ『一石三鳥』になっているという。特に欧州における『発言権』は大きく、日本企業全体もその恩恵にあずかっているそうだ。記事は、『中国や韓国の企業は現時点ではまねができない』と称賛。日本では同業の企業同士で助けあう傾向が見られるが、互いに足を引っ張り合う中国ではまねできないことだと感心している」

     

    欧州の環境意識は、非常に高いことで有名である。トヨタのHVも近年の売上は年平均20%台の増加率となっている。こうして、ダイキンとトヨタは「環境優良企業」というイメージが定着しているのだろう。トヨタの総販売台数が、昨年度も増加基調を続けているのは、消費者から環境への貢献が評価されているに違いない。

     

    (3)「記事は結論として、ダイキンの成功は技術だけでなく『グローバル化に向けた戦略』にあると指摘。中国では、『日本の家電は終わった』と言われているものの、それは表面的な姿に過ぎず、日本企業の本質からは学ぶことが多いと伝えている。ダイキンの環境保護の取り組みが実を結び、世界的な標準になりつつあると言えるだろう。日本企業はこれからもエコ分野で活動の幅を広げていくだろうが、中国をはじめとした他国も見習ってもらいたいものである」

     

    中国で、ダイキンが高い評価を受けていることはうれしいことだ。これに続いて、トヨタのHV技術が、世界のHVやFCVの世界標準技術になれば、日本として鼻高々だ。日本人の環境に対する細やかな感情が生み出した技術である。


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    韓国の文大統領は、1~3月期のGDP成長率がマイナスであっても、特別の感慨もないらしい。あるのは南北交流事業だけである。国民の暮らし向きを心配するよりも、北朝鮮の動向が気にかかるようだ。この結果、安全保障の要である米韓合同軍事演習まで「サボり」始めた。韓国は、米国が呆れることばかりやっているが、いずれ大きな「代償」を払う時期がくるだろう。

     

    『聯合ニュース』(4月26日付け)は、「文大統領、金剛山観光の早期再開へ努力」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は26日、『政府は朝鮮半島の平和経済の時代を準備する』としながら、『金剛山観光の早期の再開に向け引き続き努力する』と述べた。北東部の江原道・高城で『平和経済』をテーマにした江原道のビジョン戦略報告会に出席し、開城工業団地と並ぶ南北経済協力の象徴で、現在はともに中断している北朝鮮・金剛山観光の再開にあらためて意欲を見せた」

     

    イソップ物語に出てくる「北風と太陽」の寓話に喩えられるように、文氏は一貫して北朝鮮に対して「太陽」の役割を演じている。米国を初めとする国際社会は「北風」を主張している。これまで何度も、世界は「太陽」役を演じて北朝鮮に騙されてきた。もはや、これ以上は騙されない。これが米国の立場である。

     

    二度にわたる米朝会談が失敗したのは、北朝鮮が先行して経済制裁緩和を要求している結果である。北朝鮮に、こういう淡い期待を持たせたのは韓国である。米国は、北朝鮮と並んで韓国へも批判的な言動を繰り返すようになっている。米韓の溝は次第に広がっているのだ。

     


    『朝鮮日報』(4月25日付け)は、「THAAD訓練をSNSで公開する在韓米軍、韓国の提案は意味が分からないと言う米国大使」と題する社説を掲載した。

     

    (2)「在韓米軍は4月20日、京畿道平沢のキャンプ・ハンフリーズで高高度防衛ミサイル(THAAD)の展開訓練を行った。THAADの基地がある慶尚北道星州郡ではなく平沢でこの訓練を行うのは異例で、おそらく有事に米軍司令部や空軍などが集結する平沢基地と首都圏を北朝鮮のミサイル攻撃から守るためだろう。THAADの最大迎撃距離は200キロだが、これだと星州のTHAADでは平沢基地と首都圏の防衛に限界がある。また星州の基地は今も活動家らによる反対の抗議行動で孤立し、また環境影響評価のため工事も遅れている」

     

    韓国では、THAAD(超高高度ミサイル網)設置に反対する地元住民が、米軍基地を封鎖している。米韓軍事同盟という厳然たる条約があっても、この体たらくだ。安全保障に対する認識不足は覆いがたい。それでも米軍は、韓国に駐屯している。韓国政府が地元民の封鎖を排除もしないで黙認しているのと対照的である。

     

    (3)「韓国国防部(省に相当)は、『訓練用のTHAAD発射台は事実上の抜け殻』として今回の訓練についてはさほど重要視しないそぶりを見せた。THAADというだけで怒り狂う北朝鮮を意識した反応だ。このようにTHAADを厄介者扱いする韓国政府の本音を米軍もよく理解している。それでも今回は見せつけるかのようにTHAAD訓練の様子を撮影した写真をSNS(会員制交流サイト)などで公表した」

     

    米軍は、THAAD訓練の様子を撮影した写真をSNSで公開している。韓国政府の無関心に抗議しているようなものだ。文政権は、北朝鮮の軍事的な脅威は完全に取り除かれたような錯覚状態にあるが、安全保障政策から言えばなんともお粗末な振る舞いだ。防衛は、水も漏らさぬ守りによって敵の攻撃を防げるが、韓国はその意味で北朝鮮の甘言によって「武装解除」されたような状態に陥っている。それにも関わらず、韓国国防部は海上自衛隊哨戒機に対して、警報を発してレーダー照射すると警告してきた。敵味方を取り違えた行動である。

     

    (4)「米軍は先月、ハワイに拠点を置く海兵隊を韓国に派遣して独自の訓練を行い、また米沿岸警備隊所属の大型警備艦バーソルフを釜山港に入港させた。韓米合同軍事演習が次々と行われなくなる中で、米軍は独自の能力だけは引き続き強化しているようだ。軍事同盟は平時から連携を取らないと有事にその戦力を発揮できないが、40以上の国と軍事同盟を結ぶ米国がこのような事実を知らないはずがない。そのため米軍が独自に行っている一連の訓練は、北朝鮮が嫌う韓米合同軍事演習に消極的な韓国政府に対する一種の抗議行動のようでもある」

     

    韓国政府が、手の裏を返したように米軍へ対応する姿を見ると、韓国は信用できない国という印象がますます強まるだろう。米軍は、この韓国を北朝鮮と中国の侵略から守るべく米国人の血を流してきた。その代償が、こういう形で見せつけられるとやりきれなくなろう。これが、韓国左翼の本心と見れば、良い機会が与えられたのかも知れない。日本もこの際、冷淡な韓国政府の本音を忘れてはなるまい。


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     韓国の文政権は、巧妙に支持基盤の利益を擁護している。最低賃金の大幅引上げは、労働団体向けの利益還元である。脱原子力政策は、市民団体の再生エネルギー運動を支援する目的である。

     

    最低賃金の大幅引上げは、所得主導成長論というオブラートに包んで行なわれ、韓国経済に瀕死の重傷を負わせている。一見、底辺で働く人々の賃金を引き上げれば、購買力が増強されて経済が好循環を描くと考えられる。その通りだが、そのためには、生産性向上をともなわなければ、絵に描いた餅になる。現実は、その危惧通りになって、「雇用破壊」をもたらしている。

     

    再生エネルギーは、原子力発電に比べれば無害という点で理想的である。だが、太陽光発電には、100倍という膨大な場所を必要とする。韓国の狭い国土では不向きなのだ。脱原発は、福島の原発事故から始まったが、この事故の後遺症は、事実と異なり過剰に宣伝されている。韓国政府が、福島産海産物の輸入禁止措置を取っている背景に、原発被害の過剰宣伝が大きな影を落としている。詐欺的側面すら持っているのだ。ソウル大学原子力研究陣が、この噓の混じった宣伝を否定して歩くほど、酷い内容である。

     

    韓国の市民団体は、こうした事実に反することを理由にして、強引に太陽光発電を進めさせている。この事業に参加しているのが、市民団体である。

     


    『朝鮮日報』(4月25日付け)は、「中国メーカーに流れる韓国の太陽光発電補助金」と題する社説を掲載した。

     

    韓国政府は脱原発を推進するとして、再生可能エネルギーへの投資を大幅に増やしている。昨年1年間に韓国政府が太陽光発電など再生可能エネルギー事業に給付した補助金は26000億ウォン(約2500億円)だった。ところが、韓国の太陽光発電事業に中国メーカーが主導的に参入し、補助金が中国メーカーに流れている。

     

    (1)「韓国における太陽光・風力発電の割合は、2017年時点で1.6%だった。韓国政府は太陽光と風力が主軸となる再生可能エネルギー発電の割合を2030年までに20%、40年までに30~35%に高めようとしている。そうなれば、20~30年代には太陽光・風力発電分野に投入される補助金は10兆ウォンを超える可能性がある。中国企業が韓国で補助金をがっぽりもらい、韓国企業が市場から締め出される事態も予想される。過去にはドイツでも同様の事態が起きた」

     

    文氏が、大統領に就任する以前の韓国における再生エネルギーは、わずか1.7%に過ぎなかった。今後、強引にその比率を上げようとしている。そのためには、膨大な自然破壊によって太陽光パネルを設置する場所が必要になっている。再生エネルギーという言葉はきれいだが、これを実現するには多くの森林伐採が必要とされている。

     

    (2)「韓国のように国土が狭い国で原発を捨て、発電コストが割高な再生可能エネルギーの使用を拡大するという発想には最初から無理があった。ソウル市民が昨年消費した家庭用電力14000ギガワット時を確保するためには、原発ならば出力2ギガワット規模の設備を整えればよい。しかし、太陽光発電は1日に34時間しか稼働できないため、10ギガワット以上の設備が必要となる。同じ出力の原発を太陽光発電に転換するには20倍を超える敷地が必要だ。稼働効率も考慮すると、原発に比べ100倍を超える土地が欠かせない。それだけ山林を伐採しなければなくなる」

     

    太陽光発電には、原発に比べてざっと100倍を上回る土地が必要である。この事実を知らずに、簡単に脱原発と言えない厳しい現実がある。韓国の市民団体は、そういう面での配慮はゼロだ。

     

    (3)「カザフスタンを訪問した文在寅(ムン・ジェイン)大統領に現地の実力者が、韓国のアラブ首長国連邦(UAE)での原発事業を挙げ、『カザフスタンも原発を建設したい』と持ちかけ、文大統領も『韓国も参入機会があれば参入する』と答えたとされる。文大統領は昨年11月、チェコでも韓国の原発をセールスした。それほど韓国の原発をうらやむ諸外国は、韓国政府が太陽光・風力発電にこだわり、脱原発を進めようとしている点を理解できるだろうか」

     

    韓国は、海外に原発を売り込み、国内では脱原発という矛楯を冒している。過去の原発事故の原因を徹底的に究明し、再発させないシステムをつくり上げることだ。科学には、事故を乗り越える知見の積み重ねによって現代を築いてきた歴史がある。日本では、2050年に究極の無害発電である水素発電が、完全普及時代を迎える計画だ。


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    文政権は最近、不可解な行動が増えている。小学校社会科の教科書から「漢江の奇跡」を削除した。韓国が、朝鮮戦争の惨害から経済復興を果たし、現在の経済規模に達した高度経済成長の歴史を子どもたちに教えないというのだ。

     

    考えられる理由は2つある。軍事政権が経済成長を実現し、その背後に日本の支援があった事実を隠したい。もう一つは、北朝鮮が今なおどん底生活を送っていることへの配慮だ。文政権には、市場経済そのものを疎ましく思っており、北朝鮮のような「貧しくても平等」ということへの妙な憧れがある。

     

    この延長に出てきたのが、韓国の出生率増加目標を捨てるという恐るべき企みである。一国にとって、人口は最大の資産である。国家発展の原動力は、一定の人口を維持することである。人々が安心して老後を送れるのは、安定的な現役世代が負担してくれる社会保障費のお陰だ。その現役世代が将来、人口減で減って行くとなれば、国民の老後生活は破綻する。

     

    文政権は、政権批判の「種」になる、合計特殊出生率の目標と実態との乖離拡大を恐れ始めている。いっそのこと、出生率目標を捨ててしまえば、国民から批判される懸念はなくなる。この消極的理由で、合計特殊出生率目標を明示しないというのだろう。

     

    『中央日報』(4月26日付け)は、「出生率の目標取り下げた韓国政府、少子化対策の放棄ではないのか」と題する記事を掲載した。

     

     (1)「 韓国国策研究機関の専門家が、文在寅(ムン・ジェイン)政権の少子化政策を強く批判した。政府は少子化政策のパラダイムを転換したと言うが、一部では『政府が少子化政策を放棄するための出口戦略を用意したのではないか』という懸念が出てきていると指摘した。韓国保健社会研究院の李相林(イ・サンリム)研究委員は25日午後、低出産・高齢社会委員会が主催した第17回低出産・高齢化フォーラムでこのように話した。文政府の少子高齢社会政策の成果と限界点を評価する場だ。現政権は『男女平等の強化など、人生の条件を改善すれば出産問題が解決される』とし、以前の政府の出産奨励政策を廃棄して再構造化(パラダイム転換)を推進している

     

    文政権の最大の弱点は、抽象論でしか語らず、具体的な回答を用意できないことだ。政治は抽象論でなく、具体的に問題解決案を提示することである。文政権には、その能力がないのだろう。だから、抽象論でお茶を濁すのだ。

     

    現政権は、「男女平等の強化など、人生の条件を改善すれば出産問題が解決される」という。評論家の発言のように聞える。「人生の条件を改善」するとは、具体的に何を指すのか。若者には就職が人生最初の関門である。この関門をなくして、日本のように誰でも就職可能な条件を整えること。それが政府の義務である。現実には、就職準備を含めた若者の失業率(体感失業率)が25%にも達している。若者の4分の1は失業状態である。

     

    こういう就職難が結婚難に結びつく。出生率が低下して当然である。韓国では公務員家庭では平均、3人の子どもがいるという。生活が安定している結果だ。先ず、若者が就職できる経済状況をつくれば、結婚が増えて必ず出生率は上がるはずだ。

     

    これまで韓国政府は、出産奨励政策に力を入れてきた。これが成果を生まないのは、就職難という人生の関門を解決しないことにある。北欧では、女性の有業率上昇が出生率向上に寄与している。就職問題解決が、最大の出産奨励策とも言える。

     

    (2)「 李氏は、『政府がこれからは合計特殊出生率を政策目標にしないといったが、これに対して少子化政策の放棄と解釈する者もいる』とし、『政府が少子化政策を今後どうやって行っていくのかに対する各論を確実に出さなければならない』と話した。李氏は『現政府のパラダイム転換がとても抽象的だ。これをどのように政策化するかについてはまだ多くの議論が必要だ』と指摘した。 李氏は出産奨励金のような地方政府の現金性対策を批判した。李氏は『地方自治体は財政負担にもかかわらず、選挙を考えたばらまき支援をする』とし『現金支援基準を中央政府が用意しなければならない』と話した」

     

    経済活性化は、韓国の出生率引上げにとって不可欠である。この認識を欠いて、出産奨励金にこだわるのは順序を間違えている。

     

    文政権は、最賃大幅引上だけで経済活性化を実現できると誤解した。経済活性化の本道は、生産性向上策と最賃引き上げ策がセットになるもの。文政権は、生産性向上策を見落としていたのだ。この伝で言えば、出生率向上には先ず就職難を解決し、その上に出産奨励金を出すべきであろう。方法や順序を間違えれば、初期の効果は期待できないのだ。


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