韓国の文在寅政権の日々を観察していると、これほど無責任な政府が存在するだろうかという実感に襲われる。昨日、発表になった1~3月期の実質GDPが、前期比マイナス0.3%に落込むと、理由のすべてを外部要因に転嫁させる。この国には、本当の意味での政府が存在しない。
経済成長の動因には二つある。外需と内需である。前者は純輸出(輸出-輸入)。後者は消費・投資などだ。昨年4~6月期以降、内需がマイナスでも外需がカバーしてプラス成長を維持してきた。私は、外需の伸びが落ちればたちどころにマイナス成長に落込むと、昨年のブログで書き続けてきた。
昨年10~12月期は、政府が大盤振る舞いして財政でアルバイトを増やす奇策が奏功。内需が大きく跳ね上がった。この結果、前期比1%増という予想外の数字が飛び出したのだ。
今年の1~3月期は、内需も外需もすべて前期比マイナスである。これでは、トータルのマイナス成長に落込んで当然である。問題は、文政権が厚顔にもマイナス成長の責任を認めないことだ。外需のマイナスはやむを得ないとしても、内需のマイナスは文政権の失政によるのだ。
その原因は、もはや取り上げるのも億劫になるが、最低賃金の大幅引上げだ。2年間で約30%にもなる引き上げで、しかも罰則を伴うという厳しさが、「最賃解雇者」を大量に発生させた。文政権が、最賃引き上げ幅を3分の1に抑えていたら、マイナス成長に追い込まれる可能性は低くなっていたであろう。
『朝鮮日報』(4月26日付け)は、「マイナス成長を外部要因のせいにする韓国大統領府」と題する記事を掲載した。
韓国銀行(中央銀行)は25日、韓国の2019年1~3月期の国内総生産(GDP、速報値)が前期比で0.3%減だったと発表した。世界的な金融危機当時の08年10~12月期(3.3%減)以降で最低だった。
(1)「08年当時は全世界が金融危機に陥り、マイナス成長が避けられない側面があった。しかし、文在寅(ムン・ジェイン)政権下の今回はこれといった外部の悪材料がないにもかかわらず、成長率が2017年10~12月期(0.2%減)に続き2回目のマイナスを記録した。通貨危機以降の歴代政権では初めてだ。しかし、韓国大統領府(青瓦台)の尹道漢(ユン・ドハン)国民疎通首席秘書官は同日、1-3月期の成長率について、『外部の経済的要因が最大の原因として挙げられるのではないか』と述べた。青瓦台関係者は『海外の経済が不安定で影響を受けた面が大きい。これを経済政策の失敗と見なすことには同感しない』と話した」
先に、私がコメントしたGDP動因には2要因がある。外需と内需に分けて考えれば、韓国大統領府の説明がいかに責任逃れであるか明白である。外需が不振でも内需の岩盤がしっかりしていれば、外需不振を跳ね返すことが可能だ。もともと、内需がマイナス基調であった所へ、外需不振が重なって前期比で0.3%のマイナス成長になった。これが、真相である。
内需のマイナス基調をつくり出したのは、文政権が間違えた最賃大幅引上にある。自らの責任を棚に上げて、外需にすべての責任を押しつけるのは、余りにも韓国流すぎる。独善主義の韓国左翼政権らしく、責任を取らずに逃げ回るのは醜悪である。
(2)「経済専門家は1~3月の成長率が低下した直接的原因として、『政府主導の成長』を挙げる。政府が18年の成長率を押し上げようと財政出動を行い、18年10~12月期の成長率は前期比1.0%増だったが、財政出動の効果が切れ、一時的ショックが訪れた格好だ。18年10~12月期の財政出動による成長寄与度は1.2ポイントだったが、19年1-3月期はマイナス0.7ポイントだった」
経済の運転台に立つのは本来、民間企業である。その民間企業が、最賃大幅引上で大きなダメージを受けたので、代わって政府がその役を引き受けた。だが、昨年10~12月期の1期のみである。今年の1~3月期は、誰も運転台に立たなかったからマイナス成長になった。これが、舞台裏の話である。文政権は、これほど経済について無知である以上、韓国経済の基盤が、さらに取り返しのつかない事態へ突っ込むのは致し方ない。落日の韓国経済である。