中国経済が抱える膨大な債務は、末端で資金不足を起こしている。信用不安の激化によるもので、金融機関の信用創造機能が麻痺しているからだ。こういう事態を迎えれば、潜在成長力は格段に低下するはず。中国経済の現状は、紛れもなくこの縮小過程へ突入している。
この信用危機状況で、米中貿易戦争が拡大した。中国に「戦闘能力」があるはずもなく、ただ「愛国心」に訴える末期的症状に入り込んでいる。
これまで、「バブルマネー」が新興企業を目指して殺到した。前記のような信用危機下では、もはや集まるはずもない。開発資金に事欠くスターアップ企業が、欧米資本に安値で買収されている構図である。中国政府は、それを見て見ぬふりしており、新興IT企業は今日も買収を待っている。
英誌『エコノミスト』(5月25日号)は、「中国ハイテク、魅せられる欧米」と題する記事を掲載した。
(1)「欧米のIT(情報技術)企業はここへきて中国のハイテク企業への関心をますます強めている。場合によっては中国政府の黙認のもと、競合企業を100%買収しているケースもある。複数の関係者によると、こうした現象が始まったのは2016年に遡るという。その買収額の多くは少額で、ニッチな産業であることが多い。例えば電気自動車(EV)向けのパワートレインやセンサーを製造する企業、SNS(交流サイト)上で影響力を持つインフルエンサーを抱える代理店などだ」
中国の若者は大学卒業後、就職するよりも起業するケースが多かった。起業資金は、バブルマネーが唸っていたので、不動産業で大儲けした資金が起業資金として流入していた。ところが、バブルマネーは泡のように消えてしまい、金融機関からの資金調達もままならず、「身売り」する羽目に陥った。
欧米のIT企業は、中国でこういう「出物」を探している。割安な上に技術もしっかりした「掘り出し物」が結構あるという。「百均」で、買い物をするような感覚なのだろう。中国の「アイデア頭脳」は開発資金が続かず、欧米資本に買われて行くのだ。こういう状況では、「世界覇権」など、言うだけ野暮であろう。
(2)「これまで西側諸国の企業が中国企業を買収する背景には3つの理由があった。第1は中国での市場シェアの獲得、第2は中国における販売網の拡充、そして第3はあまり技術力を必要としないローテク分野の生産業者を調達するためだった。しかし今日、外国企業にとって中国のスタートアップ企業を買収することは、競合他社にない強みを入手することにつながる。買収対象の企業は研究チームや特許、顧客を既に抱えているうえに、中国政府から潤沢な補助金を受け取っている場合もある。一方、中国企業の創業者にとっては、中国国内での資金調達が厳しくなっているだけに買収提案は願ってもない展開となる」
欧米IT資本が探している新興起業は、ニッチな分野の技術である。大掛かりな本格的な知見に基づく技術でなく、「あったら良い」という技術である。日本のCMで、小林製薬は「あったら良い」という製品を売り出している。あんな感覚であろうか。
(3)「外国企業が中国企業に関心を持つのは、人工知能(AI)から医療技術、クラウドコンピューティング、さらには半導体の分野も含む。半導体やソフトウエアの企業の買収には、『米国も欧州も多大な関心を寄せている』と米国の技術コンサルティング会社、ティリアス・リサーチのジム・マクレガー氏は指摘する」
中国若者の感覚がつくり出した技術が、欧米のIT資本に引き取られて行くのは、中国経済の凋落を意味するようで、哀れを感じる。習氏の不動産バブル依存経済がもたらした悲哀だ。





