昨日の米中首脳会談は、ひとまず最悪状対を回避したが、問題を先送りだけであった。依然として、貿易面での先行き見通しが立たない状態である。
中国国家統計局が発表した6月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は49.4と前月並みで好不況のラインである50を下回ったままだ。特に、輸出新規受注が4~6月と米国の関税第4弾3000億ドル回避で繰り上げて急増した後、6月は息切れによる急落の影響が全面に出てきた。7月以降の製造業PMIも暗い予想である。
『ブルームバーグ』(6月30日付)は、「中国の6月製造業PMI、予想下回るー米中首脳会談での休戦前に」と題する記事を掲載した。
中国の製造業活動を測る政府の指数は6月に予想以上の悪化が続いた。国内景気の低調さに米国の中国製品への関税発動が追い打ちをかけている。国家統計局が30日に発表した6月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.4と、前月と同水準。ブルームバーグ調査のエコノミスト予想(49.5)に届かず、活動拡大・縮小の節目となる50を下回った。
(1)「製造業PMIの項目別では新規輸出受注指数が前月から一段と低下。中国製品2000億ドル(約21兆5700億円)相当への関税引き上げに伴う輸出業者への圧力が浮き彫りとなった。同PMIの低調さは米中首脳会談で貿易戦争が休戦となる前の段階で、今年前半の持ち直しが弱くなっていたことを示唆している」
新規輸出受注指数が悪化しているのは、すでに実施されている2000億ドル関税引き上げ効果の浸透と、既述の第4弾3000億ドルへの関税引き上げを回避する繰り上げ発注の終わりが「ダブル・マイナス」となって影響したもの。中国の製造業には、相当の悪影響が出ているはずだ。中国国営メディアが流す楽観論や、「最後まで戦う」という状況にはない。
(2)「マッコーリー・セキュリティーズの中国担当チーフエコノミスト、胡偉俊氏は「中国の現在の景気鈍化で貿易戦争は一因でしかない」と指摘。「世界経済の減速や国内で勢いが失われていることがより重要な要因だ。中国経済は政府がさらに積極的な政策措置を打ち出すまで底打ちしないだろう」と述べ、政策措置にはインフラ投資や不動産投資、消費の押し上げが含まれようとの見方を示した」
中国経済は、輸出が不振だけでなく内需も低迷している結果、「老衰」状況にあることを告げている。景気刺激策を打っても「老衰経済」ゆえに効果は限られている。むしろ、債務を増やすだけに終わるはずだ。
(3)「非製造業PMIは54.2と、前月の54.3から低下したが、依然として活動拡大を示している。より懸念されるのは労働市場の悪化で、製造業の雇用指数は2009年以来の低水準に落ち込み、非製造業部門の同指数も16年初め以来の悪さを記録した。製造業では小規模企業が景気減速の打撃を最も受けているが、大企業も活動が縮小している。大企業の指数は過去3年余りで初めて50を下回った」
製造業は、質的に高い雇用の受け皿である。その雇用指数は、2009年以来の低水準に落込んでいる。リーマンショック以来の悪化だ。この状況での米中貿易戦争で、中国は最後まで戦えない状況」に追い込まれている。