勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年06月

    テイカカズラ
       

    昨日の米中首脳会談は、ひとまず最悪状対を回避したが、問題を先送りだけであった。依然として、貿易面での先行き見通しが立たない状態である。

     

    中国国家統計局が発表した6月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は49.4と前月並みで好不況のラインである50を下回ったままだ。特に、輸出新規受注が4~6月と米国の関税第4弾3000億ドル回避で繰り上げて急増した後、6月は息切れによる急落の影響が全面に出てきた。7月以降の製造業PMIも暗い予想である。

     

    『ブルームバーグ』(6月30日付)は、「中国の6月製造業PMI、予想下回るー米中首脳会談での休戦前に」と題する記事を掲載した。

     

    中国の製造業活動を測る政府の指数は6月に予想以上の悪化が続いた。国内景気の低調さに米国の中国製品への関税発動が追い打ちをかけている。国家統計局が30日に発表した6月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.4と、前月と同水準。ブルームバーグ調査のエコノミスト予想(49.5)に届かず、活動拡大・縮小の節目となる50を下回った。

     

    (1)「製造業PMIの項目別では新規輸出受注指数が前月から一段と低下。中国製品2000億ドル(約215700億円)相当への関税引き上げに伴う輸出業者への圧力が浮き彫りとなった。同PMIの低調さは米中首脳会談で貿易戦争が休戦となる前の段階で、今年前半の持ち直しが弱くなっていたことを示唆している」

     

    新規輸出受注指数が悪化しているのは、すでに実施されている2000億ドル関税引き上げ効果の浸透と、既述の第4弾3000億ドルへの関税引き上げを回避する繰り上げ発注の終わりが「ダブル・マイナス」となって影響したもの。中国の製造業には、相当の悪影響が出ているはずだ。中国国営メディアが流す楽観論や、「最後まで戦う」という状況にはない。

     


    (2)「マッコーリー・セキュリティーズの中国担当チーフエコノミスト、胡偉俊氏は「中国の現在の景気鈍化で貿易戦争は一因でしかない」と指摘。「世界経済の減速や国内で勢いが失われていることがより重要な要因だ。中国経済は政府がさらに積極的な政策措置を打ち出すまで底打ちしないだろう」と述べ、政策措置にはインフラ投資や不動産投資、消費の押し上げが含まれようとの見方を示した」

     

    中国経済は、輸出が不振だけでなく内需も低迷している結果、「老衰」状況にあることを告げている。景気刺激策を打っても「老衰経済」ゆえに効果は限られている。むしろ、債務を増やすだけに終わるはずだ。

     

    (3)「非製造業PMIは54.2と、前月の54.3から低下したが、依然として活動拡大を示している。より懸念されるのは労働市場の悪化で、製造業の雇用指数は2009年以来の低水準に落ち込み、非製造業部門の同指数も16年初め以来の悪さを記録した。製造業では小規模企業が景気減速の打撃を最も受けているが、大企業も活動が縮小している。大企業の指数は過去3年余りで初めて50を下回った」

     

    製造業は、質的に高い雇用の受け皿である。その雇用指数は、2009年以来の低水準に落込んでいる。リーマンショック以来の悪化だ。この状況での米中貿易戦争で、中国は最後まで戦えない状況」に追い込まれている。

     

     


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    中国は、国権が関わる問題として、土壇場で米中貿易交渉にストップをかけた。この国権とは何か。それは、中国共産党の運命に関わることだ。米国の要求のままに、経済機構を変えることが、中国共産党の権威を損ねるという解釈と思う。となれば、経済的な実利よりも政治的な利益を選択している可能性が大きい。そうとなれば、中国は相当の被害を覚悟した政治的な決定と見るべきだ。

     

    『日本経済新聞』(6月30日付)は、「米中休戦、収束見えず、期限曖昧で中国ペース」と題する記事を掲載しました。

     

    米中両首脳は29日の会談で貿易協議の再開を決めた。トランプ米大統領は関税第4弾の発動を先送りし、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の制裁解除に言及。今後の協議も期限が曖昧で一転して中国ペースの様相を呈しつつある。一時休戦となる貿易戦争が収束する道筋は見えないが、大統領選を控え成果を焦るトランプ氏が譲歩すれば中国の構造改革が中途半端に終わるリスクもある。

     

    (1)「2018年12月以来、7カ月ぶりの首脳会談は1時間強。2時間半かけた前回より大幅に短かかった。510日に決裂した閣僚級協議の再開を決めたが、前回会談のように「90日の期限を決めて、技術移転の強要や知財保護など5分野で集中協議する」といった具体的な目標は判明していない」

     

    (2)「実際、米中の協議は決裂以来水面下でもほとんど進んでいなかった。そのため、交渉は瀬戸際戦略をとった中国ペースとなった。早期の成果獲得へ短期決戦を挑んでいたトランプ氏は「急いでいない。正しい取引がしたいだけだ」と譲歩。前回12月には「3月に2000億ドル分の中国製品の関税を10%から25%に引き上げる」と通告したが、今回は関税引き上げを見送った上に期限も曖昧にしたままだ」



    (3)「交渉が動かないのは、米中の対立が貿易問題から国家主権を巡る争いになりつつあるからだ。中国が巨額補助金を投じるハイテク企業の育成策「中国製造2025」は、中央集権で経済を動かす「国家資本主義」の根幹だ。米国は「補助金で輸出攻勢する中国企業に比べ、米企業の競争が不利になる」と補助金撤廃を要求するが、中国は見直しに応じない」

     

    このパラグラフが、事態の本質部分であろう。米中が総力を挙げて「戦う」部分であるからだ。これは政治的な意味であり、経済的な分析は別の視点からすべきと見る。私なりの見方は、明朝に発行する「メルマガ69号」で明らかにしたい。


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    朝鮮は、中国と国境を接して来たばかりに政治的な支配を受けて来ました。韓国は、その流れを汲むだけに、中国に対しては「絶対服従」という哀しい性(さが)を生んできたように思います。中国は旧宗主国ですから、仕方ないと言えばそれまでですが、いま少し毅然と振る舞えないでしょうか。

     

    韓国は、中国に頭が上がらない分を日本に向けて悪口雑言を言ってきます。こうやって、辛うじて精神的な安定感を得ているとすれば気の毒に思います。日本は、韓国の受けているフラストレーションのはけ口とすれば、日本が一番、損な役回りと言えるでしょう。

     

    韓国は、北朝鮮の核危機に備え、THAAD(超高高度ミサイル網)を国内に設置しました。これが、中国の安全保障危機につながるとして、韓国に経済制裁を科した理由です。韓国はこの制裁を回避すべく、独立国家として絶対にやってはならない安全保障の約束をしたのです。

     

    韓国政府は一昨年10月、中国に対して「三つの約束」(三不)を文書で出しました。

        THAADの追加配備は行わない

        米国によるMD(ミサイル防衛)には参加しない

        韓米日同盟には加わらない

     

    この「三不」によって、経済制裁を解除して貰えると期待しましたがなしのつぶてでした。中国という国は、約束を守らない国であることを改めて知らされたのです。

     


    中国は、THAADが、中国にとって有害でないことを知り抜いています。レーダー照射範囲が中国領土にかからないように設計されているからです。それでも韓国から「証文」取り、制裁を解除しない。厚かましい限りのことをやって、韓国政府を振り回しています。文大統領のように、「肝っ玉」の小さい政治家は震い上がっているのでしょう。

     

    日本には、こういう脅しは効きません。「武士の国」という歴史があります。相手国が脅してくれば、「倍返し」で対抗するという負けん気があります。韓国は、日本に対してはところ構わず噛みついて来ます。相手が、中国となると「シュン」としてしまいます。

     

    韓国は、なぜ中国と日本に対して態度を変えるのでしょうか。

     

    中国は、獰猛(どうもう)であることを知り抜いているのです。日本はどうか。秀吉の朝鮮出兵の原因をつくったのが朝鮮側にあること。日韓併合時代も、文化・教育など手厚い政策を行い、中国ほど獰猛でないことを肌身で知っているのです。台湾の人々が中国本土を嫌い、日本へ親愛の情を持つのは、まさに韓国で行った政策であったからです。

     

    でも、韓国人は前記のようなことを絶対に言いません。朝鮮朱子学によって、日本よりも民度が高いと信じているからです。この迷妄が解けるとき、反日も消えるのでしょう。その時期はいつか。英国の歴史家アーノルド・トインビーによれば、「1000年単位」とか。「30世紀」のころでしょう。その時、韓国は人口が急減して存在しているかどうか分りません。文政権は、これほど危険な政策をやっているのです。


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    中国は、「一帯一路」プロジェクトで相手国の財政状況を見極め、無理のない工事を行うと声明したばかりである。その舌の根の乾かない内に、東アフリカのタンザニアで驚くべき搾取的なプロジェクトを押しつけて拒絶されたことが分った。

     

    タンザニアは、アフリカ一の高山であるキリマンジャロのある国である。

    人口は5731万人(2017年)、

    1人当たり名目GDPは1134ドル(2018年)。

    名目GDP総額は、578億6200万ドル(2018年)

     

    タンザニアの名目GDPは、日本円で6兆3580億円である。中国は、この国へ1兆円の港湾建設計画を持ちかけて拒絶された。支払い能力から見て不可能を承知であることは自明。これまで表明されてきた中国の「債務漬け」の反省は、全くの噓であったことが判明した。中国という国は、絶対に約束を守らない国であることを自ら証明した。

     

    『大紀元』(6月29日付)は、「タンザニア大統領、一帯一路1兆円港湾計画を停止、『狂った人にしか受け入れられない条件』」と題する記事を掲載した。

     

    東アフリカの国タンザニアは、国の財政状況を理由に、中国共産党主導の1兆円規模の港湾建設計画を中止した。インド洋に面したバガモヨに建設するこの大型新港は、アフリカの物流に関わる一帯一路計画の一つだった。

     

    この新港は、習近平中国主席が5年前、タンザニアを訪問した際、同行した中国の大手国有企業グループ・招商局集団の傅育寧会長とムギムワ財務相が合意した計画。中国側は、港湾までの周辺道路のインフラ建設も担当する内容だった。しかし、当時のジャカヤ・キクウェテ大統領が2015年11月に退任後、後任のジョン・マグフリ大統領は同計画を重点プロジェクトから外した。


     

    (1)「ジョン・マグフリ大統領はこのほど、現地メディアの取材に対して、同計画を強く非難した。資金調達と引き換えに中国から「搾取的で不合理な」内容を提示され、中国金融機関が「狂った人間にしか受け入れられないような厳しい条件」を設定したという。「中国側は33年の抵当権と99年のリース権を求めてきた。港が稼働後、投資者の選定に私たちは干渉することができない。彼らは、この土地を自分のものにしようとしている。さらに、私たちは港湾の工事費を負担しなければならない」と大統領は述べた」

     

    下線部分を読むと、植民地計画である。中国経済事態が困窮しているので、タンザニアを「食い物」にするつもりであったのだろう。

     

    (2)「6月中旬、タンザニアの港湾局長は、この中国投資のバガモヨ港に関する報告を行った。それによると、中国側はタンザニア政府に対し、港湾事業の損失や土地税、労働者補償税、技能開発課税、関税、付加価値税を含むいくつかの免税を求めていた。いっぽうで、港湾稼働後の税の計算、監査はすべて中国当局が行う権利があるという。「つまり港湾、貨物、物流を含め、すべてをコントロールすることを可能にする条件だ」と報告書は説明した。タンザニア当局は現在、主要港のダルエスサラーム港の受け入れ貨物を3倍にする拡張工事を行っている。その工事費は5億2200万ドルとされる。大統領は、中国主導の巨大なバガモヨ新港は、この既存港の取引を損なう恐れがあると懸念している」

     

    中国は、新港の建設を請け負うだけでなく、港湾運営権まで手に入れるという、これほど厚かましい「一帯一路」プロジェクトがあるだろうか。強盗・追いはぎ同様の手口で、タンザニアの権益を手に入れようというのだ。中国を信じることは、自滅に等しい契約にサインする行為になろう。


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    6月28~29日のG20大阪サミットが終わった。韓国メディアは、日韓首脳会談が開かれなかったことで「韓国外交敗北論」を報じている。そのためか、ことさら日本の韓国「冷遇論」を流している。

     

    文大統領が関西国際空港へ到着の際に、日本側がわざと雨の中、傘をさしてタラップを降りるように仕向けたと報じるほど。これは、韓国大統領府が否定し、韓国側が選択した結果と釈明した。米国のトランプ大統領も雨の中、傘をさしてタラップを降りたので、韓国側の疑念も解けたであろう。

     

    韓国メディアが注目したのは、日中首脳会談である。その際に飛び出した「永遠の隣国」に、心穏やかではいられなかったようだ。この言葉は、かつて日韓の間で使われていたもの。日中間にお株を奪われた形となった。

     

    『中央日報』(6月29日付)は、「安倍氏『来年の桜の咲く頃お迎えしたい』、習氏 笑顔で『いいアイデア』」と題する記事を掲載した。

     

    安倍晋三首相と中国の習近平国家主席が主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)開幕を翌日に控えた27日夕方、大阪府内のホテルで会談を行った。両国の友好的雰囲気は冒頭発言からはっきりと感じ取ることができた。特に、過去の会談の時にはあまり見られなかった習主席の表情に笑顔がたびたび登場した。

     
    (1) 「安倍首相は冒頭発言で「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」とし「日本は平成から令和に、中国も建国70周年を迎える。大きな節目の年に、習主席と手を携えて日中新時代を切り開きたい」と述べた。これに習主席も「今年は中国の建国70周年で、日本も令和時代に入った。中日関係は新たなスタートラインに立っている」として「新しい時代にふさわしい中日関係を構築したい」と述べた」

     (2)「安倍首相が「来年春、桜の咲く頃に習氏を(ドナルド・トランプ米大統領に続き令和時代2人目の)国賓として日本にお迎えしたい」と提案すると、習主席は「いいアイデアだと思う。外交当局で具体的な時期について意思疎通を図っていきたい」として応じる姿勢を見せた。日本政府の発表によると、会談で両首脳は「『永遠の隣国』として緊密な意思疎通を通じてハイレベル往来と対話を強化していく」という方向で意見を一致させた」

    「永遠の隣国」とは、平和共存を目的にした日中関係の樹立という意味であろう。中国が、この言葉に賛意を示したとすれば今後、尖閣諸島の領海侵犯問題が起こらないようにするのかどうか。相変わらず、領海侵犯が起これば、リップサービスとなる。

     


    (3)「 安倍首脳は2017年までの国会施政方針演説に入っていた「韓国は戦略的利益を共有する最も重要な隣国」という表現を昨年から外し、日本政府も昨年外交青書にあった同様の表現を2019年版から削除した。 逆に中国に対しては「東シナ海を隔てた隣国である中国との関係は、最も重要な二国間関係の一つ」(2019年外交青書)と強調していたが、今回「永遠の隣国」にまで格上げさせた」

     

    「永遠の隣国」は、日韓関係に使われていたものだ。それが、韓国による慰安婦協定の白紙化に続き、昨年の徴用工裁判において賠償問題が命じられて、日韓関係はズタズタに切られてしまった。もはや、韓国への信頼感は喪失しており、「永遠の隣国」なる言葉が死語になった。

     

    (4)「対立している東シナ海など海洋安全保障に関連し、両首脳は建設的な関係構築を通じて「東シナ海を平和、友好、協力の海とすること」で一致した。安倍首相は福島産水産物などに対する輸入規制の早期解除を習主席に要請した。 これに先立ち、安倍首相は欧州連合(EU)首脳部との会談で、福島産食品の輸入規制撤廃を要請し、この中でジャン=クロード・ユンケル欧州委員長は「今後数カ月で良い結果を出せる可能性がある」と応じた」
     
    日本が、中国へ福島産水産物の輸入規制の早期解除の実現を要請した。対応は不明だが、EUからは年内の解除を示唆する発言が出てきた。韓国にとっては、いつまで規制を続ける積もりか。


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