勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年06月

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    現在の韓国政治は混乱している。米韓同盟という枠からはみ出て、中国や北朝鮮へ傾斜しており、米国の不信を買っている。世界情勢が米中の覇権争いで揺れる間、韓国は、二股外交をするつもりに見えるが危険である。真の味方は得られず、時代に翻弄されて旧李朝と同様に歴史から姿を消しかねない。

     

    私はこれまで、折りに触れ文政権の二股外交の危険性を指摘してきた。民主国は、民主国の同盟内に止まることが、安全保障面ではるかに確実な担保を得られることを理由に掲げてきた。文政権も一応は、そういう節度をみせてはいるが、中国の強い圧力がかかったらどうなるか分らない不透明さがある。韓国の進歩派政権の抱える根本的な脆弱性がここにある。

     

    『朝鮮日報』(6月28日付)は、「旧韓末に似た世界情勢、文大統領は高宗と同じ道を歩むのか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の朴正薫(パク・チョンフン)論説室長である。

     

    世の中がまるで「旧韓末」(大韓帝国期)のようだと言われる。国際情勢と大国の対立、貿易・通商から地政学的環境までもが100年余り前の旧韓末を連想させる。帝国主義の列強がわが国の首を締め上げた19世紀末のように、再びどちらの味方につくのか、選択を強要されている。

    緊張する国際情勢よりさらに旧韓末らしいのが、今の韓国と日本のリーダーシップだ。今日本には華やかな過去を夢見る指導者が登場している。日本の安倍晋三首相が明治維新の主役たちをモデルにしたというのはもはや秘密ではない。首相としての安倍首相の動きは伊藤博文に例えられる。韓国にとっては敵だが、日本で伊藤博文は近代化の元勲として慕われている。

     

    (1)「まず、(旧韓末の)高宗(コジョン)は大国の力学関係を読み違え、致命的な判断ミスを犯した。当時の覇権国だった英国ではなく、非主流のロシアと手を結ぼうとした。俄館播遷(がかんはんせん、1896年に高宗がロシア公使館に移り政治を行ったこと、露館播遷とも)を見た英国は6年後、英日同盟を結び、朝鮮を日本に引き渡してしまった。文政権も同様の過ちを犯している。覇権を握った米国との同盟を弱体化させ、覇権に挑戦する中国とバランスを取ろうとしている。覇権国に背を向けた国が国際秩序の主流陣営に立つことはできない。誤った選択で外交的な孤立を招いた旧韓末の失敗を繰り返している。

     

    国際政治の主流は、どこかという認識が甘い点では、当時も今も変わらない。中国が米国に対抗して、いろいろと手出しをしているものの、今後の人口動態変化(生産年齢人口比率の急低下など)で、圧倒的に不利であることを考えるべきだ。国力の基本は、人口動態変化にある。その点で、中国は圧倒的に不利な状況に落込んでいる。

     


    (2)「次に、高宗は力がなければ国を守ることはできないという実力主義の原理を理解できなかった。改革の熱情はあったが、観念にとどまり、その意志も努力も弱かった。文政権の国政も富国強兵とは異なる方向へと向かっている。国力を高めることよりも経済を弱体化させ、軍事力を低下させる方向へと国政を導いている。現実ではなく理念にこだわり、縮小と文弱の道を歩んでいる

     

    外交は現実直視が重要である。その点で、理念にこだわっているのが韓国である。朝鮮南北統一や反日政策などは、現実を直視しない政策の典型例である。

     

    (3)「第三に、高宗は既得権益を守るため、有能な人材の力を除去する自殺行為に及んだ。急進派、穏健派を問わず、開化派を殺害、追放し、富国強兵勢力の芽を摘んだ。人材がいなくなった朝鮮は売国奴の天下となり、自主的に改革を進める原動力を失った。現在展開される「積弊清算」も国家の人材競争力を損ねる自殺行為だ。貴重な人的資産を葬り去り、社会的地位を奪っている。いずれは国家的損失となって跳ね返ってくるはずだ」

     

    この点では、文政権と高宗は全く同じことをやっている。特に、外交面ではそれが顕著である。文政権の外交が失敗しているのは、外交専門家の意見を聞かず、大統領府の「86世代」という学生運動家上がりの集団が牛耳っている結果だ。

     


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    中国は、人民解放軍装備の近代化に全力を挙げている。サイバー攻撃やスパイなどと手段を選ばずにきたが、意外なところで盲点が指摘されている。指揮官や兵士の能力が、最新兵器について行けないことだ。

     

    日清戦争でも同じ現象が見られた。清国は、英国から最新鋭の軍艦4隻を購入したが、日本海軍の攻撃に屈して大敗した歴史がある。当時も今も、人材不足が共通の悩みである。

     

    『大紀元』(6月28日付)は、「中国軍の問題は人材不足―米国会諮問機関」と題する記事を掲載した。

     

    米国会諮問機関の米中経済安全保障審査委員会(USCC)は20日、拡張する中国の軍事的野心に関する公聴会を開いた。専門家は中国軍の核心的問題は、指揮官の不在、兵士の現代化した機器の操作能力不足など、人材不足の問題だと指摘した。

     

     

    (1)「中国の習近平主席は2017年、2035年までに国防と軍隊の現代化を基本的に実現し、2049年までに「世界一流の軍」を完成するという明確な目標を定めた。公聴会に参加した、米国防大学中国軍事研究センター長フィリップ・サンダース氏は、中国軍が「世界一流の軍」になりえない最大の障壁は、人材の問題だとした。「ハード面、組織の問題は大きくない。しかし、彼らに共同作戦を率いる参謀、作戦指揮官がいるだろうか」と指摘した」

     

    このパラグラフで、総論的な指摘がされている。中国軍は、人材不足が深刻であり、「世界一流の軍」に成長する機会を奪っているという。「尚武の精神」が不足しているのだろう。

     

    (2)「サンダース氏は、解放軍の陸軍将校を例にあげた。将校になる前、彼らの主な活動は1つの軍区に限られていた。「広い見方を持っていないため、どのように全体の共同作戦を展開し、指揮するかを知らないだろう」と付け加えた。中国共産党が掲げた「戦って勝つ」という攻撃的な軍事目標によると、共同作戦能力の強化は、中国の軍事改革の焦点になる。しかし、中国の軍事改革のひとつの焦点は、共産党による軍の統制の強化だった」

     

    中国軍は、ゲリラ戦は得意である。だが、大軍を率いて組織的に戦う上で必要な指揮官と兵士が足りないという。これは、日清戦争や日中戦争でも同じ弱点が指摘されている。近代戦は、ゲリラ戦と基本型が異なっている。中国軍の弱点なのだろう。

     


    (3)「サンダースは、この共産主義に基づく軍のあり方が大きな問題になるとした。「レーニン主義に基づいた部隊は党の上層部に服従的で、このような部隊が能動的に作戦を展開できるのだろうか」。さらに、よく訓練された、高度な教育を受けた兵士がいないことは、中国軍が「世界クラス」の目標を達成するためのもう1つの障害になるとした。5月の米国防総省の中国の軍事報告によると、人工知能、高度なロボット技術、およびIT技術で大きく進歩した。同月、米シンクタンク・ランド研究所の国際防衛研究者ティモシー・ヘルス氏は、現代的な戦争には、技術的に相応した学歴、技術を満たしている必要があると解説した」

     

    人民解放軍では、政治将校がいて思想教育を行っている。これが、すべて「指示待ち」兵士を生み出しており、戦況に応じて自由自在な戦闘体系を組めない点で限界があるという。兵士は農村部出身者が圧倒的である。高等教育を受けた兵士の少なさが、中国軍の弱さになっているという。「一人っ子政策」が、皮肉にも弱い兵士を生み出した背景にある。

     

    (4)「2016年のランド研究所の報告「中国軍の変化:人民解放軍の短期的な戦力評価」は、中国の軍事作家や海外のアナリストの分析から、中国軍の部隊の主要な弱点は、組織構造の欠陥によるものだとした。軍の人材は、効果的に任務を遂行するための必要な水準に達していない、と指摘している。このなかで、将兵の教育水準の低さと技術の熟練度の不足が長らくの問題であるとした。ほかにも、心理面の管理の問題として、たとえば軍事規律の保守、安全保持、士気の保持、腐敗などの問題も抱えている。特に、将来の戦争で重要な海軍、空軍、情報化主導の戦場の中で、中国軍の人員は、新たな作戦装備を調整し、それを実際の作戦能力に反映させる力が不足していると分析した」

     

    「一人っ子政策」が、子どもを甘やかして育ててきた。これが、兵士向きでない若者を生んでいる理由である。となると、近代兵器をいくら揃えても戦力化しないであろう。宝の持腐れである。


    テイカカズラ
       

    韓国外交は、袋小路に入っている。大統領府の「86世代」という素人が外交権を握っている結果だ。外交を政治化しすぎ、外交部(外務省)の専門家を遠ざけた「北朝鮮ショー」が、当の北朝鮮から罵倒されるという事態に陥っている。

     

    文在寅大統領は26日、内外の通信社に対して書面インタビューを行い、金正恩氏の非核化を信じていると褒め称えた。翌日、北から届いた「返事」は残酷なもの。米朝対話に韓国は口出しするなというものだった。文氏が絶賛した金正恩氏からは、文氏の投げかけた甘い言葉が一蹴されている。文在寅外交は、四面楚歌に追い込まれている。

     

    『中央日報』(6月27日付)は、「北朝鮮、『南側当局者 朝米対話に口出しするな』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「北朝鮮が27日、米国が交渉態度を変えてこそ米朝対話が再開すると主張し、「我々が繰り返す警告は決して口先だけでないということを肝に銘じるのがよいだろう」と圧力を加えた。また、南側当局には「対話の当事者は我々(北朝鮮)と米国」とし「決して南朝鮮当局が口出しすることではない」と不満を表した」

     

    北朝鮮は、米国と韓国に対してそれぞれ不満を述べている。とりわけ韓国に対しては、米朝間で直接、対話が可能になっている現在、「仲介役」気取りをするなと厳しい姿勢を覗かせている。

     

    (2)「北朝鮮は「朝米関係を『仲裁』するかのように世論化して位置づけを高めようとする南朝鮮当局者にも一言いいたい」とし「自分たちも加わって何か大きなことをしているような雰囲気を漂わせながら、自らの立場を見いだそうと、南北の間でも依然としてさまざまな経路で何か対話が進行しているかのように世論をつくっている」と非難した。

     


    (3)「 北朝鮮は「朝米関係はわが国務委員会委員長同志と米国大統領の間の関係に基づいている」とし「連絡するのも朝米間で稼働している連絡通路を利用すればよく、交渉する場合は朝米が直接向かい合って座るため、南朝鮮当局を通すことは決してない」と主張した。さらに「いま南北間で何かさまざまな交流と水面下の対話が進行しているように広告しているが、そのようなものは一つもない」とし「南朝鮮当局は自分たちのことでもまともにするのがよい」と指摘した」

     

     

    北朝鮮の態度は傲慢過ぎるが、米朝のハノイ会談失敗の後遺症を引きずっている。北は、韓国の甘い情報を鵜呑みにして失敗したと思い込んでいるのだ。文氏は、本心からハノイで米朝の交渉が妥結すると思い込んでいた。北にも、そういう安易な情報を伝えていたに相違ない。

     

    今後の韓国外交はどうするのか。大阪G20サミットでは従来、開催されていた「日米韓三カ国会談」が予定から消えている。代わって、「日米印」の三カ国の首脳会談に衣替えされた。当然、米国の推進する「インド太平洋戦略」では、そのキーストーンから韓国の名前が抜けている。中国へ「秋波」を送る韓国では、信頼性が劣るという判断であろう。

     

    こうなると、韓国の居場所がなくなるのだ。日本には「手当たり次第の反日」という病的現象を見せているが、まさか中国陣営に加わる訳にもいかなし、大きなジレンマを抱えてゆくのだろう。韓国は、「ストレーシープ」状態だ。

     




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    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、学生時代に学んだ北朝鮮の「主体(チュチェ)思想」の虜になったままである。北朝鮮の金正恩国務委員長の発言を信じており、核放棄の意思に変化はないと言いきっている。内外の代表的通信社7社の書面インタビューに答えたもの。

     

    前記のインタビューでは、例によって日本批判を続けている。日本が、徴用工問題を政治的に利用しているというのだ。政治的に利用しているのは、文氏自身である。韓国が、1965年の日韓基本条約で解決済みの問題を蒸し返し、積弊一掃という政治スローガンに、この問題を忍ばせているからだ。

     

    文氏が、日本に対して何のわだかまりもなかったとすれば、徴用工判決が出た直後、善後策を相談したはずだ。そういう動きは一切なく、日本政府の問合せにも無言を貫いてきた。大阪G20サミット直前になって、これではまずいた判断して、大統領府自身が拒否した棚ざらしの案を、関係者に相談することなく日本へ提案してきた。この脈略のない動きに対して、日本が拒否することが政治的な動きなのか。日本は、第3国委員による判断を仰ごうと韓国に提案しているが、なしのつぶてである。

     

    文氏は弁護士出身である。そうならば、三百代言的発言を取り下げて、隣国日本に対してもう少し、真摯な態度を取れないのか。文氏の言動こそ、自らの支持率を上げるべく計算し尽くした動きをしており見苦しい限りである。

     


    『朝鮮日報』)6月27日付)は、「文大統領、『金正恩氏を信じる』『日本は国内政治に歴史を利用するな』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は26日、3回目の米朝首脳会談が開催される見通しについて「今やその時期が熟しつつあると考える」と指摘した。文大統領はこの日、聯合ニュース、AFPAPなど国内外七つの通信社による書面インタビューでこのような考えを示し「韓半島(朝鮮半島)平和プロセスはすでにかなり進展した。朝米交渉の再開を通じて次の段階に進むだろう」とも予想した。文大統領は「金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長による非核化の意志を信じる」「(金正恩氏は)非常に決断力と柔軟性のある人物だ」と非常に高く評価した」

     

    文氏は、北朝鮮が今なお核放棄の意思を持っていると断言している。これは、韓国内外で少数説になっている。韓国の世論調査でも4人に3人は、金正恩氏の非核化を信じないのだ。それを証拠もなく、正恩氏の発言を信じているのは余りにもナイーブ過ぎる。

     

    文氏は、韓国軍の最高指揮官でもある。こういう底抜けの「善人」に、韓国の安全保障のカギを預けるのは不安になって当然であろう。


    (2)「文大統領は韓日関係の最大の懸案である強制徴用判決問題について、韓国政府が提示した「韓国と日本の企業が出資した基金の設置」が解決策になると主張した。しかし日本は「韓日協定違反」との理由でこれを拒否している。文大統領は「韓日関係発展のためには歴史問題を国内の政治に利用してはならない」「歴史問題は韓国政府が作っているのではなく、過去の不幸な歴史のために生じた」などと主張した。G20首脳会議では韓日首脳会談が行われないが、文大統領は「いつでも対話のドアは開かれている。G20の機会を利用するかどうかは日本に懸かっている」との考えも示した」

     

    文氏は、日韓の歴史問題を積弊と位置づけている。「親日排除」は、まさに官製民族主義の象徴だ。当人が、歴史問題をテコにして自身の支持率引上げに使っている矛楯を自覚していないとすれば、これもまた「ナイーブ」としか言いようがない。


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    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、G20出席のため27日大阪へ着いた。早速、在日同胞との懇談会に臨んだが、日韓関係悪化の余波を受け苦境に立たされていることを切々と訴えられた。

     

    文氏はソウルにおいて、日本は徴用工判決を政治的に利用しているとピンボケな発言を繰り返しているが、日本へ来て同胞の苦しんでいる姿に接して、どう感じただろうか。

     

    『朝鮮日報』(6月27日付)は、「在日同胞、文大統領との懇談会で 韓日関係悪化 我々には死活問題」と題する記事を掲載した。

     

    G20サミットに出席するために大阪を訪問している文在寅大統領は27日、在日同胞約370人を招いて夕食懇談会を開催した。この席で、在日同胞からは韓日関係の悪化を懸念する声が相次いだ。

     

    (1)「在日本大韓民国民団(民団)の呉龍浩(オ・ヨンホ)大阪府団長は歓迎のあいさつで「最近、韓日関係は歴史認識をめぐる問題が浮き彫りになり、決して良好な関係とはいえない」として「両国の関係悪化が長期化すれば、在日同胞の暮らしに大きな影響を与える。韓日の友好・親善なしには在日同胞社会の発展も困難だ」と述べ、冷え込んでいる韓日関係に懸念を示した」

     

    (2)「民団の呂健二(ヨ・ゴンイ)中央本部団長は乾杯のあいさつで「今は韓日関係が非常に困難だ。大統領も大変苦労されていることはよく分かっている」としながらも「韓日関係は我々にとっては死活問題。近い国なので良い時期も悪い時期もあるが、明日のためには共に未来へ進むほかない」と述べ、関係改善に向けた努力の必要性を訴えた。

     

    在日韓国人は、すでに書面で窮状を訴えている。日本人の一部から「ヘイトスピーチ」も浴びせられており、文氏のように「安全圏」で日本批判している立場とは全く異なっている。民団の中からは、個人レベルで「文批判」運動を始めている人も出ている。

     

    これに対して、文大統領は次のような挨拶をした。

     

    (3)「文大統領は韓日の1500年におよぶ交流に言及した上で、「両国は隣人であり古くからの友人」と述べた。来年の東京五輪にも触れ、「五輪が成功するよう誠意を持って協力する」と語った」

     

    文氏も、さすが大阪では日本批判を抑えている。具体策を持って、同胞の苦境に応えることはなかった。せいぜい、東京五輪に協力するという挨拶をするのが精一杯であったのだろう。


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