勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年06月

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    韓国紙『中央日報』(6月1日付け)に、慶応大学の添谷芳秀教授のインタビュー記事が掲載されています。その中で、「右側の安倍首相と左側の文大統領が両国の政権のトップになったため、構造的にうまく解決するのは難しい」という箇所に目が止まりました。

     

    ここで言う右側は保守派、左側は進歩派を指しているのですが、日本の交通規則を思い出しました。「人は右、車は左」ですね。この左側通行は、世界の大勢ではありません。世界では55ヶ国。少数派です。車の左側通行を交通規則にしている国は、日本以外は途上国でした。

     

    ここからが本論です。外交という一本道を、日韓の車がそれぞれ反対側から走ってくれば、交通規則が違いますので衝突する運命です。これを避けるには、共通のルールを守るほかありません。韓国も日本も国際ルールに従ってこそ、正面衝突の危険性を免れます。

     

    韓国はどうでしょうか。1965年に締結した日韓基本条約の基本部分を骨抜きにしました。また、2015年暮れにようやく合意した慰安婦問題も勝手に破棄同然の措置をとって平然としています。文大統領が、あえてこういう行動に出ている動機は「正義」の実現だそうです。

     

    1965年当時の韓国は貧しかった。日本に対等に扱って貰えなかった。現在は、日韓の経済的な格差が狭まり、言いたいことが言えるようになった。だから、過去に結んだ条約を見直す。これが、本音だそうです。

     

    だが、ちょっと待って欲しいのです。韓国は、日韓基本条約によって無償有償の合計で11億ドル以上の資金を得て、高度経済成長である「漢江の奇跡」を実現させたのです。その結果、日韓の経済格差が縮まったのでしょう。とすれば、日韓基本条約の果たした役割はきわめて大きいはずです。

     

    子どもが、小さい頃は親に反抗できなかった。だが、成人して親と同格になったから、子ども時代の償いをしろと言えば、どうなるでしょうか。親は、子どもを成人にさせるまでにかかった教育費や生活費を子どもに請求しません。こういう類いの話は、非現実的なことでしょう。

     

    韓国は今、日本に向かってこういう「あり得ない要求」を突付けています。いくら、人の良い日本人でも、首を傾げる話なのです。徴用工に関する韓国大法院(最高裁判所)の判決で2人の裁判官が反対したそうです。反対ゼロでなくてホットします。まだ、真実の分る裁判官が韓国にいたのです。

     

    国際的な取り決めは、ルールをつくって承認することです。これによって、外交の一本道は、右側通行と左側通行でも衝突しないでスムースに流れます。韓国は、自分だけに通用する「正義」を振りかざします。それが「外交テロ」なのです。早く、それに気付いてください。

     

     


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    ドイツは、米国に対していつもすぐに同調せず、文句を付けるのが伝統である。現在、焦点になっている中国ファーウェイ5Gの導入についても、一筋縄でいかない抵抗している。これに業を煮やした米国務長官が、「最後通牒」を発した。米国の得た特殊情報を提供しない、というもの。ドイツは過去、米国の特殊情報でテロを未然に防げた経験がある。米国に、痛いところを突かれた形だ。

     

    ドイツ国民は、第二次世界大戦で米空軍が、ベルリンのキリスト教会まで破壊した「野蛮性」に抗議している。現在は知らないが、私は10数年前、その爆撃され無残な教会跡を見学した。そこには、広島の原爆ドームと違った「反米ムード」が漂っていた。

     

    『ロイター』(5月31日付け)は、「米国務長官、ファーウェイ製品購入巡りドイツに警告」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ポンペオ米国務長官は31日、ドイツに対し、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が製造する第5世代(5G)移動通信網を使用した場合、米国は国民や国家安全保障に関する情報を提供しない恐れがあると警告した。ポンペオ長官はマース外相との会談後、どの製品を利用するかは各国の判断に委ねられるが、判断には結果が伴うと指摘。「信用できない通信網に国民や国家安全保障に関するデータを流すことはできないとの観点から、対応の変更を余儀なくされる恐れがある」と語った。ファーウェイについては「5Gネットワークの中でリスクを軽減することは不可能だという懸念がある」とした」

     

    ファーウェイ5Gの危険性については、「ファイブ・アイズ」(米・英・豪・カナダ・ニュージーランド)の5ヶ国が、共通認識をもっている。このファイブ・アイズは、第二次世界大戦中から機密情報を共有するシステムである。現在これら5ヶ国は、ファーウェイ5Gの危険性を認知しているが、それ以外の国となると日本を除けば、まだフラフラしている国が多い。ドイツ政府もその一つだ。

     

    米国は、ドイツ政府に脅しをかけている。テロなどの最高級の機密情報を提供しないというものだ。万一、米国からの機密情報を得られずに事件が起これば、ドイツ政府の責任になる。政権が倒れるほどの重大事だ。ここまで、迫られると「反米ドイツ」では済まされない事態になろう。メルケル首相も決断の時だ。

     


    ドイツ情報機関は、ファーウェイ5Gの危険性を指摘している。

     

    『ブルームバーグ』(3月14日付)は、「中国の華為、5Gパートナーとして信頼できずードイツ情報機関当局者」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「ドイツの外国情報機関当局者は13日開かれた連邦議会の委員会で、国内の第5世代(5G)移動通信網を整備する上で中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が信頼できるパートナーにならないとの見解を示した。同当局者はその理由の一つとして、華為が絡む過去の安全保障関連の出来事を挙げた。連邦議会の報道担当は声明で当局者のコメントを公表したが、名前は開示しなかった。外務省の別の当局者は国家情報当局に協力する企業と共に作業するのは難しいと指摘した」

     

    この段階では、情報当局という専門家段階の認識に止まっていた。ドイツ政府は、中国との関係も無視できないからだ。その後、ファーウェイに関する犯罪がいくつか浮上しており、いくらドイツの「反米意識」が高いと言っても限度があろう。

     

    (3)「事情に詳しい複数の関係者が、ブルームバーグ・ニュースに今月明らかにしたところによると、独情報当局は5Gインフラ構築への華為の関与を認めないよう政府に呼び掛けている。中国が企業秘密を盗むのを手助けする恐れがあると懸念しているという」

     

    情報当局が、ここまで警告していながら無視し、結果として米国から機密情報を得られずにテロ事件が起こったら、首相は責任を取らざるを得まい。


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    文在寅(ムン・ジェイン)氏は、自分の任期中のことしか考えない「刹那大統領」の色彩を濃くしてきた。今後の急速な少子高齢化を考えれば、恒常的な財政逼迫は目に見えている。

     

    文氏が政権に就いた途端に、合計特殊出生率は急落している。昨年はとうとう1を割って、「0.98」にまで低下。ここで、下げ止まる訳でなく「0.8台」までの低下を予想する異常な社会をつくってしまった。その責任は、すべて文在寅大統領にある。

     

    へんてこりんな経済理論を仕入れてきて、韓国で壮大な実験をやって大失敗した。例の最低賃金の大幅引上げである。失業率の高まりをカムフラージュすべく、財政資金で国家がアルバイト口を増やすという非常識この上ない政策まがいのことをやっている。無駄な弾を撃っているから、韓国経済の基盤改革に寄与するはずもない。こうして、財政赤字は増え続ける「構造式」ができあがってしまった、

     

    『朝鮮日報』(6月1日付)は、「韓国大統領府の増税なき財政拡大路線、ポピュリズム政策との批判も」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国大統領府は5月31日、財政拡大や増税論議について、「財政は拡大しなければならないが、増税は検討していない」と述べた。予算を増やして資金を解放するが、税金は上げないということだ。来年の総選挙を前に、与党が増税論を提起するや、一線を画したものと見られる。しかし、増税せずに財政ばかり拡大すれば国の借金が増える一方なので、「将来的に国が破たんしようがしまいが関係なく、目の前の票を取りに行くというポピュリズム(大衆迎合主義)政策だ」との批判が出ている」

     

    輸出依存度が高い韓国経済は、世界経済の変動に弱いという特質を持っている。そこで、健全財政を維持し、国際格付け企業から高い格付けを得られるように努力してきた。歴代政権が、対GDPの債務比率を40%に維持してきた理由でもある。後述のように、文大統領が、率先してこの「40%」ラインを突破しようとしている。自らの失策を財政で隠すという不埒な考え方だ。

     


    (2)「洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政部(省に相当)長官は前日、『国内総生産(GDP)に対する国家債務比率は2022年に45%を記録するだろう』と述べた。結局、選挙に不利な法人税率・所得税率の引き上げなどの増税案ではなく、赤字国債発行で財源を用意するということだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は先月16日の国家財政戦略会議で、『韓国の国家財政は非常に健全な方だ。国家債務比率を40%とする根拠は何か』と言った。それ以降、不文律のようになっている『国家債務比率40%維持』という政府方針は揺らいでいるが、赤字財政でどのような効果が得られるかは不透明だ。将来への投資ではなく、福祉支出や高齢者の公共雇用予算といった『ばらまき型固定支出』を大幅に増やしているためだ」

     

    このパラグラフの文大統領発言を聞いていると、「この大統領の経済認識ではダメだ」という感を深めざるを得ない。研究開発など財政支出の成果が長く残る分野への投資であれば文句は出ない。現実には、最低賃金の大幅引上げによって無理矢理、失業率を高める「仰天」政策を行ない、これによる失業者救済目的で国債発行する。逆立ち政策の尻ぬぐいである。

     

    この大統領は、経済の仕組みを全く知らない。そういう実感を深める発言が実に多い。自分が分らなかったら、専門家に任せるべきである。そういう度量もないから一層困るのだ。文大統領は、韓国経済の体質を完全に脆弱化させて、次の政権に財政後遺症を押しつける、典型的なポピュリズム政権になろうとしている。罪深い政治家だ。


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    韓国メディアは、米国トランプ大統領の国賓としての4日間の訪日に、痛くプライドを傷つけられたようです。トランプ氏と文大統領の関係が余りにも「淡泊」すぎるのが理由です。米国の関心は、すでに韓国を捨てて日本に向けている、とまで報じています。その裏には、文氏の不甲斐なさへの不満を滲ませていました。

     

    韓国では、トランプ・安倍の蜜月ぶりを見て、日米関係はさらに一段と高みに立ったと評価しています。訪日4日目、横須賀で軽空母「かが」に両首脳が着艦して演説した姿に、日米一体のシンボルを見たようだと報じました。

     

    「かが」は、戦時中の空母「加賀」と同名です。空母「加賀」は、日本海軍による真珠湾攻撃の立て役者です。韓国メディアが、頻りとこう指摘しました。そういう因縁のある「かが」で、トランプ氏が安倍氏と演説する姿は、日本の「戦う国」への前兆と警戒しているのです。

     

    「かが」は、確かに「加賀」と発音は同じですが、時代環境が異なります。人間でも「同姓同名」は沢山います。韓国では、「金」、「朴」などが多くて名前を覚えきれません。同姓同名は日本よりもはるかに多いはず。その人たちの運命は、すべて同じでありません。

     


    これと同じで、「かが」は戦前の「加賀」でないのです。私は、韓国メディアがなぜ、「かが」にこだわるのか考えて見ました。それは、韓国人が異常なまでに過去にこだわる特性を持っていることです。6月末の大阪でのG20で、記念写真を撮るのが慣例です。大阪といえば大阪城ですが、困ったことに秀吉が築城しました。秀吉は朝鮮出兵を命じた張本人です。となると、韓国文大統領が気分を害するだろうという話しです。

     

    盧武鉉・元大統領時代のG20は、熊本で開催されました。熊本城は加藤清正の築城です。朝鮮出兵で指揮を執った武士だけに盧氏は面白いはずがなく、浴衣に着替えることを最後まで拒否しました。

     

    韓国人のDNAは、過去にこだわることです。これが、現在の日韓関係の悪化原因の根本でしょう。未だに約500年前の歴史にこだわるように、慰安婦・徴用工などは、生々し過ぎる事件です。その伝でいえば、「かが」は容易に「加賀」へ戻ってしまうのです。

     

    ここに、日本人と韓国人の根本的な違いがあります。歴史的環境が、「かが」と「加賀」では180度変わっています。「加賀」時代は、日米戦争で互いに闘いました。「かが」では、日米が同盟軍となり、専制国家の侵略を防止する専守防衛ラインを構築するのが目的です。

     

    専守防衛では、軍事論的に先制攻撃の可能な態勢を整えて、初めて専守防衛が可能になります。それには、「軽空母」が必要であり、これが防衛論の基本です。普通の専守防衛態勢だけでは、本来の機能すら発揮できないと聞きます。現実の国際情勢の変化に即応する。これが、安全保障論の要諦のようです。いかがでしょうか。

     

     


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    韓国は、文在寅大統領の原理主義によって対日外交が麻痺状態に陥っている。先に韓国国会の有力議員5氏が訪日したが、何らの成果も得られず帰国した。韓国議員団5氏の選挙当選回数の合計は「20期」。日本で対応した議員は、参院議員1期でしかも比例当選である。格式を重んじる韓国では、この日本の対応に、日本の怒りがいかに凄いかを実感したという。

     

    韓国は、もはや取り付く島もない日本側の態度に驚いている。徴用工賠償問題では、韓国流の屁理屈で、ここまでことを運んできた。「人権に時効はない」という韓国大法院の判決に酔っているのだ。この理屈を日本に向けても「シャットアウト」。すでに、日本が日韓基本条約で支払った無償5億ドルで、韓国政府が支払う案件である。これが日本の主張だ。

     

    韓国側が焦りの色を濃くしているのは、経済危機の接近である。3回目の通貨危機が迫る兆候を見せて来たもの。これまで、太平楽なことを言ってきた韓国が、途端に懐が寂しいことに気付き、「日本詣で」を始めた。それには先ず、日韓首脳会談を開催することである、と。

     

    日本は、日韓首脳会談の前提として、徴用工賠償問題の解決案を要求している。文大統領は、司法の決定に対して、韓国政府が介入する事態を回避するという「原理主義」に立っている。これが邪魔をしており、文氏は動くに動けないのだ。文氏個人のメンツか。国益重視か。その選択局面である。

     

    『中央日報』(5月31日付け)は、「政府、韓国外交に対する済州フォーラムでの多くの苦言に傾聴を」と題する社説を掲載した。

     

     今、北東アジアは5月31日にシンガポールで開かれるアジア外交安保会議に続き、6月28~29日に大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)を契機に列強の外交戦が激しく火花を散らしている。

    (1)「このような状況で韓国だけ「仲間はずれ」になる懸念が高まっていて心配だ。韓国政府はドナルド・トランプ米国大統領の6月末の日帰り訪韓の他には各主要国首脳との会談日程を確定できずにいる。政府がG20サミットを前後して推進してきた習近平中国国家主席の訪韓は事実上なくなったと伝えられた。文大統領がG20サミット出席を契機に開くことにしていた韓日首脳会談まで成功が不透明だ。このような間に、日本は米国との同盟を鉄桶水準に固め、中国とも長い間の葛藤から抜け出して日中首脳会談を開くなど日増しに位置づけを広めていっている」

     

    韓国は、確かに「仲間外れ」状況にある。日本とは喧嘩別れの状態だ。米国と中国との間には「隙間風」が吹いている。北朝鮮には裏切られた。この状態を見ると、韓国の「人付き合い」が良くないことは鮮明である。独りよがりで屁理屈を並べる。自己主張が強いから友人になろうと思っても離れてゆくのだ。それにも関わらず反省しない。文在寅外交とは、こういうものだろう。

     

    (2)「特に大阪G20サミットで韓日米首脳会談の代わりに日米印首脳会議を開催し、「自由で開かれたインド太平洋構想」を可視化させる方針だ。韓国が北東アジアで急速に「辺境化」している傍証だ。今からでも政府は現実を直視しなければならない。韓米同盟を外交の主軸とし、瀕死状態の韓日関係の回復に直ちに動かなければならない。韓国の外交力は米国が力を与え、日本とも友好関係を維持する時にその力を発揮することができる

     

    米韓同盟がありながら、同床異夢で北朝鮮と中国への思いを断ち切れない。中朝から見れば、米国は「敵」である。その米国と契りを交わしながら中朝へ「にじり寄る仕草」をする。結婚に喩えれば、米国から離婚されてもおかしくないのが韓国の立場だ。米国も中朝も、韓国を相手にするはずがない。自らの「素行不良」が招いた結果である。

     

    韓国は、米韓同盟の原点に立ち返ることだ。その原点を確認すれば、日本との関係がどうあるべきか、自ずと分るはずだ。屁理屈(原理主義)を捨てて、日米韓の一員になることを誓うべきなのだ。


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