勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年06月

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    日韓断交の演習が始まったような動きだ。日本は、今日から韓国からのヒラメなど5種類の輸入検査強化に着手する。韓国当局への事前予告は一切なし。日本が、5月30日に発表しただけだ。慌てたのは韓国である。改めて、日韓関係冷却化の現実を噛みしめている。

     

    『中央日報』(5月31日付)は、「日本、WTO敗北報復、韓国産ヒラメの検疫強化 奇襲発表」と題する記事を掲載した。

     

      日本政府がヒラメなど韓国産水産物に対する検疫強化措置を施行2日前に奇襲発表した。先月、世界貿易機関(WTO)水産物紛争の結果に対する日本の対抗措置と見られる。5月30日、日本厚生労働省は韓国から輸入されるヒラメなどに対する検疫検査を翌月1日から強化するという方針を明らかにした

     

    (1)「対象はヒラメの他に、も冷蔵貝類(アカガイ、タイラギ、トリガイ)と冷蔵ウニが該当する。ヒラメの場合、輸入量に対する検疫の割合を現在20%から40%に引き上げる。活魚状態のヒラメは韓国からしか輸入していない。嘔吐と下痢を誘発する別名「クドア」による集中調査が名目だ。生殖用冷蔵貝類とウニに対しては腹痛や発熱を誘発する病原性微生物および腸炎ビブリオ菌に対する検査量を10%から20%に引き上げる増やす予定だ」

    私は、回転寿司でよく注文するのが貝類である。産地はどこか聞いたこともなかったが、韓国産であったのかも知れない。韓国産の海産物といえば、「韓国海苔」が有名である。日本の訪韓観光客が、土産にする第1位は韓国海苔という記事を目にした。人気を集めている。

     

    海産物でも、「中国産」と聞くと自然に敬遠する。韓国産であれば、衛生管理が日本に近いだろうと安心する。その安心感が踏みにじられないように、韓国側の衛生管理をより厳しくして欲しいものだ。

     

    (2)「日本政府は今回の輸入規制強化措置を「安全性確保次元」と明らかにしている。菅義偉官房長官はこの日、記者会見で「最近、該当輸入物による食中毒被害が増加しているため、国民健康を守るためということから行われたもの」と明らかにした。厚生労働省によると、日本国内で韓国産ヒラメの寄生虫による食中毒発生件数は2015年8件(以下、患者数62人)、2016年10件(113人)、2017年5件(47人)、2018年7件(82人)だった

     

    韓国メディアでは、韓国産ヒラメに寄生虫が多いという日本の報道に怒っていた。こうしたデータを見ると、事実であることが分る。

     

    (3)「今回の検疫強化措置が施行をただ2日前にして奇襲発表したうえに、韓国産水産物を名指した「標的措置」ということから韓国に対する対抗措置に読まれる。しかも、韓国側には事前通知さえなかったという。 駐日韓国大使館のユン・サンフン水産官は「ヒラメによる食中毒問題は海洋水産部次元でも調査を行うなど努力をしてきた問題で、日本側と協議を進行中である事案だった」としながら、「検疫強化は予想できなかった措置」と話した。引き続き「メディアを通じて措置事項を先に知らせたことに対しては抗議措置が必要であれば取るだろう」と話した」

    今回の検疫強化措置について、日本政府は韓国に事前通告もせず、国内並みの扱いにした。駐日韓国大使館は、「メディアを通じて措置事項を先に知らせたことに対しては抗議措置が必要であれば取るだろう」としている。これが日韓断交に近い現象と知るべきだ。

     

    日本側の要求には一切応じない韓国政府が、自国に不利となりそうな件だけは事前に教えろ。日本外務省へこうねじ込んだら、どういう返事が来るだろうか。「それを仰る前に、日本政府が連絡した徴用工賠償問題のお返事を聞かせてください」。こう言われるに決まっている。


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    米国政府が、ファーウェイへのソフトや技術の輸出停止に踏み切って以来、その影響は学術団体にまで及んでいる。米国に本部のある学術団体が、ファーウェイの会員資格を停止しているからだ。学術研究と輸出禁止とは次元が異なる話として、中国は会員資格停止について意義を申し立てる者が出てきた。一方では、積極的に「縁を切る」という中国国内研究団体も現れている。

     

    米国の認識は、米中貿易戦争が「冷戦状態」に入ったことを示めしている。中国は、そういう認識がないだけに米国の「先制攻撃」と見るべきだろう。中国には、その準備がまったくないだけに衝撃は大きい。

     

    次期の産業高度化計画である「中国製造2025」は、従来通り米国企業からソフトや技術の支援を受ける前提で進めてきたはずだ。それが、習近平氏の不用意な一言である「2050年頃、米国覇権に挑戦する」で、事態は大きく暗転した。米国の力を借りながら挑戦とは何ごとか。米国の真の怒りはここにある。それだけに、中国を叩く。ファーウェイを排除する。こういう結論になったとしても不思議はない。習氏の勇み足である。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(5月30日付け)は、「米拠点の学術団体もファーウェイ排除の動き」と題する記事を掲載した。

     

    人工知能(AI)などの分野で国際的な共同研究や業界標準策定に重要な役割を果たしている専門家組織が、中国の通信機器大手華為技術(ファーウェイ)の社員を学術雑誌の査読(専門家による評価プロセス)から排除した。中国人研究者からは怒りの声が上がっている。

    ニュージャージー州に拠点を置く米電気電子技術者協会(IEEE)が出版する複数の学術雑誌の編集長に送った電子メールによれば、ファーウェイ社員は論文審査に関与できなくなったという。協会所属の中国人研究者もこの内容を認めた。

     


    (1)「IEEEによれば、この決定は米政府によるファーウェイへの事実上の輸出禁止措置を遵守するためであり、詳細は不明だが「深刻な法的影響」を避けるため「従わざるを得なかった」という。メールを読む限り、IEEEの査読に関わっているファーウェイ従業員がなぜ「米国から同社への輸出」とみなされたのか不明だ。同協会は米国に拠点を置いているものの、自らを中立でグローバルな組織と位置付けている。次期会長にはロボット工学が専門の福田敏男北京理工大学教授が内定している。中同社はすでに半導体技術協会(JEDEC)、SDアソシエーションやWi-Fiアライアンスなど米国に拠点を置く国際規格策定組織の会員資格も停止された」

     

    国際的学術団体が、なぜファーウェイ社員を査読から外したか。その原因は、すべてファーウェイのスパイ活動にある。昨日の「私のつれづれ日記㉕」で、ファーウェイがスパイ活動をしてきた実態を取り上げた。表向きは民営会社である。米国内の拠点では、それに似つかわしくない完全防諜施設をつくっていることが露見している。つまり、スパイ活動に使っている証拠なのだ。

     

    こういう実態が、すでに米国情報当局から米国の大企業や教育研究機関に説明されている。ファーウェイの詳細な手口が説明されており、「情報漏洩にならないか」という心配が出るほど、熱の入った説明がされたという。当然ファーウェイは、学術団体を舞台に動き回っているはずだ。ファーウェイ社員を論文査読担当から外した理由は、その論文筆者との「取引」である。論文掲載に協力するから、「その条件として中国スパイになれ」という交換条件であろう。私には、この記事を読んだ瞬間に、この情景が浮かぶ。

     

    (2)「世界最大の技術専門家組織であるIEEEにはナノテクノロジーからAIまで様々な分野の研究者が集まり、論文発表や会議への出席のほか業界標準の策定などに従事している。主要テクノロジー企業の大半は規格策定で同協会に協力しており、多くの著名中国人研究者が学術誌の査読委員会に名を連ねている。同協会からの除外によって、次世代通信規格「5G」などの有望分野で世界のリーダーになるというファーウェイの計画は大打撃を受けそうだ

     

    下線を付した部分が、まさにファーウェイの狙いどころである。ファーウェイの任CEOは、日本メディアとのインタビューで、「米国の知らない技術を盗んだ」と豪語していた。その中身はこれだった。「元手」も要らず学術誌の査読を通して、有望研究者を発掘してファーウェイに役立たせる。任氏は、この仕掛けに一人でほくそ笑み「トランプに恥をかかせてやる」。そういう敵愾心を見せていた。その怪気炎のネタが、査読排除で立ち消えだ。因果応報というべきだろう。


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