勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年06月

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    韓国の自動車業界といえば、代表的な労働貴族である。その中で、ルノーサムスン労組が初の温厚路線に戻る方針を決めて発表した。

     

    ルノーサムスンは、2000年に経営蹉跌した三星自動車が前身である。これまで、労組はストを控えてきたものの、現在の労組幹部が選ばれてから強硬姿勢を取るようになった。だが、組合員はかつての経営破綻の経験が身に沁みている。労組幹部のストライキ指示を拒否し、スト中に工場が稼働するチグハグな事態に陥っていた。こうした労組内部の足並みの乱れもあり、労使が協調するという韓国では珍しい事例が出てきた。

     

    『中央日報』(6月25日付)は、「ルノーサムスン労使、『ノーワークノーペイの原則』盛り込んだ宣言文発表」と題する記事を掲載した。

     

    ルノーサムスン労使は24日に釜山(プサン)工場で今年の賃金団体交渉調印式を開いた。この席で模範的労使関係構築を約束する労使共生宣言式もともに行われた。ルノーサムスンのドミニク・シニョラ社長とパク・ジョンギュ労働組合委員長をはじめとする労使関係者、呉巨敦(オ・ゴドン)釜山市長、崔基棟(チェ・ギドン)釜山雇用庁長など政府関係者が出席した。

    (1)「この日の行事ではルノーサムスン労使が今後協力するという確約が盛り込まれた「労使共生共同宣言文」が発表された。労使が法と原則を順守し、和合を通じて雇用安定を成し遂げるというのが主要内容だ。 宣言文には特に労使が「ノーワークノーペイの原則」を順守するという内容も盛り込まれ目を引いた。こうした原則を労使合意文に明示して守ると宣言したのは異例だ」

     

     ノーワークノーペイの原則は、スト期間に対し会社が労働者に賃金を支払わない原則を意味する。 自動車業界では、こうした原則が守られないケースもあった。スト終了後、会社側が「激励金」名目で賃金や手当ての一部を補填する慣行が存在したためだ。


    経営側の甘さも、労組を暴走させた背景でもある。労使が、ストの原則を守らない「馴れ合い」は、健全な労使関係を築く上でマイナスである。これが広く認識されれば、韓国の過激なストライキも姿を消すことになろう。



    (2)「ルノーサムスン労使宣言文が、ノーワークノーペイの原則を明示したのもこうした慣行をなくすという意志とみられる。これに先立ち今回の賃金交渉過程で交渉妥結激励金80万ウォンの支給決定に対する批判が提起されたりもした。 ルノーサムスン関係者は「労使がともにノーワークノーペイの原則を守って行くという意志を込めるため宣言文にこれを直接明示した。今回1人当たり最大80万ウォンの激励金を支給したのも、今後ノーワークノーペイの原則を明確に守るという条件があった」と説明した」

    労使が、ストライキの原則を確認し合ったことは、きわめて有意義なことである。労組は、ストをやれば賃金カットを受けるデメリットを考えなければならない。これで、むやみにストをする訳にはいかなくなり、ブレーキがかかるはずだ。韓国の労使正常化には、こういう原則の再確認から始める必要があろう。

     


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    無知ほど恐ろしいものはない。今回、中国の空母「遼寧」が、台湾を一周して米国をけん制したという。米海軍は世界一の質と規模を誇る。中国の「遼寧」がごとき旧式空母は、束になっても適わない相手である。そういう客観的な認識に欠ける点が、中国政治の最大の欠陥だ。

     

    米中貿易戦争もその類いである。中国メディアは、最後まで戦うと粋がっているが無意味である。紛争が長引けば長引くほど、中国に不利になることが理解できない頭脳構造だ。中国4000年の歴史が、米国を圧倒できると誤解させている要因である。歴史の長さは、国家の質と無縁である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月25日付)は、「中国空母が台湾一周、首脳会談前に米けん制か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国軍の空母「遼寧」が25日、中国大陸と台湾の間の台湾海峡を北に向かって航行した。遼寧は6月中旬から台湾東側の西太平洋を南下して南シナ海に入ったとみられており、台湾を一周したことになる。年明けから台湾海峡では米軍艦が頻繁に航行している。米中首脳会談を控え、米側をけん制した可能性がある」

     

    戦闘能力が低い「遼寧」は、艦上戦闘機の発着訓練に使われている。もう一つ、周辺国を威嚇する目的もあるが、米海軍にとってはただの空母にすぎない。この遼寧が出張ってくると、日米海軍が潜水艦で性能を調査していることも忘れて得意になっている。お笑いである。

     


    (2)「台湾の国防部(国防省)が25日に発表した。遼寧を核とする艦隊が南方の南シナ海から台湾海峡に入り、北上しているのを確認した。北上を続け、中国山東省・青島の基地に戻るとみられる。遼寧は11日に沖縄本島と宮古島の間を通過し、西太平洋に出た。台湾メディアでは米グアム島に近い海域を通過して南シナ海に入ったとの見方が出ていた。遼寧は2016年末に米大統領就任前のトランプ氏が台湾の蔡英文総統と電話会談した直後にも、遠洋演習で台湾を一周する航路をとっていた

     

    下線をつけた部分を読むと、中国の子どもじみた行為を哀れに感じるのだ。「遼寧」は、スクラップにするという名目で、ウクライナから買付けた空母である。前身を知っている者から言えば、あの「スクラップ空母か」という程度の認識である。「威嚇用の空母」であるが、台湾を脅すには力不足の空母である。


    (3)「今年に入り、米海軍の軍艦が5カ月連続で台湾海峡を通過し、中国側は神経をとがらせていた。2829日に開かれる20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に合わせて米中首脳が会談し貿易問題などを協議する見通しで、中国側は会談前に空母の運用能力を誇示し米側をけん制した可能性がある

     

    下線部分の記事は納得できない部分だ。米海軍が、「遼寧」にけん制されるほど弱体な海軍でないからだ。

     


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    韓国は、政治家子弟の就職問題が大きな関心を集める国です。李朝の科挙(かきょ:高級官僚試験)の厳しい歴史ゆえに、韓国政界では子弟の就職問題が公の議論になるほど過熱するのでしょう。

     

    日本でも、政治家の子弟が多く就職している先は、民放や広告会社が定番になっています。だからと言って、国会で「コネで就職したのだろう」という下種(げす)の勘繰(かんぐ)りはしません。別に、民放や広告会社のステータスが、他の業界よりも格段に高いという認識を持っていないからです。他の業種でも成長株はゴマンとあります。

     

    韓国では、文在寅大統領の息子が「コネで入社した」と噂が出ました。大統領選の時に、そういう噂をばらまく人物が現れたのです。最後は噂を蒔いた本人が、謝罪に追い込まれて落着しました。これほど、若者の就職が厳しいことを物語っています。

     

    文大統領関連では最近、娘婿が海外で「コネ就職」したという記事が報じられました。これについて大統領府が、個人の問題であるからコメントしないと発表したのです。この話では、大統領府が正しいと思います。

     

    就職問題は、採否の基準があるようでないようなものです。本人の「将来性」を判断する訳ですから、AI(人工知能)を使って判断できる問題と違います。人柄、協調性、統括力、指導力など、最大30分程度の面接で分るはずはありません。入社後の社内教育で育てて行くしかないのです。そうなると、どこの会社に入ったから「勝ち組」、落ちたから「負け組」と言えるはずがありません。

     


    サラリーマン人生は、マラソンに喩えられます。健康でゴール(定年退職)できればいいのでないか。A社が良くてB社が悪いことではありません。入社した会社の格によるのでなく、最後は個人の問題になると思います。

     

    こういう一般論を書いた後で、韓国の就職騒ぎを眺めると、あることに気付かされます。それは、韓国が「終身雇用制」であることです。就職が政治問題化する背景は、入社した会社の格が、人物評価まで変えてしまうという、「終身雇用制」が大きな影響を与えていると思います。

     

    労働市場が流動化され、転職が自由になっている日本では、新人で入社したときの会社と、定年退職時の会社が異なる例はザラ。こうなると韓国政界が、親のコネで入社したのでないかと騒ぐのは、労働市場の硬直性を深く関係があるように思います。いかがでしょうか。

     

     


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    韓国の労働組合員は、「貴族労組」と言われて優雅な生活を送っている。所得最上位20%に入っているからだ。その「貴族」が突然、文政権に縁切り状を渡して、政権打倒に邁進するというから、外部の者には事情が飲み込めない。文政権が、貴族労組の存在がお荷物になってきたのだ。政権が、労働運動で暴力沙汰を起こしている労組を、これ以上かばい立てできないという意味なのだろう。となれば、政権は労組と「喧嘩別れ」になる。

     

    『聯合ニュース』(6月25日付)は、「韓国有力労組、文政権との全面闘争宣言、労働弾圧粉砕掲げストへ」と題する記事を掲載した。

     

    韓国労働組合の全国組織、全国民主労働組合総連盟(民主労総)は24日、青瓦台(大統領府)前で記者会見を開き、金明煥(キム・ミョンファン)委員長の逮捕を批判した上で、全面的な闘争に入ると宣言した。来月18日に「文在寅(ムン・ジェイン)政権の労働弾圧粉砕」を掲げる全面ストライキを実施する。

    (1)「金氏は国会前での集会で警察を暴行するなどの違法行為を計画、主導した容疑で、21日に逮捕された。民主労総は記者会見で、金氏の逮捕を「文在寅政権の宣戦布告」と見なし、「文政権はスローガンでしか存在していなかった『労働尊重』を放棄し、『財閥尊重』と『労働弾圧』を宣言した」と批判。「全面的かつ大々的な闘争を並々ならぬ決意で組織する」と表明した。

     

    警察官に暴行を加えた以上、警察もメンツにかけて逮捕せざるを得まい。労組側は見逃してくれると高をくくっていたようだ。次の記事(『中央日報』6月24日付)が、この間の事情を説明してくれる。

     

     全国民主労働組合総連盟(民主労総)は現政権からパートナー待遇を受けた。政府は積弊清算という基準で前政権における「被害者」概念を民主労総に植えつけた。ほとんどの違法デモに目を閉じた。警察が暴行を受けても、器物が損壊しても、公共機関が占拠されても、ただ黙っていた。被害者が悔しさを噴出させていると見なすようだった。

      
    キム・ミョンファン民主労総委員長がソウル永登浦(ヨンドンポ)警察署に出頭した当時、「逮捕状を請求しないはず」という見方が多かった理由だ。警察は逮捕状を請求した。逮捕の必要性に対する証明資料は意外にも緻密だった。裁判所が認めた。  民主労総は激高した。まさかが現実となり、予想以上に衝撃が大きかったようだ。「もはやロウソク政府ではなく労働弾圧政府だ。全面的かつ大々的な闘争をする」と明らかにした。パートナーシップ破棄だ」といきり立っている



    (2)「ストに先立ち、今月26日に蔚山で全国労働者大会、27日に最低賃金1万ウォン(約927円)への引き上げと労働弾圧粉砕を訴える決起大会、28日に全国の単位事業場代表者による決起大会を開く計画だ。一方、民主労総は最低賃金委員会を含め、政府の53の委員会(2018年11月時点)に参加している。これらの委員会を欠席するかどうかは、今後議論して決める」

     

    民主労総は、決起大会を開くと意気盛んだが疑問視する見方が出ている。前記の『中央日報』から掲載する。

     

     民主労総が「総団結強力闘争」を宣言したが、効果は未知数だ。3月のゼネストでは全体組合員の1%にもならない3000人が参加にとどまった。動力をほとんど失った状況だ。ルノーサムスン車で見られたように産業現場の労働組合離脱現象も尋常でない。パク・ジスン高麗大法学専門大学院教授は「民主労総が社会的な対話など変化を図らない限り、労政の葛藤が今後、政府の民主労総離れにつながることもある」と述べた。

     

     

     

     

     

     


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    1950年6月25日、北朝鮮軍が38度線を突破して韓国へ侵略した日である。あの日の衝撃は世界を震撼とさせ、第3次世界大戦の始りかという恐怖感に襲われた。

     

    最大の被害国は韓国であるが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」面も濃厚だ。韓国の文政権は、侵略当事国の北朝鮮へ異常なまでの気配りをする、逆立ちした関係を演じている。北朝鮮の「主体(チュチェ)思想」に染まっている韓国大統領府による、いかんともし難い倒錯現象である。

     

    この韓国が、中国ファーウェイ問題で揺れている。米国政府が、安全保障リスクを理由にして、ファーウェイへのソフトと技術の輸出を禁じた問題が、韓国へ飛び火しているからだ。米国によれば、ファーウェイの「5G」にはバックドアを仕掛けており、中国が機密情報を抜き取り悪用する危険性が指摘されている。

     

    発端は、豪州政府のハッカーチームが検出したものだ。米豪が中心になって、世界の機密情報共有国「ファイブアイズ」(米・英・豪・カナダ・ニュージーランド)の情報当局が確認した。韓国情報では、この「ファイブアイズ」に日本も正式加盟したという。

     

    これだけ、ファーウェイの5Gの危険性が指摘されているにもかかわらず、韓国は「のらりくらり」している。中国が、輸出依存度1位であることを理由にしている。だが、豪州やニュージーランドも輸出での中国依存度は高い。それでも、安全保障リスクの回避に代えがたい措置として、ファーウェイの「5G」を阻止している。韓国の甘さは、「事大主義」に尽きる。

     

    韓国には、ファーウェイに代われるサムスンが存在している。米国では、ASEANの「5G」でサムスンを推奨しているほど。この重要なビジネスチャンスを忘れて、韓国大統領府は右往左往している。「親中朝・反日米」の歪んだ思想が生んだ「誤診」である。

     


    『中央日報』(6月25日付)は、「米中対立の中での韓国の生存法」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のナム・ジョンホ論説委員である。

     

    ファーウェイ(華為技術)紛争で米中双方から圧力を受けている韓国。まさにクジラの争いの中で打撃を受けるエビの姿だ。ファーウェイの製品を絶対に使用するなという米国と、使用禁止にすればただでは置かないという中国の間に挟まれ、どうすることもできない。

     

    (1)「韓国にとって米国は同盟国であり、中国は最大の市場だ。どちらも簡単にあきらめることはできない。ではどうすればよいのか。短期的にはこれという解決策はない。ただ、状況を眺めながら対応するのが答えだ。ファーウェイの場合、米国が全世界に圧力を加えているが、参加国は4、5カ国にすぎない。日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダほどだ。アフリカや東南アジアはもちろん、ドイツやイタリアなど欧州の国も「確実な証拠がない」としてファーウェイ禁止を拒否した。米国の伝統的友邦の英国さえも論争中だ。したがって韓国も他国の事例を挙げながら「ファーウェイが機密を盗んだという証拠が出てくれば使用を禁止する」と約束するレベルで済ませるのはどうだろうか」

     

    米国のファーウェイ禁止の呼びかけに、同盟国でも即答しない 理由は、コストの問題である。「4G」までファーウェイ機器に委ねているので、それをすべて他社品に置換えるとコストが6割高程度になるという。また、「ファーウェイが機密を盗んだという証拠が出てくれば使用を禁止する」という提案も欧州で出ている。米国は、これに対して「証拠が出たときは遅い」と反論している。

     

    ファーウェイの「5G」ソフトは、すべてファーウェイが変更する権利を持っている。導入時と違った「情報抜き取りソフト」に変えられれば、導入国は対応不可能である。強盗に玄関のカギを預けておくようなものなのだ。米国は、同盟国でファーウェイ「5G」導入を主張しているドイツに対し、「最高機密情報」を教えないと通告した。ドイツは過去、米国からテロ活動に関する重要情報を得て、未然に防いだケースがある。加盟国は、導入コストばかり主張しないで、トータルの安全コストに目を向けるべきであろう。

    (2)「韓米同盟も立て直す必要があるのは同じだ。ファーウェイを使用すれば軍事情報を共有しないと米国が脅迫するのは決して健全な同盟関係ではない。国力の差が大きい非対称的な関係では力が強い国が弱い同盟国に無理な要求をしたりする。弱い国は同盟から捨てられるのを恐れて無理な要求も聞き入れるしかない」

     

    同盟は、対等の条件であるべきだ。相手国の庇護に預かってはならない。韓国はなぜ、ファーウェイにこだわるのか。自国には、サムスンが代替企業として存在している。サムスンよりもファーウェイを大切にしたい信条は、経済面での影響を懸念しているに違いない。

     

    だが、ここで米国の意向をくみ入れれば、名実ともに米韓同盟強化を実現できるのだ。中国経済は、もはや昔日の力はなくなっている。これは、私の長年の分析結果によるものだ。不動産バブルが崩壊した中国の辿る道は、「第二の日本」である。さらに中国は、米中貿易戦争で米国のサプライチェーンから切り離されようとしている。この危機的な現実を見つめるべきだろう。中央日報論説委員として、迫り来る世界情勢の激変を把握することだ。


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