勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年06月

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    文政権は、これまで「相思相愛」にあった労組(全国民主労働組合総連盟:民主労総)と関係が悪化していると言われ始めました。文政権不人気の理由が、民主労総の我が儘を認めすぎたことにある。そういう認識が出てきた結果と言われています。

     

    このままでは、来年4月の総選挙で与党「共に民主党」が逆風で墜落する懸念が強まっています。もともと労組は、「労働貴族」とも揶揄されています。組織率は約10%です。残り90%の労働者は未組織労働者で、組合に入っていません。そういう特権階級の労組が、横暴をきわめているのでは、文政権でも付き合い切れなくなってきたのでしょう。最後は、我が身が可愛くなるものです。

     

    来年の総選挙で与党が敗北すれば、次期大統領選でも与党の敗北が決定的になります。次の政権では、これまでいじめ抜いてきた保守党が大統領府へ帰り咲きます。現政権が「積弊」対象となって入れ替わります。ついこの間、文政権が朴政権にやった、あの凄惨な場面の再現です。大統領府で実権を握ってきた「86世代」は、お縄となります。容疑は、極端な北朝鮮接近がもたらした国家の安全保障への裏切り行為でしょう。「現高官」が刑務所へ送られます。

     

    朝鮮ドラマの宮廷騒動では、王様を裏切った「一味」にお縄が掛けられる場面です。それが、3年後に現実のものとなるかも知れない。こうなったら、これまでパートナーとして大事にしてきた労組と手を切るほかない。これが現在、政府与党が描いている構図だそうです。

     

      盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は、労働界代表者らと昼食会で「私が変わったと? 断言するが、私は変わりました。国政をしてみると変わるしかなかった」と述べたそうです。これは、大統領としての見識を述べたものでしょう。この発言で、 盧政権は左派から大変な批判を浴びました。これを見ている文在寅氏は、自身が「右旋回」することに躊躇しているそうです。あくまでも左派政権として歴史に名を残す、という未練もあるようです。

     

    そうなれば、韓国経済は確実に沈没です。次期政権から告発されるでしょう。朴槿恵氏と同じ刑務所に収容される運命が待っているかも知れません。どのみち、ここまで経済も外交も混乱させたのですから、妙な意地を張らずに「原状回復」の努力をして、国民への誠意を見せるべきでしょう。

     

    文さん。あなたは大統領の器でなかったのです。ただ、韓国を混乱させただけの大統領に終わるでしょう。

     


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    シンガポール首相が、TPP(環太平洋経済連携協定)加盟国拡大策として、将来は中国を加盟させるべきだと語った。

     

    TPPは、もともと中国が加盟できないように、米国が加盟条件を厳しくした。経済の自由化を極限まで求め、国有企業の比重をギリギリまで下げるなど、「米国型経済システム化」されている。ここへ、現在の国有企業の比重が高い中国が加盟することは不可能である。中国に異変でも起こって、市場経済化=民主化という政治と経済の革命が起こらなければ無理なことだ。シンガポール首相は、中国でそれが起こるとでも見ているのか。興味は、先ずそちらへ向くのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月24日付)は、「シンガポール首相、TPP拡大に期待、『中国も歓迎』」と題する記事を掲載した。

     

    シンガポールのリー・シェンロン首相は24日、米国を除く11カ国の環太平洋経済連携協定(TPP)について「韓国やタイ、英国が参加への関心を表明していることは喜ばしい」と参加国の早期拡大に期待を示した。中国の将来的な参加も「歓迎する」と明言した。米中の貿易摩擦の長期化は「供給網の分断など数十年間続く世界経済の構造問題になり、金融危機以上の深刻な問題になりうる」と両国に早期の歩み寄りを促した。

     

    (1)「首相官邸で24日、日本経済新聞の単独会見に応じた。リー氏はTPPへの参加を検討する韓国、タイ、英国に関して「英国の欧州連合(EU)からの離脱問題など今は3カ国それぞれ優先課題を抱えているが、3カ国の準備が整い次第、11カ国は参加の是非を判断する必要がある」との認識を示した。参加国の拡大の判断には「申請国が世界のどの地域を代表しているかが重要だ」と述べるとともに「韓国はアジア経済で重要な位置を占め、タイも経済小国ではない」と指摘した。これは両国の参加に賛同する意向をにじませたものだ。中国の参加についてもTPPの水準を満たすのに時間はかかるだろうが、シンガポールは中国の参加を歓迎する立場だ」と話した」

     

    下線をつけたように、リー首相は中国がTPPへ加盟できる政治状況になるには相当な時間がかかると見ている。となれば、中国への「リップサービス」とも言える。現在の統制経済が破綻して、見る影もない状態まで落込み、共産党独裁が崩れるという前提が実現する。そういうことなしに、TPP加盟問題は出てこないはずだ。

     

    現状は、中国が世界覇権を握ると息巻くほど、現実感覚において狂った状況にある。これが、正常化して、「悪い夢にうなされていた」との自覚が出てからの話だろう。

     

     

    (2)「米中の貿易摩擦の現状については、「電気や精密機械など輸出産業を中心にシンガポール経済に既に影響を与え、心配している」と述べた。2829日に大阪で開く20カ国・地域首脳会議(G20サミット)にあわせて開催予定のトランプ米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の会談にも触れ「解決の出発点になることを望むが、大阪で問題が解決するとは思っていない」と指摘した。

     

    米中貿易協定が結ばれても、それで一件落着ではない。中国は協定違反をやって、米国が制裁する。それに中国が反発して、「協定離脱だ」などという騒ぎは、中国経済の「落命」まで続くだろう。その過程で、共産党支配が揺れて、ベトナム型の共産党支配まで後退するのかだ。中国のTPP加盟が実現するときは、中国の政治と経済が末期的状態まで行き着かねば、実現するはずがない。

     


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    「象牙の塔」である韓国経済学会の3長老が、ついに文政権へ経済政策変更を迫る異例の事態を迎えた。チョ・チャンウク西江大名誉教授、キム・ギョンス成均館大名誉教授、ク・ジョンモ台湾CTBCビジネススクール碩座(せきざ)教授の3氏である。

     

    韓国経済学会は、経済学会全体を統括する「韓国連合経済学会」という色彩が濃い。2016年から昨年まで韓国経済学会を率いてきた3人の会長経験者が24日、ソウル市内で行われた特別座談会で、現政権の経済政策について「全般的な軌道修正が必要だ」と厳しい評価を下した。

     

    経済学会3長老が、特別座談会で経済危機を訴えたのは、現状が余りにも悪化していることにある。文政権は、依然として「所得主導成長論」を守っており、大幅最低賃金引上げの正統性を主張している。この説の誤りは、生産性を無視してでも最低賃金の大幅引上げを行えば、個人消費が増えて経済全体を引き上げるというもの。

     

    現実は、失業者の増加という事態に直面している。昨年の個人事業主は、100万件以上が廃業を迫られた。最賃大幅引上げが、経済成長に負の結果をもたらした証明である。

     


    『朝鮮日報』(6月24日付)は、「韓国経済の最大のリスクは文在寅政権の政策」と題する記事を掲載した。

     

    読者が理解しやすいように、私が発言要旨を箇条書に整理した。

     

    チョ・チャンウク西江大名誉教授

    .経済の失速傾向は当面止めることはできない。

    .現政権に入って成功した経済政策は一つもなかった。法人税の引き上げ、最低賃金引き上げ、労働時間短縮など、経済にしわ寄せがいくような政策ばかり打ち出した。

    .来年は間違いなく今以上に悪化するだろう。これらの政策リスクが、韓国経済最大のリスクである。

    .国内向け政策の不確実性が、韓国大企業による製造業エクソダス(国外脱出)招いた。5.分配政策を推進するために、経済がうまく回っていなければならず、経済を崩壊させるようでは分配政策を推進することができない

    .韓国政府の政策は、雇用と成長、さらに分配までも悪化させている。

    キム・ギョンス成均館大名誉教授

    .グローバル経済が大失速した2011年から韓国経済は成長率が23%と鈍化し、全要素生産性の増加率が急激に落ち込んだ。

    .その傾向が最近さらに強まっていると指摘した。

    .生産性を高めなければ、低成長から抜け出すのは困難だろう。

     

    ク・ジョンモ台湾CTBCビジネススクール碩座(せきざ)教授

    .2013年から始まった慢性的な長期低迷が今まで続いている。

    .韓国は半導体好況のせいで景気の状況を錯視し、問題点を忘れて政策実験ばかりに熱を上げている。

    3,状況がさらに悪化する恐れがあると懸念を示した。

     

    3教授の指摘は、その通りである。私がこれまでのブログで指摘してきた点と同一である。その中で注目すべき点は、キム・ギョンス成均館大名誉教授の指摘する点だ。

     

    「2011年から韓国経済は成長率が2~3%と鈍化し、全要素生産性の増加率が急激に落ち込んだ。その傾向が最近さらに強まっている」

     

    全要素生産性とは、技術の進歩や生産の効率化など、資本や労働の量的変化では説明できない部分が、GDP成長に寄与する度合を示すもの。その全要素生産性の増加率が急激に落ち込んだのは、韓国社会が労組を含めて制度全体が硬直化していることだ。社会が弾力性を失い改革を阻止する勢力が台頭していることを示す。文政権の登場は、さらに全要素生産性を低下させる要因になっている。いわゆる「疫病神」となった。この事実は重大である。


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    この記事を読まれると、日本に生まれた幸せを実感するであろう。中国の「社会信用システム」は、当人が知らぬ間に行政が決めた基準によって採点されている。悪い点をつけられると不利益を被るという。福沢諭吉の「天は人の上に人をつくらず」とは、全く違う世界が中国である。

     

    『ブルームバーグ』(6月20日付)は、「社会信用システムで壮大な実験進める中国、暗黒社会到来の前触れか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国江蘇省の蘇州市は、市民の振る舞いに対して賞罰を与える社会信用システムの実験で、習近平政権が2018年に選んだ12カ所の1つである。市の花「桂花」がこのシステムの名称だ。配偶者の有無や学歴、社会保障給付などの約20の指標に関するデータが収集される仕組みだが、ペンス米副大統領ら欧米の政治家は英国の作家ジョージ・オーウェルが描いた暗黒社会につながる制度だとこのシステムを激しく批判している。世界中の独裁国家のモデルとなり得るかもしれないからだ」

     

    約20の項目についてのデータが収集されている。配偶者の有無や学歴、社会保障給付などだ。結婚は、個人の自由だが、未婚はマイナス点がつけられているのだろう。税金の未納もチェックされている。滞納を防ごうというねらいだ。

     

    (2)「社会信用システムの支持者は、米国で多くの個人向け融資の審査に使われる信用スコア「FICO」に近いものだと主張するが、中国の制度は国民を監視するため公共の場所での監視カメラや決済システムなど広範な監視ネットワークを用いており、はるかに厳しいものであることは間違いない。ボランティア活動や期限通りの支払い、ごみの投げ捨てがないなどの良い行いに対しては特典が付与される一方、悪い行いをすれば金融・公共サービスが突然受けられなくなることもあり得る」

    ボランティア活動・期限通りの納税・ゴミを投げ捨てない「善良」な行為は加点される。悪い行為をすれば、金融や公共サービスを受けられなくなるという不利益を受ける。幼稚園か小学生並みの扱いだ。中国のモラルの低さを反映した評価システムであることは間違いない。ここまでやらなければ、「ゴミの投げ捨て」を防げないとは情けない社会だ。

     

    (3)「蘇州市によれば、桂花は社会保障や民事など20程度の公的部門から個人情報を収集している。スコアは基準の100点から始まり、良い行いをすれば最高200点までポイントが増える。ただ社会信用システムを利用する他の地方当局同様、蘇州市は悪い行いを定義付けてどれだけポイントが減らされるかについてのルールをまだ導入していない」

     

    スコアの基準は100点。善行には200点までの加点がつく。

     

    (4)「地元メディアの報道によると、蘇州で監視対象となっている1300万人のうち約8人に1人が昨年8月時点で100点を超えるスコアだった。100点に満たなかったのは4731人だけで、その全員が融資返済を怠ったか、裁判所の判決に従わなかった「不履行者」だった。残る1100万人余りは基準の100点だ。それでも罰則という考えは、すでに懸念を広げつつある。隣接する浙江省の義烏市では、歩行者に道を譲らなかったとして交通警官から3点を差し引かれた市民が銀行融資を断られたと語った。システムの乱用・悪用を防ぐチェック・アンド・バランスの機能を確保しながら、どう現行の法制度に組み入れていくかが問題だ」

     

    基準点100に、減点と加点されて合計点が算出されるシステムである。蘇州で監視対象となっている1300万人のうち約8人に1人が、昨年8月時点で100点を超えるスコアだった。100点に満たなかった「落第組」は4731人。この比率は、0.036%にあたる。比率で見れば「微少」だが、1300万都市で4731人に不利益が及ぶとはショックである。

     


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    米国政府による中国スパイ網への警戒は一段と厳しくなる。次世代通信網「5G」では、機器の製造・設計まで中国外を義務づける検討が進んでいる。ファーウェイ製品の購入禁止だけでなく、「5G」の機器・部品も中国外での製造を条件にするもの。中国が部品や機器に「バックドア」を忍ばせれば、まんまと米国でスパイ活動が可能になるからだ。

     

    「米国の中国への信頼関係は、完全にゼロとなっている。中国が、監視・分析ツールをひそかに米国に配置しようとしている証拠がある。中国政府の後ろ盾を受けた杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)などの中国メーカーが生産する監視カメラ数万台の存在を考えるといい。それらはセキュリティー上のリスクになり得ると米中経済安全保障調査委員会(USCC)のキャロライン・バーソロミュー委員長は指摘している。懸念されているのは、そうしたカメラを中国政府が遠隔で監視している可能性があることだ」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』6月21日付寄稿「中国の監視網、米国への拡大許すな」)

     

    中国の諜報網は、監視カメラの輸出に際してバックドアを忍ばせている懸念が強まっている。こういう切迫した事情を背景に、米国は「5G」で厳しい制約を課す案を検討中である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月24日付)は、「米国向け5G機器、中国製以外の使用義務づけを検討ー関係筋」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米政権は、米国内で使用する第5世代(5G)移動通信システムの機器について、中国以外での設計・製造を義務づけることを検討している。関係筋が明らかにした。実現すれば世界の製造業の構造を変化させ、米中の緊張がさらに高まる恐れがある

     


    (1)「5月の大統領令は、サイバーセキュリティー面の懸念から一部の外国製の通信機器・サービスを禁じるというもので、150日間にわたる米通信業界サプライチェーンの見直しが始まっている。関係筋によると、この一環として米当局者は通信機器メーカーに、基地局向け電子機器、ルーター、スイッチ(経路制御装置)などの米国向けハードウエアやソフトウエアを中国以外で製造・開発できるか尋ねている。この聞き取りは初期段階で非公式なものだという。大統領令は、150日以内に具体的な規則案のリストを作成するよう求めているだけで、期限は10月。このため、規則案が実際に導入されるまでは数カ月あるいは数年かかる可能性がある」

     

    米国は、中国企業の通信機器製品の輸入を規制する以外、中国国内で生産された製品・部品を組み込んだ中国以外の企業製品にまで規制の網を張る検討を行っている。

     

    (2)「米国のワイヤレス通信サービス会社向けに通信機器を販売している大手企業には、フィンランドの ノキア 、スウェーデンのエリクソンなどがある。新たな規則案はこうした企業に、主要事業の中国以外への移管を強いることになる可能性がある。世界の通信機器および関連サービス・インフラ業界の年間売上高は2500億ドル(約268000億円)で、米国は最大の市場。米国にはワイヤレス通信機器の主要メーカーがない」

     

    米国が、世界の通信機器や関連サービスの最大市場であるゆえ、米国政府が独自の規制を実現可能という背景がある。中国が、こういう形で米国市場から完全に閉出されることは、大きな痛手だ。習近平氏が、「世界覇権を握る」と野望を剥き出しにした報いである。

     


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