けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。
半数以上が無年金者
無策が招く財政負担
最賃大幅引上の帰結
日韓経済紛争の重圧
韓国の4~6月期GDPが発表されました。1~3月期が前期比マイナス0.4%成長であったことの反動と、政府による集中的な支出増によって前期比1.1%増に跳ね上がりました。内容を子細に見ると、決して褒められる内容でなく、先行きの不安を増幅するものでした。JPモルガンは、4~6月期の経済成長率が期待に及ばなかったとし、年間経済成長率予測値を従来の2.2%から2.0%に下方修正したほどです。
半数以上が無年金者
韓国は、「病人経済」に成り下がっています。文在寅(ムン・ジェイン)政権になって以来、国民生活は激変しています。
もともと韓国では企業などを退職した人たちが、退職金を元手にして自営業を始めるケースが多いのです。この零細な自営業を襲ったのは、文政権による大幅な最低賃金引き上げでした。2018~19年の2年間で、最低賃金を約30%も引き上げた結果、多くの零細自営業はそれに耐えられず、従業員を解雇せざるを得ませんでした。これが、過去にない失業者を増やすことになった理由です。
失業者の増加は、個人消費を減らします。こうして、自営業者が廃業・倒産するという悪循環に陥っています。これでは、病人が増えて当然です。実はこの病人増加が、皮肉にも韓国のGDPを支える要因だったのです。病人の増加が、個人の医療費増加を招いています。これによって、政府の健康保険医療費支出も自動的に増えます。この病人増加が、4~6月期のGDPに「寄与」したとは、哀しい話です。詳細は、後で取り上げます。
韓国は、合計特殊出生率の急減によって高齢化が急ピッチで進みます。昨年の合計特殊出生率は、0.98と世界で初めて1を割り込みました。この落込みは、今年に入っても止らず、さらに悪化が予想されます。こうして、韓国の高齢化は、日本を上回るスピードで進行する情勢となっています。
人口高齢化は、年金問題と結びつきます。最近の調査では、高齢者で年金を受給していない「無年金者」が、なんと54.1%もいたのです。統計庁の最新調査で判明しました。その調査内容を見ておきます。
韓国の高齢層(55~79歳)の半数以上が、年金を一銭も受け取っていません。年金受給者でも、およそ3人に2人は月平均受領額が50万ウォン(約4万5800円)未満で、基礎生活(生活保護)の受給費にも満たない金額です。以上は、統計庁が23日に発表した「2019年5月経済活動人口調査 高齢層付加調査」によります。『中央日報』(7月23日付)から引用しました。
こういう、厳しい老後生活を強いられる韓国の高齢者が、健康な生活を送れるはずがありません。栄養価的に満足な食生活を送れなければ、病に冒されるのは避けられません。ここで、日本人の高齢者が年金面でどのような生活を送っているかを見ておきます。
日本では現在、サラリーマン退職者は国民年金と厚生年金を受給し、平均で男性は18~19万円、女性は9~10万円ほどの受給額とされています。これに比べて、韓国は年金受給者が全体の45.9%に過ぎないこと。その受給者の月平均年金額が、3人に2人は約4万5800円未満に過ぎません。1人当りの名目GDPは、韓国が日本の約8割(2018年)水準であることを勘案しますと、韓国の高齢者は絶望的状況に置かれていることが分ります。
日韓における、高齢者の経済的な環境格差は年金だけでありません。日本の高齢者は、ほとんど債務がありません。韓国の高齢者は債務が多いのです。
韓国の引退年齢は満60歳ですが、実際の引退時期はこれよりも早くなっています。会社での出世に見切りをつけ、50代半ばを超えるとすでに退職、または退職モードに入ります。この人たちが自営業の核になっています。最近では、中途退社せずに定年まで勤めろ。そういうアドバイスが増えています。老後の経済生活が難しいのが理由です。
2017年の韓国「家計金融福祉調査」では、家計の貯蓄額が最も高い時期が50代です。ただ、家計負債も多く貯蓄と負債の差がほとんどないのです。60代も、貯蓄と負債の差はほとんどありません。ただ、金額は50代に比べてかなり少なくなっています。こうして、日本とは異なって50~60代でも純貯蓄(貯蓄-負債)はゼロ状態です。(つづく)