米中貿易戦争の真っ只中で、中国製造業は確実に衰退している。8月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は、4ヶ月連続で好不況の分岐点の50割れとなった。9月1日から、「第4弾」関税引き上げで、家電や衣料品など約1100億ドル(約12兆円)分に15%の関税が上乗せになる。中国景気は、さらなら負荷をかけられる。
『日本経済新聞 電子版』(8月31日付)は、「8月の中国景況感、4カ月連続で節目下回る」と題する記事を掲載した。
中国国家統計局が31日発表した2019年8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月より0.2ポイント低い49.5だった。拡大・縮小の節目となる50を5月から4カ月連続で下回った。米国による追加関税の打撃が重荷になっている。
(1)「製造業PMIが悪化するのは5月以来、3カ月ぶり。個別の項目をみると、
① 生産は前月より0.2ポイント低い51.9となり、2カ月ぶりに悪化した。
② 新規受注は同0.1ポイント低い49.7となり、4カ月連続で節目の50を割った。
③ 雇用も同0.2ポイント低い46.9に悪化した。
国務院発展研究センターの張立群研究員は「需要不足が経済を下押ししている。内需を拡大し、できるだけ早く下押し圧力を和らげるべきだ」と語った」
製造業PMIが、50割れに陥っている背景は、受注不振に大きな理由がある。内外需が停滞している結果だ。輸出向け新規受注の指数はやや改善したが47.2と50を下回ったまま。昨年6月から15カ月連続で節目の50を下回っている。
物流購買連合会は「米国によるさらなる圧迫で、外需の押し下げ圧力は鮮明だ」と危機感を示している。9月からの第4弾関税引上が、重荷になっている。このことから、製造業PMIが50を上回って回復する状況は当面、期待薄となっている。
トランプ米政権は8月30日、中国製品への制裁関税「第4弾」を9月1日に発動すると正式に通知した。家電や衣料品など約1100億ドル(約12兆円)分に15%の関税を上乗せする。中国も即座に米国の農産品や大豆などに報復措置を打つ構えだ。二大経済大国による関税合戦は一段と激しくなり、世界経済の大きな重荷となる。
家電や衣料品など約1100億ドルの関税引上は、米国内の消費者物価引上げをもたらす。これが、米国景気に影響を与えよう。米中貿易戦争は、米中ともに負担が大きくなってきた。それだけ、強制的に合意条件が醸成されつつあるわけだ。