米中貿易戦争で、米国が最も警戒した産業高度化プロジェクト「中国製造2025」は、米国とサムスンの技術支援拒否により、実現は大幅に遅れる見通しとなった。中国は、「中国製造2025」に多額の研究補助金を与え、半導体などの先端部門の強化を図る目的であった。だが、米国企業が支援を断ったのに続き、サムスンも技術提携申入れを拒否した結果、独力での開発のやむなきに至った。
「中国製造2025」が米国を刺激した結果、中国政府はできるだけ目立たないようにしている。技術開発で提携相手を探す上で、米国の横槍を警戒したものであろう。最後に白羽の矢を立てたサムスンからも断られ、独自路線を決断せざるを得なかった。
『中央日報』(9月30日付)は、「サムスン、中国の半導体素材・装備同盟拒否」と題する記事を掲載した。
中国政府がサムスン電子に半導体素材・装備の共同開発を提案していたことが分かった。サムスン電子はいくつかの理由を挙げて中国政府の要求を断ったという。中国は、韓国および米国企業との協業計画を変更し、独自で半導体素材を開発してメモリー半導体を生産する方向に転換した。
半導体業界によると、中国政府は7月中旬、サムスン電子に半導体素材・装備を共同開発し、関連産業を共に育成しようと提案した。日本政府が半導体生産に必須の3大核心素材(高純度フッ化水素、フォトレジスト、フッ化ポリイミド)に対する輸出規制措置を発表した直後だ。
(1)「中国政府が世界半導体市場を掌握する、いわゆる「半導体崛起」を実現させるためには、世界1位メモリー半導体企業のサムスン電子の支援が必要だと判断したというのが業界の見方だ。日本の半導体輸出規制で韓国も中国と協業する必要性が高まったというもサムスン電子にラブコールを送った要因の一つに挙げられる。韓国の半導体素材および装備の国産化に中国が少なくない役割をするという意図だ」
サムスン李副会長は、頻繁に日本を訪問している。先のラグビー・ワールド・カップ初戦での日本・ロシア戦にも顔を出すほど、日本に神経を使っている。あくまでも日本との関係強化の姿勢を示すためだ。今回、中国の提携申し入れが、いかなる国際的な波紋をもたらすかを計算した上で、断ったと見られる。日本側の意向も反映しているのであろう。
(2)「サムスン電子が中国政府の提案を受け入れなかったのは、短期的には半導体素材・装備国産化にプラスになっても中長期的に韓国半導体産業を脅かすと判断したからだ。中国国有半導体会社はサムスン電子とSKハイニックスが二分しているDRAM、NAND型フラッシュメモリーなどメモリー半導体生産を推進中だ」
「中国製造2025」における目玉は、半導体の自給率を上げることだ。現時点の自給率目標は20%だが、実際はこの半分にも達していないという。それだけに、サムスンとの提携は喉から手が出るほど必要なものであったはずだ。
(3) 「サムスン電子が拒否の意を伝えると、中国は独自開発に方向を定めた。中国国有半導体企業の紫光集団は16日、韓国や米国との協力を通じて半導体競争力を強化するという従来の計画をあきらめると宣言した。その代わり独自の研究開発(R&D)でメモリー半導体を生産すると発表した。中国重慶産業基金の支援を受けて今後10年間に8000億元(約15兆円)をDRAM量産に投資する計画という。紫光集団は2015年、DRAM市場3位の米マイクロン買収を進めたが、米国政府が承認しなかった。今年2月には米中貿易紛争の影響でインテルとの第5世代(5G)移動通信モデムチップ協力を中断することにした」
下線の部分は、きわめて重要だ。米国の強い圧力の下で、独自開発を余儀なくされた訳で、「中国製造2025」の遅延は必至である。これが、米中貿易戦争の集結を早めるのかどうか微妙である。