勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年09月

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    中国の習近平国家主席の訪日スケジュールが固まってきたようだ。中国は、「桜の咲く頃」を希望している。実現すれば、中国国家主席として12年振りの訪日になる。習氏の訪日に当り、中国駐日本大使・孔鉉佑(コン・シュエンヨウ)氏が、日本経済新聞とのインタビューに応じた。

     

    『日本経済新聞』(9月28日付)は、「日中 第5の文書検討」と題する記事を掲載した。

     

    中国の孔鉉佑駐日大使は都内で日本経済新聞のインタビューに応じた。2020年春に予定される習近平(シー・ジンピン)国家主席の国賓としての訪日の際に発表が見込まれる、日中共同声明などに続く「第5の政治文書」について「条件が熟せば共通認識を示すことも考えられる」と明言。検討していることを明らかにした。同文書を巡る日本側との協議については「中国はオープンな姿勢を取っている」と前向きな姿勢を見せた。

     

    (1)「中国は1972年の日中共同声明や78年の平和友好条約などこれまで日中間で交わした4つの政治文書を両国関係の基礎として重視している。孔氏は第5の文書により両国関係の「将来の発展の原則が確立される」との考えを示した。日中関係については、協調・協力を強化していく新しい時代の関係構築を目指し、日中はライバル意識を持たず「パートナー意識を育て上げる必要がある」と強調した」

     

    これまでの日中共同文書には、次の4つがある。

    1972年 日中国交正常化を宣言した日中共同声明

    1978年 平和的手段での紛争解決を明記した日中平和友好条約

    1998年 両国関係を最も重要な関係の一つと規定した日中共同宣言

    2008年 戦略的互恵関係の推進を明記した共同声明

     

    中国は、すぐに文書を取り交わして後々、日中間で問題が起こると必ずそれを持出して、日本を攻め立ててきた。そういう意味では、軽々に文書を交わすと中国に悪用される危険性が高い。過去の共同文書の精神が生きていれば、尖閣諸島の領海侵犯を繰り返すようなことをするはずがない。中国には、共同文書を守る意識が浅薄であり、文書を出しても実質な意味はない。止めるべきだ。利用されるだけである。

     

    (2)「孔氏は、習氏の訪日で日本側との交渉役を担う。実現すれば、12年ぶりの中国国家主席の国賓来日となり「関係発展に深い影響を及ぼす」と話した。訪日の時期については、天皇、皇后両陛下や安倍晋三首相の日程を総合的に判断して調整するとした上で「我々としては桜の満開の時期を希望したい」と語った」

     

    習氏の訪日時期は、来春の「桜が咲く頃」(3月末~4月初め)が想定される。

     

    (3)「激化する米中貿易戦争についても触れ「両国は協力すれば利益になり、戦えば互いに傷つく」と主張した。米国に対しては話し合いを通じた相互利益につながる合意を求めた。日中の経済・貿易関係が高度に融合しているため、貿易戦争が「日本の経済にも影響することは避けられない」とも述べた。米国が唱える次世代通信規格「5G」からの中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)排除を巡る問題については「差別的である」と非難した。米国は安全保障上の理由で同社製品を排除するよう同盟国に求めている。孔氏は「責任ある企業として日本社会に奉仕する。正常な経営活動が保証されるよう日本政府に願う」と訴えた」

     

    米中貿易戦争は、中国がWTO(世界貿易機関)のルールを100%受入れるかどうかという問題である。中国が、抵抗しているので貿易戦争という関税引上競争になっているだけだ。世界銀行と中国国務院発展研究センターの共同研究によれば、中国が何らの改革もしない場合、2031~40年の平均経済成長は1.7%に落込むと見ている。

     

    米中貿易戦争は、米国が中国に対して経済改革を求め、他国からの技術窃取を禁じることが主な内容である。それについて、中国は「主権の侵害」などと理屈をつけて実行しない理由付にしている。ただ、2030年代の成長率が1%台に落込めば、「中華の夢」どころの話ではない。超高齢社会に伴う社会保障費の重圧で財政破綻のリスクを背負う。これに、軍事費の膨張が加わる。楽観は禁物である。

     

    下線を引いたファーウェイは、中国技術スパイの最先端を担っている。これは、FBI(米連邦捜査局)から犯罪実態として発表されている。中国は、2049年をメドに世界覇権確立の野望を持っている。ファーウェイには、それを助ける任務が課されているのだ。民主主義国から敬遠されるのは当然。弁解は無用である。

     

    (4)「保護主義の動きが広がる中、日中韓自由貿易協定(FTA)協議の前進に意欲をみせた。「3カ国の経済関係を強化する極めて重要な枠組み。発展の未来を切り開くため、協議を加速させる」と強調した。一方、半導体材料を巡る日韓関係の悪化を懸念し、早期正常化へ向け中国も協力する姿勢を示した」

     

    日中韓自由貿易協定(FTA)は、構想としては面白いが、日中の産業レベル格差が大き過ぎて実現不可能である。先行している中韓自由貿易協定も自由化率が低く、韓国に何らのメリットにもならない代物である。ましてや、日本にとってメリットはゼロであろう。中国が、日中韓三カ国のFTAを言い出している背景は、米中対立の隠れ蓑に利用したいだけである。

     

    日米豪印が軸になって進める「インド太平洋戦略」は、中国の軍事拡大戦略への防衛である。この「仮想敵」である中国と日本が、協力できる範囲は自ずと限定される。中国は、日本を通して自国の軍事戦略がいかに「自滅リスク」を抱える危険なものであるか。それを自覚することだ。

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    韓国に、司法の中立性はあり得ないことが証明された。文大統領が、韓国検察によるチョ・グク法務部長官の疑惑捜査に対し苦言を呈する事態が起こったからだ。文大統領が、折りに触れて発言する「韓国は三権分立の国家」は疑わしいことを証明するもの。三権分立であるならば、行政のトップである大統領が、司法へ介入発言できるはずがない。

     

    『東亜日報』(9月28日付)は、「文大統領、『検察は省察』をと曺国氏捜査をけん制」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領が検察に対して、「検察改革を求める声が高まっている現実を検察は省察することを望む」と述べた。検察の曺国(チョ・グク)法務部長官に対する捜査で、被疑事実の公表など論議が起こっている状況で、文大統領は尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長が率いる検察に最後の警告を送った。

     

    文大統領は27日、高ミン廷(コ・ミンジョン)大統領府報道官が代読したメッセージで、「検察改革は高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の設置や捜査権の調整などの法・制度的改革だけでなく、検察権行使の方式や捜査慣行などの改革が共に行われなければならない」とし、このように話した。検察自ら問題点を正し、改善しろという意味だ。

     

    (1)「特に文大統領は、「検察は国民に対して公権力を直接的に行使する機関であるため、厳正だが人権を尊重する節制された検察権の行使が何よりも重要だ」とし、「今の検察は、国民の念願である捜査権の独立と検察改革という歴史的使命を持っており、その改革の主体であることを特に肝に銘じてもらいたい」と述べた。このような発言は、与党で提起している「ホコリはたき式捜査」「人権侵害捜査」という批判と同じ文脈であり、大統領府内外では尹氏の検察改革を見守った後、文大統領が検察人事権を行使する可能性があるという観測が流れている」

     

    法相自宅を11時間家宅捜査したことや、法相の二人の子どもの事情聴取が「人権侵害捜査」と言えるだろうか。文氏の発言は、余りにも法相擁護の姿勢が強すぎる発言である。もともと、文氏が強引に任命した人事である。任命前に、検察からチョ氏に疑惑が多過ぎという報告を受けていたという。それを無視したのは文大統領である。自らの任命責任を棚上げして、検察批判は的外れの発言である。

     

    (2)「それと共に、文大統領は曺氏関連疑惑については、「曺長官が責任を負わなければならないことがあるのかも、検察の捜査など司法手続きによって明らかになることだ」とし、「検察がすべきことは検察に任せ、国政は国政で正常に運営するよう知恵を集めることを望む」と強調した。検察の捜査結果によって曺氏の進退を近く決める可能性があるというメッセージとも読める」

     

    大統領たる者は、こういう「謎解き」のような発言をすべきでない。「三権分立」が本当であるならば、検察捜査にすべてを委ねる。その捜査方法に問題があれば裁判過程で明らかになるはずだ。文氏がいくら弁護士資格を持つとは言え、大統領発言としてふさわしくない。

     

    (3)「文大統領のメッセージに対して、大検察庁は、「検察は憲法の精神に則って人権を尊重し、法の手続きによって厳正に捜査し、国民が望む改革に最善を尽くす」という原則的な立場を明らかにした。しかし検察内部では、「長官に続き大統領まで捜査に干渉している」という不満が出ている。野党「自由韓国党」の羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)院内代表は、「大統領まで出て、検察を攻撃している。これは国民に対する挑戦であり、大韓民国の法秩序に対する攻撃だ」と批判した」

     

    下線をつけた部分は、真っ当な批判である。検察内部で、法相のほかに大統領までが事件の「もみ消し」に動き始めたという印象を持たせたことは得策でない。こうなると、検察改革の狙いが、どこにあるのか疑わしくなる。文氏の退任後、自らの身辺を捜査させないという煙幕に使おうしている。こういう批判を裏付けるのだ。文氏は、慎重の上にも慎重を期して行動すべきである。

     

     

     

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    韓国が、日本への対抗という難事に挑戦している。日本が、韓国を「ホワイト国除外」にしたことに腹を立てて逆走を始めているからだ。EUは、韓国を「ホワイト国除外」にしている。それでも、韓国はEUに抗議したり対抗手段をとっている訳でない。こと日本となると、目の色を変えて対抗してくる。感情論の虜になっているのだ。

     

    韓国は、日本から輸入している素材の国産化や、輸入先の分散化などを始めている。日本に代わる輸入先は品質・コストの面で簡単に見つかるはずがない。過去、日本の品質やコストに満足してきたから、韓国は安定した取引関係を結んできたはずだ。この関係を覆して

    国産化や他国からの輸入に切り替えることが得策であろうか。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(9月26日付)は、「韓国、日韓対立で部材国産化を加速」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の新興企業BTLアドバンスト・マテリアルが、10年かけて開発した製品を競合品より3050%高い価格で売り出そうとしている。BTLにとって幸いなことに、競争は鈍化した。日韓の貿易対立を受け、日本製部品が足りなくなった場合に備えて地元企業が国内サプライチェーンを構築し始めることを余儀なくされたからだ。BTLは今後数カ月以内に、リチウムイオン電池のセルを包むために使われるアルミパウチフィルムの販売を開始したいと考えている。デービッド・チョン最高経営責任者(CEO)は、韓国の電池メーカーがすでに同社のフィルムを試用していると言う」

     

    「国産化」という美名に隠れて、競合品よりも30~50%高い価格で売り出すというのだ。経済原則から完全に外れた経済行動である。

     

    (2)「BTLはフィルム事業を買収した後、中国と欧州に輸出する計画だったが、国内需要が増加していることに気づいた。今年7月、第2次世界大戦の戦後補償問題をめぐる緊張が一気に高まり、韓国半導体メーカーが使っている主要化学品3品目に関して、日本が輸出管理の優遇対象国から韓国を除外したためだ。これに応じて、韓国産業は国内のサプライヤーに目を向け、サプライチェーンに占める国内企業のシェアを65%から引き上げる狙いを定めた。これは20年近くおおむね変わらない水準で、半導体生産のサプライチェーンでは半分程度、ディスプレーパネル用材料では3割程度となっている。『地元の大手電池メーカーは、代替的な調達先を見つけることに積極的になっており、当社製品をかなり積極的に試すようになった。大きな価格差を埋める方法については懸念しているものの、我々の製品の品質は日本製品と同じくらい高い」とチョン氏は言う」

     

    製品競争力は、品質と価格である。その両面を備えていなければ、グローバル競争には勝ち残れない。韓国は、この経済原則を無視して国産化を果たそうとしている。韓国が、国家としてなすべきことは本来、隣国日本との安定した外交関係の維持である。それにも関わらず常時、歴史問題を持出してギクシャクさせている。韓国政府の民族主義的言動こそ、韓国経済の根幹を脆弱化させる原因であることを覚るべきである。

     

    (3)「日本は7月以降、主要化学品の出荷を何度か許可したものの、韓国の政府関係者は調達先の分散の重要性を強調する。「コスト節減はもはや、我が国の企業にとって最善ではなくなった。リスクヘッジの方がはるかに重要になった」と、ある政府高官は語っている。だがアナリストらは、日本製の部品・材料に匹敵する品質の国産品を急速に生産できるかどうかについては懐疑的だ。比較的規模の小さい韓国企業は独自技術を開発する経営資源が不足しており、高度な部品の生産では日本が数十年先んじているからだ

     

    下線を引いた部分のうち、韓国政府の言い分に間違いがある。米中のような覇権競争国以外の国が、グローバル経済下で製品輸入のリスクヘッジをかける必要があるだろうか。韓国はまず、日韓の外交関係を安定させることを最優先事項とすべきである。感情論の余り、リスクヘッジをかける対象を間違えている。

     

    下線部分後半のエコノミストの見方は正しい。企業規模の小さい韓国企業が、独自技術を開発する経営資源に不足している現状を見落としているからだ。韓国は、感情的になって逆走している感じが強い。いずれ、そのブーメランに出会うはずだ。


     

     

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    米国トランプ大統領は、多国間貿易協定よりも二国間貿易協定にこだわっている。後者の方がディールの余地があると見ている結果かも知れない。トランプ氏が大統領就任後、最初の貿易協定が日米協定になった。対EU、対中国、対加墨は、まだ発効にまでほど遠い。

     

    トランプ氏は、TPP(環太平洋経済連携協定)から脱退せず加盟していれば、対中国の通商交渉ははるかに楽であったと見られる。そのチャンスを自ら捨ててしまい、遅ればせながら、日米貿易協定でTPP効果の農産物関税引き下げの「余慶」を受けられる。今からでも遅くない。TPPに復帰することだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月26日付)は、「日米貿易協定、TPP離脱の穴埋め」と題する社説を掲載した。

     

    ドナルド・トランプ米大統領は9月25日、日本との間で、細身になった貿易協定を発表した。2年前に「環太平洋経済連携協定(TPP)」を離脱して自ら招いた打撃を緩和するものだ。トランプ氏が貿易の試合で勝利を重ねたいのなら、オウンゴールを止める必要がある。

     

    トランプ氏はTPPを捨てた際、二国間貿易合意を目指すと言明した。だが、安全保障の名の下、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課し、自動車に対する追加関税をちらつかせた。これに対し、米国以外の11カ国はTPPを発効させ、日本はそれとは別に欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も発効させた。以来、米国の農家は日本で劣勢に立たされている。

     

    (1)「日本の47月(EUとのEPAおよびTPP両方の関税引き下げ後の当初4カ月)の農産品輸入は201618年の同期に比べ、欧州産が15.9%増、メキシコ産が27.6%増、ニュージーランド産が16.9%増となった。これに対し、米農家から日本への輸出は5.8%増にとどまった。中国の関税で世界貿易の流れが変わったことが影響した。日本の豚肉輸入は、米国産が1%減少した一方で欧州産が17%増加し、米国の市場シェアは3.7ポイント縮小した。欧州は乳製品でもシェアを3ポイント伸ばし、米国のシェアは横ばいとなった」

     

    日本市場は、EUとTPP11ヶ国との貿易協定が発効したので、これら諸国の農産品輸入の関税が引下げられて、輸入が急増している。米国農家は、米中貿易戦争の煽りを受けて輸出急減に陥っているだけに、日本市場での挽回を目指す。

     

    (2)「こうした状況はウィスコンシン州の酪農家を窮地に追いやっている。日本が(米国以外の国に対する)関税を段階的に引き下げるなか、今回の協定がなければ米国の酪農家は一段の衰退を経験したことだろう。トランプ氏は今、こうした打撃を痩せ細った日米貿易協定によって和らげようとしている。同協定は、EU諸国やTPP参加国の農家が得ているのに似たアクセスを米国の農家に与える。日本は米国からの農産品・食料輸入の約半分に対する関税を撤廃するか引き下げることになり、そうした輸入の90%は無関税か、特恵関税の対象になる」

     

    日本は、米国に対して農産物輸出増加を目指すならば、TPP復帰を促すこともできた。だが、相手は米国である。トランプ氏の「ツイッター砲」の餌食にされるよりも、「実利」を選んだ方がベターである。米国に「貸し」をつくって置くことも外交上の戦略である。

     

    (3)「米国は見返りとして、工作機械、楽器、自転車といった一部の日本製品に対する関税を引き下げるか撤廃する。ヤマハのピアノのファンはヘンデルの「メサイア」を弾くことができる。中国製自転車への関税引き上げは小売店や消費者を悩ませてきた。米国と日本はデジタル製品に関税を課さないことでも合意した。政府が「恣意(しい)的」な――政治的という意味だ――理由で企業のコンピューターのソースコード、アルゴリズム、暗号技術に口出しすることは許されなくなる」

     

    日本製自転車の関税が下がることは、中国シェアを食う上でまたとないチャンスである。中国は、高関税で苦しんでいるので、日本品がシェアを伸す機会になる。

     

    (4)「日米協定が生むメリットはTPPより少ないだろう。TPPであれば、アジア・太平洋地域の他の国からも関税引き下げを勝ち取れたはずだ。トランプ氏は自身の交渉力がより発揮できるとの考えから二国間協定を好むが、効率的生産の強化には多国間協定の方が効果的だ。米国がTPPに参加していれば、アジアで中国に対抗する力も強まっていただろう。北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる協定の議会承認が危ぶまれ、対中関係もこじれるなか、日本との協定はトランプ大統領1期目の貿易政策で最大の勝利かもしれない。しかし、それを本来よりもずっと厳しいものにしたのはトランプ氏自身に他ならない」

     

    日本は、トランプ大統領に「恩を売った」形だ。日米貿易協定の署名では、米国農家代表が出席しており、トランプ氏は顔が立った。外交とは、こういう積み重ねが相互信頼を高めるのであろう。そういう意味で、韓国に見せてあげたいケースである。

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    韓国の李洛淵(イ・ナクヨン)首相は9月26日、国会の対政府質疑に出席し、政府による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了決定について、「日本が不当な経済報復措置を撤回すれば、われわれもGSOMIAの終了決定を再検討する用意がある」との方針を改めて示した。

     

    韓国は、一貫して日本に対して「バーター取引」を求めているが、見当違いの発言である。日本の韓国への「ホワイト国除外」は、戦略物資の管理が不十分でという理由である。韓国は、この日本の指摘を受入れ、改善すれば済む問題である。それが、メンツを絡めて日本を批判するから騒ぎが大きくなる。

     

    韓国と米国は、9月26、27両日にソウルで安全保障上の主要懸案を調整する高官級協議体、統合国防対話(KIDD)第16回会合を開催した。米国側は、韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了を決めたことについて、改めて懸念を表明したという。

     

    韓国国防部によると、米国側はGSOMIAの終了が韓米日の安保協力に影響を及ぼす可能性について懸念を示し、これに対し韓国側はこれまでの立場を再度伝達した。つまり、前述のとおり、日本政府が対韓輸出規制の強化を撤回すれば、GSOMIAの終了決定を再検討するとの立場を明らかにしたのだ。


    韓国は強気になっている。だが、韓国の軍事情報収集能力は、日本に比べて相当に遅れている。軍事情報衛星を飛ばしているわけでもない。この面で遅れた韓国が、ここまで粘ってなぜ「超強気姿勢」を取っているのか。興味の焦点は、むしろこちらに向くのだ。

     

    韓国は、これまで無意識で過ごしてきた日本の工業技術力の凄さを「ホワイト国排除」で痛感させられた。同時に、韓国はこれまで日本を軽んじてきた振る舞いが、どれだけ日本を怒らせてきたか。それを「半導体製造3素材」の輸出手続き強化で思い知ったのであろう。また、これまで日韓関係は「政経分離」できた。日本は今回、「政経不分離」であることを示して、韓国の不合理な歴史問題への蒸返しを拒否する姿勢を鮮明にさせたのだ。

     

    この日本の強硬姿勢に驚いた韓国は、「GSOMIA」と「ホワイト国撤廃」を交換条件にし、起死回生策を打ってきたのだ。韓国は、GSOMIA破棄によって米国を巻き込んでいるが、日米間では意見調整が済んでいるとみるべきだろう。つまり、GSOMIAとホワイト国排除は別問題という認識の一致である。

     

    日本の防衛力は、韓国をはるかに凌いでいる。その日本が、頭を下げてまでGSOMIA廃棄取消しを韓国に要請するはずがあるまい。その根拠を見ておきたい。

     

    『中央日報』(9月27日付)は、「日本の衛星・空母・潜水艦戦力、韓国との格差拡大へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国が日本に最も遅れを取っている軍事力分野が宇宙だ。人工衛星がなければ偵察や無人機などほとんどすべての武器体系がまともに作動しない。米国は宇宙分野でロシア・中国との戦争に死活をかける。日本も同じだ。 宇宙が戦場に変わっていくが、韓国は対応できていない。日本は2020年代半ば、妨害衛星を打ち上げる計画だ。この衛星はロボットアームで他国の衛星を破壊して通信を途絶えさせ、偵察衛星の機能を失わせる。韓国の衛星にも適用可能な軍事戦略だ。

    日本の人工衛星技術に比べれば、韓国は「月とスッポン」ほどの違いがある。それを忘れて、韓国が日本に対してGSOMIA廃棄を取り消す条件を突付けるとは「噴飯物」である。日本が、自らの優位性を捨ててまで、この取引条件に応じるとは思えない。

     

    (2)「 元JAXA(宇宙航空研究開発機構)鹿児島宇宙センター所長の坂爪則夫氏は、日本の宇宙技術のうち最も誇れる技術を「ドッキング技術」と述べた。JAXAは蓄積されたロボットアーム技術と世界最高レベルのドッキング技術で妨害衛星にロボットアームを付け、外国の人工衛星を破壊することが可能だ。ドッキング技術を軍事的に使用すればミサイル迎撃技術に転用できる」

     

    日本の宇宙技術の中で、「ドッキング技術」は世界最高とされている。外国の人工衛星を破壊もできるというのだ。

     

    (3)「 韓国は2021年を目標に1.5トンの人工衛星を打ち上げる独自のロケットを開発中だが、日本は偵察衛星の地球の軌道に16トンの人工衛星を乗せることができるH-2A液体燃料ロケットをすでに保有している。燃料を入れるのに時間がかかるH-2Aロケットだけでなく、ボタンさえ押せば直ちに発射できる1.2トン弾頭用固体燃料ロケットのイプシロンもある。軍事的に転用すれば直ちに大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有する日本だ」。

    韓国の人工衛星打ち上げは2021年、2年も先の話である。韓国は、日本の足下にも及ばないのだ、こういう現実を見れば、韓国が「ホワイト国撤廃」を条件にして、GSOMIA復帰とはおこがましいと言うべきであろう。恥を知るべきだ。

     

     

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