文大統領の訪米では、トランプ米大統領との首脳会談でさしたる成果も上げられずに帰国した。韓国のGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄について、トランプ氏が一言も話題にしなかったほど。どこか、よそよそしさを感じたはずだ。一方、日米首脳会談ではトランプ氏が、北朝鮮の金氏による「文評価」を紹介するなど、盛り上がりを見せた。
米国は、同じ同盟国である日韓に対する姿勢が、微妙な変わり方を見せている。韓国は、この変化に敏感な反応を見せている。それが、ワシントンで議論されている在韓米軍撤退論だという。左派系は喜んでも、保守派にはショックである。
『中央日報』(9月26日付)は、「尋常でないワシントンの在韓米軍撤退論」と題する社説を掲載した。
(1)「北朝鮮の核問題の解決は不透明だが、在韓米軍撤収という主張が米ワシントン政界で強まっているという。ワシントンの雰囲気に詳しいジョン・ハムレ米戦略国際問題研究所(CSIS)所長によると、大統領候補当時から在韓米軍の撤収を主張していたトランプ大統領だけでなく、米政官界の主流勢力内にも同調勢力が増えているということだ。軍撤収を主張する人たちは、すでに先進国入りした韓国には十分に自ら防御する能力があるとみているという。したがっていかなる方式であれ北朝鮮核問題が終われば在韓米軍を撤収させるのがよいという気流が生じているという話だ」
文政権は、心の底では米軍撤退論である。文大統領安全保障特別補佐官は、公然と米朝の協定締結後の在韓米軍撤退論を発言している。進歩派は、南北統一を「一日千秋の想い」で待っているので、在韓米軍撤退論には双手を挙げて賛成する。保守派が、これをどう受け止めるかである。
(2)「もちろん我々の生命は我々が守るのが原則だ。在韓米軍もいつかは離れる可能性がある。しかしこれには前提がある。我々の生存を脅かす北朝鮮の核問題が完全に解決されなければならない。しかし北核問題は20年以上にわたり、解決されるどころか、今でも北朝鮮の核兵器は着々と増えている。このような状況でトランプ政権と文在寅(ムン・ジェイン)政権は我々を危険にする変則的な解決法を使おうとする雰囲気のようで心配だ」
北朝鮮が核放棄せずに、在韓米軍が撤退という最悪事態を迎えた場合、韓国の安全保障はどうなるかだ。進歩派は、これで北と一緒になれると喜ぶだろうが、保守派は深刻な打撃を受ける。北との統一など悪夢に違いない。統一をするなら保守派大統領のもとでなければ不安である。
この時、日韓関係が元の状態に回復しているかどうかも重要な前提になろう。韓国保守派は、日韓関係が後ろ盾という意味で、さらに米軍が後方に控えるという連鎖で対応可能である。だが、現在のような日韓関係では、韓国保守派は韓国進歩派と北朝鮮連合に飲み込まれるリスクがある。韓国進歩派は、策略を用いて保守派を叩く危険性がきわめて高い。こうなると保守派は針の筵に座らされるはずだ。
(3) 「最近、北朝鮮はかつて主張してきた「平和協定締結」がうまくいかないため「体制保証」要求に戦略を変えた。北朝鮮が非核化に向かうには米国が体制の保証を約束しなければいけないということだ。このためには北朝鮮の体制を脅かす要素をなくすべきだが、その一つが在韓米軍だと金正恩(キム・ジョンウン)政権は主張する。こうした論理に巻き込まれれば、北朝鮮の核の脅威はそのまま残る状況で在韓米軍の撤収につながるおそれがある。最悪のシナリオだ」
北朝鮮は、韓国進歩派を抱き込んで在韓米軍撤退論を主張する。その背後には、中国が就くという形になるので、韓国保守派は自滅させられる。文在寅氏の望むところでもあろう。
(4)「このように状況は深刻だが、文大統領は24日、国連総会の演説を通じて非武装地帯(DMZ)を国際平和地帯にしようというバラ色の提案をした。DMZ内にある100万個以上の地雷を除去し、ここに平和および生態問題に関連した国連機構を誘致し、軍事的衝突を防ごうということだ。この提案は再開される米朝対話を後押しするためのアイデアといえる。しかし、急がれるのは我々に飛んでくるかもしれない北核の除去だ。さらにDMZ開発は国連の対北朝鮮制裁決議に抵触する可能性もあり、この地域を管轄する国連軍司令部とも緊密な事前協議が必要となる。どう見ても現実性が落ちる希望事項にすぎない。誰が何と言おうと、今は「強力な対北朝鮮制裁を通じた完全な非核化」という従来の戦略を粘り強く継続する時だ」
文氏は将来、韓国保守派を裏切ってでも北朝鮮との統一を選ぶだろう。これが、韓国民族派の狙いである。保守派は、大同団結して立ち向かわなければ、韓国進歩派と北朝鮮連合に足下を救われる危険性が大きい。韓国保守派は、日本との関係を再構築して置かないと、危険な目に遭わせられる予感がするのだ。