最近、ソウルのマンション価格が高騰している。結婚件数が減っているにもかかわらず、この住宅の値上がりに合理的な説明ができないことから「住宅ミニバブル」との形容詞がつくほどである。
合理的な値上がり要因は、人口動態から説明できるものである。例えば、総人口に占める生産年齢人口(15~64歳)のピーク直前の数年間は、住宅の実需が増えるために住宅価格が高騰する。韓国の場合、総人口に占める生産年齢人口比率は、2013年がピークであった。このことから言えば現在、韓国の住宅が値上がりする要因がなくなっている。要するに、住宅価格が値上がりする正当な理由はないのだ。
この謎は、韓国独特の家賃制度「チョンセ」に原因が求められる。「チョンセ」とは、次のような制度である。
一定の高額の保証金を支払えば、月々の家賃支払いがない。しかも解約時に保証金が全額返ってくるというもの。これだけ見ると、契約する側にとっては、すごく有利と見られる。それでは、家主はどうしているのか。チョンセ保証金の運用による利子が家主に入ってくるので、これが家賃収入になるというのだ。預金金利が下がってくると、家主は損失を招くので、保証金自体を引上げざるをえなくなる。ここから、問題が起こってきた。
こうして、低金利=保証金引上げというパターンで、住宅価格そのものを押し上げるという不可思議な現象が生まれている。韓国人が、この矛楯に気付かないのは、保証金が全額返ってくる上に、月々の家賃が要らないという表面的な点にある。総合的に考えれば、高額保証金を払う点で損(高い機会費用)していることを無視しているのだ。月々に家賃を支払う「ウォルセ」の方が、高い保証金を必要とせず合理的な選択である。その保証金を有効活用することが、はるかにメリットになろう。
ここら辺りに、韓国人の思考様式が窺える。物事を深く考えずに、表面的な現象で損得を決めていることだ。日韓問題もその最適例であろう。感情的に「不買運動」をやっているが、それが不安心理を高め、韓国のGDPを押し下げるというブーメランに見舞われているのだ。
『中央日報』(9月23日付)は、「早稲田大教授、日本式暴落ではないがソウルのマンションはバブル消える」と題する記事を掲載した。
韓国と日本の経済を幅広く研究した朴相俊(パク・サンジュン)早稲田大国際学術院教授に18日、ソウルで会い、こうしたテーマでインタビューした。内容の一部は朴教授が先月出した著書『不況脱出』にも書かれている。
(1)「朴教授は、「この数年間、特に昨年はソウルのマンション価格が過去の日本の大規模なバブルほどではないが、高く評価された」とし「経済が良くてこそ所得が増え、家を購入し、住宅価格が上がるが、景気が良くない状況で住宅価格だけが上がった」と説明した。 人口が増加する国なら人口が住宅価格により大きな影響を与えるという。しかし韓国は日本のように人口安定期に入ったため、経済実績と密接であってこそ正常という説明だ。また住宅価格を支払えない人が増え、ソウルの人口が流出している点もバブルの根拠に挙げた」
人口動態の面から、ソウルの住宅価格が高騰するする理由はない、と説明している。
(2)「ギャップ投資(住宅賃貸で家賃はなく高額の保証金を受けることで、少額資金で住宅を購入する行為)をできないようにしなければいけない。実需要でなければ事実上融資できないようにすることも必要だ。保有税や譲渡所得税も先進国レベルに高めなければいけない。借家人の保護もさらに強化すればよい。そうすれば借家人も安心し、無理に住宅を購入しようとしないだろう。現在の日本がそうだ」
賃貸住宅の「チョンセ」に必要な高額保証金が、家主によって新たな住宅購入資金となっている矛楯を指摘している。低金利=住宅保証金引上げ=住宅価格押上げという一連の矛楯は、韓国経済のアキレス腱になる。