勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年09月

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    韓国経済が文在寅(ムン・ジェイン)政権発足直後の17年9月に「山」を迎え、今は後退局面に入っていることが正式に確認された。韓国政府は最近まで「景気後退」を認めていなかったが、これまで間違った診断に基づいて景気を委縮させる政策を相次いで打ち出し、「景気後退をあおった」との批判が高まっている。

     

    文大統領はつい数日前まで、「景気は順調、悪化説はフェイクニュース」とまで強調してきた。実際には、大統領の方が偽ニュースを流してきたわけで、メンツ丸潰れである。世界に、こういう根本的な事実誤認する大統領がいるだろうか。

     

    『朝鮮日報』(9月21日付)は、「文在寅政権発足直後の20179月が景気の山」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国統計庁は9月20日、国家統計委員会の経済統計分科委員会を開き、「韓国の第11循環期の景気『山』を20179月と暫定的に設定した」と明らかにした。一国の経済活動は上昇期と下降期を経るが、「谷」-「回復」-「山」-「後退」に至る1周期を「景気循環」という。統計庁は景気の局面が転換する時点(山と谷)をその時点から23年後に正式発表する。統計庁は20166月、第11循環期の景気の底を「20133月」に設定した。統計庁は「20133月以降は内需を中心に景気が徐々に回復、20161012月期以降は世界経済の成長の勢いが強まり、貿易が拡大するなどして回復傾向が拡大した」

     

    この景気の「山」の設定指標に用いられたのは、「先行指数」であることだ。現実の景気循環の「山」設定作業では「一致指標」が用いられるはず。この点に疑問を持たざるを得ない。なぜ、景気の「山」判断に先行指数を用いたのか、である。

     

    (2)「国内景気が下がっているという見方は、既に昨年上半期から取りざたされていた。金広斗(キム・グァンドゥ)国民経済諮問会議副議長=当時=は昨年5月、「現在の景気は後退局面の入り口」と評した。だが、金東ヨン(キム・ドンヨン)経済副首相=同=が「性急な判断だ」と反論するなど、公の場で舌戦を繰り広げた。昨年下半期から韓国開発研究院(KDI)など国内の主要機関も景気について「後退の兆しを示している」と評したが、政府は「良い流れを維持している」との主張を曲げなかった」。

     

    下線部分の判断は、「一致指標」の下落傾向が6ヶ月以上続きそうだという判断があった。私は、この一致指標の下落傾向から、昨年10月が景気の「山」説を取ってきた。それが、「景気判断」の尺度が、「先行指標」に変ったとすれば驚きである。

     

    (3)「企画財政部が毎月発刊する「最近の経済動向」(別名「グリーン・ブック」)では、昨年9月まで景気について「回復傾向」と評していたが、今年4月になって「不振」を認めた。企画財政部は20日に発刊した今月のグリーン・ブックでも「不振」と評した。6カ月連続「不振」という表現を使ったことになり、これは2005年のグリーン・ブック発刊以来、最長期間だ」

     

    政府の企画財政部は、昨年9月まで「景気回復」と逆の判断をしてきた。なんとも恥ずかしい「誤診」である。

     

    (4)「専門家らは、「政府が景気後退期に最低賃金の急激な引き上げ、不動産規制、法人税・所得税引き上げなど市場にとって負担のかかる政策を強行したのは、(景気下降に)『火に油を注ぐ』ようなものだった」と指摘する。漢城大学のキム・サンボン教授は「政府は景気後退期であることを認め、研究・開発や産業分野に財政を投入し、市場競争力を高める方向に進むべきだった。短期雇用やインフラなどとんでもない所で血税を無駄遣いしたのは大きな失策だ」と語った」

     

    下線を引いた部分で明らかなように、景気下降局面で、さらなる景気引き下げの行為を行う政策ミスを冒した。

        最低賃金の急激な引き上げ

        不動産規制、法人税・所得税引き上げ

    市場にとって負担のかかる政策を行った。景気の落勢を強める結果になったのだ。文大統領は、国民にどのような釈明をするのか。最賃の大幅引上げが最大の失策である。

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    中国経済が、厳しい局面にあることは周知のこと。当面の問題は、6%を割り込むか否かである。民間エコノミストは「6%割れ」、政府エコノミストは、財政支援で「6%固守」と分かれている。さて、どうなるのか。

     

    『ロイター』(9月19日付)は、「中国成長率予想 慎重派の民間と楽観的な政府系に温度差」と題する記事を掲載した。

     

    中国の経済成長率予想について「官民格差」が生じている。市場関係者などは、成長率が第3・四半期ないしは来年にかけて政府目標の下限である6%を割り込む恐れがあると警告する。一方で政府系のエコノミストはやや楽観的で、各種景気対策が効果を発揮して急激な成長鈍化は避けられるとみている。

     

    (1)「第2・四半期に6.2%と約30年ぶりの低成長を記録した中国経済が、第3・四半期になって一段と冷え込む公算が大きい、という点で専門家の見方はそろっている。ただそうした減速の流れが、景気対策が打ち出されても続くかどうかが意見の分かれるところだ。UBSは中国の成長率が今年6.0%で、来年には5.5%まで下振れると予想する。中国エコノミストのタオ・ワン氏は、米国の関税引き上げの影響で、今年第4・四半期と来年第1・四半期に成長の勢いが一層弱まるだろうと述べた。中国では昨年以降、相次いで景気対策が打ち出されてきたにもかかわらず、経済はなお安定していない。だからこそ大半の民間エコノミストは、内外の需要の弱さを踏まえて慎重な成長見通しを維持している」

     

    民間エコノミストは、内外需要の弱さと景気対策が功を奏さないという事実に注目している。中国は、信用創造機能が大幅に弱体化しているからだ。金融を緩和しても実物経済を刺激せず、不動産バブルに流れているという根本的な脆弱性を抱えている。「流動性のワナ」にはまり込んでいるのだ。UBSは、成長率が今年6.0%で、来年には5.5%まで下振れると予想する。この見方が、最もオーソドックスであろう。

     

     

    (2)「これに対して政府系エコノミストは、景気対策が経済を支えると期待する。国家発展改革委員会傘下のシンクタンク、国家情報センターで経済予測部門を統括するZhang Yuxian氏は、「成長率は第3・四半期に6.1%となった後、第4・四半期には6.2%まで幾分持ち直すと見込んでいる」と語った。同氏は18日、外国記者団に「財政、金融、構造的な諸政策が第4・四半期の経済に間違いなく反映される。そうでなければこうした政策は何の役にも立たない」と説明し、それによって今年の成長率は6.26.3%と、政府目標並みを確保できると自信を見せた。やはり政府系シンクタンクの中国国際経済交流センター(CCIEE)のチーフエコノミスト、Chen Wenling氏は、今年と来年の成長率をそれぞれ6.2%前後、6%前後と予想している」

     

    負債を増やす形でのGDP押し上げは、副作用が大きくなっている。負債を膨らませるだけであるからだ。中国政府は、この欠点について十分に認識している。過去は、その繰り返しできた。この禍根を断たなければならない。だが、政治的な要因で、英断を持って行えないのだ。

     

    (3)「米中貿易摩擦の長期化が、中国の企業や消費者に打撃を与えている点からすれば、もっと刺激策が必要だとの指摘が出ている半面、政策担当者が債務増大や不動産バブルのリスクを心配している以上、追加的な政策発動の余地は限られる」

     

    このパラグラフの中に、中国政府の苦悩が凝縮されている。米中貿易戦争の解決なくして、「債務漬け経済」を続けても無意味であろう。小手先の景気刺激策を行っても無駄なのだ。

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    韓国の超少子化は、世界の至る所で話題とされるようになってきた。だが、当の韓国ではそれほど気にもとめていないようである。現状が続けば、韓国は「少子化」で消えてしまうとの計算まで登場している。当然、北朝鮮に乗っ取られる運命だ。

     

    超少子化の原因ははっきりしている。就職難による結婚難が最大の理由である。韓国政府は、この問題に真っ当に応えようとせず、間違った経済政策に固執しているので、事態は深刻化するばかりだ。

     

    『レコードチャイナ』(9月21日付)は、「消えゆく韓国人をどうすれば救えるのか」と題する記事を掲載した。中国メディア『蘇寧財富資訊』(9月18日付)は、「出生率がここ50年で最低!消えゆく韓国人をどうすれば救えるか」の転載である。

    韓国の統計庁が発表した昨年の出生統計によると、2018年の韓国の出生数は326800人で1970年の統計開始以降、最低となった。合計特殊出生率は、人口の維持に必要とされる21人の半分にも満たない098人。100人を下回ったのも統計開始以来初だという。記事はこの結果に言及した上で、「韓国は出生率が超低水準というだけでなく、近代以来、世界で初めて出生率『ゼロ時代』に突入した国だ。韓国メディアも『世界初』という言葉を用いて自嘲している」とした。

     

    さらに、韓国の出生率は「絶壁式に下降している」とし、「1970年の45から80年代中ごろには15に急落。その後、多少は回復の傾向も見られたものの、滑落の勢いは止めることができず。さらには、少子化が顕著な日本よりもひどい」と指摘した。高齢化社会(65歳以上の人口比が7%以上)から高齢社会(同14%以上)並行する年数では、米国が50年、英国が45年、日本が25年だったのに対し、韓国はわずか18年だった。
     
    (1)「記事は、「出生率が日本よりも低く、高齢化の速度は明らかに日本よりも早い。さらに深刻なのは、この傾向に好転の兆しが見えないばかりか、ますます拍車がかかっていること」とし、このままのペースで進んだ場合、2031年には総人口が減少に転じ、2065年には4300万人にまで減少、2165年には1500万人になり、最終的には消滅するとの専門家の予測を紹介。「韓国の人口危機の深刻性は、確実に人々の想像をはるかに超えるものだ」とした」

    下線部では、2031年に総人口が減少すると指摘しているが、ソウル大学人口研究所の予測では2021年から人口微減状態に入るとされている。この状態が10年ほど続いた後、人減が加速すると見られている。

     

    (2)「記事は、「韓国政府もさまざまな手を打ってきたが、低出生率の泥沼から抜け出すことはできていない」とし、2006年にオックスフォード大学のデービッド・コールマン教授が「韓国は世界で初めて少子化で消滅する国になるだろう」と予測したことを紹介。「現在、彼の予言は一歩一歩現実になりつつある。それは韓国の首都からうかがい知ることができる」とし、19年上半期のソウルの出生率が全国平均の098人よりもさらに低い076人だったことを挙げた。そして、「韓国最大の都市という栄光で海外からの若者が集まっているが、そうでなければソウルはとっくに滅亡の道を歩んでいるかもしれない」とした」

    韓国は、人口の専門家によれば、地球で初めて少子化により「消える国」となるかもしれないという。韓国は、ストレス社会である。それが原因で、「国が滅びる」とは、なんとも皮肉な話である。

     

    (3)「最後に記事は、韓国メディアが最近行った調査で、高収入世帯(上位40%)の出生率が低収入世帯(下位20%)の2225倍だったこと、この割合が年々増加していることを指摘し、「すべての人が子どもを生むことを望んでいないわけではない。高収入の人の出生意欲はまだ衰えてはいないようだ」としている」

     

    韓国は、不平等社会である。所得分配が不平等なのだ。下線を引いたように、高所得層では低所得層の2.3倍の出生率だという。ここに出生率を引上げるヒントがある。大企業労組を優遇するのでなく、中小企業従業員を優遇する制度に切り替えることだ。労働市場の流動化を図って、転職を促進させることの重要性を認識すべきである。

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    最新の世論調査で、文氏の支持率は40%と就任後、最低を記録しました。文氏の大統領選得票率41
    %を下回ったのです。経済は最悪状態に向かっています。これで、来年4月の総選挙に勝てる見通しがあるでしょうか。政権支持メディアの『ハンギョレ新聞』は、与党内部の悲観論を伝えています。与党は敗北必至という見通しが、与党内部から出てきたのは絶望的な雰囲気を映しています。

     

    私は、最近のメルマガで与党敗北を強調しています。韓国経済の実態がきりもみ状態の上に、スキャンダルが重なった以上、勝てるはずがありません。文政権は、選挙民を愚弄し過ぎています。朴槿惠政権に向けられた怒りは、文在寅政権に向けられています。この現実を知らなければならないでしょう。

     

    文在寅政権は、朴槿惠政権弾劾という歴史的な事件を経て登場しました。その教訓は、失政ではなく政治の不明朗さが糾弾されたのです。文政権は、これと同じ過ちを冒したのです。疑惑にまみれたチョ・グク氏が、こともあろうに正邪を裁く場所のトップに就いたことは、国民への重大な挑戦と言えます。

     

    文氏は、任命権者として国民の立場を忘れ、党利党略を前面に据えて、国民の渇望する「倫理の拠り所」へ後ろ足で砂をかけたに等しい振る舞いをしたのです。チョ氏の妻が、娘の不正入学で在宅起訴されています。この一事で、潔くその座を外させるべきでした。それを強行突破したのは、「人権政治家」を標榜する文氏にとって、決定的な過ちとなりました。

     

    文氏は、反日という問題をあえて穿り返して、日韓両国民を対立の坩堝に追い込んでいます。反日=韓国保守派という構図によって、進歩派の「永久政権」を目指していました。保守派を叩くには、日本を叩くという迂回戦略を取りました。これが大誤算でした。日本が「国際法違反」で食いついたからです。

     

    際限なく日本を批判し、それを得票につなげる。そういう文氏の企みは失敗しました。「反日不買運動」が、韓国消費者の不安心理を煽って、肝心の韓国の消費に水を差しています。「人を呪わば穴二つ」で、韓国が「反日」という穴に飛び込んだのです。気の毒やらおかしいやらで、笑うに笑えぬ事態を招いています。

     

    こう見ると、文氏は大統領になって、悪いことばかりをやってきた希有の大統領になりますね。日本にとっても最悪の大統領が登場しました。最大の被害者は、こういう「口舌の徒」を大統領に選んだ韓国国民です。次の大統領は、文氏のような人物を選ばないように祈るしかありません。

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    中国メディア『今日頭条』は、ニュース配信アプリの開発企業で最近、頭角を現している。いわゆる「まとめサイト」である。中国国内の情報を幅広くすくい上げている。その意味では、中国人の率直な意見と言えそうだ。ここで取り上げるテーマは、『今日頭条』の記事である。

     

    この記事では、日本を冷静に評価しているが、韓国は全く違う「あら探し」に終始している。世界中に日本の悪口を言いふらし、風評被害をばらまいて喜ぶ特殊な国家である。中韓が、日本に対する態度で、このように異なるのはなぜか。深く考えさせられるテーマだ。

     

    『サーチナ』(9月19日付)は、「控えめな先進国・日本、中国人が抱く夢を数十年も前にすべて実現していた」と題する記事を掲載した。

     

    中国から見ると「日本はまぎれもない先進国」でありながら、あまりにも「控えめ」に映るようだ。中国メディアの今日頭条はこのほど、控えめに映る日本のすごさについて考察する記事を掲載した。

    (1)「記事はまず、日本の国土面積は中国の25分の1ほどしかない小さな国でありながら、「中国人が抱く夢」を数十年も前にすべて実現している国だと紹介。日本は「法治国家」であるうえに透明性の高い政府が存在し、自然科学分野においてノーベル賞受賞者を数多く輩出し、治安が良く、人びとは良好な環境下で安心安全な食べ物を口にできると強調した」

     

    下線を引いた部分は、すべて中国に欠如している部分を指している。中国では、これらの基本部分が未達成でも、独裁政治による共産党の権力維持に、直接の関わりがないからだ。食品は、党の最高幹部になると特別の農場で生産されるものが供されている。彼らにとって、必要なものはすべて満たされているから、制度改革の必要性がないのだ。

    (2)「さらに、バブル崩壊後の日本経済は過小評価されているが、実際には日本企業のイノベーション力は非常に高く評価されているとしたほか、各国メーカーのハイテク製品には日本メーカーの部品が必ずと言って良いほど搭載されていることからも日本の技術力の高さが分かると指摘。天然資源に乏しく、国土も狭い日本はほぼ全ての原材料を輸入に頼らざるを得ず、それでも高い付加価値をつけて製品を輸出することができるのは「日本に高い研究開発能力があるためである」と論じた。

     

    戦後の経済復興期の日本は、外貨準備高が少なく常にその限界に苦しんだ。その結果、極限まで輸出を増やす。極限まで輸入を減らすことに経済政策の目的が置かれた。それには、自主技術開発によるしかなかった。日本の国産技術の完璧さは、こういう背景で生まれ、磨きが掛けられた。その点で、中国は外国企業の技術を利用する形の輸出増加である。日本から見れば、中国の技術は先進国の模倣の域を出られないのだ。この日中の差は大きい。

    (3)「日本は国内総生産こそ低成長が続いているものの、日本は世界中の莫大な規模の資産を保有しており、日本の対外純資産残高は2018年まで28年連続で世界一となっていると指摘。日本はアジアを代表する先進国として圧倒的な力を持ちながらも、中国人からすれば「その力を誇示するわけでもなく、控えめに映る」と伝えた」

     

     日本が力を誇示しないとすれば、先進国と同盟関係が成立しているので、安全保障で安心していられる面が大きい。外交政策は、協調主義が基本である。領土拡張主義という20世紀型外交方針を卒業した結果だ。ここに至るには、太平洋戦争という悲劇を経験するほかなかった。中国は、未だこの壁を卒業できずに迷路にはまり込んでいる。習近平氏のような「強面」が、国家の顔になること自体、大きな矛楯を抱えている証拠である。

     

    世界史において、新興国による覇権国へ軍事挑戦する最後の例が米中対立であろう。中国が、軍事衝突の無意味さを覚らない限り、不幸な運命を辿るであろう。

     

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