勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年11月

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    11月29日の香港は、市民が安堵感に満たされていた。米国が、香港人権法に大統領署名を終えたからだ。数万人の市民が米国星条旗を掲げ、米国歌を歌うという「開放区」さながらの光景を見せたのである。

     

    中国の専制主義が、米国民主主義に敗れた構図でもある。中国は、米国に報復宣言したが、具体案がない。せいぜい、今回の香港人権法関係した議員や関係者の中国入国ビザを発給しない程度だ。効果のある報復策を打てない。そこに中国経済の深刻な一面を覗かせている。「中国、敗れたり」である。

     

    『大紀元』(11月30日付)は、「香港で人権民主法の成立を祝う集会数万人が参加」と題する記事を掲載した。

     

    11月28日、米国が感謝祭を祝うなか、香港では数万人がビジネス街の広場である中環遮打花園や愛丁堡広場に集まり、米国旗を振った。簡易ステージが設置され、香港のテーマソングや米国国家の歌唱が披露された。

     

    (1)「この合法集会の主催者によると、米国祝日である感謝祭に合わせて香港人権民主法の成立の感謝を示したという香港人権民主法は、中国に返還された香港の「高度な自治」が十分に実施されているかどうか、米国長官が毎年見直すことを義務付ける。欠陥があるとみなされた場合、1992年の米国香港政策法に基づく特別な経済特権を引き下げる可能性がある。さらに、この法律には、香港市民の人権を侵害した中国と香港の当局者に対する制裁を課すことも含まれる。集会の登壇者がこの規定に言及したとき、聴衆からは大きな歓声が上がった

     

    香港人権法では、香港市民の人権を侵害する中国と香港の当局者へ制裁を課すことになっている。これを聞いた香港市民は、大歓声を上げたという。これまでは、弾圧される一方であった。香港人権法によって、この弾圧側が責任を追及される側に回った。主客の入れ替わりである。

     

    (2)「同時に、米国警察が香港警察への鎮圧機器を輸出することを禁止する法案も制定された。集会では、数人の民衆運動の著名人も登壇した。2014年の雨傘運動を率いた一人である黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏は24日の地方議員選挙で民主派が大勝したことは「私たちが多数派である」ことを示したと述べた1124日、民主派陣営は北京派陣営に対して圧勝し、452の地方議会議席のうち380議席を獲得した。投票率は71.2%と過去最高となった」

     

    香港民主派が、区議会議員選挙で中国本土派に大差を以て打ち勝った。さらに、「香港人権法」の成立だ。盆と正月が一緒に来たような喜びであろう。

     

    (3)「黄氏は、雨傘運動の2014年当時、香港の普通選挙実現のため、米国の議員にロビー活動を行ったが、多くの議員は深刻に捉えていなかったと語った。香港人権民主法案は、上院下院の両院で満場一致で通過し、大統領が署名した。黄氏はこの結果を受けて「香港の内外で、香港の民主への危機について認識が高まった結果だと語った。香港の民衆活動家であり歌手の(デニス・ホー)氏は、集会に設けられたステージに立ち、香港民主派のテーマソングである「願栄光帰香港」を歌った。また、集会では米国国歌もオペラ歌手が歌った」

     

    2014年当時の雨傘運動では、米国議員の関心が高まらなかった。それが、5年後には米議会では全員一致で「香港人権法」を成立させた。この5年間に、中国の弾圧が見逃せない規模になってきた結果であろう。中国が、自制することなく恣意的な政策を押しつけ、破綻したと見るべきであろう。

     

    (4)「大紀元メディアグループの新唐人テレビの取材に応じた集会参加者のジョン氏は、米国の香港法成立は大きな励みになると語った。「不安が続く数カ月間で、ようやく進歩が見られた。これがなければ、意気消沈していただろう」と述べた。「私達は民主主義を望んでいる。米国と同じ価値観を持って立ち上がった。中国に対抗するための希望が増えた」と付け加えた」

     

    香港は、英国統治下で民主主義の価値を学んだ。習近平氏の価値観を受入れるはずがない。これは、自由主義諸国で共通である。中国は、この心の壁で跳ね返されるであろう。

     

    (5)「トビー氏という別の抗議者は、中国共産党は「私たちの自由と民主主義を抑圧してきた」と語った。「私たちはただ自由と5つの要求を求めているだけ。求めているのはそれだけだ」と彼は述べ、香港政府に普通選挙権や警察の暴力についての独立調査などの実行を求めると語った。集会の最中、警察機動隊が参加者の学生2人を囲み逮捕しようとしたが、民衆が「放して!放して!」と連呼して、警官を取り囲んだ。学生2人は逮捕されず、開放された」

     

    香港警察は、香港学生を逮捕すべく取り囲んだ。その周囲にいた市民が、抗議の声を上げ結局、そのまま引上げざるを得なかった。「香港人権法」の威力をまざまざと見せつける光景である。劇的なシーンであった。

     

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    中国ファーウェイ(華為)製品には、「バックドア」が仕組まれているとの見方は定説になっている。各国の防衛専門家が、いずれもそれを立証しているからだ。これを否定しているのは中国だけである。

     

    米国は、次世代通信網「5G」にファーウェイ製品が採用されると常時、各国の軍事秘密情報が北京に漏洩するとしてNATO(北大西洋条約機構)加盟国へ警告している。この警告は一再ならず行なわれているが、各国へ浸透していないのが実態だ。ファーウェイが破格の値段で売り込んでいることと、「4G」がファーウェイ製品であることも理由である。

     

    ファーウェイの「5G」が、バックドアを仕組んでいることを「発見」したのは豪州である。昨年1月だ。驚いた豪州が、すぐに米国へ通報したものの、当初はなかなか信じなかったほど巧妙であったという。米国も検証の結果、バックドアの存在を把握。「フアイブ・アイズ」(米・英・豪・カナダ・ニュージーランドで構成される諜報機関の機密情報を共有。最近、日本も参加したとされる)が、まずファーウェイ「5G」の不採用を決めた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月30日付)は、「トランプ氏、5G整備で対中警戒要請へ NATO各国に」題する記事を掲載した。

     

    米政府高官は29日、トランプ大統領が1234日の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、次世代通信規格「5G」の整備をめぐり中国のリスクを警戒すべきだと主張すると語った。米政府は中国の通信機器メーカーが同国政府のスパイ活動に協力していると主張しており、トランプ氏は軍事機密が中国に漏洩しかねないとの懸念を示す見通しだ。

     

    (1)「米政府高官は、首脳会議でのトランプ氏の「優先課題」について中国への対応をあげた。具体的には5G整備をめぐり「(加盟国は)中国共産党によって一般市民のデータなどが吸い上げられる事態を望んでいない」と指摘。中国の通信機器メーカーに整備を委ねるべきではないとの見方を示した。港湾などの重要インフラに対する中国からの投資にも警戒が必要だと指摘した」

     

    中国側に言わせれば、機密情報を窃取する理由がある。中国の革命理論によれば、資本主義国は打倒すべき対象である。中国に敵対する勢力である以上、これを打倒・殲滅する必要上、機密情報を北京に吸い上げるというのだ。こういう中国の身勝手な理屈から防衛するには、情報遮断しかないことも事実。中国に情報を与えないことが、身の安全を守る鉄則になる。

     

    中国の革命理論は、決して破棄されることはない。中国共産党が存続する以上、革命理論は「憲法」の役割を果たすからだ。

     

    (2)「NATO10月下旬の国防相理事会で、通信インフラの整備で加盟国に求める共通の安全要件を改定することで合意した。5Gを含む通信インフラの脆弱性の検証などを各国に求めるもので中国を念頭に置いた措置との見方が多い。首脳会議でも共通要件の改定を確認する見込みだ。中国政府はスパイ活動を一貫して否定している」

     

    国防相段階では、ファーウェイ「5G」が危険な存在であることを認識するようになってきた。問題は、一般の政治指導者である。中国当局からかなり「洗脳」されている。特に

    ドイツのメルケル首相は反米意識も手伝い、米国のファーウェイ製品警戒論に懐疑的な言動を繰り返している。ファーウェイ製品は、技術的な面で安全保障に関わる問題だけに、専門家に任せるべきテーマであろう。一般の政治家が介入すべきテーマではない。

     

    (3)「トランプ氏はNATO首脳会議で軍事費負担を国内総生産(GDP)の2%以上に引き上げる目標を着実に達成するよう各国に改めて求める。首脳会議に合わせ、フランスのマクロン大統領やドイツのメルケル首相らとの2国間会談も予定している」

     

    トランプ氏は、かねてから防衛費の拡大を求めている。現状では、米国の負担でNATOが運営されている。各国に応分の負担を求めている理由だ。具体的には、軍事費負担を対GDP比2%以上にするようにする要求である。

     

    この背景には、アジアでの対中国防衛の要になる「インド太平洋戦略」が動き出していることがある。中国の常識を逸した軍拡スピードから見て、アジア覇権確立の目的は確実である。これを足がかりに、世界覇権で米国と対峙すると「夢物語」を持っている。米国が、これを平和的にどう断念させるか。これが、現在の米中貿易戦争の目的だ。中国を経済的に追い込むことである。

     

     

     

     

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    米国は、確実に中国経済に圧迫を加える動きを強めている。中国企業が、米国市場へ上場して「米国資金」を利用することは、長い目で見て米国の国益に反するとの認識を強めているからだ。「敵に塩を送るな」という意味である。米国は、米国覇権に挑戦する中国の野望を許さない。そういう「冷戦思想」の発露だ。

     

    中国電子商取引最大手のアリババ・グループは11月26日、香港証券取引所に上場し、初日の取引で875億香港ドル(約1兆2000億円)の資金を調達した。専門家は、米政府が中国企業に厳しい姿勢を示しているため、今後アリババのように香港株式市場に進出する中国企業が増えると推測しているほどだ。

     

    アリババ株が、米国市場での増資を断念した背景は、米国が中国企業に厳格な姿勢を見せている結果だ。米中摩擦が、資本市場にまで広がっている。米国の対中強硬派議員は、米公的年金に中国株投資を見合わせるように法改正を準備しているほどだ。

     

    米国資本市場から締め出される中国株は、香港市場へ上場してドル資金を調達する次善の策を取り始めた。だが、香港市場も安住の地ではなくなった。米国の「香港人権法」によって、米国務省が香港の「一国二制度」が守られているかどうかを検証する新たな関門ができた。違反事項があれば、米国が罰則を加える。

     

    こうなると、香港市場も従来の自由闊達さを失いかねない。中国は、香港人権法でじわりと真綿で首を締められる形になってきた。米中冷戦で、中国がきわめて不利な事態に追い込まれることが確実である。

     

    『大紀元』(11月29日付)は、「アリババが香港上場、中国企業は米株市場から撤退の始まりか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「香港情勢が緊迫化した現在、中国巨大企業の香港株式市場への上場が注目を集めた。米サウスカロライナ大学の謝田教授は、米政府と議会が米上場の中国企業に厳しい姿勢を示したことで、「アリババも、その株主構成が米政府に知られることを危惧して、香港市場に上場したのではないか」との見方を示した。米国に亡命した中国人富豪の郭文貴氏は、江沢民元国家主席の一族がアリババやテンセントなど大手企業を実質的に掌握していると暴いたことがある」

     

    アリババは2014年、ニューヨーク市場に上場している。そのアリババが、なぜ香港市場にも上場したのか。その狙いは、冒頭に説明したように米国に上場している中国企業の締出しで上場廃止のリスクが発生しかねないためだ。そこで、香港市場にも上場してリスク分散を図る目的だ。米中冷戦、ここまで現実味を帯び始めてきた。

     

    (2)「米上院と下院は65日、米株式市場に上場する中国企業に米政府による監督を受け入れることを義務付ける法案を提出した。法案は、監査資料や財務諸表を提出しない企業は上場廃止されると規定した。投資家の張氏は大紀元に対して、「米政府からの圧力によって、アリババは米市場から香港市場に移らざるを得なくなった。アリババはまだ信用があるうちに香港に移ると決めたのだろう。上海や深センの株式市場ではなく、香港を選んだ理由はやはり米ドルを獲得したいからだ」との見方を示した」

     

    米上院議員マルコ・ルビオ氏は、連邦公務員向け確定拠出年金(TSP)を監督する連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB)が、中国へのエクスポージャーを増やす判断を先送りしたことを受け、米政府による中国株投資を阻止する法案を計画している。エクスポージャーとは、市場の価格変動のリスクにさらされている資産の度合い(割合)である。ルビオ氏は、連邦公務員向け確定拠出年金が、中国株で運用されるリスクを阻止する法案を準備している。これには反対論もあるが、米中冷戦の中で実現の公算があろう。

     

    (3)「台湾の経済金融評論家・謝金河氏は26日、フェイスブックに、アリババに続きテンセントや小米(Xiaomi、シャオミ)、百度、網易などの現在米市場に上場している中国大手IT企業も香港市場に新規株式公開(IPO)を検討する見通しだと投稿した。同氏は、アリババの香港市場上場は、「米中ハイテク技術新冷戦の始まりだ」との見方を示した」

     

    アリババの香港上場は、他のIT関連企業で米国市場に上場している企業のトップバッターという位置づけである。

     

    (4)「米有識者や当局者は米金融市場で資金を調達する中国企業への締め出し姿勢を強めている。今年3月に設立された外交政策組織、「現在の危険ー中国に関する委員会(CPDC)」の委員長を務めるブライアン・ケネディ氏は、1114日に行われた記者会見で、米中間の貿易不均衡よりも金融セクターにおける不均衡の方が深刻だとの見方を示した。同氏は「中国共産党は米国に経済戦争を仕掛けた。トランプ大統領は対中貿易赤字を強調しているが、対中金融赤字の方が重要だ」と話した。トランプ政権に、さらに厳しい措置を実施して米国から中国企業を排除するよう求めた」

     

    米国では、米中間の貿易不均衡よりも金融セクターの不均衡が、深刻だとの見方が出始めている。これは、世界の金融センターである米国金融市場から、中国を閉出せという強硬論である。これが現実のものになれば、中国経済は日干しにさせられる。中国は、この厳しい現実を知らなければならない。

     

    大紀元英語版は1031日の報道で、米国家安全保障会議(NSC)高官のロジャー・ロビンソン氏が、中国当局が米国金融市場から調達した資金規模は数千億ドルから1兆ドルに向かって拡大していると強い懸念を示したと伝えた。これは、対中国強硬論者にとって、またとない「情報」であろう。仮にこれだけの巨額資金の調達が、米国で不可能になれば、中国の外貨準備高は急減し、中国企業はバタバタと倒産し「地獄」を見る。中国経済は、「ジ・エンド」になる

     

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    中曽根康弘元首相が、101歳の天寿を全うされた。「人生、棺を覆うて定まる」というが今、元首相への評価がされている。

     

    中曽根康弘元首相は、新自由主義の立場であった。すなわち、国家の介入を排して市場経済を重視するものだ。国鉄・専売公社・電電公社の国有事業を民営化した。それぞれ、JR、JT、NTTと社名も経営実態も大きく変って、発展している。

     

    こういう壮大な事業を展開するには、理念的に確固たるものがなければ実現不可能である。この新自由主義は、ノーベル経済学賞に輝いたミルトン・フリードマンの業績である。フリ-ドマンは、大変な親日家であってたびたび訪日した。私は、フリードマンと中曽根氏の接点について知らない。中曽根氏は、書籍を通じて新自由主義を理解されていたと思われる。

     

    米国のレーガン大統領、英国のサッチャー首相、そして中曽根康弘首相の3方は、新自由主義の立場から、それぞれ政策を展開して世界的に大きな影響力を発揮した。だが、中曽根康弘元首相については、右翼などという心ないレッテルが貼られることがしばしばである。それは、日本列島を「不沈空母」にするという発言が大きく響いたと見られる。日本を日米安全保障条約で防衛するという覚悟を見せたものである。

     

    『毎日新聞 電子版』(11月29日付)は、「本質は右翼ではない、部下死なせた戦争が原点=北岡伸一氏」と題する記事を掲載した。北岡氏は、国際協力機構理事長、東大名誉教授である。

     

    (1)「中曽根氏は日本の国力がピークのときに首相を務めたといえ、世界でもよく知られたリーダーだ。「右翼」「ナショナリスト」などと言われるが、それは本質を突いていない。中曽根氏の原点は戦争にある。彼はフィリピンやインドネシアに赴き、ロジスティックスの任務を与えられていたが、その任務中に部下を何十人か死なせてしまった経験がある。あまり知られていないが、国会議員になって最初のスピーチで、アジアに対して大変迷惑をかけたと謝罪している。一方で、平和のためには一定の軍事力が必要だという考え方を持っていた

     

    中曽根康弘元首相は、中国と韓国との外交関係を密にすると同時に、米国との関係は「一枚岩」になっていた。平和のためには一定の軍事力が必要という立場で、それが「日本列島不沈空母論」となったのであろう。日本が、国際社会で存在感を示すようになったのは中曽根時代からだ。サミットの記念写真で、並み居る各国首脳の真ん中に収まる「努力」したエピソードを記している。日本の国際的な地位は、その程度であったのだ。

     

    中曽根康弘元首相は、右翼というレッテルを貼られたが、新自由主義が右翼であるはずがない。レッテル貼りは、相手を深く知ることなく批判するときに良く使われる。韓国の進歩派とされる与党「共に民主党」は、新自由主義を右翼と規定している。その無学ぶりに驚くほかない。だから、経済政策がことごとく失敗し、国民を奈落の底へ蹴落として反省もなく平然としている。

     

    (3)「米国との関係を重要視し、関係強化のためには米国の言うことを聞くのではなく、国力をつけて対等になるようにしなければならないと考えていた。米国にもの申すために、アジアとの関係をよくしなければならないとし、中国の鄧小平と友好関係を築き、韓国訪問の際に演説の冒頭を韓国語で話すなどして関係改善に努めたのも、この考え方からだろう。内政では国鉄民営化などに取り組み、これは現在の政治に続く大きな功績といえる。「戦後政治の総決算」は、中曽根氏以前にも使っていた政治家はいたが、中曽根氏の代名詞になったのもうなずける」

     

    日本の歴史で、米国と外交面で密接な時代は幸運であった。米国と敵対して戦争すれば、途端の苦しみを味わった。ここから引き出されるべき教訓は、「親米」であることだ。戦後の革新政党が、政権を取れなかった一半の理由は、「反米」にあったと見られる。日本人は、伝統的に米国に親しみを持ってきた。日露戦争で勝てた最大の要因は、米国がロシアを説得して講和条約を早めに結ばせたことだ。戦力的に、日本海海戦で勝利したのが限界であった。米国は、日本の実力の限界を知っていたのである。

     

    (4)「政界引退後もシンクタンク(中曽根平和研究所)を設立して積極的に発信していた。日本がとるべき道は何か、ビジョンがある政治家だった。今の日本の政治にとってもヒントになる存在だったのではないか」

     

    「人生、棺を覆うて定まる」という。人生最期の最期、死んで棺桶に入りその蓋が覆ったとき、その人の人生の評価が自他共に確定するとされている。他人の評価でなく、自分自身がいかに生きたか。中曽根康弘元首相は、晩年もシンクタンクをつくり、積極的に発言してきた。その意味では、人生を全うされた希有の生き方をされたと思う。ご冥福をお祈りする。

     

     

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    韓国は、日本の経済産業省から半導体3素材の輸出手続き規制撤廃に、次のような3点を補強する必要があると指摘された。

    .両政策対話が開かれていないなど信頼関係が損なわれている。

    .通常兵器に関する輸出管理の不備(注:キャッチオール規制)。

    .輸出審査体制、人員の脆弱性が解消されなければいけない。

     

    これまで韓国は、戦略物資管理は万全と胸を張ってきた。逆に、日本の北朝鮮への密輸が多いと、無関係なことを指摘して胸の溜飲を下げる振る舞いをしてきた。ところが、今回の経産省からの指摘に対して、「真面目」に対応する気配を見せている。日本から一度、「お灸」をすえられて、身に応えたようである。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月29日付)は、「韓国、輸出管理体制を強化へ、政策対話、加速狙う」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国政府は輸出管理体制を強化する。安全保障にかかわる戦略物資の輸出について、審査を担当する専門部署の職員数を202011日付で5割増やし45人体制にする。韓国側は日本が問題視してきた輸出管理体制を補強することで、政策対話の加速を狙う。日韓が政策対話の再開で合意したのに続き、韓国側は産業通商資源省傘下の専門機関が輸出管理本部の人員拡充を決めた」

     

    韓国は、来年1月1日付で戦略物資管理の審査官を5割増やして45人体制にするという。日本は120名体制とされるので、まだ日本の半分にも達していない。

     

    (2)「日本は韓国を輸出優遇措置の対象となる「グループA(旧ホワイト国)」に戻すために3つの条件を挙げている。政策対話の再開と管理体制の拡充で2点は対応が進むが、軍事転用可能な部品や素材を韓国が輸出する際の審査体制である「キャッチオール規制」では見解の相違が残る。日韓は124日にオーストリアで準備会合、同1620日の間に東京で局長級対話を開く見通し。韓国の産業通商資源省担当者は「輸出管理の厳格化を撤回する条件について忠実に説明していく」としている。12月下旬に中国で開催予定の日韓首脳会談に向けて両国間の協議が本格化する」

     

    下線を引いた「キャッチオール規制」では、日韓で見解が異なるという。「キャッチオール規制」とは、次のようなものである。日本における安全保障貿易管理の枠組みの中で、大量破壊兵器及び通常兵器の開発等に使われる可能性のある貨物の輸出や技術の提供行為などを行う際、日本の経済産業大臣への届け出およびその許可を受けることを義務付けた制度である。韓国は、これを免除しろと「ゴネ」ているのか。「ゴネ得」は許してはいけない。これが、甘えの原因をつくるのだ。

    (3)「日韓両政府は局長級の政策対話を踏まえて、相互の疑念払拭のための改善策を進める考え。元徴用工問題で日本企業に賠償を命じた1810月末の大法院(最高裁)判決以降、悪化が続いてきた日韓関係が改善に向かう契機にもなりそうだ」

     

    韓国は、日韓両政府の局長級政策対話ができることを喜んでいる。

     

    『中央日報』(11月29日付)は、「日本経済産業相、異例の発言『ホワイト国問題、良い方向に行くだろう』

     

    日本の梶山弘志経済産業相は輸出規制問題を協議する韓日両国局長級政策対話が12月第3週(16~20日)の週に東京で行われることになったことについて29日、「会話を重ねていけば良い方向に行くと思う」と語った。

    (4)「同日午前の閣議後の記者会見で、前日に行われた両国の産業当局間課長級協議内容を発表した。梶山経済産業相は「局長級協議にかける期待」を問う質問に対し「韓国の(輸出管理)体制、法整備、(3年半の間開かれていない)局長級(政策)対話などを韓国側がしっかりやることによって、カテゴリーの件(ホワイト国からの韓国排除)は会話を重ねることによって良い方向に行くと思う」と述べた」

     

    下線の部分は、日韓両国が話合いを行い、韓国の脆弱部分を理解して改善すれば、「良い方向へ行く」という一般論を述べたと見られる。私もこの件は、TVでの記者会見で見ていた。トーンは楽観的であったことは事実だ。

     

    (5)「また、フッ化水素など輸出規制強化措置の対象個別3品目についても、「色んな議論を重ねることによって、また1つ1つの実績を重ねることによって、お互いに情勢を知ることが重要だ。その後、良い方向に向かうだろう」と述べた。「まず、(ホワイト国の問題ではなく)3品目の話をすることになるのか」という記者の質問に対し、梶山経済産業相は「輸出管理政策対話が3年半ぶりに再開される状況だが、これが再開されるということは、すべての懸案について良い方向にいく前提で話し合いをするということだと考えている」とも述べた。この日の梶山経済産業相の発言はGSOMIA(韓日軍事情報包括保護協定)が「条件付き延長」された22日以降、日本政府から出た輸出規制に関する言及で最も肯定的なものだ

    経済産業相が代わったということもあろうが、梶山大臣の口調が温和であるので、韓国側の記者は、明るい展望を抱いたと見られる。韓国は先ず、日本の提示した3要件の完全履行をすることだ。

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