勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年12月


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    2008年のリーマンショック後の世界的低金利で、新興国は過剰債務を積み上げ、今は悲鳴を上げている。中でも中国の民間債務残高が2016年以来、対GDP比で200%を超えている。中国の場合、国有企業に多額の債務を背負わせてインフラ投資を行なってきた。これを含めた総債務残高は300%を超える危機的状況にある。BIS(国際決済銀行)が、この事実を発表している。

     

    中国の民間債務残高対GDP比

    2015年 197.60%

      16年 205.40%

      17年 207.30%

      18年 204.80%

    (資料:BIS)

     

    19年の民間債務残高対GDP比は、さらに増えているはずである。米中貿易戦争による輸出減をインフラ投資や住宅投資で賄っているためだ。こういう危機的な状況で、米中貿易戦争を「買って出た」のは、無謀の一語に尽きる。嵐の中へ雨具もなく飛びだすような話だ。

     

    来年の中国経済へ金融的な警戒論が高まっている。本欄では、すでにお馴染みのテーマであるが、これまで中国経済で楽観論を流してきた筋には、青天の霹靂に映っている。中国の金融破綻が現実化した場合、アジア経済に与える影響は大きい。中でも、韓国経済が被る影響は甚大である。

     

    『ブルームバーグ』(12月26日付)は、「デフォルト警戒、 来年の中国・インド発 アジア全域に余波拡大も」と題する記事を掲載した。

     

    来年は中国とインドを中心に、アジア全域でデフォルト(債務不履行)の増勢が強まる可能性がありそうだ。

     

    (1)「中国では天津市所有の商品取引会社、天津物産集団が発行するドル建て債がデフォルトに陥った。公有企業のドル建て債では過去20年間で最大級の債務不履行が発生した後だけに、多くの投資家は中国政府による救済が減ると見込んでいる。また中国企業は借金をして海外企業や不動産、芸術品などを買いあさってきた。これらの要因からみて、中国の国内債券市場のデフォルト金額は過去最大に膨らんだ2019年に続き、20年は状況が一段と悪化する恐れがある。

     

    中国企業に向う見ずな行動が、債務を増やしてきた。不動産バブルに酔ってきたもの。こういう状況下で、しっかりした資金計画などあるはずもない。現在は、資金逼迫で混乱している。

     

    (2)「アジアの一部の国々における景気減速に伴い、企業は流動性の逼迫(ひっぱく)に対して無防備な状況に置かれている。デフォルトの増加が投資家心理にさらに重くのしかかり、高リスク企業の借り入れコストを押し上げる公算が大きい。ヘッジファンドのトリアダ・キャピタルの最高投資責任者、モニカ・シャオ氏によると、中国では資金調達が厳しくなる中、国内債とオフショア債市場の両方で来年はデフォルトが増加する可能性が高く、比較的脆弱な国有企業や地方政府系投資会社が危うくなる恐れがあるという。従来、経済の防波堤とみられてきた中国の不動産部門についても、「影響を受けないと思い込むべきではない」とシャオ氏は話す」

     

    不動産バブルで、巨万の富を築いてきたが、その不動産価格が下落に転じている。売るにも売れない事態を招いている。これが、資金計画を狂わしている。これでは、設備投資する環境でなくなっている。その日暮らしの状況に落込んでいる。

     

    韓国は、中国経済への輸出依存度が4分の1を上回っている。中国経済が落込めば、韓国もひっくり返るという相関関係である。中国の抱える問題は、韓国の問題である

     

    『韓国経済新聞』(12月26日付)は、「在庫率、通貨危機後最高、工場稼動率この10年で最低」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「今年、韓国の製造業は1997年の通貨危機と2008年の金融危機の際に立てた「不名誉な記録」を相次いで塗り替えた。製品販売が急減して在庫が貯まり、企業が生産と投資を控えて生産能力が下落する悪循環が産業・経済指標に明確に現れた」

     

    韓国は、ほぼ10年おきに経済危機に出逢っている。1997年、2008年。この次は、2020年という不気味さを感じる。

    (4)「統計庁が25日に明らかにしたところによると、5月基準で全製造業在庫率は117.9%だ。1998年9月の122.9%以降で最も高い数値を記録してから高い水準を維持している。在庫率は毎月末基準で業が倉庫に積み上げた在庫量(生産者製品在庫指数)を1カ月間に市場に出した出荷量(生産者製品出荷指数)で割って算出する。製品10個を市場に出す時に12個が倉庫に貯まったことになる」

     

    全製造業在庫率は117.9%だ。1998年9月の122.9%以降で最も高い数値になった。高い在庫率は、生産レベルを落とさずにいる結果である。だが、いつまでも無理なことは続けられない。在庫整理へ進んで、生産=操業度は急落する。その時何が起こるか。ウォン安再燃になれば、1ドル=1200ウォンを割り込む。

     

    (5)「生産するほど損失を出すことになるため企業は電気料金と人件費を節約するために稼動を減らすほかはない状況だ。製造業の平均稼動率は1-3月期に71.8%で金融危機直後の2009年1-3月期の66.5%以降で最も低かった。今年4-9月期には稼動率が小幅に上がったが、73%を上回っていた2015~2018年の年平均稼動率の水準には依然として至らなかった」

     

    今年1~3月期に操業度は、71.8%である。すでに70%を割り込んでいるはずだ。この状況で、中国信用危機が発生すれば、韓国経済は確実に飲み込まれる。

    (6)「在庫率上昇と稼動率下落が深刻化し、企業は設備投資を減らした。すでに生産していた物も倉庫に貯まっている上に将来のための設備を新たに入れるのは難しいという判断からだ。設備投資は今年減少が続いた。10月の統計を見ると機械類が4.0%減、運送装備が7.1%減など製造業関連投資の減少が目立った。人的投資である雇用も急減した。製造業の就業者数は昨年4月に減少に転換してから先月まで20カ月連続で減った。過去最長期間の減少だ」

     

    下線をつけた部分が、韓国経済の泣き所である。ここへ、中国の信用危機が波及したならば、「一撃」の下に、韓国経済はノックアウトされる。韓国政府には、そういう危機感はゼロである。


    テイカカズラ
       

    銀行が、不況産業転落とはどういうことか。経済の心臓である銀行が、店舗を減らして収益悪化を食い止めるのは、韓国経済に明るい展望がなくなった意味だ。個人業主も最低賃金引き上げ影響で廃業が盛んである。融資先が減っている以上、その地域に店舗を構える必要性が薄れたのだ。

     

    来年の経済見通しでは、回復して2.3~2.4%成長率を見込めるという希望的な観測もある。韓国5大銀行は、さらに悪化するとの悲観的な見方だ。住宅ローン融資規制が始まっており、収益源が打撃を受けることもある。大幅な店舗整理に着手する理由だ。

     

    銀行の店舗整理は、庶民の生活と関係ないと思われがちだがそうではない。韓国経済が縮小過程に入っている証明だ。中小・零細企業への融資話が減っていることを伺わせている。それは、雇用にも影響する。深刻な事態に向かっている序曲である。

     

    『韓国経済新聞』(12月26日付)は、「韓国5大銀行、来年がもっと心配、89店減らす」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の5大銀行が来年初めまでに89店を減らす。この3年間で最大規模の縮小だ。景気低迷を懸念した銀行がベルトをきつく締め始めたと分析される。

    25日の金融圏によると、新韓銀行、国民銀行、KEBハナ銀行、ウリィ銀行、農協銀行の5大銀行は今月末から来年初めにかけ韓国国内店舗89店を統廃合する。ソウルだけで47店が消える。韓国で最も多い店舗を持つ国民銀行の統廃合規模が37店で最も大きい。KEBハナ銀行は35店、新韓銀行と農協銀行はそれぞれ7店を統廃合する。ウリィ銀行も3店をなくす」

    (1)「5大銀行の国内店舗は6月末の4682店から来年初めには4500店前後に減ることになる。来年の経営状況に対する懸念が店舗数縮小の原因だ。景気が回復する兆しが見えないばかりか「12・16不動産対策」で主要収益源だった住宅担保ローンまで行き詰まった。一部銀行は来年の純利益目標まで引き下げた。ある都市銀行頭取は、「来年には収益性が縮小するほかない。1ウォンでも費用を節約しなければならないという危機感が広まっている」と話した。銀行業界内外では来年以降はさらに大幅の店舗統廃合が推進されるだろうという見通しも出ている」

     

    日本でも「ゼロ金利」によって。銀行の利ざやが極端に低下している。銀行の利ざやは厚くないと、貸出リスクがとれなくなるので消極的な経営姿勢になる。これは、一国経済にとって発展の芽を摘むことだ。このように、銀行の盛衰は経済発展のバロメーターになる。

     

    韓国経済が、いよいよ縮小過程に入っていくことは深刻である。まさに、「文不況」の深化と言うべきだ。

     

    (2)「『来年は今年の業績を維持することすら厳しいだろう』。主要銀行高位関係者の共通した声だ。どこか1行だけの特殊な状況ではない。銀行業界でこの3年間で最も大幅な店舗統廃合が推進される背景に、来年以降の経営状況に対する危機感がある。ほとんどがこれまでより純利益が急激に落ちると判断している。早くから費用削減戦略を立てなくては対応しにくいという判断だ」

    文政権が、「反企業」的なスタイルである。企業に一層、見通しを立ちにくくさせている。これが、「守りの経営」を強いるので、設備投資を控える要因になる。こうして、銀行からの融資話を減らすのだ。韓国の不運は、こういう「反企業」政権が登場したことである。

     

    (3)「5大銀行は2015年だけでも店舗を前年の4226店から5093店に867店増やす「拡張戦略」を展開した。経営基調が変わり始めたのは2016年からだ。新規出店より閉店する数が多くなり全体の規模は毎年縮小だ。2016年に176店、2017年に191店が減り、2018年から統廃合速度を調節した。金融当局が金融疎外階層のできることを懸念し店舗閉鎖を自制するよう注文したためだ。2018年初めには27店、今年初めには17店を減らすのにとどまった。こうした状況で5大銀行が来年初めまでに89店をなくすことにしたのはそれだけ来年の経営が容易でないという話だ

     

    文政権になって、銀行店舗の閉鎖数を抑制させてきた。5大銀行は、こうした行政指導がもはや限界という判断である。来年は、大量の店舗閉鎖に踏み切って、生き残りを図る事態を迎えた。

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    韓国は日本方針受入れ

    日本に妥協する背景は

    韓国客の減少で慌てる

    対話で紛争解決に合意

     

    日韓首脳会談は、13ヶ月ぶりに開催された。6月の大阪G20サミットでは、「8秒握手」に終わった。今回の中国成都での会談は、「50分」の濃密な議論ができたという。ただ、これまで1年以上もの空白期間があったから、一挙にその穴を埋めることはできなかった。両国は、ギリギリまで合意文書発表で詰めたものの、歩み寄りができなかった。話合いの継続では一致した。日韓ともに、解決モードに入っている。このことは重要な一点だ。

     

    韓国は日本方針受入れ

    会談場所は、安倍首相宿泊ホテルになった。韓国側は、日中韓三カ国会義場を提案したが、日本が主張を譲らず安倍首相宿泊ホテルになった。外交儀礼上では、相手側のホテルで会談する場合、会義の主導権はその国に移る例が多いいとされる。今回の日韓首脳会談はどうであったか。

     

    安倍首相は、記者団に公開する会談冒頭シーンで、はっきりと日本側の主張を展開した。すなわち、「朝鮮半島出身労働者の徴用工賠償問題は、1965年の日韓基本条約請求権協定で解決済みである」との立場を強調。昨年10月の韓国大法院判決は国際法違反である。よって、この問題は韓国国内で解決するべきである、とした。

     

    韓国文大統領は、安倍首相からの主張に対して、「過去の主張は繰り返さないが、韓国にもいろいろ案がある」として、安倍発言を受入れた印象である。日本の主張が誤りであれば、首脳会談の席で反論すべきである。これがなかったことは、韓国が責任をもって、徴用工賠償問題の解決に当るという意思表示である。

     

    韓国大統領府は、意識的に文国会議長案に触れないようにしている。否定的なニュアンスをメディアに流している感じすらある。「被害者の反対がある」などと事実に反することを持ち出しているのだ。被害者・遺族は、すでに約1万人の署名を添えて、文議長に早期解決を申し入れている。なぜか、この重要な点が伏せられている。大統領府が、イニシアティブをとった解決案を提示できない焦りでもあろう。

     

    大統領府による「広報活動」で、徴用工賠償問題解決には長期間を要するとの見方が支配的である。私は、この見方に疑問を持つものだ。それは、文国会議長の国会へ上程した案が、まだ審議されないうちに「否定イメージ」を流されているからである。

     

    文議長は、相当な戦術家であるという政治実績を無視している点が気になるのだ。与党「共に民主党」内での紛議を三回も解決に導いた政治手腕の持ち主である。文議長は、来年4月の総選挙に立候補せず引退する。政治家としての「レガシー」が、この徴用工賠償問題である。すでに法案は、文議長のほか与党・野党・無所属の13議員と連名で上程した。この法案の審議状況も見ないで、「徴用工問題関係は長期化する」という説に疑問を感じる。

     

    徴用工問題は、日韓関係に刺さったトゲである。この歴史問題が未解決である限り、日韓は反目し合う状況が続くであろう。この問題が、未解決でもっとも困るのは韓国である。日本は一切、徴用工賠償に関わらないと宣言した以上、韓国が解決しなければ「泥沼」を脱却できないのだ。

     

    韓国は、7月以来「反日不買」宣言して「日本品狩り」を実施している。それが、ブーメランとなって、皮肉にも韓国消費者の不安心理を高めたのである。財布の紐が固くなり、日本品のみならず、韓国製品への消費まで減っている。「人を呪わば穴二つ」で、韓国製品も売上不振に陥っている。

     

    日本に妥協する背景は

    韓国こうして、自ら振り上げた「反日不買」運動を、棚上げせざるを得ない事情に追い込まれている。それらの動きを取り上げたい。

     

    (1)反日不買を理由にして業務を閉鎖していたサイトが業務を再開する。それは、韓国最大の日本旅行コミュニティサイトの「ネイルドン」で、26日から業務を再開する。2003年に開設され現在、133万人の会員を擁するサイトで、日本旅行にまつわる情報交換をしている。(つづく)

     

     

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    中国経済は、最終局面に向かっている。金融緩和しても企業の資金繰りが楽にならないのは、銀行が貸出先の信用状態に見通しを持てず、融資しないからだ。日本でもバブル経済崩壊後に経験済みである。日本が歩んできた道を中国が20年後に歩まされている。お気の毒に。習近平氏の餌食にされたのだ。

     

    『大紀元』(12月25日付)は、「中国中小企業がピンチか、アリババ馬雲氏 1日に5人から借金頼まれた」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国国内景気の低迷で、民間企業の経営環境が厳しくなっている。中国電子商取引最大手、アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は1221日、中国上海市で行われた中国企業家のフォーラムで、「2019年、国内企業家は皆、大変だった」と述べ、自身が1日に5人の友人から「金を貸して」との連絡を受けたと明かした。いっぽう、中国当局は1223日、民間企業への新支援政策を発表した」

     

    アリババ創業者の馬氏は、1日に5人もの友人から借金を申し込まれたという。馬氏の友人だから庶民ではあるまい。富豪であろう。その人たちが銀行から金を借りられないとは、信用状態の悪化によるもの。バブ経済の崩壊局面での特徴的な現象である。

     

    (2)「馬雲氏は、「上海浙江商会年度会議」に出席した際、「以前は、一部の経営者が大変だったが、2019年は多くの企業にとって厳しかった」と述べた。「昨日、多くの友人からお金を貸してくれという電話を受けた。1日に5回も。こ1週間、資金調達のために不動産を売ろうと計画した友人は10人ぐらいいる。確かに厳しい状況だ。しかし、これはまだ難局の始まりかもしれない

     

    不動産を売ろうと思っても売れない。これが、バブル経済崩壊後の現象である。下線の通り、これから中国経済の崩壊が本価格化する。「土地本位制」で保ってきた経済である。これが崩れたら「1巻の終わり」である。不謹慎な言い方かも知れないが私は、必ずこの現象が現れると信じて多くの原稿で書き残してきた。ついに、その時期に来た。感無量である。

     

    (2)「大紀元コメンテーターの李沐陽氏は、馬雲氏の発言は中国民間企業の資金難の深刻さを浮き彫りにしたと指摘した。中国メディアは、中国屈指の大富豪である馬雲氏に電話できる人も「1億元規模以上の資産を持つ大富豪に違いない」と認識する。李沐陽氏は、「大富豪たちも資金難に陥っているなら、他の中小企業の厳しい状況を容易に想像できる」とした」

     

    大富豪も資金繰りに困っているのならば、中小企業はもっと酷いだろうと推測している。中国の信用機構がガタガタになっているのだ。システミックリスク(金融機関の連鎖倒産)になれば、中国は終わりである。その一歩手前で耐えている状況だ。

     

    (3)「この状況に中国当局は22日、民間企業の経営環境を改善する28項目の新措置を公表した。新方針では、国営企業が独占する石油、ガス、鉄道、通信、金融などのセクターを民間企業に開放し、参入規制を緩和する。また、増値税(付加価値税)の税率引き下げ、企業の社会保険率負担の引き下げ、研究開発費用の税控除を増やすなど、民間企業の税負担を一段と減軽すると示した」

     

    国営企業が独占する石油、ガス、鉄道、通信、金融などに民間企業の参入を許可するという。これら業種は、すべて「オールド産業」である。こんな分野に資金を投入するよりも成長分野へ投資した方がプラスである。国有企業を解放するのは、民間資金で救済させる意図なのか。

     

    (4)「新政策は民間企業に対して、北東地域や中西部地域、他の貧困地域への投資を促している。同時に「民間企業と企業家を党の指導の擁護をするように教育するには、企業内に党組織を設立しなければならない」と中国共産党の思想教育強化を強調した。中国当局は、資金難の民間企業による債務不履行(デフォルト)の大規模な発生を回避するために、新28項目の政策を打ち出したのだろう」と李沐陽氏が示した」

     

    ブルームバーグの集計データによれば、中国本土の債券デフォルトは今年1300億元(約2兆円)を突破。2018年に記録した年間記録(1220億元)をすでに上回っている。デフォルトは、今や中国全土を吹きまくっている。中国共産党がいくら思想教育を行なってもデフォルトを食い止められるものではない。共産党が出しゃばれば出しゃばるほど、デフォルトは増えるのだ。

     

    (5)「米サウスカロライナ大学の謝田教授は、「中国当局の新政策は遅すぎた」との見方を示した。当局は近年、国有企業を優遇し民間企業を排除する「国進民退」政策を進めてきた。「このため、多くの民間企業はすでに倒産した。倒産していない企業も瀕死状態になっている

     

    国進民退」政策は、習氏が強引に推し進めた愚策である。国有企業は非効率、民営企業は資金繰り難で淘汰。中国経済に明日があるとは思えないほどの混乱ぶりである。

     

     

     


    ムシトリナデシコ

       

    きょう26日、前法相のチョ・グク氏に拘束前の容疑者尋問(令状実質審査)が行なわれる。チョ前長官の容疑は、民情首席秘書官として在職していた2017年8月、当時の柳在洙(ユ・ジェス)金融委員会局長(55)に対する不正監察もみ消しである。地裁の判断次第で身柄が拘束される。逮捕だ。

     

    「チョ前長官は文在寅(ムン・ジェイン)政権の象徴的人物だ。1980年代の(学生)運動圏出身で、市民団体(参与連帯)で活動しソウル大学教授になった「進歩勢力」の看板スターだった。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾後に執権した新政権で青瓦台(チョンワデ、大統領府) 民情首席秘書官に抜擢され、続いて法務部長官に任命された。正義と改革のアイコンだった彼が重大な法律違反容疑を受ける被疑者になり、拘束される境遇にまで置かれた現実にみじめさを感じるほかない」。以上は、『中央日報』(12月24日付社説)から引用した。

     

    文政権がどういう政権であるか。それは、チョ・グク氏が政権に取り立てられていく過程によく表れている。文大統領の「大学教授好き」が昂じた抜擢である。要するに、実態を伴わなくても理屈・理念を喋れる人間を側近に置きたがる性癖があるのだ。

    『中央日報』(12月25日付)は、「法学者出身の限界かチョ・グク前法務長官を墜落させた『3つの悲劇』」と題する記事を掲載した。

     

    ソウル大ロースクール教授身分の進歩法学者から文在寅(ムン・ジェイン)政権の初代民情首席秘書官となり、「1カ月の法務長官」を経て職権乱用容疑で墜落した原因を分析した。結論は「アマチュアリズムがもたらした悲劇」だ。

    (1)「検察改革に没頭=民情首席秘書官は検察・警察・国家情報院・国税庁・監査院の5大権力機関を管轄する重大な席だ。「大統領の権力は民情首席秘書官から出てくる」という言葉もある。金大中(キム・デジュン)政権以降の20人の民情首席秘書官のうち17人は元法曹人だ。組織掌握力と検察との意思疎通が重視されたからだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領がチョ・グク前長官を初代民情首席秘書官に抜てきしたのは改革対象の筆頭に挙げられる検察改革の適任者と見なしたからだ。チョ前長官は民情首席秘書官に就任した後、検察の捜査より制度改革に没頭した。しかし権力機関の運用に関する専門性と現場捜査経験が不足した。検証不十分で「人事惨事」が続いた。特別監察班に対する理解不足でキム・テウ元検察捜査官の内部不正暴露事件も生じた」

     

    民情首席秘書官は、検察・警察・国家情報院・国税庁・監査院の5大権力機関を管轄する重大な任務を帯びている部署である。ここへ学者上がりを着かせた人選が間違えている。研究室で学生相手の教授が、海千山千の猛者を相手にできるはずがない。チョ氏は、内部事情も分からないままに「利用された」のであろう。事件のもみ消しは、チョ氏の上位者から指示されたという見方に説得力がある。

     

    これが事実とすれば、文政権は瓦解する。進歩派が「事件もみ消し」に関与したとすれば、「第二のロウソク・デモ」が必至となる。文大統領は口を開けば、「平等・正義」を語る。その政権の足下では、こんな汚いことが行なわれているとなれば、信用は総崩れである。


    (2)「民情首席室を掌握できず=チョ・グク首席秘書官の民情首席室には検察の捜査権とその運用メカニズムを熟知している人がいなかった。教授出身のチョ前長官だけでなく大統領親戚管理業務などを総括した白元宇(ぺク・ウォンウ)前民情秘書官(現共に民主党民主研究院副院長)も捜査・調査・監察経験が一度もない親盧(親盧武鉉)・親文(親文在寅)系の核心人物だった」

     

    文大統領は、民情主席秘書官に実務経験のない人物を就任させている。これは、文大統領自信がアマチュア政治家である証拠だ。文氏は、実現性のない理想を語ることが大好きであり、その延長で、人事が甘いのであろう。

     

    (3)禹柄宇の前轍を踏むのか=尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長とチョ・グク前長官は出身成分が異なる。検察関係者は「大統領との関係から見ると、趙前長官が『聖骨』ならば尹総長は『6頭品』」とし「検察総長の人選当時、趙前長官は尹総長の任命に最後まで反対したが、文大統領が貫徹させたと聞いている」と伝えた。その代わりチョ前長官は当時の奉旭(ボン・ウク)最高検察庁次長を推したという話があった」

     

    このパラグラフでは、聞き慣れない言葉が出てくる。聖骨とか6頭品とは何か。これは、朝鮮半島の古代国家新羅で導入されていた身分制度である。中でも父母共に王族に属する者を特別に聖骨(ソンゴル)と呼んだ。以下、六頭品、五頭品、四頭品、平民と下る序列を行った。

     

    ここでは、文大統領にとってもっとも命令を聞く人物の品定めをしている。「聖骨」は、絶対服従、次が「6頭品」であり、忠誠度は二番目だという。検察人事をこういう大統領「忠誠度」で決める当りに、大統領が司法権へも介入できる仕組みを示している。

     

    文大統領は、三権分立を金科玉条にしているが、人事権を握っているのは大統領である。間接的に、この人事権を行使すれば、思うように動かせるのだ。大法院の徴用工裁判判決を「司法の判断」と仰々しく言っているが、あの判決を誘導したのは文大統領である。私は確信を持っている。だから、判決結果をさわらせたくないのだ。

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