2008年のリーマンショック後の世界的低金利で、新興国は過剰債務を積み上げ、今は悲鳴を上げている。中でも中国の民間債務残高が2016年以来、対GDP比で200%を超えている。中国の場合、国有企業に多額の債務を背負わせてインフラ投資を行なってきた。これを含めた総債務残高は300%を超える危機的状況にある。BIS(国際決済銀行)が、この事実を発表している。
中国の民間債務残高対GDP比
2015年 197.60%
16年 205.40%
17年 207.30%
18年 204.80%
(資料:BIS)
19年の民間債務残高対GDP比は、さらに増えているはずである。米中貿易戦争による輸出減をインフラ投資や住宅投資で賄っているためだ。こういう危機的な状況で、米中貿易戦争を「買って出た」のは、無謀の一語に尽きる。嵐の中へ雨具もなく飛びだすような話だ。
来年の中国経済へ金融的な警戒論が高まっている。本欄では、すでにお馴染みのテーマであるが、これまで中国経済で楽観論を流してきた筋には、青天の霹靂に映っている。中国の金融破綻が現実化した場合、アジア経済に与える影響は大きい。中でも、韓国経済が被る影響は甚大である。
『ブルームバーグ』(12月26日付)は、「デフォルト警戒、 来年の中国・インド発 アジア全域に余波拡大も」と題する記事を掲載した。
来年は中国とインドを中心に、アジア全域でデフォルト(債務不履行)の増勢が強まる可能性がありそうだ。
(1)「中国では天津市所有の商品取引会社、天津物産集団が発行するドル建て債がデフォルトに陥った。公有企業のドル建て債では過去20年間で最大級の債務不履行が発生した後だけに、多くの投資家は中国政府による救済が減ると見込んでいる。また中国企業は借金をして海外企業や不動産、芸術品などを買いあさってきた。これらの要因からみて、中国の国内債券市場のデフォルト金額は過去最大に膨らんだ2019年に続き、20年は状況が一段と悪化する恐れがある。
中国企業に向う見ずな行動が、債務を増やしてきた。不動産バブルに酔ってきたもの。こういう状況下で、しっかりした資金計画などあるはずもない。現在は、資金逼迫で混乱している。
(2)「アジアの一部の国々における景気減速に伴い、企業は流動性の逼迫(ひっぱく)に対して無防備な状況に置かれている。デフォルトの増加が投資家心理にさらに重くのしかかり、高リスク企業の借り入れコストを押し上げる公算が大きい。ヘッジファンドのトリアダ・キャピタルの最高投資責任者、モニカ・シャオ氏によると、中国では資金調達が厳しくなる中、国内債とオフショア債市場の両方で来年はデフォルトが増加する可能性が高く、比較的脆弱な国有企業や地方政府系投資会社が危うくなる恐れがあるという。従来、経済の防波堤とみられてきた中国の不動産部門についても、「影響を受けないと思い込むべきではない」とシャオ氏は話す」
不動産バブルで、巨万の富を築いてきたが、その不動産価格が下落に転じている。売るにも売れない事態を招いている。これが、資金計画を狂わしている。これでは、設備投資する環境でなくなっている。その日暮らしの状況に落込んでいる。
韓国は、中国経済への輸出依存度が4分の1を上回っている。中国経済が落込めば、韓国もひっくり返るという相関関係である。中国の抱える問題は、韓国の問題である
『韓国経済新聞』(12月26日付)は、「在庫率、通貨危機後最高、工場稼動率この10年で最低」と題する記事を掲載した。
(3)「今年、韓国の製造業は1997年の通貨危機と2008年の金融危機の際に立てた「不名誉な記録」を相次いで塗り替えた。製品販売が急減して在庫が貯まり、企業が生産と投資を控えて生産能力が下落する悪循環が産業・経済指標に明確に現れた」
韓国は、ほぼ10年おきに経済危機に出逢っている。1997年、2008年。この次は、2020年という不気味さを感じる。
(4)「統計庁が25日に明らかにしたところによると、5月基準で全製造業在庫率は117.9%だ。1998年9月の122.9%以降で最も高い数値を記録してから高い水準を維持している。在庫率は毎月末基準で業が倉庫に積み上げた在庫量(生産者製品在庫指数)を1カ月間に市場に出した出荷量(生産者製品出荷指数)で割って算出する。製品10個を市場に出す時に12個が倉庫に貯まったことになる」
全製造業在庫率は117.9%だ。1998年9月の122.9%以降で最も高い数値になった。高い在庫率は、生産レベルを落とさずにいる結果である。だが、いつまでも無理なことは続けられない。在庫整理へ進んで、生産=操業度は急落する。その時何が起こるか。ウォン安再燃になれば、1ドル=1200ウォンを割り込む。
(5)「生産するほど損失を出すことになるため企業は電気料金と人件費を節約するために稼動を減らすほかはない状況だ。製造業の平均稼動率は1-3月期に71.8%で金融危機直後の2009年1-3月期の66.5%以降で最も低かった。今年4-9月期には稼動率が小幅に上がったが、73%を上回っていた2015~2018年の年平均稼動率の水準には依然として至らなかった」
今年1~3月期に操業度は、71.8%である。すでに70%を割り込んでいるはずだ。この状況で、中国信用危機が発生すれば、韓国経済は確実に飲み込まれる。
(6)「在庫率上昇と稼動率下落が深刻化し、企業は設備投資を減らした。すでに生産していた物も倉庫に貯まっている上に将来のための設備を新たに入れるのは難しいという判断からだ。設備投資は今年減少が続いた。10月の統計を見ると機械類が4.0%減、運送装備が7.1%減など製造業関連投資の減少が目立った。人的投資である雇用も急減した。製造業の就業者数は昨年4月に減少に転換してから先月まで20カ月連続で減った。過去最長期間の減少だ」
下線をつけた部分が、韓国経済の泣き所である。ここへ、中国の信用危機が波及したならば、「一撃」の下に、韓国経済はノックアウトされる。韓国政府には、そういう危機感はゼロである。