勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年01月

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    韓国経済は、音を立てて崩れている感じである。最低賃金の大幅引上げ(2年間で29%)と週労働52時間が、大きなブレーキになっている。現実を無視して、理想論を追いかけすぎた反動に見舞われている。昨年の実質GDPは、2.0%成長であった。名目GDP成長率は、1.2%の模様だ。この結果、GDPデフレーターはマイナス0.8%見当と見られ、これがGDP成長率を押し上げたもの。不況期特有であるGDPの「名実逆転」が起こっていた。

     

    文政権は、学生運動家上がりの集団である。北朝鮮問題になると目の色を変えるが、経済成長には無頓着である。最賃の大幅引上げと労働時間短縮を組み合わせたらどうなるか。経済が失速するということに気付かなかったのだ。この集団が、韓国経済の舵取りをしている以上、潜在成長率は低下して当然である。一言で表わせば、韓国経済は衰退過程に嵌り込んでいる。

     

    『中央日報』(1月28日付)は、「下降一途の韓国経済基礎体力、OECD推算潜在成長率 10年間で1.4%ポイント低下」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の潜在成長率が2%台中盤まで落ちたという経済協力開発機構(OECD)の分析が公表された。潜在成長率は労働力や資本のような生産要素を最大限活用して景気過熱を招かずに実現できる成長率だ。国家経済の基礎体力を示す。



    (1)「28日、OECD発表によれば、韓国の潜在成長率予想は今年2.5%だ。これまでの潜在成長率の推移を示す。

    2021年 2.4%

    2020年 2.5%

    2019年 2.7%

    2018年 2.9%

    2010年 3.9%

    2009年 3.8%

    潜在成長率が3%台から2%台に落ちるのに9年(2009~2018年)かかっているが、2%台から1%台に落ちるまでにかかる時間はこれより短くなる可能性が高い」

     

     

    潜在成長率は、生産年齢人口比率と深い関係がある。
                         生産年齢人口比率

    2014年 73.41%(ピーク)

      15年 73.36%

      16年 73.16%

      17年 72.92%

      18年 72.61%

    (資料:世界銀行)

     

    上記の生産年齢人口比率は、2014年がピークである。その後は、「人口オーナス期」に移行しているが、その低下幅は微々たるもの。一方、潜在成長率低下は大幅である。経済政策の失敗がもたらした結果と見るほかない。

     


    (2)「人口高齢化が急速に進む中、革新不振、サービス業生産性の停滞などが複合的に作用して下落ペースが速まっているとみられている。15~64歳の生産年齢人口は2017年を基点に引き続き減少していく見通しだ。韓国経済の生産性向上ペースも遅くなっている。米国の経済研究機関「コンファレンスボード」によると、韓国の全要素生産性増加率は2017年1.2%から2018年0.5%に下落した。全要素生産性は労働と資本の投入量では説明できない付加価値の増加分を意味する。生産過程での革新と関連が深い」

     

    韓国の全要素生産性増加率は、2017年1.2%から2018年0.5%に下落している。この理由は、失業率の増加と労働時間短縮がブレーキをかけたと見られる。生産量が減ったのだから、全要素生産性増加率が低下して当然であろう。

     

    韓国雇用労働部が52時間を超えて勤務していた107万人余りを調査したところ、52時間制導入で平均月収が38万8000ウォン減少していた。上限の68時間近く勤務してきた労働者にとって、時間にすると23.5%の時間短縮だが、休日手当や夜勤手当、超過勤労手当等の割増支給を考慮すると手取り収入は20%から30%減ることになるという。生活の質を高めるはずの52時間制が、経済不安を高めるのだ。

     

    (3)「実質成長率は、低下する潜在成長率にも及ばなくなっている。韓国の昨年の国内総生産(GDP)成長率は2%だ。OECD推算の潜在成長率に比べて0.7%ポイントも低い。今年、政府の成長率目標(2.4%)を達成するといっても、潜在成長率を下回っている。潜在成長率が低くなり、政府の拡張財政や韓国銀行の政策金利の利下げのような通貨政策が大きな効果をあげにくくなっているという意味だ

    低下している潜在成長率を引上げるには、構造的な脆弱性にメスを入れるほかない。労働市場の流動化である。働き方の多様性を実現することだ。労組が反対しても国民を救済する目的であれば、強硬策で突破するのも政治力である。文政権には、それができないのであろう。

     

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    1月28日午前の東京株式市場で日経平均株価は続落した。午前終値は前日比219円安の2万3124円51銭。中国で発生した新型肺炎の感染拡大への警戒感から27日の米国株が下落し、日本株にも売りが優勢になったもの。

     

    今後の株価下落で参考になるのは、2002年~03年に猛威を奮ったSARS(重症急性呼吸器症候群)時の株価動向だ。当時は02年11月に発症が確認され、3年4月に株価は底入れした。同7月にWHOに封じ込め完了が宣言された経緯がある。

     

    『ロイター』(1月28日付)は、「世界的に株価下落、新型肺炎への懸念強まる:識者はこうみる」と題する記事を掲載した。

     

    27日は新型肺炎への懸念で世界的に株が売られ、米主要株価指数はいずれも1.5%超下落。原油価格も3カ月ぶりの安値を付けたほか、人民元も年初来安値まで下げた。

     

    (1)「感染拡大はこれまでの措置では流行を抑止できていないことのシグナルだと市場が恐れていることは明らかだ。株式相場全体や米金利でもリスクオフの動きになっており、市場では6月の利下げ確率が約50%、12月までの利下げは確実だと織り込んでいる」(ナットウエスト・マーケッツの米州戦略部長、ジョン・ブリッグス氏)

     

    米国株は、過去10年間、最高のパフォーマンスを上げてきた。その反動もあり、きつい下げ場面も予想される。ただ、今年は大統領選挙の年であり、市場は利下げを織りこむだろう、という予想だ。

     


    (2)「投資家は問う前にまず売りを出す。株価下落は新型コロナウイルスの拡大に対する理性的な反応だ。中国経済、そしておそらく世界経済は短期的に打撃を受けるだろう。しかし、中期的には買いの好機であることが証明される公算が大きい。例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)が発生した2002年11月半ば03年3月半ばには、S&P500は底を打つまでに12%下落した。しかしその後切り返し、同年を19%高で終えている」(インディペンデント・アドバイザー・アライアンスの最高投資責任者クリス・ザッカレリ氏)

      

     SARSの例では、米国株(S&P500)が底を打つまでに12%下落し、その後2003年には19%高になった。この例から言えば、当面は売って様子を見ながら、買い戻す姿勢を持つことが「新型コロナウイルス」騒ぎを乗切る方法のようである。

     

    当面の世界経済への影響はどうなるか。『ロイター』(1月24日付)「新型肺炎、世界経済に伝染リスク、あらゆる事態に備えよ」は、次のように伝えている。

     

    (3)「新型コロナウイルスがどこまで拡大するか把握するのは難しい。1918年から19年に全世界で流行したスペイン風邪では、5000万人の死者が出た。世界銀行が2014年に出した推計では、これと規模と影響が類似した伝染病が広がれば、損失は世界の総生産(GDP)の5%近く、額にして3兆ドルに達する見通しだ。当時に比べて世界経済は成長しているため、今なら額はさらに膨らむかもしれない」

     


    (4)「大半の伝染病は、これよりも死者数がはるかに少なく、地域も限られている。0203年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行による死者は800人弱で、大半はアジアだった。ただし、SARSへの恐怖は、観光業への深刻な打撃など、他の影響ももたらした。世界保健機関(WHO)は、感染が確認された都市への海外からの渡航が半分未満に減ったと推計している。調査によると、経済的損失は400億600億ドルに及んだ。ただ、各地の経済は急回復した」

     

    SARSでは、観光業への影響が大きく出た。中国人観光客に依存する日本への影響は避けられないだろう。この面では、警戒すべきだ。

     

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    朝鮮李朝は、1392~1910年まで清国の属国であった。儒教朱子学を国教として取り入れ、仏教を弾圧した国である。朝鮮は、身も心もすべて中国に捧げた関係だ。今なお韓国にとって、中国の存在はきわめて大きい重圧感として残っている。その鬱積した不満を中国に向けず、日本へぶつけてくるのはなぜか。

     

    本来ならば、中国に向けて518年間の支配に抗議すべきところ、完全に沈黙している。日韓併合は、1910~45年の36年間である。この期間への不平不満が最高潮だ。75年経った今でも、日本に対して「謝罪と賠償」要求を繰り返している。

     

    韓国に見る日中への対応の仕方に大きな違いがあるのは、いかに中国に支配された518年間か恐怖に満ちていたかを証明している。だから、「物言えば唇寒し」なのだ。逆に、日本統治には優しさがあったから恐怖感はない。与しやすいゆえに、「付け入って」来るのだろう。

     


    韓国が、中国を恐れて「一言半句」の抗議もできない問題は二つある。

    第一は、環境問題である。中国か飛来する「微小粒子状物質(PM.5)」である。大気汚染原因の3分の1は、中国からの飛来である。これは、日中韓三カ国の共同調査で判明した事実だ。韓国政府は、中国へ善処方を要求するのでなく、韓国国民に「我慢せよ」と強いているほど。本末転倒だ。

     

    第二は、安全保障問題である。韓国が、米国製のTHAAD(超高高度ミサイル網)を設置したところ、中国が激怒して経済制裁を加えた。そこで韓国は、国権に関わる「三不」という約束(後述)をさせられるという国辱を受けている。それでも、韓国は抗議するでもなく、唯々諾々として「尻尾」を振っている。不思議な中韓関係である。

     

    『朝鮮日報』(1月27日付)は、「韓国環境部の中国恐怖症?」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ヒョイン社会政策部記者である。

     

    (1)「今月14日に環境部が配布した「2020年 第1回韓中粒子状物質専門家会議」の報道資料には、「国内の粒子状物質の中国からの影響に対する国民の過剰認識を改善し…」と書かれている。環境部はこの日、大気・環境の専門家らを集め、粒子状物質関連の韓中協力に関するこれまでの推進経過を発表し、今後の政策に対する意見を聴取すると説明した。専門家と話し合う事案の一つに、中国発の粒子状物質に対してわが国民が抱いている「過剰認識」の改善についても含めていたのだ」

     

    韓国の大気汚染原因の3割は、中国の「微小粒子状物質(PM.5)」であることが科学的に証明された。韓国政府は、この事実を伏せて国民に「過剰認識」しないよう説得しようというのだ。反日姿勢とは180度違う寛容さである。中国に対してここまで「へりくだっている」理由は、事大主義の表れであろう。それにしても醜い態度だ。

     


    (2)「今後の中国との協力について模索する場で、わが国民の認識を改めさせると言い出すとは、どれほど中国政府の機嫌をうかがっているのだろうか。このような政府の態度は趙明来(チョ・ミョンレ)環境部長官の発言にも表れた。この日の会議に出席した趙長官は、「国民の中国発粒子状物質に対する認識が変わるとともに、韓中の協力を通じ、粒子状物質を実質的に削減することに速度を上げて取り組む必要がある」と述べた」

     

    これだけ、「負け犬根性丸出し」の韓国政府に驚く。日本に立ち向かうように、戦いを挑んだらどうか。こういう韓国を見ていると、日本が徴用工賠償問題において「政経非分離」で対応したのは正解である。韓国の急所を掴む。外交戦術においては必要だ。これが、日韓外交を正常化させるルールとなるだろう。

     

    (3)「チョ長官は、「昨年11月、韓中日3か国の大気汚染物質に関する相互の影響をまとめた報告書で、初めて中国発の粒子状物質の割合に関する公式統計が発表された」として「多少残念ではあるが、とにかく中国政府が公式に認めた数値という点で大きな意味があった」と成果を明らかにした。チョ長官が言及した報告書は「韓国の微小粒子状物質(PM2.5)の32%が中国から来ている」という内容が盛り込まれた韓中日の共同研究結果だ

     

    日中韓の共同研究で、韓国の大気汚染源の32%が中国から飛来するPM2.5であることが確認された。韓国は、この是正を中国に求めるべきだが、泣き寝入りする積もりらしい。反日姿勢から見ると考えられない低姿勢である。不可解の一語だ。

     

    (4)「中国政府は、この内容を公式に発表したことがない。中国国営の英字新聞「環球時報」は、この報告書の内容を報じたものの、中国発の粒子状物質が韓国の粒子状物質の32%を占めるという内容は削除し「韓国のスモッグは実際には『メイド・イン・コリア』という事実が明らかになった」と書いた。わが政府はこの問題については一度も言及しなかった」

     

    中国政府は、中国国内で事実に反する発表をしている。韓国は当然、抗議すべきだが沈黙している。韓国のこういう態度が、中国を増長させる。韓国の弱腰が、中韓外交を不平等にさせている理由だ。

     

    第二の安全保障問題では、「三不」がその象徴である。「三不」の内容は、次のような内容だ。韓国が、中国に約束した安全保障政策への「縛り」である。

    1.米国のミサイル防衛(MD)体制に加わらない。

    2.韓米日安保協力が三カ国軍事同盟に発展することはない。

    3.THAAD(サード)の追加配備は検討しない。

     

    米韓は軍事同盟を結んでいる。中国は、その韓国の安全保障政策にくさびを打ち込んだに等しい行為をしたのだ。日本であれば、絶対にこういう国辱的な約束をするはずがない。それほど、非常識、破天荒なものである。ここら当りに、文政権の無節操さが見られる。米国にとっては、韓国が信頼できない国であろう。


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    人間誰でも、常に思っていることは、つい喋ってしまうものだ。文大統領は、インタビューで「去年、一番残念だったことは何かと聞かれ」、その答えが「北朝鮮」と一発回答。これが報じられるや、ネットでは「不満の声で一杯」という。一国大統領であれば、国内問題を答えるべきだったであろう。

     

    文氏にとっては、北朝鮮との間が上手くいくことが最善のことらしい。5200万国民の暮らし向きが良くなるかどうか、それは大したことではない。それよりも、南北交流の実現で、民族統一への足掛かりを固めたい。それが、最大の願いであるようだ。

     

    文氏は、学生時代から北朝鮮の「チュチェ思想」を信奉してきた。現在の大統領府秘書官は、当時の同志である。一丸となって、南北交流へ政治生命を賭ける集団だ。学生時代の意識のままであるから、「韓国経済をどうするか」などという「夢のない話「に乗るはずがない。年齢を重ねても、政治の夢は「南北統一」に昇華されているのだ。ある意味で、「おめでたい集団」である。

     


    『レコードチャイナ』(1月27日付)は、「文大統領が昨年最も残念だったことは? その答えに韓国ネットは不満」と題する記事を掲載した。

     

    韓国『MBC』(1月24日付)よると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が昨年最も残念だったことは「ハノイでの米朝首脳会談の決裂」だと述べた。

     

    (1)「記事によると、文大統領は同日、SBSラジオ番組との電話インタビューに応じた。「昨年最も残念だった、悔いがあることは何か」との質問に「国民の暮らしがより良くならなかったことも残念だが、特に残念だったのは米朝対話がうまくいかなかったこと」「ハノイでの会談が成果なく終わったことが何よりも残念だった」と答えたという。また、「米朝対話に進展があれば、朝鮮半島の平和も南北協力も実現が早まった」「故郷と家族を恋しく思う離散家族にも希望を与えることができた」とも話した」

     

    文大統領による北朝鮮への思いは、両親が北朝鮮出身ということが大きな影響を与えているだろう。文氏が子どもの頃、両親から「故郷」北朝鮮への望郷の念を聞かされ育ったことは想像に難くない。父親は地元・農協に勤めており課長職であったという。戦前は、それなりの資産家であったに違いない。農協で課長を務めるくらいだから最低限、「中等教育」は受けている。それが、朝鮮戦争で韓国へ逃げてきた身だから、裸一貫での再出発である。韓国では随分、生活に苦労したと伝えられている。父親は商売が下手で失敗、母親が行商で生活を支えたという。その苦労が、北朝鮮への思いとなって子どもたちに話したであろう。

     

    文氏は、こういう話が「擦り込み現象」になって、何はともあれ「北朝鮮」といことに結びつくのだ。個人的な北朝鮮「望郷の念」が、南北統一論へと飛躍している。純粋な昔の思いが、他の重要項目を忘れ大統領の主要関心事になってしまったのだ。

     

    (2)「さらに、自身も2004年の南北離散家族の再会行事の際、母親を伴い叔母(母の実妹)に会ったことに言及し「人生で最高の親孝行になったのではと思う」と語りながらも、「母が元気なうちに故郷に連れていくという約束を果たせなかった」と悔いをにじませたという」

     

    下線部分は、38度線で仕切られた南北朝鮮の悲劇が、そのまま伝わってくる話だ。文氏は、この思いを背負って南北統一に賭けている。北朝鮮の専制体制を相手にして、統一が可能と見ているのだろうか。冷静な目で見れば、きわめて困難である。そのために、韓国国民の生活を犠牲にすることは絶対に許されるはずがない。文氏には、そういうバランス感覚が不足している。その意味では、真の政治家とは言い難いのだ。

     

    (3)「この記事に、韓国のネットユーザーからは、次のような批判が殺到した。

    .国民の暮らしより、北朝鮮の心配だなんて
    .国民よりも北朝鮮が優先だと自白したな

    .北朝鮮、北朝鮮って、いい加減にしてほしい

    .何があっても結局は北朝鮮か

    .最も残念なことは、前の大統領選挙だよ」

     

    ネットの批判は、正直である。韓国国民にとっては、北朝鮮よりも日々の暮しをどうするか。それが、焦点になっている。就職問題が、最も悩める問題であろう。労組や市民団体は、今や体制派である。生活の苦労はない。これら体制派は、政府が最低賃金の大幅引上げや、太陽光発電補助金で生活を保証してくれる。文政権は、打ち出の小槌である。一般国民は、こういうアンバランスな政治に嫌気が差している。文大統領は、それに気付いていないのだ。結果は、4月の総選挙にどう表れるか、だ。


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    武漢市の総人口1100万人のうち、500万人以上の人々がすでに脱出した。武漢市長が明らかにしたもの。これが、「動く病原体」として中国全土は言うに及ばず、全世界へ病原菌をばらまくことになった。発表されている感染者数と死亡者数は、病院で確認しただけである。病院で診療を受けるまでに2日も待たされている。このことから、今後の感染者数と死亡者数はどれだけ増えるか見当もつかない状況である。

     

    海外の感染症専門家は、一様に感染力の強さを指摘している。WHO(世界保健機関)は、中国発表の資料によって実態よりも軽症と見誤った可能性が指摘されている。至急、「緊急事態」という認識を発表すべきであろう。WHO事務局長は直接、中国へ赴き実態調査を迫られている。

     

    『大紀元』(1月27日付)は、「新型肺炎、米専門家『熱核反応のようなパンデミック』2月に感染者25万人と推定」と題する記事を掲載した。

     

    中国では、新型コロナウイルスによる肺炎の感染が急速に拡大している。米国の専門家は、新型肺炎は「熱核反応のようなパンデミック(世界的な感染の流行)」になる恐れがあると警告した。中国当局は27日、1月26日24時までに、30の省・市で感染者が2744人確認され、うち461人が重症者と発表した。また、死亡者が80人にのぼり、感染した疑いのある患者は5794人だという。

     

    (1)「ニュージーランド・メディア『Newshub』(1月20日付)によると、欧米の伝染病学者は、新型肺炎の基本再生産数、RO(1人の患者から何人に感染させるかを示す数値)は3.8~3.3人と推測している。さらに4人と指摘する声もある。世界保健機関(WHO)の推定値である1.4~2.5人を上回った。研究家らは、一部の感染者に明らかな症状がないことに注目し、「移動する隠れた感染者」と呼んでいる」

     

    WHO推定のRO(感染拡大率)は、1.4~3.3としている。欧米の専門家は、このWHOの推測するROが小規模として疑問視している。今回の新型ウイルスは、潜伏期間が長く、その間にも感染能力が高いことから、「移動する隠れた感染者」を生み出す危険性が高くなっている。こういう悪条件を考えれば、素人にもWHO予測が低すぎることは理解できるのだ。WHOともあろう権威ある機関が、どうしてこういうことになったのか。私は、中国政府の圧力があったと見る。春節期間に当るだけに、「緊急事態」という表現を避けたかったのであろう。

     


    (2)「『Newshub』は、米ハーバード大学の公衆衛生学教授のエリック・ファイグルーディン博士のツイッター投稿を引用した。ファイグルーディン博士は、新型コロナウイルスのRO3.8人と主張し、「熱核反応のような世界的大流行になるとした。同氏は投稿で、新型肺炎に関する研究図表を並べ、「誇張していない」「恐慌を煽っていない。私は科学者である。このウイルスは非常に恐ろしい」としたROの数値が大きいほど、まん延を防ぎにくい。ファイグルーディン博士によると、季節性インフルエンザのRO1.28人。2009年に世界的大流行になった新型インフルエンザ(H1N1)は1.48人。1918年、全世界に流行ったスペイン風邪のRO1.8人だった。同博士は、24日までに、新型コロナウイルスによる肺炎の感染者は132000273000人に拡大すると推算した」

     

    (3)「米ボイス・オブ・アメリカ(VOA26日によれば、英国のランカスター大学、グラスゴー大学ウイルス研究センター、米国のフロリダ大学の伝染病学者4人が、新型肺炎のデータ分析をした後、123日、研究報告を発表した。同報告によると、新型肺炎のRO3.6人から4.0人となっている。武漢市で明らかになった症例は全体の51%に過ぎないとの見方を示した。新型コロナウイルスの伝播のスピードは、200203年にかけて広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)よりも速いとした。また、「感染の拡大が抑えられず、または伝播のスピードに変化がなければ、今後、中国の他の都市でも爆発的に感染が広がり、海外へのまん延も加速化すると予測する。将来14日間内(24日まで)の武漢での感染者は25万人を超えると推測」とした」

     

    過去のRO比較

    季節性インフルエンザ 1.28人

    2009年 世界的大流行の新型インフルエンザ(H1N1)1.48人

    1918年 全世界に流行ったスペイン風邪 1.8人

     

    武漢ウイルスRO予想比較

    WHO(今回) 1.4~3.3人

    英米4学者   3.6~4.0人

    ファイグルーディン博士 3.8人

     

    WHO予測のROが1.4~3.3人とかなりの幅を持たせている。これは、自信を持って予測できなかったことを示している。ならば、むしろ未発表の方が混乱を生まなかったであろう。WHOは、最悪事態を想定した対策を立てる役割を放棄した。

     

    (4)「英国のランカスター大学、グラスゴー大学ウイルス研究センター、米国のフロリダ大学の伝染病学者4は、感染の拡大が抑えられず、または伝播のスピードに変化がなければ、今後、中国の他の都市でも爆発的に感染が広がり、海外へのまん延も加速化すると予測する。将来14日間内(24日まで)の武漢での感染者は25万人を超えると推測」とした。報告は、湖北省政府が感染拡大防止の対策として武漢市を封鎖したことについて、効果は乏しいと指摘した。「他の突発的コロナウイルスと比べると、新型コロナウイルスのROが非常に高い。感染まん延の防止が非常に困難になるだろう」

     

    武漢市の都市封鎖の効果は乏しいとしている。全人口の半分近い500万人がすでに市を脱出しており、「移動する隠れた感染者」の危険性を負っているからだ。2月4日までに武漢の感染者は25万を超えると警鐘を鳴らしている。

     

    (5)「米ハーバード大学のファイグルーディン博士は、スペイン風邪が流行った1918年と比べて現代社会は飛行機、列車などで地域間の移動が迅速になったため、「われわれは1918年以来の大まん延に直面している」と警告した。スペイン風邪の死者は5000万人を上回ったと言われる。博士はWHOに対して、新型肺炎について早期に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に宣言すべきだとした」。

     

    スペイン風邪当時と現在では、人々の移動距離は飛躍的な伸びとなっている。ウイルス感染は、この移動距離に比例して増えると見なければならない。スペイン風邪の死者は、5000万人である。今回は厳戒体制を取るべきとしている。傾聴すべき見方だ。


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