2月の製造業PMI(購買担当者景況感)は、想像を絶する悪化であった。好不況ラインの50を大幅に下回る35.7に落ち込んだ。例年2月の製造業PMIは、春節明けで跳ね上がるパターンだが、今回は全く逆の結果になった。新型コロナウイルス発症という緊急事態発生が原因である。
新型コロナウイルス伝染で、春節後に人間の移動や物流が大幅に制限されている。こういう中で、生産がほぼストップする事態に見舞われて再開が遅々としている。
広東省政府は、出稼ぎ労働者の復帰を支援するため、貸し切り列車を手配するほどだ。省政府の高官は記者会見で「広東省は、情報技術(IT)や自動車、石油化学、家電の企業、特にファーウェイZTE、美的、GACグループの生産再開を最優先事項に位置付けている」と説明した(『ロイター』2月28日付け)。
『日本経済新聞 電子版』(2月29日付け)は、「中国景況感、2月過去最悪の35.7、新型コロナ打撃」と題する記事を掲載した。
(1)「中国国家統計局が29日発表した2月の製造業の購買担当者景気指数(PMI)は前月より14.3ポイント低い35.7だった。リーマン・ショック直後の08年11月(38.8)を下回り、過去最低を記録した。非製造業のPMIも同24.5ポイント低い29.6と過去最低だった。今回のPMIは新型コロナウイルスの拡大を全面的に反映する初めての経済指標だ。新型コロナの中国経済への打撃の大きさを印象づけた」
製造業PMIは3000社を対象にアンケート調査で算出する。新規受注や生産が50を上回れば拡大、下回れば縮小を示す。
製造業PMI 35.7
非製造業PMI 29.6
これまでのPMIでは、非製造業が製造業を上回ってきたが2月は逆になった。ウイルス禍で、人々の移動が制限されるなど外出を控えた結果、非製造業=サービス業のPMIの落込みが大きかった。
景気のバロメータになる製造業PMIは、リーマン・ショック時を下回る落込みとなった。リーマン・ショックの震源地は米国だ。中国は、事態を引き起こした当事国でなかった。今回の新型コロナウイルス感染は、中国が震源地である。危機感が、いやが上にも高まったのは当然であろう。
(2)「2月は、柱の新規受注が前月比22.1ポイント低い29.3、生産も同23.5ポイント低い27.8となり、いずれも過去最低だった。新型コロナで新規受注は激減、多くの工場は停止して操業再開が遅れている。輸出に限った新規受注も同20ポイント低い28.7と大幅に悪化した」
新規受注 29.3
生産 27.8
輸出 28.7
製造業主要項目のPMIを見れば、今後の見通しも暗い。コロナ禍が原因である以上、回復時期が長引くのは当然である。世界経済が、新型コロナウイルス感染の拡大で、一段と「障壁」を高めて防疫体制を固めなければならないのだ。当然、中国の輸出にブレーキがかかるはずである。
世界保健機関(WHO)は28日、新型コロナウイルスによる肺炎の地域別危険性評価で、世界全体を「高い」から、最高の「非常に高い」に引き上げた。ウイルス感染が世界各地に拡大し、死者・感染者数の増加に歯止めがかからないことから、世界的に流行していると認定した形である。こういう状況下で、中国ビジネスに制約がかかるのは不可避である。
2月のPMI(製造業・非製造業)から判断して、中国の1~3月期のGDPがマイナス成長になる公算が強まった。