韓国では、新型コロナウイルスが手の施しようもない猛威を振るっている。韓国は28日10時、前日の午後4時からこの日午前9時までに新たに256人の感染と発表した。これで感染者数は計2022人。26日午前の発表で1000人を超えてから2日でほぼ倍増した。死者数は前日午後の発表と変わらず13人である。
新規の感染者256人のうち231人は、南東部の大邱市(182人)と慶尚北道(49人)で確認された。大邱の感染者は計1314人、慶尚北道は計394人に増えた。集団感染の震源地・大邸が激増している。
韓国政府はますます窮地に立たされている。国民の批判をかわすべく、ようやく中国を入国制限リストに入れた。最後まで、中国への政治的配慮で門戸を開けておいたが、国内の反発が強く、重い腰を上げた形だ。中国共産党系メディア『環球時報』が、社説で「外交よりも防疫重視」を掲げて、中国による韓国人入国阻止を正当化している。その通りであって、韓国による過度の「中国思いやり」が、完全に裏目に出た。文政権の失態である。
『朝鮮日報』(2月28日付)は、「『韓国の方が新型コロナ危険』中国人学生、続々帰国」と題する記事を掲載した。
(1)「全国各地の中国人留学生たちが「韓国の方がもっと危険だ」として中国に帰国したり、開講を前に韓国に来る予定だった中国人留学生が続々と入国を取り消したりしている。新型コロナウイルス感染症の最初の発生地である中国を出て、急いで韓国に来ようとしていた数週間前の状況とは全く違う状況だ」
下線部分に無念さが表れている。震源地の中国が、被害国の韓国から逃げ出すという「アベコベ現象」が起こっている。政権の誤った外交感覚が、こういう取り返しのつかない事態を招いている。
(2)「大邱大学では最近、中国人留学生7人が帰国した。3月の開講を前に入国し、寮などに入っていたが、大邱で感染者が急増すると、あわてて荷造りをして帰国したという。ソウル大学医学部では、中国籍を持つ延辺大学医学部出身の大学院生が、親の帰国要求に応じて休学届を出して帰ったとのことだ。忠清北道では入国を延期するケースが相次いでいる。26日に入国する予定だった忠北大学の中国人留学生90人のうち、入国した留学生は33人に過ぎなかった。清州大学も同日入国予定だった21人の中国人留学生のうち、来たのは8人だけだった。蔚山大学も中国人留学生277人のうち169人が入国を見合わせている。7人は入国しないと通知してきた」
韓国の各地の大学で、中国人留学生が帰国や入国取り止めという騒ぎである。気の毒というほかない。日本もこういう事態を招かないように細心の注意が必要だ。
米国務省は2月26日、韓国に対する旅行警報を第2段階(強い注意を払う)から第3段階(旅行の再考)へと引き上げた。国務省は今月22日、韓国と日本に対して第2段階の警報を出した。それからわずか4日で、韓国についてのみ第3段階へとレベルを高めた。第4段階の警報は、米国人の「旅行禁止」である。
米国疾病対策センター(CDC)は今月24日、韓国に対する独自の旅行警報を、中国と同じ第3段階(不必要な旅行の自粛)へと引き上げた。米軍インド・太平洋司令部も同日、「インド・太平洋司令官は、コロナ19の危険低減に向けたCDCの旅行警報に合わせて、必須でない韓国訪問を全て制限する」と声明を出した。
ドナルド・トランプ大統領は26日(現地時間)、韓国に対する入国制限措置の可能性について「適切な時期にそれをやることもあり得る」としつつも「今すぐは適切なときではない」とした。すぐに措置を取ることはないが、武漢コロナ拡大の推移によっては入国制限のような強硬措置を取ることもあり得る、という意味だ。
以上は、『朝鮮日報』(2月28日付)の報道である。韓国を巡る情勢は厳しくなっている。日本が、仮にこういう事態に陥ったならば、東京五輪の開催は不可能である。今、その瀬戸際にある。