勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年02月

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    韓国文政権は、中国の属国に対するような振る舞いに甘んじている。新駐韓中国大使は、韓国大統領へ信任状を提出する前に、韓国記者団と会見するルール違反をした。これは、韓国を軽視した行為である。外交慣例では、信任状提出後に外交活動するのが「決まり」だ。駐韓中国大使は、このルール破りをしてまで自らを「大物大使」として印象づけようとしている。

     

    記者会見した理由は、韓国政府の行なった中国人入国の一時的制限が、WHO(世界保健機関)の発表した勧告に反するというもの。早期の撤回を要請した。韓国の行なった中国人入国制限は、日本政府の発表した内容と同一である。中国政府は、日本に対して目立った抗議をしなかった。韓国では、「旧宗主国・中国」のポーズを取って威圧しているのだ。

     

    文政権は、中国にひれ伏す感じで外交をしている。日本に対する態度とは、180度異なるのだ。日本には何を間違えたのか、「戦勝国」気取りの姿勢である。中国に対しては「ひれ伏す」という表現がピッタリだ。こういう好対照な外交姿勢の裏にあるのは、韓国の拭えない劣等感の存在であろう。今や、中国への過度の依存が韓国へ不利益をもたらす。こういう批判が出始めている。韓国での新しい動きである。

     


    『朝鮮日報』(2月4日付)は、「過度の中国市場依存『中国リスク』ますます拡大」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「『武漢肺炎』の影響で、韓国の自動車部品メーカーは中国工場での操業を相次いで中断し、韓国の自動車産業の生産に影響を及ぼし始めた。双竜自動車は4日から平沢工場の生産ラインで稼働を中断する。現代・起亜自動車も先週末から蔚山、華城、光州の工場で減産に入った。中国製部品は代替調達先を確保することが難しく、事態が長期化すれば、大きな打撃となり得る。一方、中国以外の地域にグローバルな部品調達網を確保しているルノーサムスンと韓国GMは特に影響がないという。行き過ぎた中国偏重のリスクが現実となった格好だ」

     

    中国は2003年のSARSに続いて、今回の新型コロナウイルスと二度も世界的な感染症を引き起こし、混乱のルツボに巻き込んでいる。原因は、二つ考えられる。第一は、不衛生な環境の放置。第二は、共産党政権による言論弾圧が初期対応を誤らせた結果である。要するに、政治体制の全く異なる中国と経済的に深い関係を結べば、こういう潜在的なリスクが顕在化するのである。韓国は、自由主義の日本とは角突き合う関係である一方、専制主義の中国とは「同盟国」のような倒錯関係を結んでいる。この矛楯した外交関係が、韓国を新型コロナウイルス危機に巻き込んでいる背景である。

     

    (2)「中国の内需市場が停滞し、生産やサプライチェーンが断たれると、韓国が最も大きな影響を受ける。韓国経済は輸出入が国内総生産(GDP)の87%を占めるほど対外依存度が高く、とりわけ中国だけで輸出全体の25%、輸入全体の21%を占める。韓国経済は長年中国特需に安住し、過度に中国に依存する偏った構造となってしまった。衣料、化粧品、農水産物、生活用品などの業種は対中輸出の割合が6080%にも達する。観光・旅行産業は中国がせきをしただけでも生死に関わる状況だ

     

    下線部分は、韓国にとっては諸刃の剣となっている。中国政府は、韓国の喉元に「匕首」(あいくち)を突付ける有利性を持っている。力尽くでも、韓国を従わせる立場を保持しているのだ。THAAD(超高高度ミサイル網)設置で韓国に制裁を加えている理由がこれだ。韓国は、反日姿勢を強める「手段」として、意図的に中国へ接近した面もあろう。現在、それらがすべて「裏目」に出ているのだ。

     

    (3)「人的な依存も深まっており、韓国を訪れる外国人に占める中国人の割合が30%台半ばまで高まり、外国人労働者の36%は中国人だ。建設現場や低賃金業種、療養施設などは中国人なしでは運営できない状況となった。韓国に来る留学生の半数が中国人であり、一部地方大学は中国人留学生なしでは経営が成り立たない中国の経済成長率が1ポイント低下すれば、韓国の成長率が0.5ポイント低下し、13万人分の雇用が失われるという。武漢肺炎の問題が長期化すれば、韓国の消費が0.30.4%落ち込むとの分析も聞かれる」

     

    SARSの時は、2四半期連続でGDPマイナス成長に陥った。このことから言えば、「韓国の消費が0.3~0.4%落ち込む」程度で済むはずがない。マイナス成長は必至だ。この状態に落込んで初めて、中国への「過度の依存」によるマイナスを認識するであろう。現状では、中韓は、一蓮托生の関係にある。

     

    (4)「中国は、それを韓国に対する交渉カードに遠慮なく使ってくる国だ。3年前、中国が終末高高度防衛ミサイル(THAAD)問題で報復に出た際、韓国が受けた被害は10兆ウォン(約9100億円)に達した。中国は体制の性格上、いつリスクに突然変異するか分からない。武漢肺炎はその一例にすぎない。今からでも長期的な計画を持ち、対中依存度を抑えるべきだ。対応を誤れば、国が中国の捕虜になりかねない」

     

    中国経済の未来に希望があるだろうか。共産党員だけが、裕福な生活を送るシステムである。今回の新型コロナウイルスの感染地域が、世界中に拡大された背景は、その権威主義にある。共産党の威厳に傷つくことは一切認めない「無謬主義」がもたらした悲劇でもある。この無謬主義が改善されれば、共産党政権でなくなるのだ。

     

    韓国は、こういう根本矛楯を抱える中国と、深入りし過ぎている。民主主義国は、民主主義国と同盟を結ぶ。これが、カントの『永遠平和のために』で示されている結論である。韓国は、米国と中国との間で「二股外交」を行って来た失敗が、今回の悲劇を生んでいる原因と指摘するほかない。

     

     

     

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    4日、新型コロナウイルスに感染した患者数が、3日の発表から新たに3235人増えて、2万438人になった。また死亡した人も、感染拡大が最も深刻な湖北省で新たに64人増え、合わせて425人となった。湖北省では3日、プレハブ建設された専門病院で患者の治療が始まっている。約1000人の受け入れ可能だが、1日で患者が新たに2000人以上増え、医療体制が追いつかない状況が続いている。NHKが2月4日午前11時58分に伝えた。

     

    中国当局は、解決への楽観的な見通しを語っている。「2月8日がピーク」とか、「2月15日が峠」などと断片的に情報を流しているが、診察から見放されている市民も多く、「地獄絵」そのものである。

     

    中国では、情報管理されているため詳細な状況が不明であった。だが、『大紀元』情報によって、新型コロナウイルス感染者は、病院の検査キットが不足して、満足の行く検査も受けられずにいる現実が判明した。中国当局は、意図的に楽観的情報を流しているが、早期の沈静化は期待できない状況だ。

     

    『大紀元』(2月4日付)は、「新型肺炎、封鎖された武漢市『検査キット不足で確定診断できない』」と題する記事を掲載した。

     

    新型肺炎の発生源である中国湖北省武漢市の各病院では、新型コロナウイルスを診断する検査キットの不足が続いており、患者の大半が検査を受けられないと市民が訴えた。

     


    (1)「市の中学校教諭の戢琳(シユウ リン)さんは、夫を看病した際、新型コロナウイルスに感染したとみられる。夫は120日から微熱が続いたため、当初は一般的な風邪だと考え、市販の風邪薬を服用していた。23日、武漢市政府が封鎖措置を突如、実施したため、夫婦は新型肺炎に感染した可能性があると疑い始めた」

     

    1月20日から微熱が出始める。23日に新型肺炎に感染したと疑い始める。

     

    (2)「中国政府系メディアが、症状の軽い市民は、交差感染を避けるよう、自宅で自主隔離した方がよいと宣伝したため、夫婦は自宅で様子をみていた。しかし、130日になると、戢さんの夫は症状が急激に悪化したため、市の普仁医院でCT検査を受けた。その結果は、肺がすでに白くなったことが判明。31日に呼吸困難に陥った」

     

    1月30日に急激悪化。肺がすでに白くなったと判明。31日に呼吸困難に陥る。

     

    (3)「その時、戢さん自身にも新型肺炎の症状が現れた。その後、戢さんの家族は夫婦2人を、新型肺炎の指定治療病院である協和医院や同済医院など5つの病院へ連れて行ったが、新型肺炎の感染は確認されなかった。「5つの病院に、検査キットが足りないから、新型肺炎の確定ができないと言われた」と戢さんの姪が話した。感染確認ができないため、入院ができず、自宅で隔離するしかないという。「武漢市には、新型コロナウイルスの検査キットが置いてある病院は10カ所しかない。各病院では毎日、ウイルス検査を受けるために市民が長蛇の列を作っている」

     

    病院に検査キット足りず、感染確認ができない。各病院では毎日、ウイルス検査を受けるために市民が長蛇の列を作っている。

     

    (4)「数千人の患者に対して、病院側は10個、または100個の検査キットしか提供できないのが今の武漢市の現状だ。検査キットをもらえない患者はみな、新型肺炎の感染の疑いがあると診断されている。こういう人たちは、患者の89割を占めるだろう」。親族によれば、市内の交通機関がすべて停止されたため、病院へ行くのも一苦労だ。「110番を2時間ダイヤルして救急車を要請しても、なかなか来ない。市の救急車は全部出動していると言われた」。戢さんの家族は、武漢市内は今、「まるでゴーストタウンだ」と話した。

     

    検査キット不足で、「感染者認知」ができない状態だ。検査キットが十分に配られれば、感染者数は、一挙に増加することは間違いない。「感染者」に数えられることは、幸運というべき状態だ。

     

    3日、共産党の最高指導部、政治局常務委員会は、「今回明るみに出た、対応の欠陥や至らなかった点を教訓とし、緊急対応の能力を高めなければならない」と一連の対応に問題があったことを初めて認めた。共産党の最高指導部が対応の不備を認めるのは異例とされる。

     

    先に指摘したように、病院に検査キットが僅かしかない現状で、爆発的に増える感染者に「満足な診察もできない」地獄絵が続いている。最高指導部は、国民に向けて対応の欠陥を認めるほかないのだ。



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    韓国自動車産業のトップ、現代自動車が中国で生産する部品在庫の払底で、7日から全工場で操業を停止する。中国が、新型コロナウイルス感染防止で、一斉に休暇を延ばしている結果、部品供給が止まっていることに伴う措置である。

     

    現代・起亜自動車は、部品供給調達コスト節減のため中国へ大部分統合した。この集約化が、新型コロナウイルスという伏兵登場で、自動車組立てにマイナスという予想外の事態に遭遇することになった。現代・起亜自動車の部品協力会社は、海外自動車メーカーと比較して、中国へ集約化されている。今回のよう事態が起こると、部品調達先を変更もできず「共倒れ」事態になりかねない。政治体制の異なる国に協力会社を置くことは、今回のような思わぬ事態を招くことが分かった。

     

    『中央日報』(2月4日付)は、「現代車、韓国内のすべての工場をシャットダウン…新型コロナで部品調達に滞り」と題する記事を掲載した。

     

    今月7日から現代車の全工場が「シャットダウン(一時停止)」に入る。現代自動車労使は4日、工場運営委員会を開き、7日から蔚山(ウルサン)・全州(チョンジュ)・牙山(アサン)など韓国内のすべての工場で生産を中断して休業することに決めたと明らかにした。暫定休業期間は10~11日までだ。


    (1)「現代車のシャットダウンは中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染病により一部の部品調達が滞っているためだ。車両内の配線をまとめる装置「ワイヤリングハーネス」が底をついた。
    最初に停止した工場は、ジェネシスのセダンモデルを生産している蔚山第5工場で、4日午前から生産ラインがストップした。現代車は蔚山第5工場をはじめ、すべての工場が生産を順次中断する」

     

    現代自は、すでに2月4日から蔚山第5工場で生産ラインがストップしている。7日から全工場の操業が止まる事態だ。

     

    (2)「現代車は、「部品調達が滞り、完成車生産ライン別に弾力的に休業を実施することにした」とし「工場別の休業日程などは事業部別に協議を進めることにした」と明らかにした。最初に稼働が中断したジェネシスの休業日程は11日までに決まった。現代車関係者は、「中国のワイヤリングハーネス工場が、中国政府の稼働中断を指示した9日以降に再稼働するという前提の下に再稼働する時点」としながら「9日以後、中国部品工場が稼動しなければこれも確信を持ってお話できない」と説明した」

     

    全工場の操業停止は、11日までの予定だ。これは、中国の部品工場が9日以降に再稼働する前提での決定である。仮に、中国での操業再開が遅れれば、現代自の工場再開も12日以降にずれ込む。


    (3)「11日の現代車シャットダウンは予定されていた。現代車グループはすでに現代・起亜車乗用車20種類の部品が6日午後3時を基点に底をつくだろうとの内部報告書を作成していた。現代車グループはその後、部品企業を通じて国内および東南アジア工場でワイヤリングハーネスを増産して事態に備える形で解決策を見出そうとした。それでは追いつかないという判断を下したことが分かった。業界関係者は、「中国の部品供給が8割以上を占めている。違う場所で増産をするといっても、短期的な調達問題を解決することはできなかっただろう」と話した」

     

    現代自は、部品供給の8割が中国である。これでは、部品調達先をすぐに他国へ振り分ける芸当はできない。改めて、カウントリー・リスクとして、「中国リスク」の大きさを噛みしめなければならなくなった。



    (4)「シャットダウンによる現代車の損失は計り知れないほど莫大だ。現代車は昨年、国内で178万台余りを生産した。
    現代車グループ関係者は、「部品調達に必要とされる期間を最大限短縮して生産の支障を最小化できるように多角的に対応方案を用意する」と話した。起亜車は今週、生産量を調整する減産方式で工場を稼動することにした。だが、来週までに中国から部品が調達できなければ起亜車も工場をストップしなければならない」

    下線部分のように、部品調達コストの最大限切下げを図る目的が、今回のような突発的事故が起こるとお手上げになる。「保険コスト」という意味では最低限、韓国国内で調達するメリットを再認識させたと言えよう。これは、韓国自動車業界として取り組むべき課題であろう。

     

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    文政権は、4月の総選挙で与党を勝利に導く思惑ですべての政策標準を合せている。その目玉は、3月の習近平国家主席の訪韓実現である。現在の中国は、国を挙げて新型コロナウイルス対策に取り組んでいる最中だ。このため、習氏の「3月訪韓」は消えつつある。

     

    韓国医師会は新型コロナウイルス予防目的で、二度目の「中国人訪韓遮断」要請を行なうほど危機感を示している。文政権は依然、習氏の「3月訪韓」を諦め切れず、ウイルス対策でも煮え切らない態度を取っている。万一、韓国で新型コロナウイルス感染者が激増する事態に陥れば、文政権と与党の支持は一挙に落込み、総選挙の大敗が取沙汰されている。

     

    『中央日報』(2月4日付)は、「総選挙用の『習近平訪韓』執着の終わり」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のナム・ジョンホ論説委員である。

     

    (1)「韓国で総選挙を控えた与党としては、習近平中国国家主席の訪韓ほど垂涎もののカードも珍しい。習主席の訪韓で韓中関係に温もりが戻り、韓国経済の足を引っ張っていた限韓令(注:経済制裁)が解消されるなら、現政権の政治的功績として遜色ないものになるだろう。だが、思わぬ障害物が飛び出してきた。日々激しさが増す武漢肺炎だ。習主席の訪韓に大きな期待をかけていた現政権は、悪化の一途をたどる中国の状況にもかかわらず、強行しようとする勢いだ。今月2日、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が韓中間の外交日程に関連して「滞りなく推進する」と明らかにしたことからも分かる」

     

    文政権が、中国の置かれている状況にお構いなく「訪韓計画」を推進している。これは、韓国の総選挙にプラスになるという思惑からだ。韓国外交は、すべて身勝手で自国の物差しで動いている。反日もその典型である。反日をやれば、国民の支持が得られるという思惑が先行する。

     


    (2)「立場を変えて考えてみよう。原因不明の病気で一日数十人ずつ亡くなっているこの状況で、最高指導者が国を空けることができようか。中国政府側は今回の肺炎がここ7~10日間にピークを迎えた後、安定傾向に入ると発表した。韓国政府もそう信じたいだろう。だが、他の専門家の意見は異なる。香港の伝染病専門家は4~5月ごろ絶頂に達した後、6~7月から弱くなると見通した。武漢肺炎より伝染性の弱い重症急性呼吸器症候群(SARS)も2002年11月に初めての患者が報告された後、翌年7月まで9カ月間、世界を恐怖に陥れた。前例に照らし、3月中に習主席が本国を留守にできるほど事態が好転すると期待するのは無理だ」

     

    新型コロナウイルスは、中国当局によれば「ここ7~10日間でピークを迎えた後、安定傾向に入る」と発言している。この見方は、甘いと言うのが大勢だ。4~5月にピークを迎えるという見方さえある。こうなれば、習氏の「3月訪韓」はあり得ないことになる。文政権が「3月訪韓」に拘るのは総選挙用のほかに、習氏の「4月訪日」前に実現して、日本を出し抜く思惑も秘められている。

     


    (3)「このような状況にも、韓国政府は習主席の3月訪韓をどうにか成功させるために中国の顔色伺いをしているそぶりが歴然だ。万に一つ、習主席が3月に韓国に来ると言っても、これは時期的に良い選択でない。そのころは武漢肺炎がさらに猛威を振るいながら対中感情が最悪まで落ちている可能性が高い。習主席訪韓は韓中間の和解の契機にしなければならない重要なイベントだ。だが、中国発の原因不明の病気で国内被害が広がった場合、反中デモが起きないとも限らない。和気あいあいとなるべき雰囲気に氷水を浴びせる格好になるのが目に見えている。これだけではなく、中国が習主席3月訪韓の対価として大きな見返りを求めないとも限らない。そのような場合、「屈辱外交」論争から抜け出すことができなくなる

    下線部が重要である。仮に「3月訪韓」が実現しても、新型コロナウイルス感染者が増えている状況では、韓国内の「反中ムード」が最高になる危険性が高い。また、中国側から過大な要求を韓国に突付けるリスクもある。このように、習氏の3月訪韓はあり得ないという見方である。

     

    日本にとっては、中韓の問題であるから無関係である。一方で中国外交部は、「4月訪日」準備が進んでいると発言している。

     

     

     

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    中国政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるべく、企業に休業延長を命令している。中国が、世界の工場として部品供給の役割を担っている以上、操業ストップの影響が世界中に広がる危険性が高まってきた。

     

    東日本大震災でも、世界への部品供給がストップして大きな影響を与えた。今回の新型コロナウイルスによる生産ストップはその比でなく、世界経済の成長率に影響を与える事態が予想され始めた。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月3日付)は、「新型ウイルス禍、世界の製造業に供給懸念」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の新型コロナウイルス感染拡大で工場の閉鎖が増えている。世界の産業サプライチェーン(供給網)への影響は何年も尾を引く可能性がある。重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した2003年に比べ、世界の商品輸出に占める中国のシェアは今や倍余りに拡大している。広東省の18年輸出だけでも、17年前の中国全体の輸出量を上回る」

     

    中国の輸出規模の拡大は、それだけ世界経済に与える影響の大きさを示す。2018年の輸出総額は、SARS(2003年)の輸出総額に比べ5.6倍になっている。これは当然、世界経済に与える影響の大きさを示している。その中国で長期の生産中止が起これば、サプライチェーンへの影響は大きくなろう。

     

    中国の生産が正常化する前提は、新型コロナウイルス感染の終息がいつになるかに関わっている。この問題は、別の記事で取り上げた。詳細はそちらを見ていただくとして、世界の疫学専門家は終息まで「数週間」を必要とする立場だ。数週間といえば、3月一杯である。それまで、生産が正常化しないとなれば、世界のサプライチェーンへの影響は必至である。

     

    (2)「製造業者は以前から、春節(旧正月)の影響を嘆いていた。例年1月か2月に当たる連休中、中国の工場は稼働停止になるからだ。今年は保健当局のウイルス感染への対応により、連休が実質的に延長された。これに伴い中国の鉱工業生産も、一段と長期にわたって低迷する恐れがある。ここ10年ほど、1月と2月の中国鉱工業生産は年間の残り10カ月の平均を20%余り下回り続けてきた

     

    中国の春節は不定期である。太陽暦でないことの悩みだ。例年1~2月の経済統計数字は、合計して平均するという面倒さを伴っている。1~2月は長期の休暇になるので、残り10ヶ月の平均生産を約20%も下回るパターンを繰返している。それが、さらに長期の休暇になれば、1~2ヶ月の生産の落込みが大幅になろう。

     

    (3)「作業員の休暇日数はさまざまだが、平均的な作業員が2週間丸々休みを取ると仮定すれば、2カ月間の稼働が2割下がるとして、連休中からその後にかけて鉱工業生産が通常の約5分の1の水準になるということだ。さらに、中国が重要なのは、単に規模が大きいからというだけではない。中国の世界貿易機関(WTO)加盟から間もない03年当時に比べ、世界のサプライチェーンはかなり入り組んでいる。中国製造の比率がごく小さい製品でさえ、生産が停止すれば影響を被る。しかも製品の複雑性が増し、特殊技術メーカーの代替を探すのは難しい」

     

    中国製造業が長期休業を迫られれば、世界のサプライチェーンに大きな影響が出る。一方で、中国製造業の経営自体が「左前」になる根本的なリスクを背負っている。このことにも目を向けなければならない。

     

    1~2月の稼働率が2割下がることは、鉱工業生産がそれだけ低下する意味だ。中国企業は、それを前提にして資金繰りも立てているであろう。だが、ウイルス禍によってそれ以下の操業度に落ちれば、企業経営は困難になる。中国国家統計局が、2月3日に発表した昨年12月の工業利益は、前年同月比6.3%減であった。2019年の年間では、前年比3.3%減である。工業利益が、すでにこのような低迷状態である。ここへウイルス禍の長期休業が加われば、中国製造業自体が保たなくなるだろう。

     


    (4)「想定外のサプライショックが起きた過去の例を見ても気持ちが沈む。米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は11年、東日本大震災の発生を受けて欧米工場の稼働を停止。16年にも稼働停止に追い込まれた。日本以外で見つけることが難しい重要部品が突如として入手できなくなったためだ。タイで11年に発生した洪水では、直接的な影響が和らいだ後も、長年にわたるサプライチェーン改革を余儀なくされた」

     

    (5)「15年に発表された調査によると、東日本大震災が付加価値面で及ぼした経済的影響のうち最大60%が他国の負担となり、米国は25%を負担する格好となった。国際通貨基金(IMF)は、いわゆる高リスクの輸入品に対し、極めて大きな影響を指摘している。複雑な機械や自動車部品、ハードドライブ、そしてサプライショックに特に影響されやすい特定の電子機器だ。そうした輸入が1%増えるごとに、輸入元の国が自然災害に見舞われれば、輸入国ではその年の輸出が0.7%減る

     

    下線部分は、重要な指摘である。電子機器部品では、その輸入が1%増えるごとに、輸入元の国が自然災害に見舞われれば、部品輸入国ではその年の製品輸出が0.7%減る、という試算である。中国は、SARSに続いて今回の新型ウイルス禍である。中国で、電子機器部品を生産するデメリットが急浮上している。米国商務長官は、中国リスクを指摘して米本国への生産機能移転を呼びかけているほどだ。

     

    (6)「国際経済学者の多くが、中国の景気減速が世界の産出量をどの程度押し下げるかを解明しようとしてきた。だが、そうした分析は大方がサプライチェーンの混乱ではなく需要への影響を焦点にしている。現在行われている閉鎖や退避といった対応は、SARS、タイ洪水、東日本大震災の際の規模を超えている。工場などの閉鎖は始まったばかりだが、産業界に占める中国の重要性から判断して、世界の製造業者に前例のない苦境をもたらそうとしている。この先長年にわたって影響が実感されるかもしれない

     

    下線部分は、言外に中国リスクを示唆している。米国は、米中貿易戦争の一環として、今回の新型コロナウイルス問題をサプライチェーン・リスクとして捉えるだろう。中国にとっては、実に間の悪い時点で起こった問題である。長期的に見れば、これが中国経済衰退への引き金になるだろう。

     

     

     

     

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