韓国文政権は、中国の属国に対するような振る舞いに甘んじている。新駐韓中国大使は、韓国大統領へ信任状を提出する前に、韓国記者団と会見するルール違反をした。これは、韓国を軽視した行為である。外交慣例では、信任状提出後に外交活動するのが「決まり」だ。駐韓中国大使は、このルール破りをしてまで自らを「大物大使」として印象づけようとしている。
記者会見した理由は、韓国政府の行なった中国人入国の一時的制限が、WHO(世界保健機関)の発表した勧告に反するというもの。早期の撤回を要請した。韓国の行なった中国人入国制限は、日本政府の発表した内容と同一である。中国政府は、日本に対して目立った抗議をしなかった。韓国では、「旧宗主国・中国」のポーズを取って威圧しているのだ。
文政権は、中国にひれ伏す感じで外交をしている。日本に対する態度とは、180度異なるのだ。日本には何を間違えたのか、「戦勝国」気取りの姿勢である。中国に対しては「ひれ伏す」という表現がピッタリだ。こういう好対照な外交姿勢の裏にあるのは、韓国の拭えない劣等感の存在であろう。今や、中国への過度の依存が韓国へ不利益をもたらす。こういう批判が出始めている。韓国での新しい動きである。
『朝鮮日報』(2月4日付)は、「過度の中国市場依存『中国リスク』ますます拡大」と題する社説を掲載した。
(1)「『武漢肺炎』の影響で、韓国の自動車部品メーカーは中国工場での操業を相次いで中断し、韓国の自動車産業の生産に影響を及ぼし始めた。双竜自動車は4日から平沢工場の生産ラインで稼働を中断する。現代・起亜自動車も先週末から蔚山、華城、光州の工場で減産に入った。中国製部品は代替調達先を確保することが難しく、事態が長期化すれば、大きな打撃となり得る。一方、中国以外の地域にグローバルな部品調達網を確保しているルノーサムスンと韓国GMは特に影響がないという。行き過ぎた中国偏重のリスクが現実となった格好だ」
中国は2003年のSARSに続いて、今回の新型コロナウイルスと二度も世界的な感染症を引き起こし、混乱のルツボに巻き込んでいる。原因は、二つ考えられる。第一は、不衛生な環境の放置。第二は、共産党政権による言論弾圧が初期対応を誤らせた結果である。要するに、政治体制の全く異なる中国と経済的に深い関係を結べば、こういう潜在的なリスクが顕在化するのである。韓国は、自由主義の日本とは角突き合う関係である一方、専制主義の中国とは「同盟国」のような倒錯関係を結んでいる。この矛楯した外交関係が、韓国を新型コロナウイルス危機に巻き込んでいる背景である。
(2)「中国の内需市場が停滞し、生産やサプライチェーンが断たれると、韓国が最も大きな影響を受ける。韓国経済は輸出入が国内総生産(GDP)の87%を占めるほど対外依存度が高く、とりわけ中国だけで輸出全体の25%、輸入全体の21%を占める。韓国経済は長年中国特需に安住し、過度に中国に依存する偏った構造となってしまった。衣料、化粧品、農水産物、生活用品などの業種は対中輸出の割合が60-80%にも達する。観光・旅行産業は中国がせきをしただけでも生死に関わる状況だ」
下線部分は、韓国にとっては諸刃の剣となっている。中国政府は、韓国の喉元に「匕首」(あいくち)を突付ける有利性を持っている。力尽くでも、韓国を従わせる立場を保持しているのだ。THAAD(超高高度ミサイル網)設置で韓国に制裁を加えている理由がこれだ。韓国は、反日姿勢を強める「手段」として、意図的に中国へ接近した面もあろう。現在、それらがすべて「裏目」に出ているのだ。
(3)「人的な依存も深まっており、韓国を訪れる外国人に占める中国人の割合が30%台半ばまで高まり、外国人労働者の36%は中国人だ。建設現場や低賃金業種、療養施設などは中国人なしでは運営できない状況となった。韓国に来る留学生の半数が中国人であり、一部地方大学は中国人留学生なしでは経営が成り立たない。中国の経済成長率が1ポイント低下すれば、韓国の成長率が0.5ポイント低下し、13万人分の雇用が失われるという。武漢肺炎の問題が長期化すれば、韓国の消費が0.3-0.4%落ち込むとの分析も聞かれる」
SARSの時は、2四半期連続でGDPマイナス成長に陥った。このことから言えば、「韓国の消費が0.3~0.4%落ち込む」程度で済むはずがない。マイナス成長は必至だ。この状態に落込んで初めて、中国への「過度の依存」によるマイナスを認識するであろう。現状では、中韓は、一蓮托生の関係にある。
(4)「中国は、それを韓国に対する交渉カードに遠慮なく使ってくる国だ。3年前、中国が終末高高度防衛ミサイル(THAAD)問題で報復に出た際、韓国が受けた被害は10兆ウォン(約9100億円)に達した。中国は体制の性格上、いつリスクに突然変異するか分からない。武漢肺炎はその一例にすぎない。今からでも長期的な計画を持ち、対中依存度を抑えるべきだ。対応を誤れば、国が中国の捕虜になりかねない」
中国経済の未来に希望があるだろうか。共産党員だけが、裕福な生活を送るシステムである。今回の新型コロナウイルスの感染地域が、世界中に拡大された背景は、その権威主義にある。共産党の威厳に傷つくことは一切認めない「無謬主義」がもたらした悲劇でもある。この無謬主義が改善されれば、共産党政権でなくなるのだ。
韓国は、こういう根本矛楯を抱える中国と、深入りし過ぎている。民主主義国は、民主主義国と同盟を結ぶ。これが、カントの『永遠平和のために』で示されている結論である。韓国は、米国と中国との間で「二股外交」を行って来た失敗が、今回の悲劇を生んでいる原因と指摘するほかない。