勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年03月

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    中国は、新型コロナウイルス感染克服「第1号」を狙い、危険な道を歩もうとしている。コロナウイルスに感染しながら症状の現れない者は、無症候性キャリアと呼ばれる。重慶市感染者の18%が、この無症候キャリアという統計が出ている。こういう状態で、都市間の移動規制を緩めれば、何が起こるか。防疫専門家の間では、「新型コロナウイルス」の再発リスクが高まると警戒されている。

     

    中国は、新型コロナウイルスを世界中に感染拡大させた責任を負っている。それが再び、「二次感染」を広げかねない危険性を高める。専門家が、その危険性を予告しながら、なぜ強引に「武漢封鎖解除」(4月8日予定)へ踏み切ろうとするのか。人間の生命重視よりも、

    政治的な思惑が先行している結果であろう。危険な選択である。

     

    『ロイター』(3月27日付)は、「中国に相当数の無症状者、コロナ感染『第2波』に懸念」と題する記事を掲載した。

     

    中国では新型コロナウイルスに感染したものの症状が出ない人(無症候性キャリア)が相当数存在するもようだが、実態は不明のままだ。そのため無症候性キャリアが現在もなお、自覚がないままウイルスを拡散させている恐れがあるとの不安が高まっている。世界的に新型コロナが猛威を振るい続けているのと対照的に、中国はウイルスとの「戦い」で今にも勝利を宣言しそうで、既に移動制限の緩和に乗り出した。感染の「震源地」とされる湖北省と他の省との境界は25日に開放され、2カ月にわたる封鎖が解かれた。

     


    (1)「封鎖解除で、感染者が再び全土を行き来する事態が懸念されている。無症候性キャリアは特定が難しく、周囲への感染を防ぎづらいため、感染症を制御する上で大きな課題といえるからだ。中国の場合、無症候性キャリアの人数は、感染者の公式統計数字には含まれない。もっとも香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは最近、非公開の公文書を引用して、無症候性キャリアは4万人を超えると伝えた。同国が公表した24日までの感染者数は8万1218人、死者は3281人だ」

     

    中国の無症候キャリアは、非公開文書によれば4万人を超えているという。この人たちが、移動の規制解除に伴い、行動範囲が広がれば伝染させる危険性が高まる。中国政府が、あえてこの危険性に目を瞑っている理由は何か。メンツとGDPである。中国内外における

    習近平指導部への批判をかわすという政治目的であろう。それと、落込んでいるGDPへのテコ入れだ。

     

    (2)「中国疾病管理予防センターのWu Zunyou氏は24日、「無症候性キャリアはコンタクト・トラッキングを通じて全て判明しているので、(新たな)感染を誘発することは絶対ない」と強調した。それでも当局が無症候性キャリアを公式の感染者統計に入れないことで、実情を正確に発表するとの中国政府の約束に疑念が浮上している。また、一部の専門家は、新型コロナの感染がどのように拡大したか、感染が制御されているのか、いないのかについての誤解も与えかねないと批判する」

     

    無症候性キャリアを公式の感染者統計に入れない理由は、感染者数の発表を抑える政治目的である。中国は、人命尊重よりも政治優先。最高指導部の権威を守ることが、優先する社会である。人命は、「鴻毛(こうもう)より軽し」という価値観だ。国民をAI(人工知能)で監視するというアイデアが、それを如実に示している。

     

    (3)「中国では1822日までの新規感染者はゼロとなっている。だが、武漢市で20日に1人の感染が確認されていた。この62歳の男性は症状がなかったとの理由で、統計には含まれなかった。また、独立系メディアの財新は、複数の病院関係者の話として、24日には無症候性キャリアから1人の医師が感染したと報じている。中国当局は、無症候性キャリアーがその後に発病すれば、感染者数に追加すると説明する。それでも診断を受けず、それゆえに隔離されていない無症候性キャリアが、どれだけいるかの謎は残ったままだ専門家からは、封鎖解除に伴って、未知の無症候性キャリアが新たな感染経路になる恐れがあると警告する声が聞かれる

     

    武漢市の「感染者ゼロ」はウソ情報である。市民によって、病院の外で診察を待っている市民の姿が動画に投稿されたほど。実際、感染者はゼロでなく出ている。共産党がつくりだしたウソ発表である。

     

    (4)「豪シドニー大学の公衆衛生専門家、アダム・カムラト・スコット氏は、多くの国がまだ地域社会全体を検査できる態勢が整っていない点を踏まえると、特に心配だと話した。無症候性キャリアの感染力が、どの程度かも分かっていない。最近のある分析結果に基づくと、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」のケースでは、感染者104人のうち33人は、日本の自衛隊の病院での平均10日間の経過観察後も症状が出なかった

     

    横浜港に停泊した「ダイヤモンド・プリンセス」では、感染者104人のうち、33人が無症候性キャリアであった。率にして、31.7%である。後のパラグラフでは、中国重慶市の場合で18%に達していた。決して、無視できる数字ではない。

     

    (5)「23日に発表された別の調査によると、中国重慶市では感染者の18%が無症状だった。さらに新型コロナは症状が最も軽度な時に、より人に感染させやすいとの報告さえある。米イェール大学公衆衛生大学院は、無症候性キャリアの存在は、空港などのスクリーニングでは中国から他国へのウイルス移動を十分に阻止できないことを意味するとの見解を示した」

     

    中国政府は、無症候キャリアを軽く扱っている。新型コロナウイルスは症状が最も軽度な時に、より人に感染させやすいとの報告がある。下線部分のように、無症候キャリアはスクリーニングに引っかからず、感染させる厄介な存在である。中国指導部は、防疫専門家の意見を入れるべきだ。


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    韓国は、企業も家計も「ドル買い」姿勢を強めている。外貨取引は本来、為替レートの動きに従い、売買が起こるもの。だが、昨今の韓国は、「ドル飢餓」状況である。ともかく、ドルを保有しようという動きが強まっている。新型コロナウイルスの世界的な感染の中で、何が起こるか分からない不安心理が、「ドル買い」へ走らせている。

     

    こういう潜在的ドル需要が続く限り、韓国のウォン安相場が続く見通しが強い。ウォンの「マジノ線」とされる1ドル=1200ウォンを割り込んでいる現状は、早急に変わらない情勢である。慢性的ウォン不安心理が、今後とも続くことになれば、ちょっとした悪材料で、ウォン相場は大きく崩れるリスクを孕んでいる。

     

    『韓国経済新聞』(3月27日付)は、「韓国の家計・企業もドル買い、『ドル高で売る』という公式も崩れる」と題する記事を掲載した。

     

    5大銀行の米ドル預金残高が今月に入って4兆ウォン(約3580億円)以上増えたことが分かった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で外国為替市場が大きく動き、企業の「ドル買い」需要が急増したからだ。今年に入って減少傾向だった日本円やユーロなどほかの外貨預金規模も今週は急増するなど、国内為替市場が不安感から大幅な値動きを見せているという分析だ。

     

    (1)「金融界によると、5大銀行(国民、新韓、ハナ、ウリィ、農協)のドル預金は25日基準で432億2600万ドルだった。先月末(396億9200万ドル)に比べ35億3000万ドル増えた。今週に入って急増が目立った。20日(409億9800万ドル)から5日間で22億2765万ドル増加した。外貨預金の大半は企業だ。輸出入企業のドル買いが反映された数値というのが業界の説明だ。大企業の関係者は「先週、韓米通貨スワップが締結されたが、ドルを確保しようとする企業の動きが強まり、銀行資金関連部署の業務はまひした」とし「ドル確保に死活をかけているが、うまくいかない状況」と伝えた。ユーロ、日本円、人民元などほかの外貨預金の動きも激しい。金融界の関係者は「当分は為替レートの騰落よりも新型コロナ事態による景気の動きが国内為替市場の最大変数になる可能性が高い」と述べた」

     

    韓国企業は、米韓通貨スワップ協定(正しくは、為替スワップ)によるドル供給でも、安心できない心理状態が続いている。1ドル=1200ウォンを割り込んだままであるからだ。日韓通貨スワップ協定という「鬼に金棒」状況になれば、不安心理も収まるのだろうが、そういう「好材料」は現れそうにないのだ。

     


    (2)「韓国国内の外国為替市場でドルの需要が増えている。ドル高になれば売ってドル安になれば買うという「公式」も崩れた。5大銀行のドル預金規模は先月から急増している。米国経済までが不安定になると、企業が万が一の事態に備えて「買い」に出たという分析だ。ドルを除いたほかの外貨預金は大幅な動きを見せている。当分は為替レートよりは市場不安感が為替市場を動かす見通しだ。通常、外貨預金の推移は為替レートの動きに従った。ドル高になれば相場差益を得る動きが出て外貨預金規模も減少した。一方、ドル安になれば安値にドルを確保しようという需要が増えて規模が増加した。今年に入ってこうした「公式」が崩れた。5大銀行のドル預金は20日現在409億9862万ドルと、過去1年間で最もウォン高ドル安となった昨年6月(405億238万ドル)水準だ。都市銀行の関係者は「市中でドルを買うのは難しい」とし「普段は国内に支店がある外国系銀行を通じて調達したが、今はそれもふさがった状況」と伝えた」

     

    ドル買いは、ドルの外貨預金増加に表われている。3月20日のドル預金は、約410億ドルに達している。昨年6月のドル安・ウォン高時を上回る規模だ。これまでの相場観では、ドル高=売却という図式であった。この構図はすでに崩れている。ひたすら、「ドル買い」である。

     

    「ドル買い」と言えば、昭和恐慌時(1931年)に三井銀行(当時)が、ドル買いに走ったとして世論から叩かれ、陸軍の若手将校が三井財閥首脳を狙うという物騒な事件があった。新興国の経済にとって、ドルはいつでも「神様」扱いである。韓国は、約80年前の日本と同じ状況にある。なお、三井銀行のドル買いは、為替差益を狙ったものでなく、為替の清算取引に伴う事務的なドル買であったことが判明。新聞の誤報であった。

     


    (3)「こうした動きには、極度に敏感になった企業の不安感が反映されているというのが業界の見方だ。米国の景気に対する懸念が強まり、ドルをあらかじめ確保しようとする企業の需要が増えたということだ。特にドル建て債務があったり満期不一致リスクがある会社が「生存」レベルでドルを買っている。都市銀行の関係者は「ドルを高く買って損をしても、あらかじめドルを確保しておくべきという心理が広がっている」とし「それだけ市場と企業の不安感が強いという傍証」と話した」

     

    下線部分は、まさに「ドル飢餓」状態である。大韓民国は、ドル不足で過去2回も通貨危機に遭遇している。「二度あることは三度ある」という心理状態であろう。

     

    (4)「新韓銀行蚕室(チャムシル)PWBセンターのチェ・ホンソク・チーム長は「米中央銀行の無制限量的緩和と韓米通貨スワップなどでドル・ウォン為替レートはひとまず安定を取り戻した」とし「ドルが安定するとしても韓国ウォンに影響を及ぼす変数はまだ多いという点で、為替レートを予測してドルを買うのは自制する必要がある」と述べた。ウリィ銀行の関係者は「現在一部で見られるドル買いの動きは収益率よりは危機状況での通貨分散レベル」とし「ドル高になってもドルを売る傾向がまだ表れていない理由は危機が進行形であるため」と話した」

    現在の韓国は、為替の相場観でのドル需給ではない。韓国経済の先行き不安が、ドル買いに走らせている。ウォンが、1ドル=1200ウォン台を脱して、1100ウォン台にもどったとき初めて、韓国企業に安心感が出て来た証拠になりそうだ。


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    米議会上院では、中国の新型コロナウイルスから受けた損害賠償を求める法案が上程された。下院では、中国政府を非難する決議案が上程されるなど、米議会の中国に対する怒りが立法化されようとしている。一方、民間でも損害賠償訴訟が始まった。

     

    『大紀元』(3月26日付)は、「米弁護士ら、武漢ウイルス研究所などを提訴、損害賠償20兆ドル」と題する記事を掲載した。

     

    米国弁護士らは、中国湖北省武漢発の肺炎ウイルスの流行の責任を追及するため、中国政府、武漢ウイルス研究所、同所長に対して少なくとも20兆ドルの損害賠償を求める集団訴訟をテキサス州の連邦裁判所に提出した。

     

    原告は、テキサス州で写真撮影を行う企業バズ・フォト。そして、保守系で元司法省検事ラリー・クレイマン弁護士、同氏の運営するグループ「フリーダム・ウォッチ」。クレイマン氏は、影響力ある保守運動団体ジャジカル・ウォッチ創設者。

     

    (1)「317日付の訴状によると、バズ・フォトは肺炎ウイルスの流行により、経営危機に陥ったとして、損害賠償を求めている。フリーダム・ウォッチのクレイマン氏は、中国政府は違法に生物兵器を備蓄しており、武漢ウイルス研究所が市内へのウイルス漏えい防止を怠り、さらには米国への感染拡大につながったと訴えている。同氏はさらに、これらの行為は人口密集地に拡散させた大量破壊兵器に等しく、反社会的であり、米国法の国際テロに相当すると指摘する。また、こうした「冷酷で無謀な無関心と悪意のある行為」のために、中国政府に対して少なくとも20兆ドルの損害賠償を請求している」

     

    突如、襲って来た「新型コロナウイルス」による甚大な被害に対して、米国民は泣き寝入りせず、中国の責任を追及する姿勢だ。20兆ドルという金額は、中国政府といえども簡単に支払えない巨額なものだ。被害者には何らの落ち度もなく、中国から一方的に被せられた損害である。精神的な慰謝料を含めれば、20兆ドルは妥当な線であろう。

     

    (2)「「米国の納税者が中国政府によって引き起こされた途方もない被害の代償を払わなければならないとの理由はない」「中国人は善良な国民だが、彼らの政府はそうではない」とクレイマン氏は訴訟に関する声明に書いている」

     

    中国は、SARS(2003年)でも、感染症を発症させている。二度までも、世界的な感染症を引き起こした責任は重い。

     

    中国では、外交部広報官のSNSによって、コロナ禍が米国から持込まれたという説を信じて、米国政府を訴える訴状が出された。中国司法の扱いが、興味深くなってきた。駐米中国大使は、インタビューで前記のSNSを前面否定したからだ。

     

    湖北省武漢市江安区の弁護士事務所所長は20日までに、武漢裁判所に、トランプ米大統領や米国疾病管理予防センター(CDC)所長、マーク・エスパー国防長官らを相手取る民事訴訟を届け出た。

     


    (3)「湖北光良法律事務所・梁旭光氏は、4人に対して新型コロナウイルスの流行による経済的、精神的損害により20万元の賠償を求めている。訴状によると、2019年から20203月にかけて、米国で流行したインフルエンザは、未知の肺炎ウイルスであったことを隠ぺいして、公衆衛生情報を偽ったという。この情報の拠点は示されていない。同期間、米国ではインフルエンザにより3600万人が感染し、22000人が死亡した。また、トランプ大統領が使用する「中国ウイルス」という言葉が原告に対する名誉毀損だとして、謝罪を求めている」

     

    米国の訴状に比べれば、中国側の訴状は米国に対抗するために出した訴状という印象が強い。米国の訴状が3月17日、中国の訴状が3月20日であり3日間のズレがあるからだ。

     

    中国裁判所は、この訴状をどのように扱うのか。米国に罪があるという判決が出れば、米中対立の火に油を注ぐ事態になる。中国としては、ウヤムヤにしてしまうのが無難という判断を下すであろう。

     

    ここで再び、米国側で提訴されている中国への賠償請求が、現実に賠償金として取り立てられるのか、という問題が浮かび上がる。

     

    『大紀元』(3月25日付)は、「米超党派議員、伝染病対応の失策で中国に賠償求める議案を提出」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「海軍兵学校の海法・政策教授ジェームズ・クラスカ氏は23日、ソーシャルサイトで、「中国の怠慢が、武漢肺炎の流行の原因であることは間違いない」と主張した。クラスカ氏によれば、義務怠慢の責任は武漢の現地役人から習近平主席にまで及ぶ。中国は、国連国際法委員会による「国際違法行為に対する国家の責任(RAWA)」に基づく法的義務を怠ったと指摘した。 また、同法第31条では、加盟国は、国際的に不当な行為によって生じた心身両面の損害を完全に賠償しなければならないと規定している

     

    下線のように、「国際違法行為に対する国家の責任(RAWA)」の罪で責任を追及できるとしている。

     

    (5)「ワシントンの人権団体・公民力量の創設者である楊建利氏は、米国が起訴すれば、中国政府は「主権免責法」によって保護され、米国に登録された中国政府の財産を特定して追跡することは困難であるという。しかし、戦争賠償の方法ならば、各国は中国が国家安全保障上の脅威であるという観点から請求することや、国連安全保障理事会が、同憲章第7章に基づき「世界の平和と安全を回復」のために、中国に対して責任を追及できるかもしれないとした

     

    このパラグラフでは、国連憲章第7章に基づき「世界の平和と安全を回復」に違反するとして、責任を問えるという。法律問題であるので、私は軽々な判断を慎まなければならない。だが、新型コロナウイルスによる訴訟は、米上院に上程されたので、その審議の行方と絡んで来る。いずれにしても、損害賠償問題が提起されたことで、中国政府にとって新たな問題が発生したことになる。

     

     

    あじさいのたまご
       

    WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は、米国から相当な批判を浴びている。最初から中国を庇う姿勢が明白であったからだ。米下院では、新型コロナウイルスを巡る中国非難決議案が上程されている。この決議案には、テドロス事務局長の中国寄り姿勢の原因究明が含まれているほど。

     

    テドロス氏の中国寄り姿勢が、「新型コロナウイルス」対策で初動ミスを冒し、世界中に感染させる結果を招いた。そのテドロス事務局長が、自戒を込めて次のような発表をした。

     

    『ブルームバーグ』(3月26日付)は、「各国は時間浪費すべきでない、WHOが警告ー最初の機会は無駄に」と題する記事を掲載した。

     

    世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は3月25日、各国・地域は新型コロナウイルス(COVID19)の感染拡大を阻止する最初の機会を逸したが、これ以上貴重な時間を無駄にすべきでないと警告した。

     

    (1)「テドロス事務局長は、「われわれは最初の機会を無駄にした」とし、「行動すべき時期は実際、1カ月余りまたは2カ月前だった」と語った。その上で、世界には第2の機会があるとして、150カ国・地域では感染報告が100件未満で、準備する時間がまだあると指摘した。封鎖措置を命じた国はウイルスの封じ込めに向けて積極的な措置を講じる時間を稼げたが、封鎖を継続する期間は各国が感染拡大の終息に向けてその間に実施する措置に左右されるとした」

     

    テドロス氏は、中国の支援でWHO事務局長に就任できたという恩義に縛られている。100%、中国へ顔を向けた見苦しいほどの政策決定であった。事態がここまで悪化して、ようやく目が覚めて、正論に戻って来たようだ。初動ミスの代償は、余りにも大きい。

     


    現在のWHOは、全世界が新型コロナウイルスに感染するという前提で対策を検討している。最初からこういう慎重さで対応すれば、ここまで事態を悪化させることもなかっただろう。中国を庇って、「大した感染症でないように装った」罪は重い。

     

    下線部分は重要である。地域封鎖をする場合、封鎖解除後に感染者が増加しても対応可能な治療体制を完備してから封鎖を解けと指摘している。これは、地域封鎖しても一時的な効果に過ぎず、「完治」でないと言っているに等しい。

     

    (2)「テドロス事務局長は、封鎖措置によって社会と経済には大きな負担がかかるが、「いかなる国においても最悪なのは、学校や経済活動を再開した後に感染拡大の再燃で再び閉鎖する事態になることだ」と強調した。WHOの緊急事態プログラム責任者マイク・ライアン氏は「世界はパンデミック(世界的大流行)への備えがない」とし、その例として、一部の国からしか調達されないゴムで製造される医療用手袋の供給がサプライチェーン寸断で危うくなる恐れを指摘した

     

    さしずめ武漢市が、4月8日に都市封鎖を解除すると発表している。WHOの指摘では、解除後に、感染者の増加が起こるという危惧である。ロンドンも封鎖したが、解除後の対応が完備していなければ、解除はできないことになろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月26日付)は、「新型コロナは長期戦へ、身構える各国政府」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスの感染が世界に広がる中、各国政府や科学者は短期決戦で勝利を目指すよりも、長期の包囲作戦に備えている。これには戦略転換に加え、経済的な混乱が長引く可能性がつきまとう。

     

    (3)「ニューヨークからサンフランシスコ、ミラノ、パリ、マニラ、クアラルンプールに至るまで、強力な移動制限や前例のない封鎖措置が講じられ、感染の拡大ペースは抑えられるかもしれない。だが、感染を完全に阻止できる公算は小さいと専門家は語る。シンガポールや香港では、早期の感染封じ込めで成功しても、新たな感染の波がそれを台無しにしかねないことが認識されている。各国当局は今後数週間から数カ月、感染が再拡大するリスクを避けつつ、規制措置を緩和する安全な時期やその程度を決めるという難題に取り組むことになる。各国はどれほどの経済的な打撃に耐える用意があるのか――」

     

    SARS(2003年)では、発症から終息宣言まで8ヶ月で事態は収拾した。今回の「新型コロナウイルス」は、ここまで感染地域が拡大した以上、終息宣言まで2~3年を覚悟する必要があるようだ。事態は、悪化している。その間、経済的にどこまで耐えられるかが勝負となった。

     


    (4)「科学者は、ワクチンの登場もしくは集団免疫の実現のうち、どちらか一方を通じて感染が終息する可能性が高いとしている。集団免疫とは、人口の大部分――半分かそれ以上――が感染から回復し、ウイルスへの免疫がついた状態をいう。有効な治療法も、感染スピードの抑止とリスク低減に役立つ。 この3つはいずれも問題を抱えている。集団免疫が実現するまでには、何百万人もが感染しなければならず、その過程で多くの死者が出ると専門家は指摘する。スクリップス・リサーチの免疫学者クリスチャン・アンダーセン博士は、ワクチンの開発と普及には1年よりはるかに長い時間がかかる可能性が高いとみている。新薬開発も容易ではない」

     

    一口に、新薬開発というが簡単ではない。ワクチン開発と普及には、1年をはるかに上回る期間が必要である。こうなると、妙案はない。ひたすら、感染者を急増させないという管理しか方法はなさそうだ。

     

    (5)「アンダーセン博士は、「この先何年も、われわれが正常と考える生活が戻ることはないだろう」と語る。「今後3年間に社会として機能する方法を見いだす必要がある」。多くの国の政府はウイルスの感染状況を手掛かりとして、断続的に厳しい措置を講じる準備を進めている。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、「感染の連鎖は低水準に抑制される状態が続いた後で、人との距離を置く措置の解除とともに再発する可能性がある」と述べた」

     

    ここでは、楽観論をすべて否定している。

        この先何年も、われわれが正常と考える生活が戻ることはないだろう

        今後3年間に社会として機能する方法を見いだす必要がある

        感染の連鎖は低水準に抑制される状態が続いた後で、解除とともに再発する可能性がある

     

    東京五輪は、来年夏の開催に延期されたが、上記の結論に従えば楽観できないことになる。再延期がないとすれば中止だ。大変な事態が到来しそうである。今から、その回避策を練っておくべきだろう。

     

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    中国当局は、見栄と打算で武漢市の封鎖解除を4月8日に行なうと発表している。WHO(世界保健機関)は、封鎖解除後の揺り戻し発症の「第二波」を警戒しているが、意に介さない状態である。世界に向けて見栄を張りたいことと、少しでも経済成長に寄与させるねらいだ。

     

    今回の新型コロナウイルスは、執拗なまでに再発させる特性が指摘されている。地域住民の6~7割が感染すれば、免役ができて自然に鎮火すると説明されているほど。このように、ぶり返しリスクが高いことを考えると、武漢市の封鎖解除が吉と出るか凶と出るか、分からない面がある。

     

    『大紀元』(3月26日付)は、「『感染ゼロ』にこだわる中国当局、グローバル産業主導権が狙いか」と題する記事を掲載した。

     

    世界各国で感染が広がる新型肺炎。中国当局は操業再開を急ぐため、情報操作を続けている疑いがある。中国当局は武漢の新規感染者数を5日連続ゼロと宣言した後324日、123日から実施した武漢市の封鎖措置を48日に解除すると発表した。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は19日、「これは驚くべき成果だ」と評価した。しかし、大紀元に寄せられた情報によると、今も武漢市には感染者が発生している。

     


    (1)「武漢市の感染ゼロに対し、武漢の地元住民は「感染者の発生を報告すると責任が問われる。この付近の2つの団地 麗水康城と新華では報告していない感染例がある」と匿名を条件に大紀元の記者に話した。「麗水康城」団地に貼り出された20日付の「重要通知」は、19日夜に新たな感染者が出たため、「くれぐれも外出を控えてください」「警戒心を高め、引き続き努力するように」と住民を対象に注意喚起を促した。感染して入院中の父親を看病しているもう一人の武漢市民は大紀元の電話取材に対して、「感染ゼロのやり方は政治操作で、共産党の一貫した嘘つきの習性だ」とし、「再び爆発しても、帰国者が持ち込んだと世論を誘導すれば良い。操業再開と経済成長が何よりも肝心だからだ」と述べた」

     

    武漢市では、「新感染者ゼロ」が政治目的になっている。あの都市封鎖までした武漢市が、蘇ったという「賞賛の声」を期待しているに違いない。習近平主演の政治ショーである。

     

    (2)「内部情報筋によると、「武漢の国営企業の管理者らはずっと前から、感染ゼロが出た14日後に操業を再開するといった通知を受けた。操業再開に合わせて作り出したもので、現場の感染状況とは関係ない」という。中国衛生当局が発表した中共ウイルス(新型コロナウイルス)第7版の診断と治療方案によれば15分以内で結果が出るという血液検査による検出方法が、これまでのPCR検査より安くて検査時間も大幅に短縮できる。中国の医療専門家らはこの検査方法を推し広めたいと望んだが、当局の指示でいきなり使用中止となった」

     

    陽性かどうか。15分以内で結果が出る。そういう血液検査による検出方法が、理由もなく突如として使用中止になった。本人の目の前で、「陽性」という結果が出れば、「感染者ゼロ」記録にケチがつく。そういう魂胆で採用が中止されたのであろう。

     

    (3)「ある武漢市の医師は、血液検査がほとんどの病院で使用停止となっているとSNSで友人らに告げ、「なぜこのような問題が起こるのか。多くはもはや医学的な問題ではない。治癒と診断された人はこれが『政治的な治癒』で、医学とは関係ない」と示唆した。武漢市の住民は大紀元に対して、「118日に症状が現れてから、CT検査3回と核酸検査を2回受けたのに、感染が確認されなかった。周りの友人は、当局が感染者数の増加を隠すために、感染の確定をしない方針だと言っている」と話した」

     

    感染者隠しのために、新しい15分で結果の分かる機器の採用を止めたのだ。

     

    (4)「北京市政府の陳蓓副秘書長は21日の記者会見で、湖北省への出張者および帰省者が、一律に北京に戻ることは禁止され、その他の地域から北京に入る人は、自宅または集中隔離施設で14日間の隔離観察を受けなければならないと発表した。ネットユーザーからは「北京の上層部は武漢の 『感染ゼロ』 がどういうことかよくわかっているようだ」「信じるのはバカだけ」などの皮肉交じりのコメントが寄せられた」

     

    下線部分は、湖北省に感染者がいることを間接的に証明している。

     

    (5)「多くの専門家らは、中共ウイルス(新型コロナウイルス)がSARSより検出が難しく、生存時間も長いため、再発のリスクが高められ、新たな流行を避けられないとの見解を示した香港大学公衆衛生学部疫学・生物統計学科の学科長ベン・カウリング教授は19日、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの取材では「喜ぶのは時期尚早だ。現在は初期にあたるだけで、第2の波がすでに中国で発生し、まだ発見されていない可能性がある」と述べた」

     

    専門家は、武漢市の新型コロナウイルスが完全に治癒されていないと指摘している。本欄の他の記事でも縷々指摘しているように、第一波の後に第二波が襲ってくる。中国指導部は、そういう防疫専門家の意見を無視して、強引に武漢の封鎖解除をしようとしている。危険この上ない処置である。それを、誰も止められない。そういう専制政治の恐ろしさが、垣間見えるのだ。


     

     

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