勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年03月

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    韓国経済界は、金融危機から22年ぶりの「マイナス成長」の危機に直面、生き残りに向け本格的に声を出し始めた。韓国経済界は文政権による「反企業主義」で、規制強化を加えられてがんじがらめにされて来た。このままでは、コロナ禍で韓国経済は息の根を止められると、最後の叫び声を出している。規制緩和すれば、財政資金ゼロで経済活性化が実現する。試験的に2年間行い、無害であれば恒久的な規制緩和を実施するように求めているのだ。悲痛な声である。

     

    世界経済は、規制緩和へ大きく舵を切っている。文政権は、社会主義的思考に縛られ、企業は悪という固定観念に囚われる希有の政権である。ここへ1929年の世界恐慌以来という「コロナ禍」の襲来である。経済界は、韓国が大損害を被るという危機感を強めている。

     

    『中央日報』(3月26日付)は、「韓国経済にパーフェクトストーム『特段の非常措置が必要』全経連、危機克服で緊急提言」と題する記事を掲載した。

     

    「売り上げゼロの状況にまで追いやられた小商工人や自営業者だけでなく深刻な資金逼迫を体験している韓国企業を生き返らせられる期間はそれほど長くない」。韓国は、コロナ禍によってすでに大きなダメージを受けている。文政権に認識を変えて欲しいという悲痛な叫びが出ている。

     

    (1)「全国経済人連合会は25日に許昌秀(ホ・チャンス)会長が、直接ソウルの全経連会館で記者会見を行い、「新型肺炎経済危機克服に向けた経済界緊急提言」を発表した。許会長は「韓国経済が実体と金融の複合危機であるパーフェクトストーム(超大型経済危機)の真ん中に置かれているだけに特段の非常経済措置が必要だ」との考えを明らかにした。危機克服に臨む企業の責任も明らかにした。「経済危機状況だが雇用を守り、計画された投資も支障なく推進するよう努力する」

     

    パーフェクトストーム(超大型経済危機)とは、過去の経済危機よりも大きいという意味であろう。過去2回の経済危機と比べて、現在の韓国経済は人口高齢化の進行に表われているように活力を失っている。人口は、今年に入って「自然減」(出生数よりも死亡数が多い)社会になっている状態だ。経済政策もこれに合せて弾力化しなければならない。



    (2)「全経連は緊急提言で、▽一時的規制猶予導入▽企業活力法(ワンショット法)の対象拡大▽株式反対売買一時停止などを含め15大分野54件の課題を提示した。許会長は「生き残りの岐路に立たされた企業現場の声が込められている」とした。全経連は最も緊急な課題として一時的規制緩和を挙げた。資金を使わなくても経済を生き返らせられる道であるためだ。最小2年間規制を猶予し、猶予期間終了後に副作用がなければ恒久的にこれを廃止しようと提案した」

     

    文政権は、労組と市民団体の顔を見て政策決定している。これが、硬直的な政策を実行している背景だ。下線部分のような規制緩和を実行すれば、韓国経済が水面へ出られると必死の訴えである。ともかく、労組に支配された政権であるゆえ、硬直的で融通が利かず、このままではパーフェクトストームに飲み込まれる運命だ。

     

    (3)「全経連の権泰信(クォン・テシン)副会長は、「規制改革は財政負担なく企業投資を促進して内需を生かすことができる最も効果的な方法であるだけに、一定期間規制効力を停止したり執行を猶予すべき」と話した。彼は韓国経済を「基礎疾患を抱える高危険群」に例えた。昨年韓国から抜け出た海外直接投資は618億ドルと過去最大で、外国人の対韓投資と国内設備投資がいずれも減少する「病んだ状況」で新型コロナウイルスで崖っぷちに立たされたと表現した。権副会長は「未曾有の危機状況であることを考慮し、国民と企業が体感できるよう果敢な規制猶予を願いたい」と話した」

     

    韓国企業は、国内の規制が厳しいので海外で投資せざるをえないという矛楯を抱えている。最低賃金法、週52時間労働制などの労働規制が施行までの余裕もなく行なわれている。理想ではあるが、それをスムースに実現させるには、規制緩和を行なうなどのクッションも必要である。そういう配慮がゼロである。韓国企業は、規制ずくめで窒息状況に追いやられている。



    (4)「一例として、新型肺炎により生活必需品の需要は急増しているが大型マートは休日営業規制により店舗営業だけでなくオンライン配送もできない。生産にも支障が出ているが企業も週52時間労働規制により弾力的な対応が難しい。52時間労働の例外を拡大すれば人材運用の障害をなくすことができる」

     

    このパラグラフは、文政権の矛楯した政策の限界を表わした実例である。

    (5)「企業が自発的に事業再編ができるいわゆる「ワンショット法」(企業活力法)の適用対象もすべての業種と企業に拡大してほしいという提案もあった。ワンショット法は企業が先制的・自発的に事業再編をする際に手続きを簡素化し規制を猶予するなどの特例を与える制度だ。現在は対象が供給過剰業種に制限されており、新型肺炎の直撃弾を受けた航空・運送業や石油精製業界もワンショット法を活用できない」

     

    企業が、事業再編を行なうのは自由に行使できる経営権の問題である。これすら縛りを入れているのは、労組の圧力によるものだろう。雇用を守るのは、一つの企業レベルで行なうことでなく、韓国全体で行なうテーマである。具体的には、新規部門立上げを自由にする=規制緩和、によって労働力流動化を促進させることだ。日本もバブル崩壊後に、企業が過剰労働力を抱えて動きが取れず、「失われた20年」の遠因になっている。


    (6)「このほか株価が下がった時に金融機関が担保にした顧客の株式を強制的に売ってしまう反対売買を一時的に中止することや、日本などとも通貨スワップを拡大して通貨危機の可能性を遮断しようという提案もあった。また、現在3624人に達する事業所の医療陣を活用して医師がいる企業の社内診療所を新型肺炎診断のための選別診療所として活用することも提案した」

    こういう問題点が一つ一つ指摘されると、韓国はなんと無駄なことをやっているのかと驚く。固定観念に縛られ、そこから一歩も外に出られない点は、儒教文化の悪しき例を見る思いがするのだ。


    ムシトリナデシコ
       

    韓国は、現在の「コロナ禍」後の景気回復で、世界で一番の乗りするという超楽観論が飛び出してきた。理由は、コロナ検査体制が世界一であり、財政的にゆとりがある。また、国民が協調的というのだ。いささか、本欄とは見解を異にしているので、取り上げることにした。

     

    韓国は、コロナ感染者の検査数が多いことを自慢にしている。だが、死者は多いのだ。仮に、韓国のコロナ沈静化が早かったとしても、海外からの人間の移動を制限せざるを得ない。輸出も世界がコロナ沈静に成功しなければ、数量的な増加は困難だ。国民は協調的と指摘するが、与野党で鋭い対立で国論が分裂したままである。

     

    何よりも重要なことは、今回のコロナ禍で欧米経済が大きな打撃を受けていることだ。コロナ禍=売り上げ「ゼロ」=資金流動性低下という、従来にない経済環境に追い込まれている。そもそも今回は、世界経済のV字型回復が不可能という、過去の経済危機と諸条件が異なっているのだ。そういう認識が欠如している。

     


    もう一つ追加すれば、韓国の潜在成長利率を左右する「生産年齢人口比率」の低下である。2014年の73.41%がピークであった。15年以降は、減少しており「人口オーナス期」となっている。14年までは、「人口ボーナス期」と呼ばれ、潜在成長率は右肩あがりであったのだ。過去の経済危機は、いずれも「人口ボーナス期」に起こっており、その克服にはそれほどの苦労をしないでも可能であった。

     

    だが、現在は「人口オーナス期」である。潜在成長率は下がっている。その中で、韓国経済は「コロナ禍」と戦わなければならない。安易な楽観論が、通用する経済環境にないことを認識すべきであろう。

     

    『中央日報』(3月25日付)は、「積極的な金融緩和を、危機克服後にはチャンスがくる」と題するコラムを掲載した。筆者は、ビョン・ヤンホ元財政経済部金融政策局長である。

     

    (1)「経済危機はこれまでにも発生してきた。今回は以前とは違うため危機はないはずという見解はいつも嘘になった。しかし発生した経済危機は結局、すべて克服された。1997年のアジア通貨危機も深刻だったが、2008年のグローバル金融危機当時はぞっとした。対応できないようだった。すべてが地獄に落ちると感じられた。しかし米国など先進国を中心に天文学的な資金を供給して結局は解決した」

     

    余りにも他力本願である。二度の通貨危機は、「米国など先進国を中心に天文学的な資金を供給して結局は解決した」と楽観している。先進国には今後、日本は入らないだろう。余りの「反日運動」で日本が日韓通貨スワップ協定を結ぶのは困難である。

     

    韓国が、「人口オーナス期」入りしていることも不利な条件になった。潜在成長率が低下する中で、「コロナ禍」を克服するのは容易ではない。



    (2)「今回の新型コロナウイルス事態もワクチンと治療剤が開発されてこそ根源的に終わるだろうが、それまでは結局、防疫とお金で解決するしかない。うまく防疫すればそれだけ資金を投じる理由がなくなる。まずは防疫に注力し、残りはお金で解決しなければいけない。それで各国は防疫を強化しながら莫大な資金支援計画を発表している。防疫とお金の問題と見る場合、韓国はどの国より有利な位置にいる。最高の防疫能力を保有していて、財政はどの国よりも健全であるからだ。韓国より防疫が優秀な国もなく、韓国より財政が健全な国もあまりない。さらに韓国国民は非常に協調的だ

     

    最高の防疫能力ならば、これだけ感染者を出すはずもないし、死亡者も増えなかったであろう。防疫能力が高いのでなく、検査キットを多く配置していただけのこと。治療能力の高さ自慢は、死亡者数を減らして初めて言えることである。財政は、急速に悪化している。文政権になって失業者が急増し、その対策で国費採用のアルバイトが増えている。財政負担増の要因になっている。このままだと、財政悪化は不可避である。


    (3)「韓国がこの事態を最もうまく克服できるというのは異論の余地がない。我々が失敗しなければ、だ。韓国が危機克服に最も有利だという点は未来の競争で大きな意味がある。結局、危機後まで生き残った企業を中心に世界経済が再編されるからだ。サプライチェーンなどネットワークが崩れるはずだが、ダメージが少ない企業であるほど危機後により大きな機会をつかむことになるだろう。韓国企業ができるだけ多く生き残るようにすべき理由はここにある」

    韓国企業は、格付け会社から今年すべての企業が、格下げ通告を受ける惨憺たる状況に陥っている。新産業が存在しない点も痛手だ。今回の「コロナ禍」で、韓国企業の多くが深傷を負うと見られる。従来の2回の通貨危機とは、取り巻く状況が大きく変わった。このコラムには、そういう慎重論が全くない点で異色と言うべきだ。


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    中国外交部報道官が、SNSで新型コロナウイルスの病原菌を持込んだのは米軍将兵とのデマ情報を流して以来、米国の怒りは収まらないままだ。上下両院がついに、超党派で中国によるコロナ禍に伴う賠償請求法案や中国非難決議案を提出し、対抗する姿勢を鮮明にしている。

     

    中国外交部報道官が、持ち出した「米軍将兵持ち込み説」は、武漢病院で米軍人がマラリアにかかった一件をでっち上げたものだ。中国共産党が、今回の新型コロナウイルス発症の責任を意図的に回避し、米国へ濡れ衣を着せようとしたと考えられている。米議会が、怒るのは当然であろう。

     

    『大紀元』(3月25日付)は、「米超党派議員、伝染病対応の失策で中国に賠償求める議案を提出」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米下院では324日、新型コロナウイルスの対応の誤りで世界に流行を拡大させたことを非難する決議案が提出された。同日、上院では、中国が発信する「ウイルス米起源説」の噂を非難し、中国に対して各国にもたらした損害を賠償するよう要求する法案が提出された」

     

    米下院では、中国非難の決議案。上院では、中国による「ウイルス米起源説」の噂を非難し、中国に対して各国にもたらした損害を賠償するよう要求する法案が提出された。これらの決議案と賠償請求法案が提出された意味は大きい。中国にとって、命取りになりかねない法案である。

     

    (2)「ジム・バンクス下院議員が作成した決議案には、

    1.中国当局がウイルス流行で虚偽の情報を拡散し、実際の情報を意図的に隠したこと

    2国際的な保健専門家との協力を拒否し、医師やジャーナリストを検閲したこと

    3.囚われの身にある少数民族の健康を悪意を持って無視したことなどを上げた。中国政府の責任を問うこの決議案に、超党派議員は署名した。この決議案は、英サウサンプトン大学からの研究を引用して、もし中国が3週間前にウイルスの流行に対処していたら、世界的な流行は95%減少していた可能性があると指摘している」

     

    下院決議案では、中国が米国の防疫専門家の調査参加を拒んだことを問題視している。原因を米国に握られることを忌避したのだろう。最初から隠蔽意図が明白であった。

     

    (2)「バンクス議員は23日、大紀元のインタビュー番組で、「私たちの誰しもが、ウイルスは武漢から来たのであり、米国ではないと知っている」「中国共産党の指導者たちは体制維持に影響するとして、真実の話が広がるのを恐れている。だから、大規模なプロパガンダを展開し話を作り変えている」と述べている。さらに24日、上院では、ジョシュ・ホーリー議員が、国際的な公共衛生機関が、中国の誤った対応が感染を悪化させたかについて調査するよう求める決議案を提出した

     

    下線部分は、WHO(世界保健機関)事務局長が、中国代理人のように振る舞い問題になった。これを調査する決議案が、上院で提出されたもの。この疑惑は解明しなければならない。

     

    (3)米有力シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家ボニー・グレイザー氏は、ラジオ・フリー・アジアの取材に対して、「中国は今、積極的な国際支援をアピールし、流行初期の事実を隠ぺいしようとしていることは明らかだ」と語った。ワシントンの人権団体・公民力量の創設者である楊建利氏は、中国外交部の趙立堅報道官による「米軍ウイルス散布説」が世論の強い反発を招いたとした。今回の決議は、法的効力はないものの、米国が国内外の支持を集めるための重要な手段であるとした

     

    中国非難決議案に法的な効力はないが、米国議会の姿勢を鮮明にすることを目的にしている。これによって、新型コロナウイルス発症に対する中国の責任を明確にする、としている。この決議案が成立すれば、中国に負担になることは明らかである。

     

    (4)「これまで、米政府は、トランプ大統領が習近平氏を『友人』と表現するなどして、中国側の様子をうかがっていた。しかし戦略が変わった今、世界的な災害に繋がった流行を隠蔽した中国の責任を問うことが、コンセンサスになっている。責任追及のみならず、疫病の蔓延を全国に広めた中国とは国際協力が困難であるとの動きに繋がるだろう」。ホリー議員の作成した決議案は、米国政府および国民に対する健康被害、経済的損失を数値化し、補償の仕組みを確立するなど、より具体的な要求となっている」

     

    下線部分は、米中デカップリング(分離)を目指す狙いが込められている。米国は、中国との関係性を薄める、あるいは断絶するというニュアンスも込められている。決議案では、「米国政府および国民に対する健康被害、経済的損失を数値化し、補償の仕組みを確立するなど、より具体的な要求となっている」。米国が損害賠償を求める基礎計算が明示されているというから、中国は軽々に扱えない決議案になりそうだ。

    (5)「316日、バンクス下院議員は、FOXラジオの取材に、トランプ政権は中国に対して、米国の(負う)債務の大部分を免除するなど、米国に与えた損害を中国に支払わせたいと考えていると述べた」

     

    これは、今回の新型コロナウイルスに伴う米国の負う債務のすべてを、中国に払わせる考えだと重大な事実を明らかにしている。米中貿易戦争に次ぐ、「米中コロナ禍賠償支払い請求」になるという。米国が請求すれば、世界中の諸国が賠償請求するだろう。これが、現実化すれば、中国経済は破産する。大変な事態だ。


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    けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    コロナ禍で米国経済も大混乱

    「紅二代」習近平批判に立つ

    米が外交官の大量引上げ実施

    韓国は米国にすがって生きる

     

    欧米は、新型コロナウイルスの主戦場になっている。中国発のコロナ禍が、世界中を覆うような事態を迎えたのだ。中国外交部報道官は、「震源地」であることを隠すため、「米軍が持込んだ」との偽情報をSNSで流した。この恥の上塗り的な行動が、非難の的になった。これに驚いた中国指導部が、慌てて駐米中国大使にインタビューさせて、「米軍説」を完全否定する騒ぎにまでなった。

     

    中国政府が、なぜこのような「米軍説」に出たのか。中国の国内対策として「共産党無謬」神話を守るためだったのだろう。中国共産党の指導下において、世界を巻き込む新型コロナウイルス発症は、絶対にあってはならない大事故である。その汚名挽回策として、「米軍説」をまき散らし、中国が被害者であると演じたかったにちがいない。余りにも、幼稚な発想法である。

     

    コロナ禍で米国経済も大混乱

    米国では、新型コロナウイルス感染者が続出している。米各州の報告に基づく『ワシントン・ポスト』紙の集計によると、米国として1日の死者が3月23日、初めて100人を超え、死者の合計は500人以上になった。感染者も4万3000人以上に拡大している。こうした感染者激増が、米国経済の活動を中断させている。米国の4~6月期GDPが、マイナス成長必至と予測されているほどだ。

     

    米セントルイス連銀のブラード総裁は、米国が新型コロナウイルスの感染拡大と闘うために、不要不急の企業活動の3カ月休止を宣言すべきだと指摘した。ブラード総裁は、「大統領と議会が『ナショナル・パンデミック・アジャストメント・ピリオド(国家的パンデミック調整期間)』を宣言」するよう提言した。同総裁は、これを3月23日のセントルイス連銀のウェブサイトに投稿した。

     


    米国経済の被害が、ここまで及んできたことから、世界経済への波及は当然である
    米ハーバード大学のカーメン・ラインハート教授は3月24日、世界経済がこれほどのもろさを見せたのは1930年代の大恐慌以来だとの見方を示した。『ブルームバーグ』(3月25日付)が報じた。その見解を要約すると、次の通りとなる。

     

    1)新興国市場と先進国市場の両方が、持続的な下降局面となったのは大恐慌以来である。
    2)2008年の世界的な金融危機後に高リスク証券が急反発したり、1980年代の中南米債務危機の際に先進国市場が比較的良好だったこととは異なる。短期的に、資産価格の回復可能性は低い。

    3)現在の状況には、1930年代を想起させる現象が起こっている。

    商品相場低迷

    世界貿易の後退

    同時多発的なリセッション(景気後退)

    4)中国の成長率はマイナスに転じる。中国は、中南米やアフリカ、アジア諸国への融資により消極的になる。

     


    以上の点について、私の総括的コメントをつけたい。

     

    世界不況の原因が「コロナ禍」であり、生命を脅かすかつてない事態に起因する。このため、世界中の経済活動が一斉にストップして、「ツンノメリ」状態に落込んだ。先進国も発展途上国も同じ状態にある。経済活動中止は売上ゼロであり、著しい資金流動性不足が発生している。これが、世界的なドル資金不足を引き起こし、世界同時不況に陥る羽目になった。

     

    だが、米国は基軸通貨国であり、世界へドルを供給する役割を担っている。これが、米国経済の強味となっている。景気が一度、大きく落込んでも回復は早いだろう。

     

    4)で、中国の問題が別途、取り上げている。今年のGDP成長率が、マイナスを予測している。これから襲来するだろう世界経済の急悪化の中で、中国も翻弄されるというのだ。輸出が落込み、経常収支は赤字へ転落するだろう。米国は、経常赤字でも基軸通貨の強味で乗り切れる。中国は不可能だ。これが「天と地」の差となる。人民元安を阻止するために、緊縮経済を求められるだろう。「一帯一路」プロジェクトは、資金的に行き詰まる。こういうプロセスが予想されるのだ。

     

    「紅二代」習近平批判に立つ

    冷静に考えれば、中国経済は米国より劣勢である。中国指導部はそれを忘れ、SNSで外交部報道官にコロナの原因が「米軍」というウソ情報を流させた。しかも念入りに、このSNSを広く宣伝して欲しいと「但し書き」まで添えてあったのだ。米国の怒りはヒートアップした。トランプ大統領は、「中国ウイルス」と呼び、国務長官は「武漢ウイルス」と名付けたほどである。(つづく)

     

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    新型コロナウイルスが、欧米で猛威を振るうとともに、世界経済の先行きは時々刻々と悪化の度合いを深めている。世界経済の要の欧米が、コロナウイルスに「占領」されてしまい動きがとれなくなった。IMF(国際通貨基金)は、最新の予測で2020年の世界経済が「少なくとも2008年並み」と発表した。

     

    2008年と言えば、リーマンショックである。米国で端を発する金融危機であった。今年の世界経済は、良くて08年並みで悪ければそれ以下という厳しい内容だ。世界経済の落込みは即、韓国経済の命綱である輸出減に直結する。韓国経済は、きりもみ状態に巻き込まれるリスクを増している。

     

    『ブルームバーグ』(3月24日付)は、「世界経済、今年は少なくとも金融危機と同程度落ち込む-IMF」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「国際通貨基金(IMF)は、今年の世界的なリセッション(景気後退)を見込む。10年以上前の金融危機と少なくとも同じくらいの落ち込みを予想するが、来年は回復するとみる。3月23日に開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁による緊急の電話会議後に発表した声明で、ゲオルギエワIMF専務理事は、すでに多くの国が打ち出した緊急財政措置をIMFとこれまで80カ国近くがIMFに緊急融資を要請してきたと説明して強く支持し、主要中央銀行の金融緩和策を歓迎する意向を示した」

     

    IMFへ80ヶ国近くが緊急融資を申し込むほど、世界経済は逼迫化してきた。ドル重要が高まっており、FRB(米連邦準備制度理事会)が韓国など9ヶ国と通貨スワップ協定を結んだ背景でもある。

     

    今年の世界経済は2008年のリーマンショックと、同等ないしそれ以下の伸び率に落込むと見られる。これは、世界の輸出規模の縮小を意味する。輸出依存度の高い国には手痛い打撃を与えるはずだ。

     

    (2)「専務理事は声明で、「これらの大胆な取り組みはそれぞれの国の利益にかなうばかりでなく、世界経済全体に寄与する」と評価し、「特に財政を活用した、さらなる措置が必要になるだろう」と続けた。IMFは協調した強力な対応を提供するため、他の国際金融機関と緊密に連携しているとし、1兆ドル(約110兆円)に上る融資能力の全てを活用する用意があるとあらためて表明した」

     

    IMFは、1兆ドルの緊急融資に応じる方針を示した。あえて、この融資総額を明示するほど、世界経済の資金繰りが苦しくなっている証拠だ。

     

    (3)「来年の回復について専務理事は、「新型コロナウイルスの封じ込めと保健制度の強化に全ての国・地域で優先的に取り組むことが極めて重要だ」と指摘。「経済的な影響は現時点で深刻であり、先行きもそうなるだろうが、感染拡大阻止が早ければ早いほど、急速で強い回復が実現するだろう」と呼び掛けた。

     

    下線部では、感染拡大阻止が早ければ早いほど、回復時期が速まるとしているがそうだろうか。2008年は金融危機である。不良債権を生み出してその処理に時間はかかった。今回の危機は、公衆衛生に関わる「生命リスク」である。供給断絶と需要断絶が同時に起こっている。しかも、所得断絶を伴った需要断絶であるから、必然的に「債務増加」を伴っている。これは、過去の経済危機のパターンと異なる。

     

    つまり、生命リスクが消えて生産活動が正常化しても、得られる所得は先ず、所得断絶期に生じた負債返済に充当される。それゆへ、爆発的な消費の増加は生まれにくいはずだ。この事実を見誤ると誤算を招く。「経済の早期回復」にはつながらないであろう。

     

    こうした新しい視点で韓国経済を眺めると、安易な予測はできなくなろう。

     


    『朝鮮日報』(3月24日付)は、「SP、『韓国は今年マイナス成長』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「世界的な信用格付け会社、スタンダード・アンド・プアーズ(SP)は23日、新型コロナウイルスによる感染症による影響で韓国が今年はマイナス成長に陥るとし、予測値を当初の1.1%からマイナス0.6%へと大幅に下方修正した。主な経済シンクタンクでは、英キャピタル・エコノミクスが最近、韓国の経済成長率をマイナス1.0%と予想しているが、3大信用格付け会社で韓国のマイナス成長を予測したのは初めてだ」

     

    S&Pは、3大信用格付け会社で初めて韓国のマイナス1.0%成長を予測した。これは、いずれ、他の2社の格付け会社へも波及するであろう。

     

    (2)「SPは今月5日にも韓国の成長率予測を1.6%から1.1%へと0.5ポイント下方修正したばかりだが、今回はさらに下方修正した格好だ。SPは今年の韓国の消費者物価上昇率をマイナス0.4%、失業率を4.2%と見込んだ。このほか、韓国の今年末時点の政策金利を現在より0.25%低い0.5%と予想した。SPは韓国以外にも香港(マイナス1.7%)、シンガポール(マイナス0.8%)、日本(マイナス1.2%)がマイナス成長にとどまると予想した。中国の成長も2.9%まで鈍化すると分析した」

     

    S&Pは、韓国GDPの成長率予測で矢継ぎ早の引下げを行なっている。それだけ、韓国を取り巻く環境が急速な悪化をしている証拠である。今月5日に1.6%から1.1%へ引下げたばかりだ。それが、今回さらにマイナス1.0%の下方修正である。この調子では、近くまた引下げ場面が予想される。

     

    (3)「政府、銀行、企業、家庭が負担することになる経済的損失は、現在約6200億ドルと推定されるとした上で、アジア太平洋地域の平均成長率は2.7%になると予想した。SPとともに3大格付け会社に数えられるフィッチ、ムーディーズは最近、韓国の今年の成長率をそれぞれ0.8%、1.4%と予想している」

     

    フィッチとムーディーズの格付け会社も、韓国経済の最新予測を発表するであろう。マイナス成長になるのは必至だ。問題は、そのマイナス幅である。


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