韓国は、輸出先1位の中国と同2位の米国が、コロナ発祥を巡る対立の影響を懸念している。米国は、サプライチェーンの「脱中国」目標を掲げるまでになった。トランプ大統領は、中国製品に1兆ドルの関税を科すと発言するなど、雲行きが怪しくなっているのだ。
米中デカップリング論は、米国で年初からくすぶっていた議論である。中国が、コロナ問題について情報を明かさないという不満も手伝い、米国の生産機能を中国から分離するという構想である。本欄は、この問題について最初から詳細に報じてきた。今ようやく、具体的な形を取ってきたが、問題の根の深さを知ることが重要であろう。つまり、グローバル経済の効率性追求よりも、防疫を含めた安全保障の重要性が認識されてきたことだ。
歴史は、一直線に進むものではない。必ず、揺り戻しが起きる。旧ソ連の崩壊で、世界から共産主義の脅威が消えたと思い、「グローバル経済」という新たな地平が開けた。以来、30年間で世界経済は大きく発展した。その間に再び中国という「鬼っ子」が生まれ、手に負えないほどの力を誇示し始めている。米国は、これに驚き「米中デカップリング論」を唱えているもの。歴史は繰返す、とは至言である。
こういう視点で現実を眺めれば、韓国はどのように対処すべきか、自ずと選択すべき道が浮かび上がるはずだ。米韓同盟の中で生きることである。米ソ対立時代、日本は日米同盟の枠で行動し、そのお陰で高度経済成長を実現し安全保障を確実なものにしたのである。韓国の場合、中国への親近感が格別という歴史的な背景がある。さて、どうするのか。
『中央日報』(5月6日付)は、「韓国政府は米中葛藤を乗り越える対策があるのか」と題する記事を掲載した。
新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)により世界がまた2つに分かれている。新型肺炎の発病と拡散の責任をめぐってだ。一方は米国を中心にした欧米、もう一方は中国だ。彼らは「新冷戦」といえるほど激しい対立を見せている。
(1)「新型肺炎に関連してドナルド・トランプ米国大統領は数日前「ぞっとするような失敗を犯した」と中国を批判した。マイク・ポンペオ米国務長官は「新型肺炎が中国武漢の実験室で始まったという巨大な証拠がある」と主張した。米国・英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドなど英語圏5カ国の情報同盟体「UKUSA協定」が内部的に中国責任論を提起したという報道もあった。中国中央電視台はポンペオ長官の発言に対して「まともな精神状態でない」と応酬した」
情報同盟体「UKUSA協定」は、ファイブアイズと呼ばれている。米・英・豪・加・ニュージーランド5ヶ国が、第二次世界大戦中に発足させた高度の秘密情報共有の組織である。ここが、先に15ページにわたる報告書を提出した。本欄でもその詳細を紹介しているが、中国の武漢遺伝子実験室が破壊されていると記述している。中国は例によって、感情的な反発で証拠を隠している。
(2)「米国をはじめとする欧米側は「新型肺炎が昨年11月発生したにも関わらず、中国が隠して事態が大きくなった」と猛非難した。中国は反対に米軍が武漢に新型肺炎をまき散らした可能性を提起した。ついに各国は中国を相手に総額が26兆ドル(約2764兆円)に達する訴訟を起こした。中国は「愚かな訴訟で嘲弄を自ら招いている」と批判した。世界保健機関(WHO)が中国を擁護するような立場を続けざまに取ると米国は「WHOの資金支援を中断する」と脅しをかけた。中国は株式市場が中止になった間につけこんで欧米の有望企らを買収合併(M&A)しようとすることで米国と欧州各国の機嫌を損ねた」
中国は、コロナ問題で弱味を見せまいと強気の対応をしている。これが、火に油を注ぐ結果となり、下線を引いたような賠償問題に発展している。中国一ヶ国で世界を相手に戦えるはずがない。そうかといって、習近平氏が頭を下げれば中国国内の反発を招く。中国最高指導部は、ジレンマに立たされている。
(3)「世界は両国が手を握って情報を公開し、世界の経済回復に向けてともに努力する姿を期待している。葛藤は簡単に解決できないかもしれない。米中両国はほぼ自尊心をかけたような衝突を見せている。その影響が今後どれぐらいの期間に、どれだけ飛び火するか分からない状況だ。新しい冷戦に不確実性まで重なった局面だ。世界経済の回復にはひどい悪材料となっている」
このパラグラフは、建前論である。中国が情報を公開したら、自らの誤りを認めるようなもの。中国は、絶対に共産党に不利になる情報を出すはずがない。となれば、今回のコロナ禍は米中対立へ発展せざるを得ないのだ。米中デカップリング論が、現実味を帯びるであろう。
(4)「韓国はすでに米中の間に挟まって経済が数回疲弊した。高高度ミサイル防御(THAAD)体系の配備や米中貿易葛藤によることだ。似たような、もしかしたらさらにひどい状況に再び直面している。賢明に対処して被害を最小化する外交・経済・政治的な総合対策が必要だ。危機と不確実性の中で道を案内し国民を安堵させるのはひたすら政府の役割だ」
文政権は、「親中朝・反日米」が基本路線である。この状況で起こっている米中デカップリング論である。これにどう対応するかと言っても、妙案があるわけでない。米中二股外交を断念するしか道はないのだ。韓国には、米中対立を緩和させる力があるわけでない。「親中朝・反日米」路線を修正するしかないが、それも不可能であろう。結局、どっちつかずの中で、韓国経済は疲弊するであろう。これが、私の見立てである。





