勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年05月

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    米国の中国融和派は、今回のパンデミックにより、完全な沈黙を余儀なくされている。中国の傍若無人の振る舞いが目立ち、米国へ公然と牙を向けているからだ。中国国営メディアが、米国への医薬品輸出を止めろと主張し始めている。この血も涙もない報道によって、もはや米中の「平和共存」という最後の希望が打ち砕かれたとの指摘が出ているのである。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月1日付)は、「米国と同盟国は対中国依存の再考を」と題する寄稿を掲載した。筆者は、ポーラ・J・ドブリアンスキー氏。ハーバード大学ベルファー・センターのシニアフェロー。2001~09年に国際問題担当の米国務次官を務めた。

     

    (1)「解決に向かっていると思われていた諸問題についての再検討が、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって始まっている。そのうち1つは、現実的なコスト面の評価から中国を重要物資のサプライチェーンのハブにしたのが賢い選択だったかどうかだ。また、中国を世界経済の中に取り込むことが、同国の姿勢の穏健化につながるとの考え方も再考の対象だ。残念ながら中国は穏健化しなかった。中国政府は、貿易相手国に圧力をかける信頼できないサプライヤーの姿を示した」

     

    ここでは、2点について再検討を呼びかけている。

        中国を重要物資のサプライチェーンのハブにするデメリットの認識。

        中国を世界経済に取り込むことが、中国穏健化に貢献しないという認識。

    これまでは、中国を世界経済のメンバーにすることが、グローバル経済の効率性につながり、世界平和に貢献すると信じられて来た。その信念が今、パンデミックによって揺らいでいるのだ。

     

    (2)「米供給管理協会(ISM)の春季調査では、米国企業の約4分の3が、中国国内のサプライチェーンが途絶したと回答した。日本とオーストラリアの経済は、中国が実施した湖北省のロックダウン(都市封鎖)などの供給制限措置で深刻な打撃を受けた。中国国営の新華社通信は、パンデミック渦中で中国の行動責任を問おうとする米国に対し、報復手段として医療分野のサプライチェーンの支配力を利用する構えを見せた」

     

    パンデミックの最終責任は、中国にある。WHOを抱き込み、情報開示を遅らせて罪は重い。

     

    (3)「見直しは遅すぎたぐらいだ。日本の安倍晋三首相は、新型コロナの緊急経済対策に日本企業が生産拠点を中国から東南アジアに移転するのを支援する費用として約2400億円を盛り込んだ。米ホワイトハウスのラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長は、米国企業が中国から拠点を移す費用を政府が支払う可能性があることを示唆している。韓国は、いくつかの重要な工場の中国からインドへの移転を計画しているようだ」

     

    中国が、異質の政治体制にあることが、いつでも世界への扉を閉じる危険性を秘めている。世界覇権を狙う中国が、サプライチェーンのハブであることはどれだけ危険なことか。それを自由主義諸国に教えたのだ。

     

    (4)「米政府とアジアの同盟国は、新しい供給網を設け、貿易関係を再構築し、対中依存度の低い国際的な経済秩序を作り始めるべきだ。多国間の「有志連合」的なアプローチにより、貿易関係は政治および安全保障の関係と一層合致したものになろう。それはまた、インドや東南アジア諸国がより迅速に発展し、より強力な米国のパートナーになるのを後押しするだろう」

     

    米国の同盟国は、有志連合をつくって「貿易関係は、政治および安全保障の関係と合致させる」メリットを享受すべきであるとしている。これは、TPP(環太平洋経済連携協定)によって代替可能である。すでに、こういう多国間貿易協定ができあがっている以上、米国がここへ復帰すれば良いのである。

     

    (5)「4カ国戦略対話(QSD)は、最適な舞台の1つだ。これは安倍首相が2007年に地域の安全保障問題を話し合うために提唱したもので、日本、インド、オーストラリアと米国がメンバーとなっている。トランプ政権は2017年、自由で開かれたインド太平洋戦略に着手した。それは米国とインドの関係を支援することで、地域で支配を確立しようとする中国の動きを相殺することを意図した戦略だ。これは一層、QSDの重要性を高める。マイク・ポンペオ米国務長官は昨年9月に初のQSD閣僚級会合を開いた」

     

    4カ国戦略対話(QSD)とは、日米豪印の4ヶ国である。このうち、米と印がTPP未加盟国である。TPPは本来、米国を含めた12ヶ国で構成されていた。トランプ氏が、このTPPから脱却したものだ。米国がその気になれば、いつでも復帰可能な状況になっている。TPPも、もともと中国封じのシステムなのである。

     

    (6)「QSDは、経済安全保障にテーマを広げるべきだ。また韓国、台湾、ベトナムといった友好国を招き「QSDプラス」という形にしてもいいだろう。ベトナムは特に勧誘する意義が大きい。過去数年間で、米越関係は劇的に改善した。ベトナム政府は、中国の侵略的な行動への懸念を米国と共有しており、世界的なサプライチェーン運営と製造で主導的立場を目指している。 「QSDプラス」は、経済、政治、安全保障面での不可避の課題について均衡の取れた政策を追求すべきだ」

     

    QSDプラス」とは、TPPのことである。インドが、国内保護政策を撤廃すれば、TPPに加入できる。

     

    (7)「すべてのサプライチェーンを米国に戻したり、すべての貿易秩序を見直したりするより、最重要な産業に焦点を当てることが望ましい。肝要なのは、経済面の懸念と安全保障面の目標をうまく組み合わせ、知的財産権を保護し、公衆衛生用品の安定した供給を確保することだ。これにより米国は、パンデミックが起きても、中国政府に左右されるのを避けることができる」

     

    このパラグラフで指摘している点は、TPPによって全て代替可能である。屋上屋を重ねることなく、TPPの加盟国を増やせば、広範囲な国々で「脱中国」が実現し、「安保・貿易・防疫」の3点で効果を上げられるはずである。


    あじさいのたまご
       

    薫風香る5月だ。日韓関係は凍結したままである。世界は、新型コロナウイルスのパンダミックに襲われているが、日韓で連絡し合うこともない。韓国では、先にコロナ禍が下火になって余裕も出てきた。日本が、要請してくればマスクを寄付するという姿勢がみえみえである。これを見透かしている日本は、孤塁を守って頑張っている感じだ。

     

    安倍首相が4月29日の参議院予算委員会で、「韓国は隣国であり重要な国だ。新型コロナ対応で協力したい」という趣旨の発言をした。韓国側は、この発言を重視しているが、実際には「リップサービス」であり、何の動きもない。国会でのやり取りである。「韓国と協力しない」と、発言できるはずがないのだ。

     

    『中央日報』(5月2日付)は、「安倍首相・茂木外相『コロナで韓国と協力したい』 韓国外交部『要請ない』」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルス感染症に関連し、安倍晋三首相が4月29日の参議院予算委員会で「韓国は隣国であり重要な国だ。新型コロナ対応で協力したい」という趣旨で発言したことを受け、韓国外交部が1日、「必要な分野で日本と協力する」という立場を明らかにした。

    (1)「外交部当局者はこの日、「安倍首相の国会での発言については認知している」とし、「日本は我々の近い隣国であり、韓国政府は新型コロナ対応など必要な分野で日本と協力していこうとしている」と述べた。最近、国内外のメディアでは、韓国側が日本にマスクや遺伝子増幅(PCR)方式診断キット支援を検討しているという内容が報道された。しかしこの当局者は「国内の事情に余裕ができしだい、要請国(日本)の状況を勘案しながら防疫物品の輸出、人道的支援など海外搬出を積極的に検討していく」とし「日本政府に対する政府レベルの支援を打診したことはなく、要請を受けたこともない」と述べた。日本政府が要請してこない限り、先に支援はしないということでもある」

     

    台湾は、日本へ200万枚のマスクを寄付してくれた。日本が、要請したものではない。寄付とは本来、相手の置かれた立場を思いやってするものだろう。要請があったから、「寄付する」というレベルの話ではないのだ。韓国は、日本が要請しないから「マスクを送らない」という態度である。これで、日韓関係は修復されることなく、永遠に切れた感じである。

     

    日本にとっての韓国の位置と、韓国にとっての日本の位置は全く異なっているはず。韓国は、これを錯覚して「同等」と見ている。ならば、安保や就職の問題でも日本へ依存してはならないのだ。こういう日韓関係におけるウエイトの置き方の見誤りが、日韓関係を解決不能な問題として追い込んでいるのである。



    (2)「同日、茂木敏充外相も韓国に協力を要請するのかという質問に対し、「韓国は隣国であり、さまざまな対応をするうえで連携が重要だと考える」と答えた。続いて「韓国だけでなく各国のコロナ関連の経験と知識が国際社会で共有されるのは感染の拡大を防止するうえで意味がある」とし「PCR検査キットの報道を見たが、韓国政府と具体的な相互協議はしていない」と述べた」

     

    下線部分に、日本の本音が見え隠れしている。韓国だけでなく、多角的に各国とコロナ対策で協力していく。茂木外相は、こういう「原則論」を述べたに過ぎない。

    (3)「昨年、韓日関係が悪化した後、両国外交当局が同じ日に「近い隣国」などと表現するのは珍しい。外交関係者の間では、対北朝鮮問題と共に新型コロナ対応協力で両国政府が接点を見いだすことが可能という見方が出ている。ただ、どれ一つとして簡単に解決する問題でないため、今回の安倍首相と外交当局の発言は儀礼上の発言とも考えられ、本格的な雪解けムードとは見なしがたいという分析も出ている。両国政府は強制徴用・輸出規制問題、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)など敏感な問題で正面衝突し、新型コロナ事態では入国制限問題で感情の溝が深まった状態だ」

     

    コロナを巡る日本側の発言は、外交上の儀礼に過ぎない。国会での質疑で、韓国との交流を否定するような発言ができるはずがないからだ。率直に言えば、「マスクごとき」で日本の対韓外交の基本姿勢を変えられるはずがない。

    (4)「ひとまず青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)と外交部は「国内の世論を勘案すると、日本が先に要請しない限り韓国が先に支援する雰囲気ではない」という立場だ。これに先立ち安倍首相や茂木外相の発言も「韓国と協力するのか」という質問に対して原則的なレベルの返答をしたという解釈もある。韓国・日本は現在、米国を通じて「間接協力」をしている」

     

    韓国は、日本側の固い態度を認識すべきだろう。日韓問題の全ては、韓国の条約不履行や破棄によって引き起されているからだ。日本が、韓国へ妥協するという必要性はゼロである。

     

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    中国は現在、感染症警戒下でゴールデンウィークを楽しむ余裕も出てきた。だが、これまでの厳しい都市封鎖によって、労働集約型産業が大きな痛手を受けている。給料未払いや解雇などの労使紛争が頻発しているのだ。中国経済の脆弱性が、一気に噴出している形である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月1日付)は、「中国で賃金未払い、解雇相次ぐ、労働争議が頻発」と題する記事を掲載した。


    中国で企業の賃金未払いや解雇が相次ぎ、労働争議につながる例が頻発している。香港の非政府組織(NGO))によると3月以降で70件を超え、業種も自動車製造や運送業など幅広い。中国は新型コロナウイルスの封じ込めに成功しつつあるが、全国人民代表大会(全人代)開幕が5月22日にずれ込み景気対策は遅れ気味だ。雇用と所得の下支えは時間との戦いになる。

     

    (1)「労働争議の業種の広がりも鮮明だ。19年までは出稼ぎ労働者が多く働く建設業やレストランなど内需関連が中心だった。20年は新型肺炎の海外での感染拡大を背景に、外需落ち込みの打撃が明らかになっている。下記の労働争議の件数は、NGO「中国労工通訊」が報道やSNS(交流サイト)から集計したもの。期間は、3~4月である。

     

    労働争議の業種分布

    運輸    25.7% 

    建設    14.9%

    小売りなど 14.9%

    飲食・ホテル 8.1%

    製造業    8.1%」

     

    建設・小売り・飲食・ホテルなど、いずれも労働集約産業が、都市封鎖で決定的なダメージを受けたことを示している。これは、コロナ禍による脆弱性を100%表わしているもの。それだけ、景気回復が遅れることを示唆している。中国経済はGDP2位とはいえ、「人海戦術」で発展して来たことは否定できず、その弱味が都市封鎖の後遺症として現れているのだ。労働争議の頻発は、それを100%象徴している。

     

    (2)「台湾系の受託製造サービス(EMS)で上海に立地する昌碩科技は、スマホの海外受注の減少を理由に「パートタイムや非正規社員の削減を進めてきた」(従業員)。正社員も残業がほぼなくなり、手取り賃金が月額3000元に届かないケースがあるという。遼寧省の名門プロサッカーチーム「遼寧宏運足球倶楽部」は新型コロナのため試合が開けず給与の未払いが続き、約20人の選手が法的措置に動いている。従来と同様、運転手や内装工事の労働者、レストラン従業員による抗議活動も目立つ。労働争議の件数は広東省が2桁に上ったほか、四川省や河南省、山東省など幅広い地域で発生している。新型コロナの感染は湖北省に集中したが、経済的な影響は中国全土に広がっている」

     

    名門プロサッカーチームの選手が、給与未払いで訴えている。チームの内部蓄積がなく、コロナで試合ができず即、給与未払いとは「自転車操業」の結果だ。名門チームでさえこの調子である。他のチームは言うまでもあるまい。

     

    (3)「習近平指導部は全人代を522日に開幕すると決めた。新型コロナで傷んだ経済を立て直すための予算も承認されるが、執行には一定の時間がかかりそうだ。企業の資金繰り支援など金融面の対策が先行するが、救済策が届かない中小・零細企業や出稼ぎ労働者も多い。清華大学と北京大学が中小企業1千社を対象にした2月の調査では、85%が「13カ月で手元資金がなくなる」と答えていた。労働争議の増加と符合する。政策の発動が遅れるほど雇用や所得への影響は深刻になる。中国労工通訊の周俊熙・研究員は「今後2カ月で新型肺炎が抑制できれば雇用は好転するだろうが、海外の状況は楽観できない」と指摘する」

     

    今年の全人代は、5月22日開会である。当初予定の3月初めから見れば、大幅な遅れである。財政による景気刺激策発動は、それだけ遅れる。中小・零細企業や出稼ぎ労働者への支援が届くのは、夏以降となろう。冒頭に取り上げたように、すでに労働集約型産業での争議が頻発している。今年の経済成長率は、都市封鎖の後遺症が重くのしかかるはずだ。

     

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    中国は罪作りである。WHO(世界保健機関)の事務局長を使って2017年、WHOオブザーバーから台湾を追放した。今回の新型コロナウイルス対応では、世界的な防疫対策を構築する上で障害になっている。台湾追放を指揮したのは、言わずと知れた中国である。中国政府が、勝手に言い出した「一つの中国論」という屁理屈に基づいたものだ。

     

    台湾は、馬英九政権の2009~2016年、対中融和路線であった。台湾も、中国に妨害されず、WHOの年次総会にオブザーバーとして参加した。台湾独立志向の蔡英文政権が発足した2017年から、台湾はWTO総会に招待されず、現在にいたっている。WHO事務局が、台湾をオブザーバーとして認めるかどうか。それは、中国の意向が大きな影響力を与えている。

     

    こういう不合理な事態を招いた最大の原因は、WHO事務局自体が中国に唆されて恣意的な判断をしている結果である。今回のようなパンダミック事態に陥って、台湾をWHOから追放した不自然さが、改めて浮かび上がるのだ。

     

    『大紀元』(5月1日付)は、「日米など6カ国、台湾のWHA参加をWHOに要請」と題する記事を掲載した。

     

    日米など6カ国政府はこのほど、世界保健機関(WHO)の年次総会である世界保健総会(WHA)に台湾の参加を求める共同書簡に署名し、WHOのテドロス事務局長に送付したことがわかった。米誌『フォーリン・ポリシー』が4月29日伝えた。

     

    (1)「報道によると、外交筋とWHO内部会議資料によると、トランプ政権は同盟国の日、豪、英、仏、独とともに、WHOに対して、オブザーバーとして台湾のWHA参加を求めている。WHAWHOの最高意思決定機関で、毎年5月に開催される。馬英九政権の下、台湾と中国本土の関係が改善されたため、200916年まで、台湾は「中華台北」の名義でオブザーバーとしてWHAに参加した。2016年、反中国共産党の蔡英文政権が誕生し、中台関係が悪化した。中国当局の影響下にあるWHOは、2017年以降、台湾をWHOから排除した」

     

    WHOという最も非政治的な組織から、政治がらみの理由で台湾を追放したことは、極めて遺憾と言うしかない。台湾には、現実に中国の政治支配が及んでいないのだ。2400万台湾市民が現在、WHOという健康に関わる国際組織から排除されている。これは市民生活にとって、不都合な事態なのだ。

     


    (2)「『フォーリン・ポリシー』は、人口2400万人の台湾が新型コロナウイルス感染症の感染拡大の早期抑止に成功したため、米国など各国では台湾のWHA参加を求める声が高まっているとした。安倍晋三首相は428日、衆院予算委員会の2020年度補正予算案に関する質疑応答で、台湾のWHA参加について、テドロス事務局長に直接意見を伝えたとし、WHOについて「言うべきことがたくさんある」としたうえで、目下はWHOの下に結束する必要がある」と述べた」

     

    テドロス事務局長は、中国の顔色に従って動いている。それだけに、今回の日米などの要請に対してどう反応するか。もし反対すれば即刻、WHO組織改革の狼煙によってテドロス事務局長は辞任に追い込まれるであろう。この問題は、西側主要6ヶ国と「中国・WHO事務局長」との戦いの舞台になる。

     

    (3)「米トランプ政権は、新型コロナウイルスをめぐってWHOの中国寄り姿勢を批判し、WHOへの資金拠出の停止を決定した。その一方で、米国は台湾との防疫協力を強化している。アレックス・アザー保健福祉長官は27日夜、台湾の陳時中・衛生福利部長(保健相)と電話会談をした。米側は、台湾のWHA参加やWHOにおける関与拡大を支持すると改めて示した」

     

    今回の、台湾のWHOオブザーバー復帰要求は、米中冷戦開始の発端になろう。ここで、中国が「一つの中国論」に固執してオブザーバー復帰を拒否すれば、主要西側6ヶ国はWHOと中国非難で足並みを揃える。それと同時に、米中デカップリング(分断)論に勢いをつけるに違いない。

     

    中国の世界情勢を撹乱させようとする野望は、西側諸国としてとうてい受け入れ難いものである。これが、かつて演じられた米ソ冷戦に匹敵する、「米中冷戦」の発火点になる危険性を秘めている。米国の中国への対決意思は、並々ならぬものが感じられる。中国は、ほどほどにして矛を収めないと今後、浮沈の瀬戸際に追い込まれよう。中国にとっては現在が、それほど危険な局面である

     

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    コロナ感染で不幸にも命を落とされた人たちは、大気汚染と密接な関係のあることが分かってきた。因果関係は不明だが、相関関係が明白であるという。これは、大気汚染の激しいところで生活している場合、肺などで慢性疾患を抱えることになり、そこへコロナ感染で異常な負荷がかかって、生命に関わるというのである。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(5月1日付)は、「コロナ死と大気汚染に関連性、複数論文が指摘」と題する記事を掲載した。

     

    イタリアの経済都市ミラノは長年、深刻な大気汚染にさらされてきた。このことは、新型コロナウイルス感染者の致死率と高い大気汚染レベルの関連性を指摘する複数の研究論文によって、より一層、重苦しく深刻な問題として受け止められている。ミラノは欧州の新型コロナ感染拡大の震源地となったイタリア北部ロンバルディア州の州都だ。コロナに感染した場合、同州の住民が死亡する確率は、他州に比べて2倍の高さだ

     

    (1)「ミラノのジュゼッペ・サラ市長は、慢性的な大気汚染が新型コロナ感染による被害を増幅させた可能性が高いとみている。イタリア国内で報告されている新型コロナに感染した累計27000人の死者のうち、ロンバルディア州の死者はその半分を占める。イタリア市民保護局の統計によると、他の地域での致死率が10%であるのに対し、同州では18%となっている」

     

    下線のように、慢性的な大気汚染地域の新型コロナウイルスによる死亡率は、そうでない地域の約2倍になっているという。

     

    (2)「新型コロナによる死亡率と大気汚染の関連性をテーマにした学術研究の数はまだ限定的だが、その中には米ハーバード公衆衛生大学院(HSPH)の研究チームが発表した論文も含まれる。全米約3000の郡で新型コロナに感染した人たちの死亡率と過去の微小粒子状物質「PM2.5」レベルを調査したもので現在、ピアレビュー(同分野の専門家による評価)が行われている」

     


    (3)「人口の規模や受け入れ可能な病院ベッド数、肥満度、喫煙などの変動要素を調整した上で、研究者らはパンデミック(世界的流行)前に、粒子状物質汚染レベルが長期にわたってわずかでも高かった地域では、致死率が8%上昇したことをつきとめた。論文には「この研究結果は、人体の健康を守るために新型コロナ危機下やその後であっても、大気汚染規制を継続的に実施することの重要性を示したものだ」と記されている。HSPHのアーロン・バーンスタイン教授は同論文ついて,「大気汚染の状態がひどい地域の住民の方が、新型コロナで死亡する可能性が高い(ことが分かった)」と評価する」

     

    人間は、大気汚染の低い地域に生活することが、感染症にかかっても免疫性を維持して生命を落とすリスクが小さいことを示している。その点で、日本の大気が清浄であることは、何者にも代えがたい「公共財」と言える。

     

    (4)「イタリアのシエナ大学とデンマークのオーフス大学の研究チームがまとめた論文によれば、大気汚染によって、ウイルスによる感染拡大が助長されるだけではなく、若く健康な人であっても「最初の防御ライン」である気道の機能が損なわれて重症化する可能性があるとの見方を示している。また、英ケンブリッジ大学が発表した別の論文では、人口規模や密度などの要素は未調整ではあるものの、英国で(パンデミック前に)大気汚染レベルが高かった地域の住民は、ウイルス感染で死亡するリスクが高いことを示唆している」

     

    (5)「ケンブリッジの論文を主導したマルコ・トラヴァーリオ氏は、「住民の死亡する可能性が高いとすれば、それは大気汚染が健康に与える悪影響によるものだ」と指摘する。そして「大気汚染と新型コロナの双方が引き起こす健康状態には重複するところがあり、さらに調査を進める必要がある」としている」

     

    大気汚染でない地域といえば郊外である。日本では、最近のテレワーク・ブームの中で、都心の高層ビルに住むより、郊外の一軒家という選択がにわかに始まっているという。空気はきれいだし、テレワークであれば長い出勤時間も関係ない。にわかに「パラダイムシフト」が起こっているようである。新型コロナウイルスは、確実に価値観の転換を迫っている。人生、長く生きていると常識が、非常識になって興味深い


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