勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年05月

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    米国は、中国による新型コロナウイルス拡散で大きな損害を受けた罰を与える、と強硬姿勢を見せている。すでに3情報機関に対して、中国とWHO(世界保健機関)がコロナ情報をどのように隠蔽したかを調査させるなど、外濠を埋めさせる作業を始めている。今後の焦点は、米国が本腰を入れて「中国の犯罪」を暴き出す動きで明らかにされる事実だ。

     

    『中央日報』(5月1日付)は、「トランプ氏の新型コロナ報復『中国に罰を与える方法は多い』関税を検討」と題する記事を掲載した。

     

    ナルド・トランプ米大統領が中国に新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の拡散に対する責任を問うために関税を課す可能性もあると明らかにした。1月中国と第1段階貿易合意に署名して暫定中断した貿易戦争を再び始めるかもしれないという意味で論議が予想される。

    (1)「トランプ大統領は4月30日(現地時間)、ホワイトハウスで開かれた新型肺炎定例記者会見で「中国を対象に極端な罰を与える方法は多い」とし「中国製に関税を課して1兆ドル(約106兆円)を収める」を例にあげたトランプ大統領は中国が新型肺炎の発病を透明に知らせずに国際連携も拒否して米国をはじめとする世界180カ国が苦痛を受けているとし、中国に責任を問うと明らかにした」

     

    米国は、今回の新型コロナウイルスで受けた損害を中国に支払わせるという強い姿勢を見せている。これは、米国だけに止まらず、他国にも波及するであろう。その場合、中国は立直れないほどの大打撃を受ける。中国は、WHO(世界保健機関)を抱き込んで、上手く逃げられると画策してきたが、この思惑は大きく外れるであろう。

     

    (2)「報復手段として中国に対する債務返済を無効にする方針を検討しているかとの質問にトランプ氏は、「そのように対応を始めれば難しくなりかねない」としながら否定的な立場を明らかにした。ドル安となり「ドルの神聖さ」を弱化しかねないと説明した。その代わり、「関税賦課カード」に言及した。この日、『ワシントンポスト』(WP)はトランプ行政府が新型肺炎に関連して中国に罰を与えたり、金銭的補償を請求したりする案を検討し始めたと当局者4人を引用して報じた。この日、関係部署高位当局者が会議を開いて中国に対する報復措置と戦略を立て始めたと伝えた。この会議には情報機関当局者も参加する」

     

    米国は、大統領選を目前に控えているだけに中途半端なことで事態を収束させられない状況にある。中国への罰や経済的な補償をさせる強硬策が登場する気配だ。関税引上げで1兆ドルを保証させる案は、単なる思いつきでないだろう。すでに、米中貿易戦争で実験済みであり、その効果の大きさを熟知しているからだ。これが実現すれば、中国経済の再起は覚束なくなる。

     


    (3)「米国は新型肺炎感染者100万人、死亡者6万人を超えた世界最大被害国だ。拡散を防ぐために企業と学校が休業し、米国経済が立ち止まった。新型肺炎事態で3000万人が職場を失った。
    経済好況を踏み台にして大統領再選を狙ってきたトランプ大統領と参謀は中国に向かって怒りを吐き出しているとCNNは伝えた。マイク・ペンス副大統領は先週「中国共産党は彼らがやったことに対して代価を払わせるだろうと確信する」と話した。だが、一部の参謀は新型肺炎の大流行が進められている今は報復に出る場合ではないとし、トランプ大統領を説得している。中国から個人防護具(PPE)とマスクなど医療物資、医薬品の輸入を依存しているが、両国の対立で供給が滞る場合、被害が大きくなる可能性があるためだ。慎重論を展開する経済参謀らと報復を強く主張する国家安保参謀が互角に対立している中でトランプ大統領の意中が国家安保チームの立場に傾き始めたとWPは伝えた」

     

    米国は、中国発コロナ禍で人的に最大の被害を被っている。それだけに、怒りは大きい。かねてからの中国へ対する不信も重なり、その不満は「爆発」してもおかしくはない。世界が泣き寝入りすれば、中国はまたこういうパンダミックを引き起すリスクを抱えている。

     

    (4)「トランプ大統領はこの日ブリーフィングで中国責任論をさらに強く提起した。彼は「新型肺炎が中国武漢実験室で源を発したと信じられる理由がある」と話した。「そのように確信できる根拠を見たか」という質問に「そうだ。見た」と答えた。証拠が何かについては「それを言えない。それを皆さんに言ってならない」と答えた。また「遠くない未来に根拠に対する答えを得ることができるだろう」とし、「私が中国に対してどのように感じるかはその時決まるだろう」と話した」

     

    米国は、今回の新型コロナウイルスが中国発であることを証明しなければならない。挙証責任は、原告側にあるからだ。その際、中国はどうやって逃げるのか。今から、その言い分に興味がある。

     

    (5)「米国情報機関を総括する国家情報長官(DNI)はこの日、声明を通じて「新型肺炎を誘発するウイルスが人が作ったり遺伝的に変形されたりしたものではないという科学界の意見に同意する」と明らかにしたまた「ウイルスが中国武漢にある研究所の事故で流出したのか、それとも感染した動物との接触によって始まったのか継続して調査する」と明らかにした。武漢がウイルスの発源地であることを明確にし、人為的に作られたわけではないと一線を画した。CNNは「情報機関が声明を発表するのはきわめて異例的」としながら「ウイルスの発源地調査に対するトランプ行政府の圧力がどれほど強いかを見せる」と伝えた」

     

    米情報機関が、すでにコロナウイルスについて具体的な調査成果の一部を明らかにするなど、中国の首を真綿で締め始めている。窒息(強力反論)させないように注意しながら、証拠をテーブルに乗せ始めた形だ。


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    米国トランプ大統領は、情報機関に対してWHO(世界保健機関)と中国との癒着関係の調査を命じた。米中関係が、本格的な冷戦開始を強く印象づけるニュースである。米国国内では、新型コロナウイルスによる巨大な被害が、ナショナリズムへ火を付ける結果になった。中国外交部報道官が、ツイッターでコロナウイルス菌は米国から持込まれたというフェイクニュースを流した。米国では、これにより中国への不信感を一層強めることになったのである。

     

    米国の世論調査では、「中国不信」が強まっている。世論調査大手ピュー・リサーチ・センターが4月21日に発表した最新調査によると、米国人の66%が、中国に対して否定的な考えを抱いていることがわかった。これは、2005年に調査を始めて以来最も高い水準である。また、約9割が、中国の影響力や権力を脅威とみなしていることも分かった。トランプ政権は、国民の「中国不信」感を背景に「WHOと中国」の癒着関係を暴き出すという、平時には考えられない手段を取ることになった。

     

    『朝鮮日報』(4月30日付)は、「米ホワイトハウス、情報機関に中国とWHOによる新型コロナ情報隠ぺい調査指示」と題する記事を掲載した。

     

    米ホワイトハウスが最近、情報機関に対し、中国と世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスによる感染症に関する初期の情報を隠ぺいしていたかどうか調査を指示したことが明らかになった。

     

    (1)「米NBCテレビは29日、この問題に詳しい米政府の現職・元関係者の話として、ホワイトハウスが先週、国家安全保障局(NSA)、国防情報局(DIA)、中央情報局(CIA)などに指示したと報じたホワイトハウスは通信傍受、人脈、衛星写真などさまざまなデータを総合的に活用することを指示したとされる。トランプ米大統領は27日の記者会見で、「我々は非常に真剣に調査を行っている。我々はあらゆる状況に満足していない。なぜならば、(コロナ拡散は)早期に止めることができ、そうすれば全世界に拡散することもなかったからだ」と発言している」

     

    WHOが、中国の意向を汲んで感染症の実態を厳しく判断せず、結果的に世界中に拡散させてパンデミックを招いた責任は重大だ。米国は、今秋の大統領選挙を控え、米国の被った混乱と被害の原因が、WHOと中国の癒着にあると言いたいところ。その情報集めで、国家安全保障局(NSA)、国防情報局(DIA)、中央情報局(CIA)という米国諜報機関の総力を上げるというのだ。多分、情報はこれまでの諜報活動で把握済みなのであろう。それを、総合化・体系化して「WHO・中国の犯罪」として告発すると見られる。

     

    これが、公表された後の世界的な混乱を想像すべきだ。中国が、真っ正面から反論する。WHOもこれに歩調を合わせれば、かえって「WHO・中国」の共同正犯を立証する形になる。世界は、WHOと中国に不信感を抱き、WHO改革へ動き出す。この動きのピークを、大統領選直前に持ってくる。米国は、こういう青写真を描いていると見られる。

     

    (2)「米情報機関は新型コロナウイルスによる感染症の発生地とみられている中国・武漢市のコロナウイルス研究所2カ所に関し、WHOが何を知っているのかについても調べるよう指示を受けたとされる。一部ではこれまで、新型コロナウイルスが研究所のうち1カ所から偶然に流出した可能性が指摘されてきた。ただ、専門家の多くはそうした意見に懐疑的な立場を取っている。ホワイトハウスのホーガン・ギドリー報道官は「大統領が言及したように、米国はこの問題について徹底した調査を行っている。このウイルスの起源を理解することは世界がコロナパンデミックに対処する上で役立つのみならず、未来の感染症発生に対する迅速な対応努力を知ってもらう上でも重要だ」と述べた」

     

    下線部分は、重要な争点である。専門家の多数は、この見方を否定しているが、ノーベル賞受賞学者は、この説を支持しているのだ。真実は、多数説で決まるものではない。科学と証拠によってのみ立証される。少数説にこそ、真実があるケースが多い。私は、何ごとにおいても多数説を信じない。これまでの人生を振り返って見ても、多数説は多くの場合、付和雷同で誤りが多いのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月28日付)は、「コロナ危機、米ナショナリズムの潮流に拍車」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「コロナ危機によって、米国民に流れるナショナリスト的感情が強さと勢いを増している。もう既にそうなっていたのかもしれない。かつてドナルド・トランプ大統領の政治顧問を務めたスティーブ・バノン氏はインタビューで「ポピュリズムとナショナリズムの時代がやって来る」と断言していた。しかし、コロナ・パンデミック(世界的大流行)がその潮流をあおっている」

     

    コロナ危機は、米国人のプライドを粉々にした。「世界一の米国が、なぜこういう惨めな姿になったのか」という疑念を抱かせた。単純に言えば、中国という存在がWHOを引き込んで起こした混乱であるという認識である。中国の振る舞いが一層、米国人にこうした疑念を強めさせている。まさに、「ポピュリズムとナショナリズムの結合」である。中国は、責任逃れのために、米国との間で維持すべき親和関係を切断している。ここで、中国が米国へ協力する姿勢を示せば、ここまで米国を怒らせなかったであろう。歴史は後から振り返れば、こういう些細なことが、大きな対立軸になるのだろう。

     


    (4)「一部の米国民はコロナによって、グローバル化が行き過ぎた結果、米国が危険な世界で不必要にリスクにさらされ、過度に他国に依存する事態に陥っているとの考えを強めている。彼らにとっては米国を壁で囲いたいとの衝動が薄れるよりも、高まっている。そうした感情は大統領選挙とトランプ氏の選出によって強固になった。トランプ氏はほぼ30年にわたって普及してきたグローバル化の基本的理念の再考を推し進めている」

     

    トランプ氏が、米大統領になったこと自体すでにグローバリズムの破綻を意味した。グローバリズムの破綻とは、今回のようなコロナウイルス危機と結びついている。仮に、中国が民主主義国であれば、グローバリズムは維持されたであろう。だが、政治的は異質物が入り込めば、思惑が絡んで機能しない。現在が、こうした破綻状態と見られる。民主主義国だけであれば、グローバリズムは継続可能である。

     

    (5)「中国に対する懐疑的な見方を強めているのが、米国が重要な医薬品や医療用品の製造を中国に過度に依存するようになっているとの広い考え方だ。トランプ氏はその対応策として、この点に限らず、幅広い分野で国産化を進めることを率直に主張している。世界とのデカップリング(分離)への衝動は中国に限定されない可能性が高い」

     

    経済的な効率性追求では、グローバリズムが最適である。だが、今回のようなパンデミックが起こり、そこに覇権争いの外交的な思惑が絡めば、グローバリズムは簡単に瓦解する運命である。中国が、グローバリズムという軌道に砂を撒いたのだ。


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    北朝鮮最高指導者・金正恩氏の消息が途絶えて以来、西側では種々の情報が流れている。ほぼ重体説であるが、その中で韓国だけは「健康説」を主張している。乗馬姿が目撃されたとか、あえて重体説を否定している。

     

    こういう「異説」を主張している背景は何か。一つは、米国から極秘情報が伝えられていないことだ。安倍首相は、国会の質疑で次のように答えている。「北朝鮮に関しても米国と情報交換しているが、その内容は申し上げられない」という。米国とは、正恩氏情報も交換済みという認識だ。

     

    もう一つは、あくまでも北朝鮮との「友誼」を大事にしていくという姿勢である。世界が、どんな情報を流そうとも、北朝鮮当局の発表を信じるというもの。だが、これも程度問題である。韓国国民にとって、北朝鮮の極秘情報も掴めない韓国政府では、安全保障で大きな抜かりがあり得るというリスクである。

     

    台湾情報当局も、北朝鮮に関し次のような分析が報じられている。

     

    「台湾政府の情報機関、国家安全局の邱国正局長は4月30日、重体に陥っているなどと一部で報じられている北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長について、病気だとの見方を示した。公開された情報に基づき、このように推察されるとした。立法院(国会)外交および国防委員会の答弁で述べた。北朝鮮での権力交代や力の真空状態の出現で、東アジアに混乱が生じた際の対応について与党・民進党の立法委員(国会議員)から問われると、邱氏は準備ができているとの姿勢を示した」(『フォーカス台湾』4月30日付)

    台湾の情報機関、国家安全局長は、公開情報からこのように解釈しているという。こうなると、韓国情報当局の認識がますます謎に包まれるのだ。多分、韓国大統領府が「健在説」に固執して、情報当局の口封じをしていると見られる。この程度の認識で、仮に北朝鮮軍に不穏な動きがあってもそれを認めず、韓国軍に出動命令を出さず、あえて敗北の道を選ばせるのでないか。そんな危惧の念さえ浮かぶのである。

     


    『朝鮮日報』(4月30日付)は、「米CIA元分析官、文政権『金正恩を敵から同業者に変える努力』」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅政権が韓半島の平和・統一政策を推進しながら、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「敵」から「同業者」変容させようと努力している、という主張が提起された。これは、米中央情報局(CIA)の北朝鮮関連アナリストだったジョン・パク博士が4月28日(現地時間)に出版した著書『北朝鮮の謎の若い独裁者に関するある元CIA要員の洞察』で、このように主張したものだ。

     

    (1)「EBSメディアは2018年、金正恩委員長を「韓半島の平和時代を切り開く指導者」「世界最年少の国家元首」と紹介、ほほ笑む金正恩委員長の顔と胴体を組み立てる「立体パズル」を子ども向け教具として製作・発売して物議を醸した。パク博士は「(このような現象は)金正恩委員長が外交やあいまいな非核化宣言によって「残酷な独裁者」という評判から脱しようという努力が効果を上げていることを示唆している」と述べた。そして、「事実、このようにして子ども向けに作られた小さな金正恩立体パズルを見ると、2019年にダン・コーツ米国家情報長官(DNI)が米議会で北朝鮮の相次ぐ核兵器開発、深刻なサイバー攻撃、殺傷用化学兵器保有状況を挙げ、『北朝鮮は依然として脅威となる存在だ』と証言したことを簡単に忘れてしまうかもしれない」と言った。

     

    元CIA北朝鮮分析官が、文政権は北朝鮮・金正恩氏のイメージを「敵」から「同業者」(仲間)へ変えさせる戦略を取っていると分析。米国が韓国に不信感を持っている最大の理由は、ここにあることが分かる。北朝鮮が、共産主義国でなく平和愛好国というレールに乗せて、韓国の「同業者」に仕立て上げているのだ。

     

    文政権の目的は何か。それは、韓国国民に対して「共産主義は怖くない」というイメージを植え付けることだ。このイメチェン作戦が成功すれば、韓国も共産化できるという狙いである。文政権の経済政策は、「反市場・反企業」主義である。決して資本主義経済のルールにしたがってはいない。「反日主義」も、朝鮮半島の共産化にとって不可欠のツールとして用いようとしている。北朝鮮と韓国は、「反日」で共同戦線を組める得がたい手段であるからだ。

     


    (2)「金正恩委員長のイメージがソフトになることで、彼の本性や戦略的目標をきちんと把握できず、彼の戦術に過剰に、あるいは消極的に対応するという問題が発生する可能性もあるという。また、パク博士は「こうした問題は、金正恩委員長が韓半島で引き続き何かをすることができる空間を提供するだろう」と指摘した。パク博士は、金正恩委員長に対する間違った認識ががん細胞のように広がっている、という博士の問題意識が、この著書の結論に反映されているようだ」

     

    文政権が、金正恩氏のイメ-ジを「平和の使徒」に変えて、その偽りのイメージで北朝鮮と韓国を一体感させる。こういう壮大な夢を描いていたのであろう。正恩氏は37歳である。80歳まで北朝鮮の最高指導者に止まっている間に、韓国は北朝鮮と統一する計画であったに違いない。その目玉になる正恩氏が、突然の「重体説」である。韓国は、絶対に受け入れ難いニュースである。藁をも掴む気持ちで、「健在説」に固執しているのであろう。正恩氏が消えてしまったならば、文政権の提携相手がいなくなるからだ。

     

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    中国は、世界中を共産主義にする文化活動の一環として、米国ハリウッドで映画制作に検閲の手を延ばしている。中国を美化するため、映画の内容を検閲しているのだ。中国の映画市場が膨大なために、中国上映を条件にハリウッド映画に干渉しているもの。

     

    『大紀元』(4月30日付)は、「中国当局の検閲を受け入れるハリウッド映画界、米議員『政府協力停止の法案』提出」と題する記事を掲載した。

     

    米議員はこのほど、中国共産党の検閲を受け入れるハリウッド映画会社に対する、国防総省など公的機関の協力を停止する法案を提出する。

     

    (1)「テッド・クルーズ上院議員は、中国で公開するために検閲を導入した米映画製作会社を批判した。「ハリウッドは長い間、収益増加のために、中国(共産党)の映像検閲やプロパガンダに協力してきた」とSNSに書いた。同氏の提案する通称「台本法」は、映画関係会社に「政府の協力か中国の利益かの選択を迫るものだ」とした。FOXニュースによれば、米国防総省は、テレビ局や映画制作会社と協力して、より緻密で迫力ある戦闘の描写のために協力してきた。『トランスフォーマー』『パール・ハーバー』『アルマゲドン』『ミッドウェイ』『アイアンマン』など、ハリウッドの大ヒット作の多くは、国防総省の協力を得ている」

     

    ハリウッドは、世界2位の映画市場である中国の興業収入を上げるべく、中国共産党の検閲に従ってきたという。米議員は、この中国検閲を防ぐべく「台本法」なる法案を上程する。中国の検閲に従う場合、撮影シーンで米国政府は協力しないというもの。

     

    (2)「中国の映画興行収入は過去10年で急上昇している。中国公式発表によれば、中国の映画館は2019年、92億ドルの収入を上げ、これは10年前の10倍にあたる。中国映画市場は世界で2番目に大きい市場であり、近く1位になるとも見込まれている。この大型市場で成功を収めるために、ハリウッド映画作品は中国の観客向けに、中国共産党の検閲に従う映画が増加した。また、ハリウッド映画会社の多くは中国の映画製作者に共同投資を求め、中国での公開約束を取り付けている。さらに、中国の映画製作者は、M&Aや合弁事業を通じて、映画館運営や映画作成に関わる会社を買収し、ハリウッド映画関係会社の資本に深く関わっている。ハリウッド映画鑑賞者は、知らず知らずのうちに中国共産党のプロパガンダの一部を視聴することになる

     

    中国共産党は巧妙である。筋書きを変えさせて中国賛美にしてしまうのだ。事情を知らない観衆は、それが「真実」と思い込むのだ。中国は、世界中で孔子学院を武器に、共産主義宣伝を行なっている。映画でも洗脳しようという狙いだ。戦時中の日本映画も、戦争賛美であった。中国は、ハリウッドへ乗り込み世界規模で「共産主義賛美」を行なうというのだ。

     

    (3)「ワシントン拠点のシンクタンク・ヘリテージ財団のティモシー・ドーシャー副代表は、2019年11月に同財団公式サイトで、「ハリウッド映画は中国市場で利益を上げることに依存する傾向が強まっている。むしろ、最初から映画を中国での放映を念頭にして作っているようだ」と指摘する。同財団の上級フェローのマイク・ゴンザレス氏によると、中国共産党の検閲官は、党体制下の中国を独裁国ではなく「最強で誇らしい」として描くように要求し、他の先進国と同等に自由と尊厳のある国であるかのように表現することを求める。また、人権や宗教迫害問題、係争中の領土、台湾、香港に関する話題には触れないよう要求する。「中国共産党は共産党であり、共産党は文化が政策や政治の上に立つ」「共産党は文化を通じて人々に影響を与えることを熟知している」とゴンザレス氏は分析した」

     

    共産党が、国民生活の改善充実よりも、国威発揚で外延的発展(領土拡張)に専念する姿は、戦前の日本と同じである。その意味で、中国は軍国主義である。共産主義=軍国主義という、マルクスの「共産党宣言」からかけ離れた怪物になっているのだ。そのモンスターが、ハリウッド映画では「天使」を装う。

     


    (4)「クルーズ議員は4月中旬、「台本法」とは別に、中国のメディアが米連邦通信委員会の規則を無視して「プロパガンダ」を米国の視聴者に放送することを防ぐ法案を発表した。議員は24日、ワシントン・フリー・ビーコンの取材に対して「中国共産党は毎年数十億ドルを投じて報道機関を買収し、情報戦を展開してプロパガンダを拡大している。全体主義体制にとって不都合な真実を白塗りしている」と批判した」

     

    共産主義の自己矛盾ゆえに、今回の新型コロナウイルスを発症させ、世界経済を大混乱させている。そのことに気付かず、今日も軍拡に励んでいる。だが、歴史の天罰とも言うべきなのは、コロナ禍が中国経済を疲弊させ、世界中の恨みを買っていることだ。いくらハリウッド映画の魂を買収しようとしても、それは金の無駄。中国の偽りのメッキが剥げ落ちて、頭上に落ちてくるだけなのだ。


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