米経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、昨秋から日本企業の株主重視経営を評価している。滅多に日本を褒めることのない同紙が、昨今のコロナ禍でも引き続き日本企業を高評価している。注目点は、日本企業の保有現金の多さである。パンダミック下では、企業が営業活動を中断したので、極端な流動性不足に直面している。その点で、日本企業は過去の手厚い内部留保で手持ち現金が多いのである。これが、世界企業の中で優位なポジションを占めさせている、と評価しているのだ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月28日付)は、「日本株が避難先に、コロナ危機どう転んでも」と題する記事を掲載した。
世界の注目は、重力に逆らうかのようなS&P500種指数のパフォーマンスに集まっているが、日本の上場企業は過去10年の大半にやってきたことを地味にやり続けている。淡々とアウトパフォームしているのだ。
(1)「東証株価指数(TOPIX)はドル建て換算で、世界の株価がピークをつけた2月12日以来、8%値下がりしている。これに対し、S&P500、MSCI新興国指数、ユーロ・ストックス指数は同期間にそれぞれ11.5%、16.5%、19.8%の下落となっている。だが、過去のパフォーマンスを頼りに、日本市場に目を向けるべきだと言っているのではない。今後状況が大きく改善するか、逆に再び悪化するかにかかわらず、日本の上場企業は投資家が恩恵を受ける要素を備えているのだ」
世界の株価(ドル建て)がピークをつけた2月12日以来の値下がり状況
TOPIX 8%下落
S&P500 11.5%下落
MSCI新興国指数 16.5%下落
ユーロ・ストックス指数 19.8%下落
TOPIXの値下がり率が、最も軽微であった理由は何か。答えは、後のパラグラフに出てくるが、現金保有高の大きさである。コロナ禍での不況抵抗力を評価された結果である。
(2)「新型コロナウイルスの大流行で打撃を受けた世界経済が想定以上に早い回復を遂げた場合、TOPIXのかなりの部分を構成する電気機器、情報・通信、輸送用機器の各セクターには追い風となる。日本の大型株は、国内売上高の割合が約半分にとどまる。こうしたシナリオ下で、日本株が米国株をアウトパフォームすることはないかもしれないが、引き続き新興国や欧州の株式に勝つ可能性は十分にある」
日本の大型株の国内売上高の割合は、約半分にとどまる。これは、日本の国内不況に左右されない点であり、他国の株式に十分に勝てる要因としている。
(3)「コロナ感染の第2波、第3派に見舞われる、もしくはアナリストの想定以上に経済への打撃が深刻なために回復が鈍い場合、日本企業が持つ強みはより明確になる。それは大量に抱える現金だ。日銀のデータによると、国内企業(金融除く)が保有する現金・預金は昨年12月時点で約280兆円に上る。平時なら、日本企業が巨額の現金を抱えている状況は同国経済にとって望ましくないかもしれない。しかし、今の時期には非常に歓迎すべきものだ。日本株への売りが他国の株ほど強まらなかったのも、これで多少は説明がつく」
どこの国の企業もパンデミックで、流動性不足に直面している。その点、日本企業は「後顧の憂い」がないのだ。資金手当の心配がなく、経営計画を推進できる強味が何者にも優る。こういう時期に、自由な発想で経営できる強味を生かせば、今後の発展を約束するのであろう。企業経営は、流れを中断して立ち止まることが、もっともロスを大きくする。
(4)「日本株のバリュエーションも魅力的だ。このところの上昇でやや割高になったが、その変化は米国に比べれば足元にも及ばない。向こう1年の見通しに基づく日本株の株価収益率(PER)は、3月につけた底の11.1倍から現在では15.7倍になった。これに対し、米国株は13.5倍から22.9倍に跳ね上がっている。ファクトセットによると、米国株に比べた日本株の割安感は、過去最高の水準に達している。日本株は今年すでにその価値を示しているが、先行きが極めて不確実な状況において、なお魅力的な要素を備えている。米国株の水準にやや警戒感を抱く投資家なら、バランスを求めて東方に目を向けるといいかもしれない」
日本株のPERは現在、15.7倍。米国株は22.9倍である。米株が、大きく買い進まれている一方、日本株は出遅れている。割安感が目立つのであろう。日本株は、上値余地があると見ているのだ。
世界の株価(ドル建て)がピークをつけた2月12日以来の値下がり状況
TOPIX 8%下落
S&P500 11.5%下落
MSCI新興国指数 16.5%下落
ユーロ・ストックス指数 19.8%下落
TOPIXの値下がり率が、最も軽微であった理由は何か。答えは、後のパラグラフに出てくるが、現金保有高の大きさである。コロナ禍での不況抵抗力を評価された結果である。