勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年05月

    a0960_008531_m
       


    米経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、昨秋から日本企業の株主重視経営を評価している。滅多に日本を褒めることのない同紙が、昨今のコロナ禍でも引き続き日本企業を高評価している。注目点は、日本企業の保有現金の多さである。パンダミック下では、企業が営業活動を中断したので、極端な流動性不足に直面している。その点で、日本企業は過去の手厚い内部留保で手持ち現金が多いのである。これが、世界企業の中で優位なポジションを占めさせている、と評価しているのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月28日付)は、「日本株が避難先に、コロナ危機どう転んでも」と題する記事を掲載した。

     

    世界の注目は、重力に逆らうかのようなS&P500種指数のパフォーマンスに集まっているが、日本の上場企業は過去10年の大半にやってきたことを地味にやり続けている。淡々とアウトパフォームしているのだ。

     

    (1)「東証株価指数(TOPIX)はドル建て換算で、世界の株価がピークをつけた2月12日以来、8%値下がりしている。これに対し、S&P500、MSCI新興国指数、ユーロ・ストックス指数は同期間にそれぞれ11.5%、16.5%、19.8%の下落となっている。だが、過去のパフォーマンスを頼りに、日本市場に目を向けるべきだと言っているのではない。今後状況が大きく改善するか、逆に再び悪化するかにかかわらず、日本の上場企業は投資家が恩恵を受ける要素を備えているのだ」


    世界の株価(ドル建て)がピークをつけた2月12日以来の値下がり状況

    TOPIX          8%下落

    S&P500       11.5%下落

    MSCI新興国指数    16.5%下落

    ユーロ・ストックス指数  19.8%下落

     

    TOPIXの値下がり率が、最も軽微であった理由は何か。答えは、後のパラグラフに出てくるが、現金保有高の大きさである。コロナ禍での不況抵抗力を評価された結果である。

     

    (2)「新型コロナウイルスの大流行で打撃を受けた世界経済が想定以上に早い回復を遂げた場合、TOPIXのかなりの部分を構成する電気機器、情報・通信、輸送用機器の各セクターには追い風となる。日本の大型株は、国内売上高の割合が約半分にとどまる。こうしたシナリオ下で、日本株が米国株をアウトパフォームすることはないかもしれないが、引き続き新興国や欧州の株式に勝つ可能性は十分にある

     

    日本の大型株の国内売上高の割合は、約半分にとどまる。これは、日本の国内不況に左右されない点であり、他国の株式に十分に勝てる要因としている。

     


    (3)「コロナ感染の第2波、第3派に見舞われる、もしくはアナリストの想定以上に経済への打撃が深刻なために回復が鈍い場合、日本企業が持つ強みはより明確になる。それは大量に抱える現金だ。日銀のデータによると、国内企業(金融除く)が保有する現金・預金は昨年12月時点で約280兆円に上る。平時なら、日本企業が巨額の現金を抱えている状況は同国経済にとって望ましくないかもしれない。しかし、今の時期には非常に歓迎すべきものだ。日本株への売りが他国の株ほど強まらなかったのも、これで多少は説明がつく」

     

    どこの国の企業もパンデミックで、流動性不足に直面している。その点、日本企業は「後顧の憂い」がないのだ。資金手当の心配がなく、経営計画を推進できる強味が何者にも優る。こういう時期に、自由な発想で経営できる強味を生かせば、今後の発展を約束するのであろう。企業経営は、流れを中断して立ち止まることが、もっともロスを大きくする。

     

    (4)「日本株のバリュエーションも魅力的だ。このところの上昇でやや割高になったが、その変化は米国に比べれば足元にも及ばない。向こう1年の見通しに基づく日本株の株価収益率(PER)は、3月につけた底の11.1倍から現在では15.7倍になった。これに対し、米国株は13.5倍から22.9倍に跳ね上がっている。ファクトセットによると、米国株に比べた日本株の割安感は、過去最高の水準に達している。日本株は今年すでにその価値を示しているが、先行きが極めて不確実な状況において、なお魅力的な要素を備えている。米国株の水準にやや警戒感を抱く投資家なら、バランスを求めて東方に目を向けるといいかもしれない」

     

    日本株のPERは現在、15.7倍。米国株は22.9倍である。米株が、大きく買い進まれている一方、日本株は出遅れている。割安感が目立つのであろう。日本株は、上値余地があると見ているのだ。

    世界の株価(ドル建て)がピークをつけた2月12日以来の値下がり状況

    TOPIX          8%下落

    S&P500       11.5%下落

    MSCI新興国指数    16.5%下落

    ユーロ・ストックス指数  19.8%下落

     

    TOPIXの値下がり率が、最も軽微であった理由は何か。答えは、後のパラグラフに出てくるが、現金保有高の大きさである。コロナ禍での不況抵抗力を評価された結果である。

     

     

    あじさいのたまご
       


    中国習政権は、新型コロナウイルスの発生源を武漢でなく、他国へ擦り付けることに懸命になっている。1月時点では、武漢市華南海鮮市場と発表していたが、今になって否定するという変節だ。中国国内の共産党への信任欠如を恐れた結果であろう。中国共産党の「小心ぶり」を見せている。世界の信頼を傷つけても「御身大切」の小人なのだ。これで、世界覇権を狙いたいと、どでかい夢を描いている。

     

    『大紀元』(5月28日付)は、「中国専門家『発生源は武漢の市場ではない』、1月の発言を反故」と題する記事を掲載した。

     

    中国疾病予防管理センターのトップ、高福主任はこのほど、メディアの取材に対して、武漢市華南海鮮市場は新型コロナウイルスの発生源ではないと発言した。しかし、4カ月前の記者会見で、高主任は、同市場で販売されている野生動物から新型コロナウイルスを見つけたと明言した。中国人ネットユーザーは、1月の発言を覆した同氏を非難した。

     

    (1)「高福氏は5月25日、官製メディア「鳳凰衛視(フェニックスTV)」のインタビューを受けた。その際、同氏は、1月上旬に国家の調査チームとともに武漢市に入り、華南海鮮市場で動物サンプルと下水道の廃水サンプルを集めたと明かした。動物サンプルから新型コロナウイルスを検出できず、廃水からウイルスを発見したと述べた。1月22日、同氏は国務院新聞弁公室が開いた記者会見で、「新型コロナウイルスの発生源は、武漢市の海鮮市場で違法に取引されている野生動物だ」と話した」

     

    (2)「国営新華社通信は1月26日、「中国疾病予防管理センターは、新型コロナウイルスの発生源研究において一定の成果を得た。(同センターは)武漢市華南海鮮市場で収集した585件の環境サンプルの中、33件のサンプルから新型コロナウイルスの核酸を初めて検出した。同時に、陽性環境サンプルからウイルスを分離することに成功した。同ウイルスの感染源は華南海鮮市場で取引されている野生動物だと示された」と報じた。同記事は現在も、新華社のウェブサイト「新華網」に掲載されている」

     

    中国疾病予防管理センターのトップ、高福主任は自らの発言を翻して、新型コロナウイルスの発生源は分からないと発言した。中国感染症チームを率いるトップが、こういう政治的な発言をして、自らの地位を守ろうとしている。否定発言を迫る中国指導部は、真実の究明よりも、中国のメンツを優先させようとしている。武漢発症は、公知の事実となっている。感染者の発生状況から見ても動かせぬ事実だ。それをこの期に及んで否定する。常識では考えられないふるまいだ。世界中か出されている賠償請求をかわす狙いもる。

     

    (3)「中国インターネット上では、高福氏の矛盾した発言への批判が強まった。中国版ツイッターの微博では、高氏の辞任を求める声が上がっている。

    「もし1月の発言が本当のことであれば、5月の発言は嘘でしょう。逆に5月の発言が本当であれば、1月に言ったことは嘘でしょう。どちらにしても、高氏は嘘をついた」

    「未知のウイルスを目の前にして、私たちは手違いやミスを理解できる。しかし、嘘をつくことは許されない。国家衛生健康委員会は、微博に投稿して、高福氏を称賛した。嘘ばかりつく主任をなぜ容認するのか?国家衛生健康委員会が高福氏を解任しないことを、非常に不安に思っている」

    「専門家として、なぜ無責任な発言をしたのか?なぜ事実を言わないのか?」

    「14億人の健康問題をこのような嘘つきに任せてはいけない。高福、辞任しろ」

     

    読者からは、非難が殺到している。何と罵倒されてもシラを切る積もりなのだ。「だから共産党は信頼できない」という評判を落とすだけであろう。

     

    (4)「武漢市で新型コロナウイルスの感染が発生した後、中国当局は当初、華南海鮮市場が発生源だと強調した。しかし、国内外の一部の専門家がウイルスを分析した結果、ウイルスは武漢ウイルス研究所の実験室から漏洩した可能性があるとの認識を示した。これを受けて、中国当局は2月下旬以降、発生源について、華南海鮮市場ではなく、米軍の兵士が持ち込んだと主張し始めた。高福氏は、中国当局の方針に歩調を合わせ、発言を変えたとみられる」

     

    中国は、巧妙である。華南海鮮市場の発生源を否定させたのは、この市場でコウモリを売っていなかったことが立証されているからだ。その後、専門家は武漢ウイルス研究所の実験室からの漏洩を指摘している。中国は、武漢ウイルス研究所説を否定して、米軍将兵の持ち込みに切換え、米国へ罪をなすりつけている。こういう一連の「脚本」を見ると、最初から中国共産党が仕組んでいる疑いが濃厚になる。

     

    a0960_006640_m
       

    韓国は、コロナ対策で効果を上げたと評価されている。その裏に、ミニ中国型の個人監視網が、コロナ感染者を自動的に割り出していたという事実が浮上している。ロイター通信は、他国が、簡単に真似すれば人権侵害の恐れがあると報じた。

     

    日本では、人権尊重が第一でコロナ対策が行なわれた。日本国憲法の精神に従ったものである。あくまでも自粛の2文字で感染防止に努めた。日韓を比較すると、日本の方がはるかに民主的である。この日本が、韓国から目の敵にされている。なんとも不条理さを感じるのだ。

     

    『ロイター』(5月27日付)は、「韓国の『優れた』コロナ対策を模範にできない理由」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスによる死者数を300人以下に抑制した韓国政府の対応は、世界から称賛されている。だが、各国がそれを模範として導入できるかと言えば、それはまた別の問題だろう。韓国では5年前に導入された法律により、裁判所の令状なしで幅広い個人情報を入手する権限が当局に認められているのだ。

     

    (1)「韓国では様々な個人情報が新型コロナ感染対策に活用されている。それに対しプライバシーの侵害を恐れる人々から懸念の声が上がっている。携帯電話の位置情報やクレジットカードの利用履歴、そして監視カメラ映像を使い、1時間以内に感染の疑いのある人を追跡することができるという。この迅速な対応は、世界で最も先端的な取り組みといえよう。このシステムは3月に導入された。複数の省庁間の障壁を取り払い、情報を共有することに成功した。このシステムは、もともと韓国の「スマートシティ」構想のために開発されたもの。地方自治体が人口や交通量といった情報を共有する目的で作られた」

     

    下線部分は、中国の個人監視網を想像させるほどだ。あの口うるさい韓国国民が、よく承認したと思うほど、プライバシーが侵害されている。

     

    (2)「京畿道の感染症対策担当ユン・ドクヒさんはこう語る。「このシステムを使えば、携帯電話のGPS情報やクレジットカードの履歴を20―30分で入手できるので、これまで2―3日程度かかっていた疫学調査の時間が短縮され、感染症の拡大を防ぐことができる」。このシステムの実力が最初に試されたのは、今月ソウルのナイトクラブで発生した集団感染だった。ここで少なくとも196人が感染した。「梨泰院のクラブを訪れた人々のクレジットカード履歴すべてにアクセスした。クラブの客はすべて感染の疑いがあるため、特定の人々のカード履歴を調査した。さらにわれわれはGPS位置情報を申請し、特定の時間帯に当該地域に1時間以上滞在した人全員のリストを入手した」(ユンさん)」

     

    韓国司法は、時の政権になびく特性を持っている。大統領の権限がそれだけ大きいという意味だ。それだけに、政敵を倒す目的で使われたらと思うと、ゾッとするほどの個人監視システムができあがっている国である。

     

    (3)「5年前に成立した法律により、韓国当局には個人情報を入手する権限が与えられた。この感染症予防管理法は、韓国が中東呼吸器症候群(MERS)に見舞われた教訓として導入された。この法律により、保健当局は裁判所の令状がなくても幅広い個人情報にアクセスができる。京畿道のイ・ジェミョン知事は、こうしたシステムの使用は目下のパンデミックのような公衆衛生上の緊急事態のみ認められると話す。「こうしたシステムは欧米の価値観とは相容れないものがあるかもしれない。だがわが国は国民のほぼすべてがスマホを使用し、最先端のIT業界を擁している。そのため、ある時点で特定の地域の中継器を利用したすべてのスマホの記録にアクセスすることができる。これは確かにとても恐ろしい現実だ。こういった情報は、病気のまん延といった危機に限定して利用されるべきだ」と指摘する」

     

    欧米の価値観とは、かけ離れた個人監視網である。中国には及ばないとしても、それに似た個人監視網をつくった韓国の価値観には、中韓共通の儒教文化の共通項がある。儒教文化圏の抱える人権軽視の思潮に驚くのだ。韓国が、中国へ深い憧憬を抱く心理状態が分かる感じである。

     

    (4)「多くの国々で、患者の個人情報を明かすことなく追跡ができるアプリが開発されている。だが韓国は、よりプライバシーに踏み込んだ解決法を選択した。市民に感想を聞いてみたところ、評価する声がある一方でプライバシーに対する懸念の声も聞かれた。「患者がどこに住んでいるのか、どこに行ったのか、何にお金を使ったのかを人々に知らせるのはプライバシーの侵害だが、当局だけが知っている分にはいいと思う」。「プライバシーを守ることも大切だが、韓国でも国際社会でもいまはプライバシーの問題はわきに置いておくべきだ。人の命は個人のプライバシーよりも大切だからだ。確かにプライバシーは大事だが、感染症予防はもっと大事だ」と語る」

     

    日本は、プライバシー侵害を回避する感染対策が取られた。それでも、韓国以下のコロナ死亡率という世界最低を維持できた。「日本モデル」の成功であろう。

     

    (5)「韓国で新型コロナにより死亡した人の数は267人。他国に比べて大きな成果を挙げたと言えよう。だがその代償として個人情報を丸裸にするシステムを各国が導入できたかと言えば、それはまた別の問題だろう」

     

    韓国が、感染症対策とはいえ安易な人権侵害のシステムを利用する危険性は、独特の韓国の価値観を示している。日本としょっちゅう外交摩擦を起こす裏に、こうした価値観の差がある。日韓問題は、文化摩擦である。


     

    a0960_008531_m
       

    米中冷戦を5条件で予測

    韓国の二股は無能の証明

    反日を聖域にし失敗隠す

    ウォン安は危機の前兆へ

    米大教授が唱える危機説

     

     

    文在寅政権は、反日が政権維持の最大バネになっている。進歩派を名乗るが、その実態は民族主義である。中国の習近平政権も同じ民族主義だ。文政権が、「親中朝・反日米」を基調としている背景には、習政権と同じ民族主義の共通項がある。

     

    民族主義は、民族の独立を第一義とするように、合理的思考と距離を置くものである。文政権が、経済政策で失敗しているのは、経済に不可欠な合理的思考と無縁であるからだ。文政権が、元慰安婦問題や旧徴用工賠償問題になると、国際法を無視した行動を取る背景に、国際法を遵守するという合理的思考回路が切断されている結果である。このように見てくると、文政権と与党「共に民主党」が支配する韓国政治に、現在の国際政治と国際経済の急変に対応する能力があるかどうか、極めて怪しく映るのである。

     

    韓国経済には当然、国際政治と国際経済の変化を反映するが、この二つの激変に対応できない状況である。

     

    米中冷戦を5条件で予測

    国際政治の変化とは、米中の「冷戦」である。中国が米国の覇権に挑戦するポーズを取ったことから始まったものだ。米国は、米ソ冷戦を戦い抜いた。第二次世界大戦では、日本とドイツを相手に勝者になった国である。そういう、百戦錬磨の米国と、歴史だけ古い新興国・中国が、あえて対立する構図である。表面的には米国主導の冷戦だが、本当の仕掛け人は中国である。

     

    冷戦の勝負を決めるのは、同盟国の存在、科学力、経済力、軍事力、政治制度など5つの要因が挙げられる。次に、これら5つの要因について米中を比較したい。

     


    1)同盟国の比較:米国は、先進国のすべてと台湾を網羅している。中国は、ロシアや北朝鮮、イランなどである。ロシアは、本質的に中国の下に立つことを快しとせず、状況判断次第で「中立」へ逃げる可能性が大きい。中国の同盟国は結局、北朝鮮とイランだけとなろう。米国が同盟国の数で圧倒的優位である。

     

    2)科学力の比較:米国のノーベル科学賞受賞者数は世界一である。中国は、技術窃取とスパイ網で世界最先端技術を狙っている国である。米国が、中国への技術窃取やスパイ防止に全力を挙げれば、手も足も出ない状況である。

     

    3)経済力(GDP)の比較:中国が米国の6割の水準にまで追っている。だが、中国は生産年齢人口比率という人口動態の「人口ボーナス」に負う急成長である。現状は、この逆転によって生産年齢人口比率の低下である「人口オーナス」で、経済成長率は右肩下がりである。多くの人々は、この現実が理解できず、「中国万歳」を叫んだ。そのピークは、2010年で終わった。人口動態では、米国が移民流入という「人口ダム」を抱えて優位である。米国は基軸通貨国である。米国は、中国の真似もできない金融面での潜在的成長力を持っている。

     

    4)軍事力の比較:軍事力は、科学力と経済力を掛け合せたものだ。米国には、同盟国の軍事力を動員できる「プラス・アルファ」がある。米中対立の最前線は、南シナ海と東シナ海が舞台になる。米国は、日本の提唱した「インド太平洋戦略」に相乗りした。参加国は、日本、米国、豪州、印度がメインになって、中国と対峙する戦略構想である。いずれ将来は、NATO(北大西洋条約機構)が加わり、共産主義から民主主義を防衛する大構想に発展するだろう。

     

    5)政治制度の比較:米国の民主主義と中国の専制主義の優劣である。それぞれの国民は、どちらの政治制度に魅力を感じるかが問われる。中国専制主義下の国民は、基本的人権を奪われ監視下にある。第一次世界大戦では、参戦した三つの皇帝が国民の不満で倒された。ドイツ皇帝、オーストリア皇帝、ロシア皇帝である。戦争に伴う民衆の不満が、自国の皇帝制度を倒したのである。この前例から見て、中国共産党は米中の軍事的衝突で倒れる可能性があるのだ。民衆の置かれた政治状況で、戦争への耐久度が左右される。

     

    以上の5つの視点で見れば、米国は圧倒的な優位にあり、中国の敗色濃厚である。韓国で、こういう冷静な比較論を聞いたことがない。せいぜい、次のような議論に止まっている。韓国の対中輸出比率は25%で1位である。米中が冷戦下に入った場合、米国につくと対中輸出に大きな影響が出るから、できるだけ旗幟を鮮明にせず「洞が峠」を決め込む、という戦術である。(つづく)

     

     

    a0960_004876_m
       

    中国、「人民元相場」28日午前2時、1ドル=7.1696元である。夜間に入って、一段と人民元売りが進んでいる。香港や新型コロナの問題で対中圧力を強めるトランプ政権に対し、中国人民銀行(中央銀行)は25日と26日の2日連続で、人民元の対ドル相場の基準値を約12年ぶりの安値に設定。ドル高に批判的なトランプ氏に対し、あえて元安カードをちらつかせた。日経新聞(28日付)は、こういう見方を打ち出し打している。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月27日付)は、「中国、一段の元安容認か、対米緊張と景気減速で」と題する記事を掲載した。

     

    中国は人民元の基準値を12年ぶりの低水準に引き下げた。中国政府は景気低迷や高まる米国との摩擦に対応するうえで元安がメリットになると考えているようだ。

     

    (1)「中国人民銀行(中央銀行)は26日、元の中心レートを1ドル当たり7.1293元と、2008年2月以来の最低に引き下げた。中心レートはそれまでの相場の動きなどで決められ、人民銀はこれを中心にした価格帯でのオンショア元取引を認めている。香港など、管理が緩めのオフショア市場でも元は取引される。元は米中貿易摩擦が形成された2018年と19年の多くを通じて下落した。8月には1ドル7元を下回り、中国政府は為替操作をしているとしてドナルド・トランプ大統領が非難した。だがその後、2020年1月にかけて上昇した。同月、米中は部分的な貿易協定に署名した」

     

    過去の人民元相場では、1ドル=7元を割り込むとその後の下落が早かったという記録がある。中国当局が、米国対抗という感情論で人民元安を誘導すると、売りの勢いが増して止まらなくなる危険性がある。過去の中国経済と勢いが全く違うことに留意すべきだ。「策士、策に溺れる」ということがある。経常収支赤字経済は目前に来ている

     


    (2)「香港時間26日午後時点で、オンショア人民元相場は1ドル当たり7.1321元、オフショアは7.1448元となっている。中国の指導部は元の安定を支えたいと述べてきた。李克強首相は先週、「われわれは人民元の為替レートを、適応できるバランスの取れたレベルにおおむね安定させる」と述べている。しかし、エコノミストやアナリストらは、基準値が3回連続で下がったことから、米国との摩擦が高まるなか元の現行水準を維持する意向はほとんどないとみている

     

    中国当局は、米国への感情論的対抗で人民元安に誘導してしっぺ返しを狙っているのかも知れないが、危険な火遊びに映る。中国経済は、そんな戯れ言をしているゆとりはないはず。綱渡りを余儀なくされている状況だ。

     

    (3)「ING銀行(香港)の中国担当チーフエコノミスト、アイリス・パン氏は、強いドルに対して元が下落していると指摘。投資家は貿易やテクノロジーの優位性を巡る両国の緊張がさらに激化するとみていると述べた。パン氏によると、全面的な貿易・ハイテク戦争があれば元は年内に7.30元まで下落する可能性がある。それがなければ7.05元近辺にとどまるという」

     


    (4)「大和キャピタル・マーケッツの日本を除くアジア担当チーフエコノミスト、ケビン・ライ氏は、中国には元安を求める圧力があると述べ、年内に1ドル=7.60元に達すると予想している。アクサ・インベストメント・マネージャーズ(香港)のアジア新興国担当シニアエコノミスト、アイダン・ヤオ氏は、元は変動が続くだろうと述べた。今年の中国の成長は市場の暗い予想を上回るとみられるが、元を左右する要因はそれだけではない。ヤオ氏は「地政学的な力と基本的な経済の力の主導権争いがある。そしてそれが、為替の予想を非常に難しくしている」と述べた。

     

    ここでは、人民元弱気の見方を紹介している。年内の7.30元と7.60元相場は、中国経済の先行き悲観論が定着したとき実現するのだろう。中国は、間もなく経常収支赤字経済に転落するだけに、弱気説が妥当のように思える。過去の高成長イメージで中国経済を見ると、とんでもない背負い投げを食うはずだ。

     

    (5)「ちょうど今月、トランプ米政権は数十の中国企業・機関をブラックリストに掲載し、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が外国半導体メーカーから製品を調達するのを阻止するため、新たな輸出規制の概要を示した。中国が香港に「国家安全法」を課そうとしていることは米国のさらなる措置を呼んだ。ジュリアス・ベアのアジア担当最高投資責任者バスカー・ラクシュミナラヤン氏は、元は長期的に強含む公算が大きいと述べた。中国は依然として世界成長の主なエンジンだからだ。外国人投資家は中国の債券や株、元の保有を増やしたがるとみられる。同氏は「ポートフォリオに元を持つ必要性は消え去らないだろう」と述べた」

     

    ここでは、強気説の紹介である。コロナ禍と米中デカップリング論で、もっとも傷つくのが中国経済である。コロナ賠償問題も、世界中から提訴される運命だ。それにも関わらず、下線のような見方があるのには驚く。

     

     

     

    このページのトップヘ