勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年05月

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    中国は、22日の全人代で何を発表するか、世界が注目していた。コロナ禍で経済実態は、大きく落込んでおり、恒例になっていたGDP成長率目標の発表を取り下げる代わりに、香港へ本土と同様の国家安全法を適用すると発表したのだ。台湾に対しては、従来の「平和的統一」から「平和」の二字を削って、強硬姿勢を見せた。中国本土に渦巻く不満を、香港と台湾への強硬策で交わそうという算段だ。

     

    香港へ適用する国家安全法で、中国政府は何を狙っているのか。

     

    中国では、政府がこの法律を使って活動家を取り締まり、政治的目標を推進してきた。例えば今年、本土で禁止されているゴシップ本を販売した香港の書店関係者がスパイ罪で禁錮10年を言い渡された。中国は昨年、カナダ人の研究者と元外交官を拘束した際にやはりスパイ罪を理由に挙げたが、これはカナダが華為技術(ファーウェイ)幹部を拘束したことに対する報復措置だとみられている。以上は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月22日付)が報じたもの。要する、香港の民主化運動を一網打尽にする「最悪法」である。

     


    『フィナンシャル・タイムズ』(5月22日付)は、「中国、香港治安法制強化へ、米の反発必至」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府は香港に国家安全法を導入する準備を進めている。法的な強制力を示す狙いだが、香港の抗議デモを再燃させ、米中間の緊張悪化につながる恐れが強い。計画について説明を受けた関係者2人によると、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が法案をまとめ、香港の立法会(議会)を通さずに直接、香港基本法(憲法に相当)に組み入れる方針だ。

     

    (1)「香港バプテスト大学のジャン・ピエール・カベスタン教授(政治学)は、国家安全法を香港に導入しようとする中国政府の動きは「火に油を注いで抗議運動を再燃させる」だろうと話す。立法会の民主派議員、陳淑荘(タンヤ・チャン)氏は「香港の歴史上、最も悲しい日だ。明らかに(一国二制度ではなく)一国一制度であるということを示すもので、極めて大きな後退だ」と語った。立法会は親中派議員が多数を占めるが、それでも香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は昨年6月、市民の猛反発を受けて「逃亡犯条例」改正案を成立させることができなかった。同改正案は、特定の犯罪を対象に香港市民を中国本土で裁判にかけることを可能にする内容だった」

     

    香港は現在、新型コロナウイルスでデモは休止となっているが、政府に対する怒りは強い。この夏のデモは、天安門事件のあった6月4日。昨年、最初の大規模デモが起きた6月9日。香港が英国から中国に返還された7月1日に再開するとみられている。この機先を制するような国家安全法の強制導入である。今からデモ隊と警察との激しい攻防が危惧される。

     

    (2)「中国の当局者らは、香港の親中派が9月の立法会選挙で多数を失う事態も恐れている。昨年11月の区議会(地方議会)選挙は、林鄭氏の危機対応と強圧的な姿勢を強める中国政府の対香港政策に対する信任投票と見なされ、民主派が圧勝した。新型コロナ禍でほぼ3カ月延期されていた全人代は22日に開幕。中国経済は今年13月期にほぼ7%の歴史的なマイナス成長に落ち込み、その立て直しが最大の焦点になるものとみられていた。だが、焦点は香港に移りそうだ。香港問題は米中摩擦でも重みを増している」

     

    香港へ国家安全法が適用されれば、香港の親中派が9月の立法会選挙で多数を失うことは確実だ。区議会も反中派が占めており、香港は立法会・区議会がともに反中派が支配する事態を迎える。香港は、これで米中の激しい対立の舞台になることは不可避となった、

     


    (3)「米上院ではクリス・バン・ホレン(民主党、メリーランド州選出)、パット・トゥーミー(共和党、ペンシルベニア州)の両議員が21日、香港への国家安全法導入に関与した中国共産党の当局者に制裁を科し、同法の執行に関わる組織と取引した銀行も処罰する法案を提出した「昨年、香港では何百万人もの市民が民主的な自由を求めて街頭に繰り出した」と、法案を直ちに取り上げるよう求めるバン・ホレン議員は述べた。「中国の残忍な弾圧、そして香港の政治的自由を侵そうとする度重なる試みにもかかわらず、彼らの抗議は続いている」テッド・クルーズ上院議員(共和党、テキサス州)は「香港に残された自治を断とうとする」中国の動きを非難した」

     

    (4)「トランプ大統領は、中国政府が法案を成立させれば、米国は「極めて強力に対処する」ことになると述べた。中国の当局者らは、米国主導の「外国勢力」が昨年、香港の混乱を扇動したと非難している。これに対して、米政府は香港人権・民主主義法を成立させた。外交・防衛を除く分野で香港に約束された自治が中国政府によって侵害されていないか、国務長官に検証を義務付ける内容だ。香港の「一国二制度」に綻びが生じているとポンペオ国務長官が判断すれば、トランプ氏は米国が中国本土とは別扱いで香港に認めている経済・貿易上の優遇措置を停止することができる」

     

    米議会は、いち早く反応している。当面は、「香港への国家安全法導入に関与した中国共産党の当局者に制裁を科し、同法の執行に関わる組織と取引した銀行も処罰する法案を提出」という素早い動きだ。米国の「制裁」はこれだけでない。今年、発効させた「香港人権・民主主義法」で対抗し、香港へ与えてきた米国の特恵(関税など)を廃止するという圧力を掛ける。これは、中国に経済的な損失をもたらし、香港の金融的地位は大きく毀損する。米国にも痛手だが、米国はそれに怯まず、中国を叩くであろう。米中デカップリングの実現へ向けて、さらに一歩前進するであろう。

     

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    これほど皮肉な話はあるだろうか。聖人君子ぶって元慰安婦の人たちを支援する名目で始めた市民団体リーダーが、裏では自腹を肥やす違法行為を繰返していた疑いで検察のメスが入った。具体的な容疑は、集めた寄付金や政府からの補助金でマンションを買ったり、娘を米国の大学UCLAへ留学させていたことだ。寄付金を受ける銀行口座名は、市民団体のリーダー個人名で、家計と一緒にする呆れた「丼勘定」であった。横領は、日常的に行なわれていたのだろう。

     

    このリーダーは、文政権と組んで日韓慰安婦合意を破棄させる主役であったことも判明。文大統領は、とんだ人物に唆されたことになる。韓国のお涙頂戴の「感情社会」が、今回の一件で浮き彫りになっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月22日付)は、「元慰安婦女性が斬り込んだ韓国社会のサンクチュアリ」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の峯岸博編集委員である。

     

    社会・政治改革を掲げて反保守政権の大衆デモを先導し、革新系大統領誕生後は巨大な利益集団に姿を変える――。革新政権下の韓国で日本と大きく異なる1つが市民団体の政治力だ。支援団体に絶縁状を突きつけた元慰安婦女性の訴えは韓国社会の「サンクチュアリ(聖域)」に一石を投じた。30年の歴史を持つ元慰安婦支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)に20日、捜査のメスが入った。

     

    (1)「市民団体のカネの流れが不透明なのは、「強すぎる」といわれる政治への発言力の大きさにも原因があるとみられる。韓国で市民団体の数は2万を超えるといわれる。軍事独裁から民主化への移行を機に人権、労働、社会・福祉など様々な分野の社会運動が組織化された。ときに全国規模の反政府運動を率いて「第4の権力」の異名を持つ」

     

    市民団体が、「第4の権力」となっていることに韓国の特殊性が窺える。ポピュリズム政治に陥る原点である。こういう書き方をすると、市民団体を敵視するイメージだが、その実態は決して褒められるべきものでない。原発反対も、福島原発事故をねつ造し国民に恐怖感を持たせて、太陽光発電に誘導した。その際の補助金が、市民団体に流れている。韓国では、市民団体が既得権益集団に成り下がっている。これが、問題点なのだ。

     

    (2)「特定地域で特定分野の活動を中心とする日本の市民団体とは様相が異なる。2016年秋から17年春にかけて毎週土曜日に繰り広げられた朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)の退陣要求デモでは約1500団体が結集し、企画・立案から、ろうそく、プラカードなどの備品づくりや当日の舞台設営、進行まで一手に担った。メディアを巻きこみながら「民心」といわれる世論の大きなうねりをつくり上げて政治を動かすプロ活動家集団である」

     

    韓国の市民団体は、プロの活動家集団である。これで、生活している人たちである。この集団の代表が、韓国大統領府に入り込んでおり、仲間を政府の公益機関の役員に就職させて社会問題になった。

     

    (3)「大規模な運動を支えるのが潤沢な資金だ。政府機関から補助金を受けている団体が多く、「官製団体」と皮肉られる。「被害者中心主義」を政治信条に掲げる文在寅(ムン・ジェイン)大統領誕生後は革新系の市民団体が権勢を振るっている。同じ革新系大統領でも金大中氏が自らの側近を政治家で固めたのに対し、文政権は元市民活動家の重用が際だつ。青瓦台(大統領府)には市民団体と大統領を結ぶ市民社会首席秘書官というポストもあり、「政府の提言よりも市民団体の要請の方が大統領への影響力が大きい」(韓国政府関係者)といわれる」

     

    このパラグラフこそ、韓国のポピュリズムがいかに政治を毒しているか。その背景を説明している。民主主義に名を借りた独裁的な動きをさせる要因である。最低賃金の大幅引き上げでも、労組と組んで主張した「正論」が、大きな落とし穴になっている。

     


    (4)「市民団体が政策決定の「拒否権」を握っているかたちで、日本との交渉でも市民団体の意向を意識せざるを得ない、と韓国政府関係者は嘆く。「韓国社会で市民団体が強くなってから政府が戦略的な外交を進めるのが難しくなった」(有力シンクタンク幹部)。日韓外交の停滞には構造的な問題が横たわっている」

     

    今回の裏金事件で検察のメスが入った、30年の歴史を持つ元慰安婦支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」は、日韓慰安婦合意を破棄させる原動力になった。これを許す社会的な背景が、韓国には存在するのだ。


    (5)「日本統治時代の女性の人権問題を扱う団体にはおのずと政府の監視の目も行き届きにくくなる。正義連と、前身の韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)が統合後も別々に寄付金を集め、さらに国の補助金も受け取っていたという「二重受給」の実態も明るみに出た。韓国最大紙の朝鮮日報は社説で「市民団体は被害者が日本から相応の謝罪と賠償を受けるという全国民的願いを口実に、ある瞬間から『問題解決』よりも『問題維持』と私欲を満たすことの方により力を入れるようになった」と断じた。「(支援団体に)利用されるだけ利用された」という李さんの思いもここに凝縮されているように思える」

     

    元慰安婦支援を名目にしながら、集めた募金の大半は他に流用し、会計報告はデタラメという惨状である。ここから推し量るに、他の市民団体も同じようなことをしているのでないか。韓国民主主義は、既得権益集団が勝手に動き回れる土壌をつくっているという意味で未成熟の一語に尽きる。


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    米国は、中国への怒りが本格化している。中国政府の支配権の強い中国株は、米国で上場させないという法案が上院で通過した。これに呼応して、下院も同様の趣旨の法案を可決させる公算が強まった。米国は、貿易・技術・資本市場の3面で、中国を追出す戦略を明確にしたのである。

     

    武漢の新型コロナウイルスは、米国から持込まれた。こういう中国外交部のフェークニュースが、中国への本格的な怒りに火を付けてしまった。米国は、日本の真珠湾奇襲攻撃で怒ったように、コロナ・フェイクニュースによって中国へ立ち向かわせている。中国は、愚かな小細工をやったものである。身を滅ぼす種を蒔いたのだ。

     

    『ブルーンバーグ』(5月21日付)は、「米上院、中国企業の米国上場廃止につながり得る法案を可決」と題する記事を掲載した。

     

    米上院は20日、アリババ・グループ・ホールディングスや百度(バイドゥ)などの中国企業による米証券取引所への株式上場を禁止することにつながり得る法案を全会一致で可決した。

     

    (1)「同法案は、ジョン・ケネディ議員(共和)とクリス・バンホーレン議員(民主)が提出したもので、外国政府の管理下にないことを企業に証明を求める内容。企業がそれを証明できないか、米公開会社会計監督委員会(PCAOB)が3年連続で会社を監査して外国政府の管理下にないと断定できない場合、当該企業の証券の上場は禁止される」

     

    下線部が、外国企業が米国で上場できる条件とした。これは、中国企業を指しており、中国政府が強い支配権を持っていないことを企業に証明させるというもの。中国企業は、すべて中国共産党委員会が入り込んでいる。これは、中国政府の支配下にあると見なされよう。米国上場は、アウトになる。総引上げを迫られるのだ。

     

    すでに、ナスダック市場も中国企業上場に関門を設けている。その上、中国企業はNY市場からも締め出される。中国企業の受ける打撃は大きい。

     


    (2)「ケネディ議員は、上院の議場で「私は新しい冷戦に参加したくはない」と述べ、「中国が規則に従って行動する」ことを求めると付け加えた。ケネディ議員は19日、同法案がナスダックとニューヨーク証券取引所などの米株式市場に適用されるとFOXビジネスに話した。バンホーレン議員は発表文で、「上場企業は全て同じ基準を順守すべきだ。この法案は条件を公平にするとともに、投資家が詳細情報を得て決断を下す上で必要な透明性をもたらすために良識的な変更を行うものだ」と説明し、下院に速やかな行動を呼び掛けた」

     

    下線部分は、中国企業は自主的にNY市場から撤退すべきだと勧告している。米国が、強制的に排除するのを待っているな、という強い姿勢を見せている。中国企業は、米国から締め出されれば、米国の資金を取り込めないという痛手を被る。これを計算しないで、習近平氏は「米国覇権に挑戦する」と場違いな宣言をしてしまったのだ。

     

    (3)「米国の監督が強化されれば、馬雲(ジャック・マー)氏の螞蟻金融服務集団(アント・ファイナンシャル)やソフトバンクグループが出資するバイトダンス(字節跳動)など中国主要企業の将来の上場計画にも影響する可能性がある。しかし、開示義務強化の議論が昨年始まって以来、他の中国企業の多くはすでに香港市場に上場したか、そうする計画だと、ハルクスでアナリスト兼ポートフォリオマネジャーを務めるジェームズ・ハル氏は指摘した」

     

    昨年12月、アリババは香港に上場しており、リスク回避に動いている。他社も追随する動きが予想されている。米国政府は、連邦公務員退職年金の運用対象から中国株を外すよう、指示している。米国の資金は一切、中国企業に投資させないという強硬策である。その理由は、次のようなものだ。米国の貴重な貯蓄は、米国に危害を加えようとする国家の企業に投資させないというもの。米中デカップリング論の実践である。

     

    (4)「下院金融委員会のブラッド・シャーマン議員(民主)は、上院の法案への幅広い支持を反映する形で同様の法案を下院に提出した。シャーマン氏は発表文で、会計不祥事の発覚でナスダックが中国の瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)の上場廃止に向けて動きだした点に言及。「私はこの重大な問題に取り組むために動いた上院議員を称賛する。この法案が既に成立していればラッキンコーヒーの米国株主は恐らく多額の損失を回避できていただろう」とコメントした」

     

    (5)「下院指導部は同法案と、別に上院で可決されたイスラム教徒の少数民族に対する人権侵害を巡り中国当局者に制裁を科す法案について、議員や関係する委員会と協議していると民主党スタッフは明らかにした」

     

    米下院も、上院の動きに呼応して同趣旨の法案を上程した。米国の中国に向けた敵意から、短時間で議決され大統領署名を経て発効するはずだ。中国は、この事態に対して、どう反応するか。しまった、と感じるに違いない。中国株は、米国という最大の市場から排除されるのである。

     

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    中国で年に1度の重要会議、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が22日から開催される。新型コロナウイルスの影響で、予定から2ヶ月半遅れての開催である。注目される2020年のGDPの実質成長率数値目標は、設定を見送る可能性が指摘されている。

     

    コロナ感染拡大以降では初の政治イベントである。習近平国家主席は、共産党の結束を打ち出すとともに、反対派を封じ込め、大きな打撃を受けた国内景気の再生に全力を挙げる姿勢をどこまで示すのか。それも注目点である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月21日付)は、「全人代開幕へ、経済再生目指す習体制にコロナの影」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「習氏の側近らは指導部を称賛するなど、党の結束を示唆している。だが、共産党の動向に詳しい筋は、習氏の最近の言動からは、コロナによる政治的な悪影響を危惧していることがうかがえると指摘する。コロナ感染拡大で中国では景気が大きく冷え込んだほか、党の危機管理での亀裂も露呈した。党関係者らなどからは、習氏が意志決定の全体的な権限を握り、仕事ぶりが優れない幹部への処罰をちらつかせていることが、コロナ危機への初動のまずさを増幅したとの指摘が上がっている。当局者の間で、上層部にネガティブな報告はしたくないとの雰囲気が広がるためだ

     

    下線部は、習独裁体制のもたらす官僚の萎縮が、組織の活性化を阻んでいる点を指摘している。新型コロナウイルスの初動で出遅れたのは、独裁制のもたらした必然的結果である。独裁を強化すればするほど、中国は不活発になって泥沼に落込むリスクを高める。これこそ、毛沢東の指摘した「矛盾論」そのものであり、必ず最後は「止揚」(アウフヘーベン)される。習体制の敗北である。

     

    (2)「清華大学の元政治学講師、呉強氏は、コロナ流行による政治・経済・外交面の影響を巡り疑問が生じているとしたうえでこう指摘する。「(コロナが)習氏の指導体制に影を落としている。習政権は統治体制に対する信認を必要としている」 。習氏はここ2カ月、各地を相次いで訪問し、自身が掲げる貧困撲滅や国家の産業力強化を強調。地元当局者に対して、企業や雇用の支援、コロナ感染再発防止を指示している。一方で、当局は習氏の批判派の尋問・拘束にも動いている。習政権は先月、党内に新たな連携組織を創設。コロナによる経済不振で高まる社会不安の追跡・抑制などを担わせ、「平和な中国」の構築を監督する」

     

    下線部は、重要な点を指摘している。習氏は、自らの失点を反省することなく、強権をもって沈黙させる最悪手段を取っている。自殺行為である。いくら監視カメラを増やし、インターネットの検閲を強化しても、習体制の矛楯は解決しないのだ。習氏は、権力の持つ魔力に取り込まれてしまった。

     

    (4)「中国のコロナ対応への批判をかわすため、習氏は世界の新型ウイルス対策向けに20億ドル(約2200億円)規模の支援を表明。ウイルスの起源に関する研究支援も約束し、外国首脳らに国際貿易や投資の復活を訴えた。その一方で、中国外交官や国営メディアは、パンデミック(世界的大流行)にまで発展したコロナ禍の責任の所在を巡り、米当局者と非難の応酬を繰り広げ、国民の愛国心をあおる。全人代は、共産党幹部が結束をうたい優先課題を打ち出す場で、政治的なショーの様相が強い」

     

    習氏は、東条英機と同じ過ちに陥っている。共通点は、民族主義者に踊らされていること。東条は、若手将校の突き上げによって日米開戦に突入した。習氏は、自らの権力拡大の先兵になった民族派に、今や引きずられている。「米国、なにものとせず」という向う見ず派の口車に乗せられているのだ。

     

    (5)「中国政治の専門家は今年の全人代について、中国がコロナを克服した象徴的な瞬間として習氏が位置づけると予想している。コロナに打ち勝ったとの自信を示すとともに、独裁的な同氏の指導スタイルに対する国内外の批判に反撃する機会にするという。「今年の全人代では間違いなく、習指揮下の政治システムになお揺らぎがないことを前面に打ち出そうとする」。こう指摘するのは、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の中国政治専門家、ジュード・ブランシェット氏だ。「国内の最大関心事は景気回復と雇用の安定だ」。

     

    習氏は、今年の全人代で超強気の発言をして、「習体制健在」を内外にアピールすると見られている。何を言うか。大風呂敷は確実と見られる。

     

    (6)「大規模な都市封鎖などのコロナ対策は、中国国内のウイルスの封じ込めには成功した。だが一方で、消費は冷え込み、サプライチェーン(供給網)に大きな混乱をもたらすなど、経済に大きな爪あとを残した。共産党は経済規模を10年前の水準から2020年末までに倍増させるとの目標を掲げているが、政府はここ数年あまり表だって主張していない。目標達成には今年5.5%の成長率を確保する必要があるとみられている。だが、1~3月期の中国経済は数十年ぶりのマイナス成長に沈んでおり、今年の成長目標については、引き下げるかより柔軟な目標にする、もしくは目標自体を撤回するのではないかとの見方も出ている

     

    中国経済は、コロナ禍で相当に痛んでいる。一気に「老化」したのだ。今年のGDPは、5.5%以上でなければ、2020年のGDP倍増(2010年比)計画は未達になる。過去の計画に固執するか、新事態に即応するかだ。もともと、今回のパンダミックは、習体制の強権が生んだ矛楯である。最大の責任は、習近平その人にある。パンダミックは、習近平の個人的栄誉欲が招いた悲劇なのだ。

     

     

     

     

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    韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長が2019年末に提出した元徴用工問題の解決法案が5月20日、事実上の廃案となった。文議長は、政治家生活の最後を賭けて法案取りまとめに奔走したが、ついに無駄骨に終わった。文大統領は、「司法権独立」を口実に現実的な解決に動き出す気配はない。このまま推移すれば、韓国の原告が差し押さえている日本企業の資産(株式など)を売却手続きに入ることになろう。その場合、何が起こるか。日韓の外交的な激突と、日本の報復である。最悪事態の到来となろう。

     

    『日本経済新聞』(5月20日付)は、「元徴用工法案が廃案、韓国国会審議せず閉会へ」と題する記事を掲載した。

     

    韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長が2019年末に提出した元徴用工問題の解決法案が20日、事実上の廃案となった。日韓の企業と個人の寄付金で日本企業の賠償を肩代わりする内容で、日本側にも評価する声があった。原告や市民団体の反対で審議にも至らぬまま、日韓対立の発端である元徴用工問題の解決策は振り出しに戻った。

     

    (1)「韓国国会は5月20日、現国会議員の任期中で最後となる本会議を開き、事実上閉会した。文議長が昨年12月に提出した「記憶・和解・未来財団法案」など2つの関連法案は、憲法の規定により国会会期末の29日で廃案となる。法案は日韓の企業と個人から寄付金を募って基金を設け、裁判所や韓国政府が認めた元徴用工らに慰謝料を支給する内容だ。企業や個人に寄付を強要しない方針を明記したほか、受給者は企業への請求権を放棄したとみなす規定を盛り込んだ」

     

    文議長が中心になってまとめた法案は、日韓基本条約に抵触しないように、日韓の民間の寄付に頼るという妙案で元徴用工に賠償金を支払うというものだった。この案は、文大統領が乗り気でなく、あくまでも日本企業に賠償請求するという原点を守っていた。文議長の政治手腕をもってしても、この原則論には勝てなかった。こうなると、妥協案が存在しない以上、日韓は激突するしかない。韓国の受けるダメージが、はるかに大きくなろう。

     

    (2)「18年に韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金(現日本製鉄)に賠償を命じて以降、日本政府は「国際法違反の是正」を韓国に求めてきた。文議長の法案は、韓国側が1965年の日韓請求権協定に反しない形で解決を模索する初めての動きといえた。法案の提出と前後して、日韓両政府は対立状況の緩和に動いた。日本は韓国が撤回を要求する輸出規制の厳格化措置を一部緩めた。19年12月下旬には安倍晋三首相と文在寅(ムン・ジェイン)大統領が中国の成都で13カ月ぶりとなる日韓首脳会談に臨み、問題解決に向けた協議を続ける方針を確認した」

     

    日韓が対立状態に陥れば、韓国は再びGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄を持ち出すだろう。だが、米中の事実上の「冷戦」下において、そのようなオモチャ遊びは許されない。韓国は、大人の対応を迫られるであろう。国際法の立場に立てば、韓国が不利であることは言うまでもない。韓国に歩がないのだ。

     

    (3)「文議長は1月、訪韓した自民党の河村建夫元官房長官(日韓議員連盟幹事長)に、4月の総選挙後の法案成立を期すと説明した。しかし、法案は委員会にも上程されず棚ざらしにされた。補償に期待する被害者団体は賛意を示したが、肝心の原告らが「加害者の事実認定と謝罪が必要だ」として強く反対したためだ。法案が次期国会で再提出される可能性は低い。提出を主導した文議長をはじめ、14人の共同提出者のうち9人が今国会を最後に引退する」

     

    下線部分は、逆に書いている。原告は早急な法案化を要望し、署名活動までして文議長に届けている。一方、支援団体が反対していた。こういう事実関係から言えば、この記事は間違っている。この経緯は、このブログで詳細に取り上げてきた。

     


    (4)「元徴用工問題を巡って想定される次の展開は、原告が差し押さえた日本企業の資産売却に関する韓国裁判所の判断だ。資産査定を経て売却命令が出れば、原告が現金化を進める環境が整う。解決をめざす政治や外交の動きが止まると、先送りの理由はなくなる。日韓の外交当局は定期的に局長が電話で協議をしているが、目立った進展はない。新型コロナウイルスの影響で、首脳会談などの外交日程は見通せない状況だ」

     

    韓国は、与党が総選挙で6割の議席を占めている。日本に対して強気に振る舞ってくるだろう。これで、ますます妥協の機会は遠くなる。日本は、日韓基本条約という御旗がある。韓国が、強硬策を取ればそれに応じた報復策で対抗するしかない。国際法で、それが認められているからだ。


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