勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年06月

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    日本は昨年7月4日、韓国への半導体3素材の輸出手続き規制を始めた。あれから1年経つ。韓国側はどうなっているのか。『中央日報』(6月25日付)は、半導体・ディスプレイと材料・部品・装備業界の取材を総合すると「心配はただの心配にすぎず、かえって国産化を高める『転禍為福』になった」と口をそろえていると強気報道である。

     

    韓国は、何の影響もなかったとすれば、なぜこの輸出手続き規制問題をWTO(世界貿易機関)へ提訴するのか。言っていることと行なっていることが矛楯しているのだ。影響があったという言い分だから、提訴するのであろう。

     

    『中央日報』(6月25日付)は、「日本の攻撃に日本が被害、輸出規制から1年、韓国の驚くべき変化」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本は昨年7月、フッ化水素・フォトレジスト(感光液)・フッ化ポリイミドなど先端材料3品目の輸出に規制をかけた。3品目を「包括輸出許可」から「件別許可」対象に切り替え、8月には輸出許可簡素化対象国である「ホワイト国」リストから韓国を除外した。3品目は半導体・ディスプレイ産業の核心素材だが、日本の依存度が90%にもなっていた。日本が韓国の半導体・ディスプレイ産業の構造的脆弱性を鋭く狙ったことになる」

    (2)「だが、日本の輸出規制はむしろ変わろうとしなかった国内企業を変化に導いた。何より日本に依存していた供給元の多角化と国産化にいち早く飛び込んだ。韓国半導体・ディスプレイ技術学会の朴在勤(パク・ジェグン)会長〔漢陽(ハンヤン)大学融合電子工学部教授〕は「日本が寝ていた韓国を起こした」と表現した。朴会長は「日本の輸出規制がなかったら、今のように積極的に国産化と多角化に出なかっただろう」と語った」

    下線部では、日本の輸出手続き規制にむしろ感謝している様子である。ならば、なぜWTOへ提訴するのか。矛楯した行動である。さて、本当に何の影響もなかったのか。検証して見ると、韓国側の主張には相当の誇張とウソが混じっていることが判明した。

     


    『現代ビジネス』(6月25日付)は、「韓国・文在寅がぶち上げた『日本依存脱却』、1年経っても成功せず」と題する記事を掲載した。筆者は、高安雄一大東文化大学教授である。

     

    韓国は日本の措置に対抗して、個別許可に切り替えられた3品目、すなわち、レジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミドについて、輸入品の日本依存からの脱却を図るとともに、国産化を模索することとした。

     

    (3)「まずは、半導体製造用フッ化水素である。フッ化水素は半導体の洗浄に使われる。2018年の輸入額に占める輸入元のシェアは、中国が52.0%、日本が41.9%、台湾が5.7%であった。これが2019年には、中国のシェアは50.9%でほとんど2018年と変わらなかったが、日本は32.2%にシェアを下げ、台湾がそれを埋める形で15.8%となった。さらに2020年1~5月のシェアは、中国が73.1%と伸ばした一方、日本は12.3%にまで低下し、台湾の12.8%に抜かれることとなった。輸出管理適正化に関する措置前後の動きをまとめると、中国のシェアが高まり日本のシェアが落ち込んだ形になっている。報道によれば、韓国は中国を介して日本のフッ化水素を輸入している動きもあり、供給元をたどれば日本依存から脱却できたのかについては検証が必要であろう

     

    フッ化水素の品質は様々であり、日本が得意とする超高純度フッ化水素といった品質のものまで製造できるのか明らかではないが、今後は順次国産化が進む、と筆者の高安教授は指摘している。

     

    (4)「次に半導体製造用レジストを見てみよう。レジストは、半導体の表面に画像層のパターンを形成することに使用される。2018年の輸入額に占める輸入元のシェアは、日本が93.2%と大半を占めており、続くアメリカは5.8%、ベルギーは0.8%であった。2019年は、日本のシェアが88.3%と、2018年と比較して若干下がったものの圧倒的なシェアを占めていることには変わりがない。さらに2020年1~5月も日本のシェアが88.6%、これに続くベルギーが5.8%、アメリカが5.3%と、日本からの輸入が多くを占めている。輸出管理適正化に関する措置前後の動きをまとめると、日本のシェアはわずかながら低下したものの、依然として9割に近いきわめて高いシェアを維持していることがわかる」

     

    レジストでは、日本が9割のシェアでる。レジストは2019年の輸入額は前年比で5.2%減であったものの、2020年1~5月は前年同期比が33.8%増と増加に転じた。この状況では、日本側は好況に浴している形だ。

     


    (5)「最後はフッ化ポリイミドである。フッ化ポリイミドは有機ELの材料として使われる。2018年の輸入額に占める輸入元のシェアは、日本が84.5%と高く、台湾が7.4%、中国が2.8%であった。2019年は日本のシェアが93.0%となり、2020年1~5月には93.9%にまで高まった。一方、台湾の2020年1~5月のシェアは4.2%、中国は1.0%にとどまっている。輸出管理適正化に関する措置前後の動きをまとめると、措置後に日本のシェアは10%ポイントほど高まっており、現在では9割を超える圧倒的なシェアを有していることがわかる」

     

    フッ化ポリイミドでも、日本のシェは9割である。2019年の輸出量は、前年比は44.9%増、2020年1~5月の前年同期比は7.1%増であり増加が続いている。国産品が輸入品に代替しているといった動きは見られないのだ。「実際、レジストやフッ化ポリイミドについては、韓国国内で量産化が始まるといった情報はなく、国産化は進んでいない」とは高安教授の弁だ。

     

    韓国は、針小棒大に言う民族である。日本の座が脅かされる状況ではなさそうだ。だいたい、中国で製造できるものが韓国でできないと言うこと自体、恥ずかしいと思わなければならないのだ。

     

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    中国最大都市・重慶が洪水の危機

    主要経済指標に復活の兆候はなし

    4~6月期のGDPマイナス成長

    習氏は愛国心強調で領土拡張戦略

     

    新中国になってから、「9」の付く年は不思議に不幸が襲っている。この10年周期の「不運」の裏に、景気の落込みがあった。10年周期の景気停滞は、設備投資の10年周期(ジュグラー・サイクル)を裏付けるものだ。この現象は、正常な経済環境で起こるものである。

     

    現在の中国には、さらなる経済攪乱要因が加わっている。米中経済対立、新型コロナウイルスの発症、異常現象などが襲っている。異常気象では、モンスーンが例年より強く中国南部を中心にして大洪水をもたらしている。24省が、すでに洪水被害を出しているのだ。

     

    中国最大都市・重慶が洪水の危機

    最も警戒すべきは、揚子江(長江)の氾濫である。中国南部の重慶市は、当局から「史上最大規模」の洪水に見舞われるという警告が出た。重慶市は、人口3100万人以上(2018年)の中国ナンバー・ワン都市である。中国政府直轄4大都市(北京・上海・重慶・天津)の一つだ。その巨大都市が、「史上最大規模」の洪水となれば、被害のほどが想像できるであろう。

     

    人口ナンバー・ワン都市が、大洪水に見舞われるとはどういうことか。重慶市の下流にある世界最大規模の「三峡ダム」建設による被害である。中国の清華大学水利学教授であった故・黄万里氏が1992~93年に、江沢民国家主席へ三度にわたって、三峡ダム建設中止の嘆願書を提出した。その理由の一つが、三峡ダムを破壊しない限り、重慶の大洪水は収束しないと指摘したことだ。その「魔の予告」が、いよいよ現実化する恐怖が迫っているのである。

     

    三峡ダムは、6月21日までに警戒水位を「2m」も上回っている。三峡ダムが頑丈な構造であれば、自然崩壊は起こらず、破壊によらなければならない。人民解放軍兵士が4600人以上、警戒のために派遣されたとインターネットでは報じている。

     


    中国の首都・北京では、コロナの第二波が起こっている。6月11日、食品卸売市場で新型コロナウイルスの集団感染が確認されたのが、きっかけである。北京市政府は、今後の感染拡大に備え、臨時医療施設やPCR検査実験室の建設工事を加速させることを計画している。『大紀元』(6月23日付)が入手した内部資料で明らかになった。輸入サーモンを感染原因に擦り付けている。これについて、専門家は首を傾げているが、「悪いことは外国が原因」という常套手段によるものだ。こういう無責任な態度だから、コロナ感染が続くのであろう。

     

    北京市当局は6月23日、11~22日まで市内の感染者が計249人となったと発表した。北京関連の感染者は、浙江省、遼寧省、河北省、四川省、河南省と天津市で確認されている。当局は、市民に対してPCR検査をさらに強化する方針を示した。北京市内では、一部で封鎖が始まっている。武漢市と同じスタイルである。この影響がどこまで広がるのか。見当がつかないのだ。

     

    コロナ禍で、すでに末端経済は疲弊しきっているのだ。先進国では、国民へ現金を支給して急場を凌ぐ対策を取っているが、中国政府にその動きはない。せいぜい、庶民に「露店経済」や「屋台経済」を復活させて、自活の道を授けるだけだ。この李首相のアイデアは、習主席直系の地方政府幹部やメディアの反対で立ち消えである。これでは一体どうするのか。中国南部ではモンスーンによる大洪水で、生活そのものが成り立たなくなっている。本来ならば、こういうニュースは一般メディアで報じられるはずだが、情報統制でブロックされている。

     

    主要経済指標に復活の兆候はなし

    中国には、こうして底知れぬ「ウミ」が溜まっていると見ざるを得ない。その実態を、僅かな統計数字で読み解くほかない。

     

    中国の5月の鉱工業生産は、2カ月連続で増加した。5月は前年同月比4.4%増加。4月(同3.9%増)から見れば、伸び率が加速している。昨年12月以来の高い伸び率だ。「これで一安心」と行きたいところだが、そういう楽観論は成り立たない。次の理由による。

     

    鉱工業生産が伸びた裏には、3月以降の鉄鋼生産拡大という事情がある。鉄鋼は、産業の大黒柱である。その二大需要先は、公共投資と自動車・電気製品の民需である。公共投資には鉄筋需要が、民需ではコイル(鉄板素材)需要が増える。現在は、鉄筋=公共投資需要が主力で、コイル=民需は依然として下火である。この鉄鋼需要の中身に従えば、公共投資は大洪水で工事ストップとなる。その後の復興需要があるとしても、需要回復には、タイムラグを生じるのだ。(つづく)

     

     

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    韓国の対日ニュースを見ていると、気の滅入る話ばかりである。これほど揉める二国関係も珍しいであろう。日本が、いかに悪い国かという記事ばかり目に付くのだ。自信喪失するが、豪州での日本評価は抜群である。

     

    長いこと日本は、戦時中に豪州兵を虐待したとして評判が悪かった。1992年、私が豪州へ旅行した際、海上自衛隊員が豪州の博物館を見学した時、女性ガイドの親戚が戦時中、日本軍と戦い戦死した話を持ち出し突然、泣き崩れたという。この話が、生々しく伝わってくるほど対日感情はよくなかった。

     

    それが、今はどうだろう。最新世論調査で、日本の評価はウナギ上りである。英国と僅差(2%ポイント)で第2位へ。安倍首相は、NZ首相と14ポイント差で2位である。この背後には、TPP(環太平洋経済連携協定)が発効して、豪州の農産物が大量に日本へ輸出できる環境も影響しているだろう。

     

    『大紀元』(6月24日付)は、「豪州世論調査、中国への信頼は2割で過去最低、日本の信頼度は8割以上」と題する記事を掲載した。

     

    ローウィー研究所が2004年以来続けている年次の世論調査は、今回、2020年3月16~29日までの間で実施された。オーストラリアの成人2448人を対象とした全国の代表的なオンライン調査と電話調査の結果をまとめた。

     


    (1)「豪州シンクタンク・ローウィー研究所の世論調査によれば、コロナ危機後の豪州では、最大の貿易相手国である中国への信頼は急激に低下し、多くの人が中国への経済的依存を減らすためにサプライチェーンの多様化を望み、中国の人権侵害に対する渡航および金融制裁を課すことを支持している。いっぽう、豪州では、日本および安倍首相は信頼のおける国・リーダーであるとしてトップレベルに位置付けている。

     

    豪州人と日本人の中国に対する印象は、ほぼ同じようである。サプライチェーンのハブを中国の置くことのリスクを強く感じているからだ。民主主義国は、同じような価値観であるから、中国についても結論は同じであろう。中国は、この価値観について全く無視して、経済力と軍事力だけで世界を支配できるという妄念を持っている。意識が、国際化されていない証拠であろう。ありていに言えば、「田舎国家」である。

     

    (2)「調査によると、中国について「責任を持って行動する」といった信頼度に関する質問で、肯定した人はわずか23%であり、過去14年で記録された最低レベルとなった。ほとんどのオーストラリア人は英国(84%)と日本(82%)を信頼しており、米国(51%)やインド(45%)よりも圧倒的に高かった」

     

    オーストラリア人は、英国(84%)、日本(82%)、米国(51%)、インド(45%)、中国(23%)の順序で信頼している。豪州にとって英国は、母国である。その英国と日本は、ほぼ肩を並べる信頼度を得ている。大いに誇りとすべきだ。韓国に悪口を言われても相殺してしまうほどの好感度である。

     

    (3)「オーストラリア人の30%が、トランプ米大統領に「世界情勢に関して正しいことをする」という確信を表明しており、2019年から5ポイント増加した。中国の習近平国家主席に対する信頼は22%にとどまり、過去2年間で急激に低下した。首位は、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相で87%、日本の安倍晋三首相が2位(73%)につけ、豪州のスコットモリソン首相(60%)と野党党首のアンソニー・アルバニーズ氏(58%)よりも高く信頼されている」

     

    首相への信頼度も興味深い。NZ(87%)、日本(73%)、豪州(60%)、米国(305)、中国(22%)である。習近平氏の好感度は低くい。豪州野党党首は58%である。豪州首相と接近している。豪州経済不調の結果、野党への期待が高まっているのだろう。

     

    (4)「オーストラリア人の78%は、米国との同盟は安全にとって重要であると考えている。88%は、2017年に復活したオーストラリア、インド、日本、米国の四国間安全保障対話を歓迎している。中国については、安全保障上の脅威と見なす人は41%で、経済的なパートナーとして見ている(55%)を下回った。いっぽう、94%が「オーストラリアの経済的な中国への依存度を下げるために、政府は他の市場を探すように努力すべきだ」と答えている。さらに、82%が、政府は「人権侵害に関与している中国当局者に渡航・経済制裁を課すべき」だと考えている」

     

    豪州国民は、中国が豪州産小麦や牛肉に高関税を掛けて経済制裁していることで強い不満を持っている。理由は、豪州が6月に新型コロナウイルスの発症過程の国際調査を提案したことへのしっぺ返しが行なわれたからだ。これが、今回の世論調査(時期は3月)に直接的な影響を与えてはいない。豪州の中国嫌いは、地下水脈と同様に根深いものがある。価値観の相違が決定的な溝を生んでいる。韓国政府は、この中国に相当な親近感を持っている。中韓の価値観は、儒教で似通っているのだ。

     

    (5)「オーストラリアの大学の経営は、海外の留学生に依存している。新型コロナウイルスによる渡航制限で、2020年、大学の収入が劇的に減少した。今回の世論調査では、43%は「大学に在籍する留学生の数が多すぎる」と答えた。オーストラリアの留学生の約38%は中国からだ。留学生の受け入れは教育産業の輸出額に含まれ、2019年は前年比15%増の377億豪ドル(約2兆7240億円)と過去最高となった」

     

    豪州の大学は、中国の留学生が38%も占めている。世論調査では、留学生依存が大きすぎると指摘している。韓国は対中国との外交で、経済関係を重視する。豪州は毅然として経済関係に引っ張られず、正論を通す姿勢である。「武士は食わねど高楊枝」の心境だろう。素晴らしい国民性である。韓国に学ばせたいほどだ。

     

    テイカカズラ
       

    中国共産党の本質を見たければ現在、中国人口トップの重慶市で起こっている水害の実態を見れば分かるだろう。政府の救援はなく、3階建てが濁流に呑み込まれ流れてゆく光景が動画投稿されている。当局は、救援活動をせず「動画投稿者を逮捕する」と威嚇するだけだ。これが、人民民主主義を標榜する中国共産党の赤裸々な姿である。

     

    『大紀元』(6月24日付)は、「重慶洪水被害、ネットユーザーが相次ぐ動画投稿、当局は『逮捕』と言論統制」と題する記事を掲載した。

     

    中国南部と中部などの住民は、豪雨による洪水で深刻な被害を受けている。ネットユーザーは、氾濫した川の状況や流される住宅の動画を相次いで投稿した。そうした中、当局がネット上の言論統制を強め、洪水の被害を投稿した者を逮捕することが明らかになった。中国最高指導部の高官も水害現場を視察していない。

     

    (1)「地元メディアによると、6月22日、豪雨の影響で、重慶市の綦江区や江津区などの各地で川が氾濫し、住民は被災した。当日午前、重慶市の水利当局は、集中豪雨で長江水系の河川である綦江(きこう)について、「史上最大規模の洪水」が発生すると警告した。ネットユーザーが投稿した映像では、重慶市綦江区で、3階建ての家屋が洪水に流されている様子が映っていた。動画の中で、これを見た住民が「家が流された。もうおしまいだ!鉄道(のレール)も流されたから」と叫んだ。また、ほかの映像では、重慶市の街で滝のような洪水が起こり、市民の自家用車が次々と水没し、店舗が浸水した」

     

    重慶市当局は、「史上最大規模の洪水」が発生すると警告しただけである。救援活動は、一切なしである。後は勝手に逃げろ、と言っているに等しい。これが、中国で人口最大都市の重慶の姿だ。

     


    (2)「住民の朱さんは23日、米『ラジオ・フリー・アジア』(RFA)に対して、重慶市の1940年以来の最大規模の水害について、「政府は救済活動を行っていないし、官製メディアも報道していない。多くの町が被災したので、ネットユーザーがその情報を発信したが、政府に抑え込まれた」と非難した」

     

    メディアは、この事態を報道しないのはなぜか。報道しても、救援できないということだろう。北京がコロナ第二波に襲われているので、警備陣はその支援に駆り出されているに相違ない。世にも不思議な光景が起こっている。

     

    (3)「RFAは中国人ネットユーザーの情報を引用し、重慶市警察当局が洪水の被害状況に関する「無責任な情報」を投稿した者に対して、直ちに逮捕し、厳しく処罰すると各部門に指示したと伝えた。重慶市に住む法学者の宋建生氏は、中国当局が、新型コロナウイルスの感染状況の隠ぺいと同様に、洪水の被害状況を隠そうとしているとした。同氏は、「情報封鎖は中国高官らの習慣となっている。そのせいで国民が深刻な被害を受けている。天災というよりは、人災だ。だから、当局は救援活動もしないだろう」と批判した」

     

    当局は、重慶市の洪水実態を動画投稿した者を直ちに逮捕し、厳しく処罰すると各部門に指示したという。市民を救済しないで、窮状を訴える動画投稿者を厳罰に処すとはアベコベである。

     

    (4)「宋氏は、中国当局が情報を封鎖する目的は政権を維持し、その無能さを隠すためにあると指摘した。中国当局は現在、北京市などでの中共ウイルスの感染拡大防止を主要な課題にしている。現時点で、習近平国家主席や李克強首相らは、重慶市などの水害対策について、現地に入り視察や指揮などを行っていない。李首相は2016年7月5日、洪水に見舞われた安徽省や湖北省に入り、視察した。当時、首相は湖北省武漢市青山区で救援活動を直に指揮した

     

    下線のように、李首相は2016年の洪水で現地へ見舞いに出かけている。今回は、その兆しも見えない。中国全体が追い込まれている証拠だ。


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    韓国は、新型コロナウイルスではPCRによる全数調査など、世界の耳目を集める派手なパフォーマンスを見せた。だが、肝心の抗体検査による過去のウイルスによる罹患歴調査を行なっていなかったことが判明した。すでに日本は実施して、東京で0.1%に止まっていたことが明らかになっている。韓国の新型感染症中央臨床委員会のオ・ミョンドン委員長は、記者会見で従来の方針見直しを発言。日本式の採用を示唆するものだ。「K防疫モデル」の破綻宣言である。

     

    韓国では、日本のPCR検査の少ないことを理由に、多数の感染者が未確認のまま放置されているとしてきた。日本を未開発国扱いする発言である。防疫対策に忠実に従ってきた日本を侮辱したものだ。その韓国が、抗体検査をしていなかったのである。無駄なPCRの全数調査をやっても、防疫の基本であるクラスター調査に手抜かりなど、韓国の防疫対策は思いつきが多い。破綻宣言は当然である。

     

    『韓国経済新聞』(6月24日付)は、「韓国『国内の確認できない感染者10万人、新型コロナ終息は不可能』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国で特別な症状が出ないまま新型コロナウイルスに感染し回復した患者が10万人を超えるという分析が出された。他の国で行われた抗体検査に基づいて把握した結果だ。無症状者はいつでも新型コロナウイルスを感染させかねないため、「終息」の代わりに「被害最小化」に防疫戦略を変えるべきと専門家らは指摘した。




    (1)「新型感染症中央臨床委員会のオ・ミョンドン委員長(ソウル大学医学部感染内科教授)は21日にソウルの国立中央医療院で記者会見を行い、「韓国国内の新型コロナウイルス無症状感染者は把握された患者の10倍規模だろう」と話した。新型感染症中央臨床委は韓国の新型コロナウイルス患者を治療する医者らの代表団体だ。この日で韓国の新型コロナウイルス感染者は1万2421人だ。委員会の分析通りならば感染者に含まれていない無症状感染者は12万人を超えるという計算になる」

    韓国は、抗体検査を行なっていない。K防疫モデル国が、なんとも締まらない話である。いかにも韓国社会の「自慢体質」を表わした話である。他国の抗体検査に基づく「推定論」である。

     

    (2)「委員会は、日本、中国、米国、イタリアなど他の国の抗体検査結果に基づいてこうした分析を出した。スペインで4月27日に国民6万人を無作為に検査したところ、5%程度が新型コロナウイルス抗体を持っていた。人口4500万人のうち225万人がすでに感染して回復していた。確認された患者23万人の10倍に達する。オ委員長は「無症状感染者が10倍以上多いため、感染経路のわからない感染や『n次感染』が発生するのは当然だ」とした。彼は「防疫対策の最終目標は新型コロナウイルス終息ではなく流行と拡散速度を遅らせること。これを通じて韓国の医療システムが耐えられる水準で患者が発生するようにしなければならない」と強調した」

     

    スペインの抗体検査結果をもとに、無症状感染者が実際に感染して発症した人の10倍に達すると推測している。この結果、「n次感染」が心配されるという論理の立て方である。これは、乱暴な議論のように思える。その国の生活パターンは国ごとに異なる。東京都の抗体保有者が0.1%であるのは、規則を守る、清潔好きなどの国民性によるものだ。韓国が、スペインの例を持ち出しているのは、韓国の国民性がスペインに似ているとでも言うことなのだろう。

     


    (3)「韓国の新型コロナウイルス無症状感染者規模が実際より多いならば防疫当局の対応も変わらなければならない。症状がある感染者と接触者を探して隔離しても無症状患者がどこかでウイルスをまき散らしているならば新型コロナウイルスを完全に遮断するのは不可能なためだ。新型感染症中央臨床委員会は入退院基準を変えなければならないと注文した。すべての感染者を入院させた後にリアルタイムPCR検査で陰性反応が出た人だけ退院させる現在の方式では病床がすぐ飽和状態に至るという理由からだ1月20日から5カ月以上にわたり新型コロナウイルス対応体制を稼動した医療機関の疲労度を低くし、長期戦に備えなければならないという趣旨だ」

    ここでは、韓国のコロナ「全数調査」の無益ぶりを、ようやく認めたのだ。「1月20日から5カ月以上にわたり新型コロナウイルス対応体制を稼動した医療機関の疲労度を低くし、長期戦に備えなければならない」と認めるにいたった。この部分こそ、日本が行ってきた防疫対策である。日本は、最初から「全数調査」を行なわず、「感染の疑わしい人」を集中的に治療する防疫学の基本に則っていた。これが、医療崩壊を防ぎ重症患者の治療に専念できた理由だ。韓国が、ようやく日本式=世界標準を認めたのだ。本欄の一貫した主張は、間違っていなかったことが分かり痛快である。

     

    (4)「抗体検査を通じ韓国に新型コロナウイルス感染者がどれだけになるのかも客観的に把握しなければならない。オ教授は「抗体検査は新型コロナウイルスの流行がどれだけ進んだのか判断する手段。抗体陽性率がわかれば状況によって適切な防疫対策を立てられる」とした。新型コロナウイルスの判定に使うリアルタイムPCR検査は体内に残ったウイルスを覗いて見るものだ。新型コロナウイルスに感染した後に免疫力ができたがウイルスが消えた人は確認することはできない。これに対し抗体検査は新型コロナウイルス感染の痕跡を把握できる。韓国では標準検査法が用意されておらず導入されていない」


    韓国は、抗体検査という標準検査法を採用しなければならないと言い出した。前のパラグラフの主旨と合せれば、日本式が、最も適った防疫方法であることを言外に認めたのだ。「K防疫モデル」の破綻宣言である。この結論に至るまで5ヶ月もかかったのである。


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