勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年07月

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    習氏が強硬策になった背景

    墓穴掘る中国の世間知らず

    経済は住宅に頼るしかない

    恐怖の「ダモクレスの剣」

     

    中国の4~6月期実質経済成長率は、前年同期比で3.2%成長になった。1~3月期が同マイナス6.8%成長率であったことから言えば、先ずは見事な回復と言えるだろう。だが、これは、経済成長率の中身を見ないで「外見」から判断したもの。多くの問題点を含んでいることに注意すべきだ。

     

    楽観論では、4~6月期の貿易黒字が予想外の黒字幅であったことを指摘している。1~3月期の131億ドルの黒字が、4~6月期は1547億ドルの黒字へと急拡大したことを上げている。これは、中国の内需が不振で輸入が減った結果、貿易黒字が増えたに過ぎない。こういう内部事情を考えれば、今年後半の中国経済が順調な回復過程に進むのか疑問である。

     

    習氏が強硬策になった背景

    今年に入って、中国国家主席の習近平氏がにわかに強気の対外姿勢を見せている。これを巡る解釈は二通りある。

     

    「自国がより強力になったと感じているからなのか。あるいは、習近平国家主席の立場が、脆弱となっているからなのかについて議論している」。これは『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月27日付)社説「米の対中強硬姿勢 選挙対策にあらず」で指摘したもの。新型コロナウイルス後に、中国が強くなったと気配はない。そうとすれば、習氏の国家主席として地位が脆弱化したことの証明と見るほかない。

     

    私は、習氏の立場が脆弱化している現状を打破すべく、あえて対外的に強硬策に出て「煙幕」を張っていると見ている。この立場は、一貫したものだ。習氏の中国における立場が強固であれば、香港国家安全推進法を強硬採決するはずがない。「一国二制度」を反古にすることが、西側諸国からいかなる反応を引き出すか、予測できないはずがないのだ。それをあえて強行し、香港不安が国内不安へ飛び火することを防止したと見る。

     


    「一国二制度」は、中英協定によって1997年に成立したものだ。本来ならば、50年の有効期間であるから2047年まで継続しなければならない義務がある。中国は、その義務を一方的に破棄し、抗議する英国に対して暴言を吐くという前代未聞の振る舞いを演じている。習近平氏が、自己の地位を守るべくあえて打った「芝居」であろう。

     

    この「芝居」は、今後の中国経済に死活的なインパクトを与えるはずだ。米国が、香港に与えた「特恵」(関税率・ビザ発給の優遇・輸出面の優遇)をすべて廃止すると発表した。これは、香港の築いた国際金融センターとしての役割を低下させる。中国は、香港市場を活用して、ドル資金の調達をしてきたのだ。その「恩典」が消えれば、中国経済の受ける打撃は、大きくなるはず。習氏の「芝居」では済まされ事態に陥るであろう。

     

    習近平氏の誕生日の夜、人民解放軍はヒマラヤ山中でインド軍を急襲して20名も殺害した。習氏は、国家主席と同時に国家軍事委員会主席である。人民解放軍トップである。中印国境で、中国軍がインド軍を急襲することに事前承認を与える立場だ。

     

    墓穴掘る中国の世間知らず

    習氏は、自らの誕生日を血で塗る惨事を命じたことが、インドとの外交関係をどれだけ複雑化させるか。その点について思い至らなかったようだ。インドは、全面的な対中報復策として経済面で中国を追い詰める戦術に出た。インドにおける中国製ソフトの流通を禁止したのだ。

     

    これは、中国IT企業にとって「死」にも等しい仕打ちになった。将来、インドのソフト需要が増える見込みの中で、中国がここから排除されるからだ。世界のIT競争で、インド市場を失えば即、世界競争で落後を意味する。この間隙を縫って、米国IT企業は総額1兆円投資を発表して、「インド市場」攻略の第一歩を印した。米国が、インド市場を手中にすれば、世界IT市場での勝者は確実である。中国IT企業は、習氏の「短慮」によって膨大な市場を失った。(つづく)

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    中国は随分、子どもじみたことを始めたものだ。米国は外来種に対して厳しいチェックをしている国である。そこへ、中国が悪意ある「種」を送っても、必ず弾き飛ばされることを知らなかったのだ。なんと、とんまなことを始めたものだと「笑いの種」だ。

     

    『大紀元』(7月29日付)は、「米農務当局が警告『中国からのあやしい種』侵略種や病原菌、虫害の恐れ」と題する記事を掲載した。

     

    最近、米国のいくつかの州の住民の多くが、中国産と疑われる不審な種子の入った小包を受け取った。 農務局の関係者は、これらの外来種は農業、環境、生態学的安全性を損なう可能性があり、受取人は処分のために種子を返送するか廃棄するなどして、許可なく植えないように警告した。

     

    (1)「こ12週間で、バージニア州、ユタ州、ルイジアナ州、テキサス州の住民が、自宅の郵便受けに不審な種のパッケージを受け取ったと通報している。 住民たちは種子を通販で購入していない。ほとんどの小包の説明書きには、「イヤリング」「宝石類」で、中国語が印刷されている。「中国郵政」と書かれているものもあることから、中国から送られてきた可能性が高いという」

     

    中国からの迷惑な「プレゼント」である。「イヤリング」「宝石類」の説明書で、中身が「種」であれば、誰でも疑うはず。幼稚な犯罪だ。

     

    (2)「各州の住民が受け取った種子には様々な形や大きさのものがあり、農務省の担当者によると、どのような植物の種かはまだわかっていない。ワシントンD.C.の郊外に位置するバージニア州は、住民が不審な種を受け取った最初の州の一つ。 バージニア州農業消費者サービス局はこのほど、「バージニア州の住民が、中国産と思われる種子が入った小包を受け取った」との声明を発表した」

     

    保守的な米国人農家にとって、「中国嫌い」は普通である。その中国から得体の知れないものが届いて、「ありがとう」と蒔くはずがない。幼稚な振る舞いだ。これで、ますます「中国嫌い」が増えるだろう。

     

    (3)「バージニア州農業・消費者サービス局広報担当マイケル・ウォレス氏はボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対して、不明の場所からの種子は未知の植物であり、「侵略的な植物種が送られてきた可能性がある」と語った。「外来種は環境にダメージを与え、在来種の植物や昆虫を排除したり破壊したりして、農作物にも深刻な被害を与える可能性がある」とウォレス氏は付け加えた。侵略的な種の侵入を防ぐため、パッケージを開けず、植えたりせず、最寄りの州農業部に連絡するよう通知している」

     

    不明の場所からの種子は未知の植物であり、在来種の植物や昆虫を排除したり破壊したりして、農作物にも深刻な被害を与える。これは、米国農家の常識である。

     

    (4)「アイオワ州中西部の歴史的な大豆農家デイビッド・ミラー氏は、VOAの取材に応じた。「通関を経ていない不審な種子を受け取った場合、地元の農務省事務所か、最寄りの動植物安全・害虫駆除担当官に連絡するべきだ」と語った。「何の植物なのか、誰が送ってきたのか、種には病気や虫が含まれているかもしれない」と付け加えた」

     

    米国は、世界有数の穀物生産国である。通関を経ていない不審な種子を喜んで蒔くほど愚かではあるまい。

     

    (5)「米国では種子の輸入が厳しく規制されており、米国農務省の動植物保護検疫機関(APHIS)が植物や種子の輸入を規制している。 APHISのスポークスマンであるセシリア・セカイラ氏は、米国農務省が米国税関国境警備局や州の農業部門と協力して、各州の住民が受け取った種の出所や、種類の不明な種子の流通などを調査しているとメディアに語った。英メディアは最近、数百人のイギリスの庭師もまた、起源不明の中国の種子の小包を受け取ったと報じた。台湾でも最近、中国上海から混合培養土の小包を受け取ったと現地メディアが伝えている。台湾の国防検査局は28日、その小包を処分したと発表した

     

    中国からの犯罪行為は、英国や台湾にも向けられている。

     


    (6)「中国外交部の汪文斌報道官は28日、一連の米国に到着した「中国郵政」の小包に関する報道について、中国側の関与を否定した。報道官は、中国郵政部に確認したところ、郵便物に使用された素材は偽装されたもので、レイアウトや情報には誤りが多いという。また、中国郵政部は、米国郵政公社に連絡して、中国側で調査を行うために疑わしい郵便物を中国に返送するよう要請している」

     

    中国外交部は、本格調査をすると言うが、本当だろうか。ウヤムヤにして終わりだろう。期待はできまい。新型コロナウイルスも曖昧にしたままだ。

     

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    天災の「デパート」の感すらある中国だ。大洪水・大干ばつ・バッタ・イナゴと食糧危機を招きそうな天災が続出している。

     

    『大紀元』(7月29日付)は、「食糧危機発生か? 中国当局、各省に食糧増産を命令、大豆など輸入増」と題する記事を掲載した。

     

    中国当局はこのほど、食糧不足を回避するために、各省に「食糧の生産を減らしてはいけない」と指示した。中南部での深刻な豪雨被害、東北部でのバッタ発生や干ばつなどが続いているため、当局の方針は食糧危機の発生を意味するとの見方が広がった。

     

    (1)「胡春華・副首相は727日、国内の食糧生産に関する会議で、「食糧の播種面積と生産量を増やさなければならない。減らしてはならない。国の食糧安全問題にいかなる手違いも許されない」と厳しい語気で述べた。中国の一部のメディアは最近、休耕地を復活させ、各地のコメ生産が増加し、雇用機会を増やしたと宣伝している。一方、中国メディア「中国経済網」728日付では、中国の鉄道部(省)は食糧を迅速に輸送する「緑色通路(グリーンゲート)」の設置を検討している」

     

    中国が、食糧増産命令を発した。食糧基地の東北部が天災に遭って、供給不足が明らかになってきたからだ。

     


    (2)「報道は、「鉄道部門は、国の『北糧南運(北部の食糧を南部に輸送する)』戦略を実行するために、食糧管理部門、物資備蓄部門と協力している」とした。習近平国家主席が22日、食糧の主要生産地である東北部吉林省を視察した。その際、習氏は「吉林省は、食糧安全保障政策を最優先課題にすべきだ」「戦争の際、東北部は非常に重要だ」などと発言した」

     

    習近平氏が、大胆発言をした。「戦争の際、東北部は非常に重要だ」というのだ。こういう不規則発言は慎むべきだが、習氏の頭には大規模戦争を想定しているようだ。米中戦争が始まれば、中国への輸出入貨物は海上ですべてストップされる。中国は、日干しにされる運命だ。

     

    (3)「今年、吉林省は干ばつに見舞われている。官製メディアの「中国新聞網」724日付は、61日~722日までの同省の平均降水量は平年と比べ3割減ったと伝えた。特に7818日まで、同省の「平均降水量はわずか3ミリで、平年と比べて9割も減少した」。吉林省水利庁の727日のデータによれば、21日以降、省内では有効な降水はなかった。2126日までの降水量は平年と比べて98.3%減少したという。吉林省吉林市は6月、市内でバッタが発生した。また、728日、吉林省西部で農作物の天敵である外来種植物、トマトダマシが大規模に発生したと報じられた」

     

    吉林省は、大干ばつである。降雨量が激減である。これでは、小麦が不作であろう。

     


    (4)「中国ネット上では、中国国内で食糧危機がすでに発生し、当局が食糧の備蓄を急いでいるとの見方をする市民が多い。中国当局は最近、大豆やトウモロコシの輸入を増やしている。中国税関当局が26日に公表した統計では、6月にブラジルから大豆1051万トンを輸入した。5月と比べて18.6%増で、前年同月比では91%増となった。また、米農務省(USDA)が毎週公開する統計によれば、7916日までの1週間で、中国向けのトウモロコシ輸出量(196.7万トン)は、週間統計として過去最高となった。中国は同週、米国から169.6万トンの大豆を購入した。20193月以来の高水準となった」

     

    中国が、海外からの食糧輸入を増やしている。「天敵」の米国からも輸入量をふやしている。この状態で、中国は米国と全面戦争できるはずがない。

     

    『ブルームバーグ』(7月27日付)は、「中国が警告、長江の氾濫は一段と悪化する恐れ-洪水第3波で」と題する記事を掲載した。

     

    中国水利省は長江の上流部で第3波となる洪水が発生し、すでに数百万人が避難している長江の氾濫が悪化する可能性があると警告している。同省は26日午後の声明で、状況は「厳しく」、「これから新たなピークとなりそうだ」と説明した。

     

    (5)「三峡ダムに流れ込む水量は28日ごろまでに毎秒6万立方メートルに増加するとみられている。三峡ダムの水位は27日時点で159.46メートルと、約1週間前の164.18メートルから低下。水位の上限は175メートルだ」

     

    三峡ダム決壊説が根強い中、長江の上流部で第3波となる洪水が発生した。これは、極めて悪材料である。三峡ダムの水位上限は175メートルである。27日時点で159.46メートルの水位だ。洪水第3波の到来であれば、予断を許さないだろう。

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    韓国は、何ごとも日本と張り合うことを生きがいにしている。米国の軍事力評価機関グローバルファイアパワー(GFP)が、まとめた2020年国別軍事力ランキングで、韓国が6位を占めた。そこで、「日本は何位か」である。

     

    GFPは人口や兵力、兵器数、国防予算など50項目を総合して軍事力指数を算出している。それによると、日本は5位である。韓国を上回ったのだ。今年の評価で1位は米国、2位はロシア、3位は中国、4位はインド、そして日本となった。以上は、『中央日報』(7月21日付)が報じた。この記事では、韓国のランクが日本を下回って「残念」という論評はなかった。

     

    国防力は、人口や兵力、兵器数、国防予算など静態的なデータで分かるものではない。最先端の装備を持っているかどうかが勝負を決めるのだ。

     

    『中央日報』(7月29日付)は、「日本の衛星・空母・潜水艦戦力、韓国との格差拡大へ」と題する記事を掲載した。

     

    韓国が日本に最も遅れを取っている軍事力分野が宇宙だ。人工衛星がなければ偵察や無人機などほとんどすべての武器体系がまともに作動しない。米国は宇宙分野でロシア・中国との戦争に死活をかける。日本も同じだ。

    宇宙が戦場に変わっていくが、韓国は対応できていない。日本は2020年代半ば、妨害衛星を打ち上げる計画だ。この衛星はロボットアームで他国の衛星を破壊して通信を途絶えさせ、偵察衛星の機能を失わせる。韓国の衛星にも適用可能な軍事戦略だ。



    (1)「元JAXA(宇宙航空研究開発機構)鹿児島宇宙センター所長の坂爪則夫氏は、日本の宇宙技術のうち最も誇れる技術を「ドッキング技術」と述べた。JAXAは蓄積されたロボットアーム技術と世界最高レベルのドッキング技術で妨害衛星にロボットアームを付け、外国の人工衛星を破壊することが可能だ。ドッキング技術を軍事的に使用すればミサイル迎撃技術に転用できる」

     

    日本の宇宙技術のうち最も誇れる技術は、「ドッキング技術」とされている。TVでも衛星のドッキングでは、日本人が操作している姿がよく放映されている。あのロボット操作技術が、将来は兵器に転用されるというのだから驚く。宇宙では、あらゆる技術が軍事に転用さが可能なのだ。


    (2)「韓国は2021年を目標に1.5トンの人工衛星を打ち上げる独自のロケットを開発中だが、日本は偵察衛星の地球の軌道に16トンの人工衛星を乗せることができるH-2A液体燃料ロケットをすでに保有している。燃料を入れるのに時間がかかるH-2Aロケットだけでなく、ボタンさえ押せば直ちに発射できる1.2トン弾頭用固体燃料ロケットのイプシロンもある。軍事的に転用すれば直ちに大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有する日本だ」

     

    日本が、大陸間弾道ミサイルを発射できる技術を確立しているという。日本の潜在的な軍事能力開発が、ここまで進んでいることは、中国にとっては脅威であろう。平和憲法の精神で核開発を抑制しているが、北朝鮮の核武装が公認される事態になれば、「日本も」という危険性が出てくる。北朝鮮の核武装は、「虻蜂取らず」である。

    (3)「ICBMを発射するには大気圏再進入技術が必要となる。日本は宇宙に発射した人工物体を大気圏内部に再進入させることにかなり以前から成功していて、ICBM技術で北朝鮮をはるかに上回る。いつかは国防政策として表面化するだろうが、技術的にはICBMの力量をすべて備えた宇宙強国だ。偵察衛星能力も2025年までに10基に増やし、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長がどの建物から出るかも把握できる。

     

    日本のICBM技術は、北朝鮮をはるかに上回っている。日本の偵察衛星能力は、2025年までに10基に増やす計画である。これによる探査能力拡大で、金正恩氏の動静まで把握できるようになるという。

     


    (4)「日本は韓国ものぞいている。韓日間の宇宙軍事力を比較すると、壬辰倭乱(文禄・慶長の役)当時に日本の火縄銃に朝鮮が槍などで対抗したのと同じくらい大きな差がある。軍事力のうち日本に最も遅れている状態であり、その差を狭めるのに数十年の時間が必要であることを考慮すると、未来に備える領域のうち最も急がれる分野が宇宙だ」。

    日本の偵察衛星が北朝鮮をより詳細に覗ければ、韓国の動向も的確に把握できる。筒抜けになるのだ。衛星技術における日韓の差は、数十年間あるという。韓国は、宇宙分野で決定的な立ち後れとなった。

     

    (5)「日本は潜水艦16隻体制を維持してきたが、2021年までに22隻体制に増やす。潜水艦16隻体制は、終戦後に米国が日本の軍事力を解体する一方で潜水艦武装だけは強要したことで実現した。米国は冷戦当時、旧ソ連の軍艦がウラジオストクから太平洋に進出するのを防ぐための軍事戦略の一部を日本に任せた。これを受け、日本は宗谷海峡・津軽海峡・大韓海峡(対馬海峡)の3つの海峡を封鎖する任務を遂行してきた」。

     

    日本の潜水艦能力は、折り紙付きである。米国さえ上回るとされている。文字通り、世界一である。

     


    (6)「毎年1隻を退役させ、三菱造船所と川崎造船所は、交代で1隻ずつ建造する。毎年新技術を取り入れて騒音が最も少ないそうりゅう型潜水艦で武装し、最新エンジンで15日以上も水中作戦が可能だ。日本潜水艦は水深500メートルの海底まで降下できる。溶接技術が優れていなければ水圧に耐えることができないが、レーザー溶接技術で日本は世界最高レベルだ。中国の潜水艦が東シナ海と南シナ海に抜ける2カ所の水路を監視するために、日本は常時8隻の潜水艦を水中に隠しておく必要があり、全体的に22隻体制に変化することになったのだ。22隻体制といっても毎年1隻ずつ退役する潜水艦を廃棄せず演習艦として保存しているため、実戦に投入できる潜水艦を28-30隻保有しているといえる」

    常時、日本の8隻の潜水艦が中国潜水艦の動きを監視しているという。それとも知らない「はぐれ」中国潜水艦が、発見されて監視されているのだ。中国海軍にとって、日本の潜水艦は鬼門となっている。

     


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    大言壮語するものではないという見本が、中国主導で設立したAIIB(アジアインフラ投資銀行)である。中国経済が、絶頂期を過ぎた2016年1月に発足した。当初は、日米主導で設立したADB(アジア開発銀行)を追い抜くという思惑で、日米に内証で設立計画を進めていた。それが、中国経済の乱調とともに先行きの自信をなくし、日米の参加を必死で求める姿に変わったのだ。

     

    日米は、最後までAIIBに出資せず「孤塁」を守った。金融が素人の中国とパートナーシップを組んでも、成果は上がるまいという見通しからだった。案の上、中国の経常黒字は先細りから赤字に転落する見通しが濃くなっている。中国が、いつまでAIIBを支えられるか疑問なのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(7月28日付)は、「AIIB、金総裁続投を決定、投融資は伸び悩み」と題する記事を掲載した。

     

    中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は28日夜、金立群総裁の2期目の続投を決めた。手堅い運営が評価されたが、開業4年半で投融資額は約200億ドル(約2兆1000億円)と当初想定の半分以下にとどまった。今後、中国の強硬な外交姿勢に反発が強まることも懸念材料だ。

     

    (1)「7月28日夜にオンラインで開いた総会に出席した中国の習近平国家主席は「AIIB(の運営)は国際性、規範性、高水準を堅持し、良いスタートを切った」と語った。金氏の新たな任期は2021年1月から5年間となる。総会では「国際金融機関の一員となり『成功』と広く認識されている」と述べた。AIIBは16年1月に開業した。中国が最大の3割を出資し、増資など重要な案件で拒否権をにぎる」

     

    AIIB設立目的は、中国の世界における金融支配力をつけることであった。それは、中国の経常黒字が増え続けるという前提あってのこと。持てあますほどの貯蓄を背景に、世界経済を支配するという夢が突き動かしたのである。中国は、AIIB設立を考えた2013~15年が、経常黒字のピークであった。その後は、急速な減少過程に入っている。AIIBは、設立すべきでなかったのだ。

     


    (2)「加盟国・地域は承認ベースで102あり、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)の68を上回る。習氏は「AIIBの良い仲間はますます増え、協力の質もどんどん高まっている」と述べた。南米やアフリカなど域外加盟国が全体の半分超の52もあり、ADBの19より多いためだ。主要7カ国(G7)で米国と日本だけが参加していない」

     

    AIIBの出資国がADBよりも多いのは、中国の宣伝攻勢が凄かったからだ。AIIBに出資すれば、すぐにでも見返りが得られるような誇大宣伝をした結果だ。EUでは当初、各国とも出資に慎重であった。だが、英国の出し抜けの出資決定で、EUは一斉に参加へと舵を切ったのである。こういう中で、日米はAIIBに出資せず、中国へなびかなかった。正しい選択であった。

     

    (3)「当初はADBや世界銀行がまとめた融資案件に参加する協調融資が主体だったが、自前で案件を発掘、審査する単独融資が増えた。金額では単独融資が全体に占める比率は16年の25%から20年は84%まで上昇した。課題は伸び悩む投融資だ。案件承認ベースで開業後の4年半で87件、196億ドル。金氏は開業直前に「当初5~6年間の融資額は年100億~150億ドル」と語ったが、想定の半分以下だ。融資の実行額はさらに少ない。16~19年にAIIBは計120億ドルの融資を承認したが、19年末の貸出残高は22億ドルにとどまった。200億ドルもの自己資本の10分の1しか利用しておらず「課題は案件発掘の加速や貸出額の増加を通じ、出資金を着実かつ効率よく運用すること」(日本の国際通貨研究所)」

     

    AIIBが現在、臆病なほど融資に慎重である。融資案件の承認ペース自体、スローである。融資実行となると、さらに慎重を期しており、「石橋を叩いても渡らない」のだ。中国の経常黒字が急速に減っており、2025年以降の赤字予想が出始めていることの影響である。「融資しない銀行」へ変貌したのだ。

     

    (4)「中国との外交関係が悪化する国が多いのは今後の懸念材料となる。インド向け融資は全体の2割にあたる43億ドルと国・地域別で首位だが、中印は今年6月に国境地帯で衝突し45年ぶりに死者を出した。インド側は中国製アプリの使用を禁止するなど経済での対中制裁を強める。中国主導のAIIBが今後もインドに積極融資するかどうかは不透明感がある」

     

    AIIB設立後、中国はインドを取り込む目的で積極的な対インド融資を行なったはずである。それが最近、ヒマラヤ山中で中印両軍が衝突する事態になった。インドは、これを機に「反中」を鮮明にしている。この辺りに、中国外交の一貫性のなさが暴露されている。経済外交と軍事戦略がバラバラに動いているのだ。それだけ、中国最高指導部におけるAIIBの位置づけが低くなっていることを示している。中国が、かつて見せたAIIBへの情熱は、とっくに下がっているに違いない。

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