勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年07月

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    中国の習近平国家主席は当初、4月に国賓での訪日予定だった。それが、新型コロナウイルスの感染拡大で延期された。中国が香港へ「国家安全法制」の導入を決めたことで、自民党外交部会で訪日反対論を決議した。中国側も日本への不信感を深めており、見通しが立たなくなったとされている。

     

    日本では、自民党外交部会が習氏の訪日計画中止を求めたが、韓国は今秋の訪韓実現に躍起となっている。文大統領の外交実績にするというもくろみをしているためだ。「親中朝」の韓国にとって、習氏の訪韓を文政権の得点にすると張りきっているほど。日本とは、これだけ、外交感覚が異なっている。

     

    『日本経済新聞』(7月4日付)は、「『習氏の国賓来日』中止を」と題する記事を掲載した。

     

    自民党の外交部会などは3日の役員会で、延期している中国の習近平国家主席の国賓来日を中止するよう日本政府に求める決議案をまとめた。中国による「香港国家安全維持法」施行に対抗する。来週にも首相官邸へ申し入れる方針だ。

     

    (1)「決議案は「法施行と同時に大量の逮捕者が出るなど、懸念していた事態が現実のものになった」と指摘した。「この状況を傍観できず、強く非難する。中国には大国としての責任を自覚するよう強く求める」と記した。香港人の自由を守るため「就労ビザの発給など脱出する人々の支援も検討するよう求める」と盛り込んだ。中山泰秀外交部会長は党本部で「中国国家によるドメスティックバイオレンスだ。前回の決議からもう一段、厳しく対応しなければならない段階に至った」と述べた」

     

    日本は、G7として中国へ「香港国家安全法」制定に廃止する意向を表明した。また、国連人権理事会でも27ヶ国とともに、香港国家安全法に反対する意向を示している。秋葉剛男外務事務次官は、中国の孔鉉佑駐日大使を外務省に呼び、日本の懸念を伝えた上で、適切な対応を取るよう求めた。孔大使は「本件は中国の国家安全に関わる事項だ」と説明した。

    菅官房長官は会見で「一国二制度の下、自由で開かれた(香港の)体制が維持され、民主的・安定的に発展していくことが重要だ」と述べ、今後の中国の出方を注視すると強調。新型コロナウイルス対応などでは協力を続ける姿勢を示しつつ、「主張すべきことは主張していく」と語った。習氏の来日に関しては「状況全体を見ながら日中間で意思疎通を続けたい」と述べるにとどめた。このように、習氏の訪日計画がひと頃よりも熱が冷めていることは事実だ。

     

    自民党の石破茂元幹事長は3日、日本経済新聞社主催の「日経バーチャル・グローバルフォーラム」でオンライン講演した。中国が「香港国家安全維持法」を施行したのを念頭に「中国は物事の考え方の基本が大きく違っている」と批判した。

     


    石破氏は、「中国も豊かになれば民主的な国になるのではないかといわれていたが全然そうではなかった。香港への対応をみてもそうだ」と語った。1989年の天安門事件後、日本が早い段階で経済制裁を解除したのが「今日の状況を招いた」と指摘した。南シナ海などでの中国の動きについて「きちんと認めないと言う力を持たねばならない」と述べ、日米で連携して対応する必要性を強調した。「領土や人権を守る覚悟と矜持(きょうじ)が必要だ」とも主張した。

     

    (2)「中国外務省の趙立堅副報道局長は3日、自民党外交部会などがまとめた決議案について「彼らの反中ショーにはいかなる意味もない」と述べた。「あるとき以来、日本政府とは重大な(習氏訪日の)議題を検討していない」とも語った」

     

    中国外交部報道官は、下線のように「あるとき以来、日本政府とは重大な(習氏訪日の)議題を検討していない」としている。「あるとき」とは、なにか。日中の意見対立が表面化したのであろう。現状は、「棚上げ」されたままになっている。となれば、そのままにしておけば良い。「時期を見て」という玉虫色にすれば、波風が立たないであろう。

     

    中国側の立場から言えば、日中関係を対立状態の持込みたくない切羽詰まった事情にある。米中対立で「デカップリング」(分断)が起これば、中国は先進国との窓口を失うリスクと隣り合わせだ。香港国土安全法は、人権問題という欧米では絶対に妥協しないマターだけに、対立の根は深い。「ミニ天安門事件」という位置づけになろう。

     

    中国は人権について、吹けば飛ぶような問題と誤解しているが、中国の死命を制しかねない重大事である。天安門事件に次いで2回目の問題だけに、深刻な後遺症となろう。その場合、天安門事件と同様に、日本を頼らざるを得なくなる。もはや、日本政界に「中国通」はいないし、仲介役になろうという政治家もゼロだ。中国は、日本の意向に関心を持たざるを得まい。

     

     

     

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    ついに、香港へ国家安全法適用が決まった。香港市民は、一様に動揺している。中国本土並みの人権弾圧と言論の自由を奪われる社会の到来に身震いしているのだ。移民斡旋会社は、超繁忙という喜べない現実に直面している。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(7月2日付)は、「香港市民、脱出へ動く、海外移住や資産移転」と題する記事を掲載した。

     

    1997年に英国から中国へ返還された香港に約束されていた自治権がここへきて急激に損なわれ、多くの居住者の間に動揺が走っている。香港は返還から50年間、多くの欧米諸国と同等の自由を享受することになっていた。だが、新法では中国政府に広範な権限が与えられ、香港市民は国家分裂や政権転覆、外国勢力との結託や国家安全に危害を及ぼす行為といった罪については最高で終身刑が科される。香港が大切にしてきた法の支配が攻撃を受けているとの批判も聞かれる。

     

    (1)「移民コンサルタントらによると、同法のニュースを受けた香港市民のパニックぶりは、昨年の反政府デモの後を上回っているという。海外移住を支援する美聯移民顧問のティナ・チェン氏は、「まるで津波のように人が押し寄せた」と例えている。同社は5月に800件の問い合わせを受けたが、これは2019年の1カ月間の最高である400件の倍に上る。香港は海外に移住する人を追跡調査していない。だが、ビザ取得や養子縁組に必要な「無犯罪証明書」の申請件数は、19年に前年比で40%も急増し、3万3000件余りに達した」

     

    移民希望が、津波のように押し寄せているという。ビザ取得や養子縁組に必要な「無犯罪証明書」の申請件数は、19年に前年比で40%も急増している。だれも、中国共産党の旗の下で暮らしたくないのだ。

     


    (2)「移民コンサルティング会社アンレックスの創業者、アンドリュー・ロー氏は、1989年に北京で起きた天安門事件の後など、香港市民の間では過去30年にわたって海外移住への関心が高まる場面があったが、今回は事情が違うと語った。「89年に移住を計画していたのはお金のある人たちだけで、自分の財産が守れないのではないかと心配していた」とロー氏は振り返る。だが「昨年は、主に労働者階級が移住を希望した。今年は誰もが移住したがっている」という」

     

    89年の天安門事件後に、香港の金持ちは競って移民した。今回は、一般労働者までが脱出希望である。台湾が受入れを表明している。オーストラリア政府は2日、香港住民の「安全な避難先」として自国への受け入れを検討する方針を示した。モリソン首相は、豪州と香港は商業面でも、人的な結びつきにおいても関係が深いとして、香港住民を対象に定住や市民権の獲得を促す措置を決めた英国と同様の措置を講じると述べた。既に暫定案を作成しており、近く詳細を決定するとしている。

     

    (3)「97年の香港返還前に生まれた人に英国が発行した英国海外市民(BNO)旅券を保有するが、英国民に分類されるわけではなく、最長で6カ月間の英国滞在が認められているにすぎない。英国のラーブ外相は1日、同旅券保有者は英国に継続して5年間居住すれば永住権を得られると発表した。その後12カ月後までの間に英国の市民権取得を申請できるようになる」

     

    英国政府は、元英領だっただけに宗主国としての義務を果たす意向を示している。永住権への途も開くという。

     


    (4)「もっと大々的な計画を進めている人もいる。不動産業の起業家、アイバン・コー氏は、香港の実業家90人のグループとアイルランドなどの国々の専門家との交渉を指揮している。最大5万人の香港移民を受け入れる「国際的な憲章都市」を立ち上げる構想だ。コー氏は英フィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、香港の投資家が金銭的な利権や市民権取得への道と引き換えに、この新都市でインフラやバイオテクノロジー、製造業を発展させる状況を思い描いていると語った」

     

    アイルランドへ最大5万人という大規模な移住計画が、浮上している。この新都市で、インフラやバイオテクノロジー、製造業を発展させるプランである。

     

    (5)「国家安全維持法の施行を巡って米国が中国に制裁を科す場合に備え、海外口座に資金を移そうとしている香港市民もいる。フルネームを明かすことを控えた公務員のテレサさんは最近、英国で銀行口座を2つ開設した。「(米国の)制裁が加わったら、資金流出はさらに加速する可能性が高い」という。金融業に従事するトムさん(35)は、純資産の80%を外貨に転換したことを明らかにした。「(国家安全維持法は)私たちにとってかなり極端にみえる。さらに極端な措置が他に出てくるのではないかと考えている」と話した」

     

    先見の明がある人は、海外へ預金口座を移す人も出始めた。アジアの金融ハブとしてライバルのシンガポールでは、外貨建て預金が4月に前年同月比で44%増加し、620億シンガポールドル(約4兆7800億円)と過去最高を記録した。香港で反政府デモが激化した2019年から続く増加傾向に拍車がかかっている。

     

     

     

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    文政権の任期は、残り2年を切った。来年は、次期大統領候補を決める時期で、現大統領への関心が急速に低下する局面である。せいぜい年内が、文在寅氏の「大統領賞味期限」となりそうだ。そこで、文氏が南北関係打開に向けて最後の大博打に出てきた。

     

    国家情報院(韓国の情報機関。国情院)トップと青瓦台(韓国大統領府)の国家安保室長、統一部(省に相当。以下同じ)長官を交代させるという「三人の安全保障ライン」の人事に手を打ったのだ。人事の特色は、「北朝鮮派」の面々であること。金正恩氏に気に入って貰い、「南に顔を向けて」という懇願の臭いが感じられる。

     

    『朝鮮日報』(7月4日付)は、「切羽詰まった文大統領、対北成果を出そうと勝負手」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「国情院長に内定した朴智元(パク・チウォン)氏と徐薫(ソ・フン)安保室長は、金大中(キム・デジュン)政権時代から南北首脳会談など対北接触を主導してきた代表的な「北朝鮮ライン」。朴氏は現政権で初となる野党出身者の起用で、北朝鮮問題に対する切迫した状況を傍証するものだ。統一相に内定した仁栄(イ・インヨン)議員は全大協(全国大学生代表者協議会)議長時代から統一運動を行ってきた人物で、南北協力に向けた意思は強い。北朝鮮は開城工業団地の南北連絡事務所爆破と軍事的な脅しを通して板門店宣言を事実上破棄したが、文大統領は北朝鮮と交渉してきた経験者や対北融和論者などを前面に立たせた。一部からは、今回の人事を通して「自主派」を前面に立たせ、韓米同盟を重視する「同盟派」は排除したのではないかという指摘が出ている」

     

    文氏は、北朝鮮に対して「捨て身の戦法」という感じだ。これまで、北朝鮮と関わりのある人物を前面に立てて、交渉しようという姿勢である。これは、最初から北への「譲歩」する姿勢を見せたようなもので、交渉としては最悪である。文氏はただ、北と会談できれば、それで取り繕えるという点数稼ぎである。米朝関係が動かなければ、南北関係改善は難しいのだ。

     


    (2)「文大統領は最近、「南北関係の成果を後回しにはできないというのが私の確固たる意志」として、既存の政策にこだわる意思を明らかにした。青瓦台や与党内部からも、これまで「あまりにも米国の顔色をうかがい、南北関係でスピードを出せなかった」と批判が出ていた。こうした与党内の批判が今回の人事に反映されたものと解釈されている。文大統領は年頭から「南北関係でスピードを出したい」と語っていた。先月には李度勲(イ・ドフン)韓半島平和交渉本部長を米国に送り、米朝首脳会談と南北首脳会談を同時に推進する構想を米国に伝えたといわれている

     

    金正恩氏は韓国抜きで、米朝首脳会談を狙っている。朝鮮半島の「主人」は、北朝鮮であるというイメージを打ち出して、今後の南北会談を北のペースで進める意向でないのか。そういうロングランの視点で考えれば、北朝鮮が即座に韓国の呼びかけに応じてくるか疑問点が多い。

     

    (3)「北朝鮮が、今回の人事の後、すぐさま文大統領との対話に出てくるかどうかは未知数だ。北朝鮮は最近、鄭義溶(チョン・ウィヨン)安保室長と徐薫・国情院長を対北特使とする文大統領の提案を拒絶したという事実を公にした。さらに、国情院長に内定した朴智元氏について、北朝鮮は昨年8月に「自分が615時代の象徴的な人物にでもなっているかのごとく生意気に自称している」、「汚い舌でやみくもに騒ぎ立て、悪臭を漂わせた」と露骨に非難している。朴氏が北朝鮮のミサイル発射を巡って「最低限の度量からも外れるものとして糾弾せざるを得ない」と批判したことへの対応だった。しかし、先代との縁を重視する北朝鮮の特性上、朴智元氏が金正日(キム・ジョンイル)総書記時代に北朝鮮問題へ関与していた点を評価するだろうという見方もある」

     

    北朝鮮は、開城の南北合同連絡事務所を爆破して、韓国へ「縁切り状」をたたきつけたばかりである。「安保ライン三人衆」の首をすげ替えたところで、すぐに南北会談に応じるのか保証の限りでない。賭けであることは間違いない。

     

    (4)「今回の人事で米国および北朝鮮核問題の専門家らが排除されることにより、韓米関係の悪化を懸念する声も強まっている。これまで米国との関係は鄭義溶・安保室長が主導してきた。鄭室長の後任となる徐薫室長は、国情院長時代にマイク・ポンペオ国務長官と呼吸を合わせてきた。しかしオーソドックスな外交部の官僚ではなく、対北朝鮮および情報の専門家であるため、韓米同盟の悪化を懸念する視線もある」

     

    南北関係が悪化した最大要因は、北朝鮮が文氏の米朝会談への楽観論に惑わされて、大きなダメージを受けたことだ。「安保ライン三人衆」の首をすげ替えて解決できる問題でないのだ。文氏に、その認識がゼロであることが、南北交渉を困難にさせている要因である。文氏が大統領でいる限り、南北関係に目立った前進があると期待できるだろうか。

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    文大統領は、なりふり構わないで北朝鮮接近人事を始めた。政策は、ことごとく八方塞がりである。そこで最後の突破口として、北のご機嫌取りをしようという狙いに違いない。このままでは、文政権5年間の治績がゼロどころかマイナスになる。

     

    北朝鮮が、ここまで荒々しい振る舞いを始めた理由は、文大統領の「甘い見通し」による。ハノイでの米朝会談が破談になったのは、文氏が北側に根拠不明の楽観論を伝えて、北朝鮮に過剰期待を持たせたことだ。それ以後、北は韓国を完全に信用しなくなっている。こういう状況下で、韓国は「北朝鮮歓迎人事」を行なおうとしている。文大統領任期中の南北会談を期待しているのだ。

     

    『朝鮮日報』(7月4日付)は、「違法に対北送金した人物が国家情報院長、安全保障は誰が守るのか」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の文在寅大統領は3日、国家情報院(韓国の情報機関。国情院)トップに朴智元(パク・チウォン)元「民生党」議員を内定した。青瓦台(韓国大統領府)安保室長には徐薫(ソ・フン)国情院長、統一部(省に相当)長官には仁栄(イ・インヨン)議員、外交・安保特補にはイム・ジョンソク元秘書室長と鄭義溶(チョン・ウィヨン)安保室長をそれぞれ内定した。北朝鮮の核の廃棄より、ほとんど無条件の対北融和策を主張してきた人物で塗りつぶされている。

     

    (1)「国情院長に内定した朴智元氏は2000年、金大中(キム・デジュン)大統領の密使として北朝鮮側と初の南北首脳会談開催に合意し、その首脳会談を実現させるため金正日(キム・ジョンイル)に4億5000万ドル(約484億円)の裏金を渡す役割を担った。その支援で、金正日は「苦難の行軍」の危機を乗り越えて核開発に拍車をかけ、6年後には最初の核実験に成功した。朴氏は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代に特別検察官の捜査対象になり、収監された」

     

    日本には、韓国のような独立した機関である国家情報院を持っていない。スパイ活動を行なう機関は、平和憲法下では許されないという論理からだ。お陰で、日本では世界中のスパイが、集っていると指摘されている。スパイを捕まえるには、スパイ活動できる機関が必要であろう。

     

    国家情報機関のトップには、それにふさわしい経歴の持ち主でなければならない。韓国では、北朝鮮へ秘密資金を持込んだ「容北人物」が、国家情報院長に指名されたとして、異論を呼んでいる。北朝鮮に甘い人物が、北朝鮮監視役になれるのかという率直な疑問である。

     

    (2)「国情院は、北朝鮮を含むあらゆる外部の脅威から韓国を守るための存在する安全保障の第一線機関だ。韓国軍は戦時に戦う機関だが、国情院は平時にも戦わなければならない機関だ。いつからか韓国の大統領は、国情院を「国の安全に責任を負う情報機関」ではなく、「自分のアジェンダを遂行する密使」とみなしている。情報業務は決してたやすいものではない。誰にやらせてもいいポストではあり得ない。北朝鮮はもちろん、海外・サイバー・対テロ関連であふれ出て来る情報の中から、韓国の安全保障を脅かす情報を読み取れる経験と識見を持っていなければならない。数十年にわたって国内政治にのみ没頭してきた朴内定者に、金正日と接触した経験のほかにいかなる情報専門性があるのか、理解できない

     

    韓国の国家情報院の能力は、落ちていると言われる。米朝ハノイ会談が、破談になることを事前に掴めなかったからだ。日本は、事前に米国から「ノー・ディール」を通報されていたが、韓国には知らされていなかった。北朝鮮に漏れることを警戒されたためだ。文氏は、ハノイ会談が成功すると信じ、米朝首脳の記者会見をTVで見るべく側近と待機していたほどだ。韓国の国家情報院は、事前にこの結末を見抜けず、大恥をかかされた。

     

    (3)「国情院は、韓国の弱点である先端装備を持った米国・日本との情報交流に依存してきた。こうした友邦諸国が、北朝鮮を巡る朴氏の立場や態度をどういう視角から見るか、疑問がある。これらの国々がデリケートな対北情報を国情院とどれだけ共有しようとするか、心配だ。国情院は、板門店首脳会談の1カ月前に金正恩(キム・ジョンウン)が特別列車で訪中したにもかかわらず、これをきちんと把握できなかった。ハノイでトランプが偽りの非核化の場を蹴って出て来るまで、ホワイトハウスの動きも分かっていなかった。現政権になって、北朝鮮のスパイが捕まったという話もほとんど聞かない。逆に、北が新型ICBM(大陸間弾道ミサイル)を撃った日、スパイの捜査はよそに渡すという「改革案」を発表した」

     

    文政権は結果がどうあれ、北朝鮮重視政策を取らなければ、「レゾンデートル」(存在理由)がないと思い込んでいる。それは、病的とまで言って良いほど。だから、北朝鮮が増長する。こうして悪循環に嵌まっているのだ。

     


    (4)「北朝鮮の核をなくそうと思うなら、北の集団とも交渉しなければならない。しかし北は、南北首脳会談を開いた直後に韓国の警備艇を奇襲して将兵を殺す集団だ。交渉の渦中にあっても、誰かが監視の目を光らせておかなければならない。その仕事ができるのは国情院だけだ。それなのに、国情院長が情報機関のトップではなく対北密使だったら、安全保障は誰が守るのか」

     

    韓国学生運動家が、30年前に「親中朝・反日米」を絶叫した。その時の意識のままで、文政権は北朝鮮政策を行なおうとしている。現実とのギャップの大きさを自覚していないので、対北外交は上手くいくはずがない。韓国進歩派は、北朝鮮の巧妙な外交戦術を全く理解しない「盲目集団」と言うほかない。手玉に取られるだけである。



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    いかにも中国企業がやりそうな詐欺話である。担保の「純金83トン」が、実は銅に金メッキしたものであることがバレタのだ。可笑しいやら呆れるやら、という心境である。「金83トン」は、中国の年間の金生産量の22%、2019年の中国の金準備高の4.2%に相当するという。これだけの「純金」が、一企業の手元にあることに疑いの目を向けずにきたことも驚く。中国社会の縮図である。

     

    『大紀元』(7月3日付)は、「『83トンの純金』金メッキを塗った銅だった、ナスダック上場の中国企業が融資担保に使用」と題する記事を掲載した。

     

    中国最大級の金宝飾メーカーで米ナスダックの上場企業でもある金凰珠宝(King

    -Gold、湖北省武漢市)が、所有すると主張している83トンの純金が、金メッキを塗った銅だったことがわかった。ナスダックの同社市場価格は昨年同期比で80%近く下落した。

     

    (1)「中国国内メディア『財新』によると、金凰珠宝は2015年以降、金を担保に信託会社15社から総額200億元(約3000億円)の融資を受けた。国営の中国人民保険公司(PICC)の子会社が融資保険を提供した。金の偽造問題が発覚したきっかけは、2月に債権者であった東莞信託が、金凰珠宝の債務不履行を精算するために、担保に出された金を確認したことだった。調査の結果、保管していた金は純金ではなく「金メッキを施された銅」だったことが判明した。別の債権者である中国民生信托も裁判所に担保検査を求めた。5月22日、裁判所が倉庫を調べたところ、83トンの「純金の延べ棒」は、すべて金メッキが施された合成の銅(タングステン)であることがわかった」

     

    担保の「純金83トン」が、「メッキされた銅」だったとは、歴史に残る超大型の詐欺話である。普通、担保となる物品は第三者によって鑑定されるはずだが、その「証印」も偽造されていたのであろう。「ニセ物づくり」の中国でも、「特大」の詐欺である。

     

    (2)「『財新』が伝えた情報筋の話によれば、金凰珠宝に投資する者の多くは、湖北省外の企業だという。「賈氏がそんなに多くの金を持っているわけがないとみんな周知している。彼が持っているのは銅だけだ」と、情報筋は述べた。事情を知る投資家たちは、賈氏を怒らせないように黙っているだけだという。市場に精通するアナリスト・楊艶氏はラジオ・フリー・アジアの取材に対し、金鳳珠宝は1994年に設立され、かつて中国人民銀行が所有する金製造工場だったと明かした。賈氏は、陸軍の後方総務を管理する後勤部で金鉱山の管理を担当していた。賈氏は金を偽造したことを否定している。しかし、楊氏は、彼が金製造工場と結託していなければ、この大量の偽物の金を製造することは不可能だとみている」

     

    金鳳珠宝の創業者は、人民解放軍の後方総務を管理する部門に所属していたという。実は、人民解放軍の贈賄事件の温床が、この後方総務に関わった人物によって引き起されている。金鳳珠宝の創業者も、ここで「悪の手法」を学んだに違いない。合成の銅(タングステン)を純金に化けさせたというが、純金と合成銅の重量は同じなのか。持った感じで、「ニセ物」という判別ができなかったのか。それも、不思議である。

     

    (3)「2020年、裁判所から同社に対する強制支払い執行命令がすでに22件にも及んでいる。民生信託、東莞信託および長安信託は6月上旬、金凰珠宝に対して訴訟を起こしている。金凰珠宝の金が発行した融資で未払いの商品は160億元にもなるとされる。賈社長が保有する同社株および関連会社の中国市場の株式は、裁判所により凍結されている。上海金取引所は6月24日、会員規定違反により金凰珠宝の会員資格を取り消したと発表した。米ナスダックでは取引は続いているが、2018年には一株13ドル代を記録した同社の株価は、6月30日の金メッキ報道以降10%近く下がり続けており、7月3日の時点で0.48ドルとなっている」

     

    中国で、「ニセ純金」により資金調達した上、さらに米国ナスダックへ上場するというウソの上塗りをする度胸は「大した」もの。中国社会の拝金思想が、こういう大胆な振る舞いをさせるのであろう。中国に、経済倫理観は存在しない。これは、中国人に来世への信仰という真の宗教が存在しない結果だ。漢民族に、不老長寿を祈願する道教という「ニセ宗教」は存在する。だが、これは信仰と呼べるものでない。こういう社会ゆえに、経済行動を律する経済倫理は育たなかった。哀しい民族である。倫理観なき民族は、発展するはずがない。行動をセルフコントロールする術がないからだ。

     

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