中国の習近平国家主席は当初、4月に国賓での訪日予定だった。それが、新型コロナウイルスの感染拡大で延期された。中国が香港へ「国家安全法制」の導入を決めたことで、自民党外交部会で訪日反対論を決議した。中国側も日本への不信感を深めており、見通しが立たなくなったとされている。
日本では、自民党外交部会が習氏の訪日計画中止を求めたが、韓国は今秋の訪韓実現に躍起となっている。文大統領の外交実績にするというもくろみをしているためだ。「親中朝」の韓国にとって、習氏の訪韓を文政権の得点にすると張りきっているほど。日本とは、これだけ、外交感覚が異なっている。
『日本経済新聞』(7月4日付)は、「『習氏の国賓来日』中止を」と題する記事を掲載した。
自民党の外交部会などは3日の役員会で、延期している中国の習近平国家主席の国賓来日を中止するよう日本政府に求める決議案をまとめた。中国による「香港国家安全維持法」施行に対抗する。来週にも首相官邸へ申し入れる方針だ。
(1)「決議案は「法施行と同時に大量の逮捕者が出るなど、懸念していた事態が現実のものになった」と指摘した。「この状況を傍観できず、強く非難する。中国には大国としての責任を自覚するよう強く求める」と記した。香港人の自由を守るため「就労ビザの発給など脱出する人々の支援も検討するよう求める」と盛り込んだ。中山泰秀外交部会長は党本部で「中国国家によるドメスティックバイオレンスだ。前回の決議からもう一段、厳しく対応しなければならない段階に至った」と述べた」
日本は、G7として中国へ「香港国家安全法」制定に廃止する意向を表明した。また、国連人権理事会でも27ヶ国とともに、香港国家安全法に反対する意向を示している。秋葉剛男外務事務次官は、中国の孔鉉佑駐日大使を外務省に呼び、日本の懸念を伝えた上で、適切な対応を取るよう求めた。孔大使は「本件は中国の国家安全に関わる事項だ」と説明した。
菅官房長官は会見で「一国二制度の下、自由で開かれた(香港の)体制が維持され、民主的・安定的に発展していくことが重要だ」と述べ、今後の中国の出方を注視すると強調。新型コロナウイルス対応などでは協力を続ける姿勢を示しつつ、「主張すべきことは主張していく」と語った。習氏の来日に関しては「状況全体を見ながら日中間で意思疎通を続けたい」と述べるにとどめた。このように、習氏の訪日計画がひと頃よりも熱が冷めていることは事実だ。
自民党の石破茂元幹事長は3日、日本経済新聞社主催の「日経バーチャル・グローバルフォーラム」でオンライン講演した。中国が「香港国家安全維持法」を施行したのを念頭に「中国は物事の考え方の基本が大きく違っている」と批判した。
石破氏は、「中国も豊かになれば民主的な国になるのではないかといわれていたが全然そうではなかった。香港への対応をみてもそうだ」と語った。1989年の天安門事件後、日本が早い段階で経済制裁を解除したのが「今日の状況を招いた」と指摘した。南シナ海などでの中国の動きについて「きちんと認めないと言う力を持たねばならない」と述べ、日米で連携して対応する必要性を強調した。「領土や人権を守る覚悟と矜持(きょうじ)が必要だ」とも主張した。
(2)「中国外務省の趙立堅副報道局長は3日、自民党外交部会などがまとめた決議案について「彼らの反中ショーにはいかなる意味もない」と述べた。「あるとき以来、日本政府とは重大な(習氏訪日の)議題を検討していない」とも語った」
中国外交部報道官は、下線のように「あるとき以来、日本政府とは重大な(習氏訪日の)議題を検討していない」としている。「あるとき」とは、なにか。日中の意見対立が表面化したのであろう。現状は、「棚上げ」されたままになっている。となれば、そのままにしておけば良い。「時期を見て」という玉虫色にすれば、波風が立たないであろう。
中国側の立場から言えば、日中関係を対立状態の持込みたくない切羽詰まった事情にある。米中対立で「デカップリング」(分断)が起これば、中国は先進国との窓口を失うリスクと隣り合わせだ。香港国土安全法は、人権問題という欧米では絶対に妥協しないマターだけに、対立の根は深い。「ミニ天安門事件」という位置づけになろう。
中国は人権について、吹けば飛ぶような問題と誤解しているが、中国の死命を制しかねない重大事である。天安門事件に次いで2回目の問題だけに、深刻な後遺症となろう。その場合、天安門事件と同様に、日本を頼らざるを得なくなる。もはや、日本政界に「中国通」はいないし、仲介役になろうという政治家もゼロだ。中国は、日本の意向に関心を持たざるを得まい。