中国政府は、米中対立が長期にわたるとの想定で「緊縮経済ムード」を流している。食事の際に残飯を出すな。「大内循環経済」と称して鎖国経済への準備を始めよ、という暗い雰囲気を醸し出している。これは、国内の不満を事前に抑えようという政治的な狙いだ。
ここまで国民に耐乏生活を強いながら、世界共産革命を実現しようという「夢想」に酔っている。まさに「夏の夜の夢」である。共産主義に無関心、あるいは心酔していない政府高官は、国外脱出の機会を狙っている。地方では、当局が住民のパスポートを回収して保管するなど、脱出を阻止する動きがみられる。習近平思想を有り難がっている人々は、一握りしかいない。
ここへきて海外移住ダッシュが起っている背景には、「デジタル人民元」の実験開始がある。これが制度化されれば、個人の預金の動向は完全に当局に捕捉される。それ以前に中国を脱出して「網にかからない」工夫を始めているのだろう。
『大紀元』(8月28日付)は、「高官や富豪だけではない『低ランク人口』も海外へ、中国脱出ラッシュ広がる」と題する記事を掲載した。
(1)「米『ラジオ・フリー・アジア(RFA)8月26日付によると、中国人富豪の張さんは「海外移住、または外国のパスポートを取得した高官は数百人どころではない」と話した。「中国に訪れる危機を目にしているからだ」と指摘した。また、「この危機は、血迷っている当局の指導者の衝動によってもたらされた。これによって多くの人々は、数十年蓄積してきた財産と努力の成果を失うだろう。皆は、家族の健康と子どもの将来を犠牲にして、中国共産党の指導者の狂気に付き合うことができないからだ」と明快だ」
中国は古来、社会動乱についての嗅覚が働く民族である。2500年以上も、専制政治の下に暮らしてきただけに、独特の勘が働いているに違いない。
(2)「米に亡命し、サイパン島に住む孔園峰さんは、「中国当局の汚職官僚は海外逃亡の際、共産党体制の異見者を装い、党の機密文書を持ち出すことがある」と語った。孔さんによると、汚職官僚が、気功グループ、法輪功学習者に対する中国当局の弾圧政策の機密文書を持ち出し、亡命先の国の政府に提出すれば、亡命が認められる可能性が大きい。孔さんは、「500万元(約7762万円)を持つ官僚はベトナムやタイに行くが、5000万元(約7億7616万円)を持つ人はスペインやモルディブなどの国を目指している」と話した。中国黒龍江省の民間企業の元上級幹部は、中国国民の海外移住・亡命は大きな流れとなっていると指摘した。「中国の富豪にせよ、当局の高官にせよ、中国にいれば希望を見出せないと同時に、大きなリスクが伴うからだ」と」
資産が500万元の人は、ベトナムやタイなどの近隣国へ脱出。5000万元の富裕層はスペインやモルディブという。こうして、故国を簡単に捨てる人々の存在に戸惑うばかりだ。
(3)「中国当局によると、「低端人口(低収入や低学歴などの低ランクの人々)」と軽蔑された一般の市民も、手を尽くして中国からの脱出を図っている。広東省出身の女性市民、孫さんはRFAの取材に対して、「今後、鎖国になるのではないかと心配していた。国内経済情勢が悪く、多くの若者が失業した。(中国という国は、今)船に大量の水が入り込んでいる状態だ。もう中国に帰りたくない。中国の見通しは暗い。国民はもう安穏に暮らせなくなっている」と話した。40代後半の孫さんと息子2人は7月、欧州東南部のバルカン半島に位置する国に入国した。国の名前は明らかにしなかった」
米中貿易戦争で、中国経済の末端はかなりの混乱を招いている。その上、米中デカップリングが本格化すれば、中国経済の混乱はさらに激しくなる。「低端人口」の人々には、海外へ出るしか生きる道はないのだろう。
(4)「孫さんによると、国内の生活環境が「劣悪」で、抜け出したい市民が多くいる。「500万~600万元以上の資産を持つ知り合いの中間層は昨年、移民ビザを取得し、いつでも海外に行けるように準備していた」。孫さんは、「今の中国では、金持ちも貧乏人も、皆が中国共産党政権に『遅かれ早かれ搾取される』と危機感を持っている。金持ちは、『ファイブ・アイズ』(注:米・英・豪・カナダ・ニュージーランド)の各国に行く。中間層の人は(欧州の)シェンゲン圏(注:渡航者がEU圏内に入域、または圏外へ出域する場合には国境検査を受けるが、圏内で国境を越えるさいには検査を受けないことになっている)の各国に移民するのだ」
中国共産党に愛想を尽かす人々が増えている。金持ちは、「ファイブ・アイズ」へ、中間層は欧州のシェンゲン圏へ移住するという。
(5)「中国当局は、国民の海外移民ラッシュを取り締まるため、近年、公務員や国有企業の幹部らに対して、パスポートを勤務先に上納するよう要求している。昨年10月以降、一部の地方政府は、公立学校の教師および定年退職者のパスポートを没収した。また、当局はパスポート没収の対象をさらに拡大している。中国紙『新京報』8月9日付によれば、北京市平谷区当局は、管轄下の各村の党委員会や居民委員会の幹部のパスポートを取り上げた。パスポートを申請中の幹部に対して、審査基準をさらに厳しくするという。湖南省のある一人の村党委員会幹部はRFAの取材に対して、8月に上層部が、今後、個人のパスポートを預かるという通知を受け取ったと話した。「全国統一で行われている」という」
当局は、海外移住を食い止めるためにパスポートを取り上げている。ここまで来ると、海外移住が、相当に目立ってきたのであろう。今後、個人のパスポートを預かる動きが、「全国統一で行われる」と指摘している。海外旅行も影響を受けよう。中国人の「爆買い」は消える運命かも知れない。これで、経常収支の赤字化を防ぐという「プラス」が期待できるからだ。
(6)「中国当局は現在、国民1人当たりの外貨両替を年間5万ドル(約534万円)までと厳しく規制している。しかし、仮想通貨調査会社のChainalysisの最新研究によると、過去12カ月で約500億ドル(約5兆3395億円)の暗号化通貨の資産が中国から海外に送金された。中国では、当局の為替規制を回避している投資家が多くいることがわかった」
仮想通貨を使って、「年間5万ドル」という規制を軽々と超える裏技が広がっている。あの手この手を使って、個人の「資産防衛」が行なわれている。「上に政策あれば、下に対策あり」が、中国の伝統である。共産党を崇め奉っているのは表だけ。裏にまわれば、舌を出している民族なのだ。




