中国は、香港への「国家安全法」を導入して中国化を完了した。次は、台湾への武力統一という見方が指摘され始めた。習近平国家主席の任期が2022年であり、3期目を目指すには「台湾攻略」が業績とされるのでないか、というものだ。
米台は、そういう中国側の政治情勢を睨みつつ、中国に付け入る隙を与えないように、関係密接化を急いでいる。米台のFTA(自由貿易協定)締結への動き。それと、台湾によるF16戦闘機の大量購入と整備拠点を開設することが決まった。これで、台湾空軍の戦力向上をはかり、中台間の空軍バランスの均衡化を実現する可能性が高まった。
『日本経済新聞 電子版』(8月28日付)は、「台湾、米からの牛豚肉輸入を全面解禁、FTAにらむ」と題する記事を掲載した。
台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は28日夕、台北市内で会見し、米国との自由貿易協定(FTA)締結に向け、最大の障壁とされる米国産牛肉と豚肉の輸入を全面的に解禁すると発表した。解禁は2021年1月1日付。米台で今後、FTA交渉が始まる可能性が出てきた。
(1)「蔡総統は、米とのFTA交渉を2期目の最優先課題の一つに挙げている。会見では「長年の懸案に決着を付ける。台米関係は今、この数十年間で最も良い状態にある」としたうえで、「歴史的なターニングポイントであり、このチャンスを我々は必ずつかまなければならない」と語った。牛肉については従来、BSE(牛海綿状脳症)を理由に生後30カ月以下の牛肉に限定し、米国産の輸入を認めていた。こうした制限を今後、撤廃する」
米台のFTAで最大の障害は、牛豚肉の輸入制限問題であった。台湾が先ず、この障害を取り除く決定をしたのでFTA実現の可能性が強まってきた。
(2)「豚肉については従来、成長促進剤のラクトパミンの使用を根拠に輸入を厳しく制限してきた。米国は科学的根拠に基づいていないと反発し、認識に隔たりがあったが、この点でも台湾が譲歩する。今後はラクトパミンの残留基準を設け、輸入を大幅に認める。台湾が世界貿易機関(WTO)に加盟した02年以降、米台は何度も関税撤廃などで協議を続けたが、ぎくしゃくした。07年にはBSEを巡る米国産牛肉の輸入で関係が悪化し、その後、協議は長く中断した。さらに馬英九前政権時代の09年にも、米国産牛肉輸入の大幅な解禁をほぼ決め、米国側と協議がまとまりかけたが、国内で与野党から猛反発を受け頓挫した」
台湾がWTOに加盟した02年以降、米台は何度も関税撤廃などで協議を続けたが、ぎくしゃくして結論に達しなかった。今回、FTAがまとまれば18年ぶりの交渉妥結となる。
(3)「蔡総統は、米国との交渉入りにはまだ道のりがあるとしながらも、「豚肉と牛肉問題で一歩を踏み出せれば、それは重要なスタートとなる」と期待を寄せた。ただ、FTA交渉が始まれば、中国大陸と台湾は一つの国に属するという「一つの中国」を唱える中国の反発は必至だ」
米台間のFTA交渉は、「一つの中国」論を巡る米中の対立に発展しかねない問題を抱えている。原則論で言えば、台湾は中国の一部とされている。その台湾と米国が協定を結べないという理屈になる。ただ、これまで米台は、いくつかの協定を結んできた実績がある。それゆえ、それを根拠に中国の抗議に対応するのであろう。
中国の抗議には、軍事的な威嚇を含んでいる。台湾は、これについても米国製のF16戦闘機の大量購入と整備拠点開設で威嚇をはね返す。
『日本経済新聞 電子版』(8月28日付)は、「『強固な防衛力が必要』台湾・蔡総統、軍事産業育成へ」と題する記事を掲載した。
台湾の蔡英文総統は28日、域内初となるF16戦闘機の整備センターの設立式典に出席し「地域の平和と安定を守るには、こびへつらうような弱腰ではなく、強固な防衛力が必要だ」と述べた。軍事産業の育成を通じ、軍事力を一段と強化する必要性を強調した。
(4)「南シナ海などを巡り米中対立が深まるなか、台湾の危機感が強まっている。同センターは今後、台湾の軍事関連企業が米国と協力して軍事産業の育成を急ぐ、中心的な役割を果たす拠点になるという。米国がこのほど、F16戦闘機の新型66機を台湾へ売却することを正式決定したのを受け、台湾は域内初のF16整備センターの開設準備を進めてきた」
米台は、南シナ海の抱える潜在的な軍事危機にも対応できるように、台湾でのF16整備センターの開設準備を行なってきた。
(5)「台湾軍は現在、F16戦闘機を約140機保有する。これに加え、今後、米国から購入するF16の新型66機には総額2472億台湾ドル(約8900億円)が費やされ、2026年までに全機が納入される予定。空軍の力が大幅に高まるとされる。一方、200機以上のF16を抱えることになり、従来の整備体制では限界もあった。例えば、保守対象の部品を、F16の製造元の米ロッキード・マーチンに何度も輸送する必要などがあった。今後、同センターが台湾で軌道に乗れば、その必要は無くなり、蔡総統は「(台湾のF16)戦闘機のメンテナンス時間が大幅に短縮する。国防最前線において、空軍の戦闘優位性が確保できるようになる」と期待を寄せた」
台湾は、F16が200機以上の保有になる26年までに、地元でメンテナンスを行う体制を整える。これによって、空軍の機動力が増すことになる。
(6)「蔡総統は5月にスタートした2期目の演説で、公約に「6大核心戦略産業」の育成を掲げた。そのうちの一つが軍事産業だ。トランプ米政権は中国の脅威にさらされる台湾への武器売却を増やしているが、台湾は自前による軍事産業の育成を通じた軍事力の強化の必要性も感じている」
台湾は、軍事産業の育成も行い軍事力の強化を急ぐ。対岸では、習近平国家主席が、自らの政治的欲望達成のために、台湾解放を謳っている。米台は、その備えを強化せざるを得ないのだ。





