勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年08月

    ポールオブビューティー
       

    中国は、転んでもただで起きない逞しさを見せている。新型コロナウイルスでは、「マスク外交」を展開して、中国がいち早くコロナからの回復をアピールした。だが、粗雑なマスクを贈ってひんしゅくを買う場面も多かった。これに懲りず、今度は、「ワクチン外交」を始めた。最終治験を終わる前から、各国へ供給約束をし始めたのだ。これまでの約束を合計すると、生産能力をはるかに上回って35億人にもなるという。すでに、「ワクチン空手形」が話題に上っている。

     

    『中央日報』(8月27日付)は、「ワクチン提供する、と世界に『空手形』飛ばす中国、生産能力は大きく不足」と題する記事を掲載した。

     

    中国が「マスク外交」に続き「ワクチン外交」でも物議を醸している。中国は新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大した2月から各国にマスクと防護服など医療物資を送る「マスク外交」を積極的に展開した。

    中国の「善意」にもかかわらず、この「マスク外交」は中国の医療製品の品質問題と、受恵国が中国に感謝を表明しなければならない負担感などが指摘され、むしろ中国に対する反感を育てる逆効果を生んだ。最近では中国が指導者を中心に各国に優先的にコロナワクチンを提供するという「ワクチン外交」を活発に展開している。だがこれが果たして中国の意図通りにできるのか疑問との指摘が出ている。

     

    (1)「中国の李克強首相は24日に開かれた「瀾滄江・メコン川協力」第3回首脳テレビ会議で「中国がコロナワクチン開発を完成させ使うことになればメコン川流域諸国に優先的に提供するだろう」と宣言した。李首相はまた、中国主導で公衆保健専門基金を設立し、メコン川流域諸国に防疫物資と技術支援をすることとも約束した。これによると今後中国が約束を守る場合、恩恵を受けることになる国はカンボジア、タイ、ミャンマー、ラオス、ベトナムの5カ国に達する」

     

    中国首脳は、海外で「挨拶代わり」にコロナワクチンの供給を約束して歩いている。優越気分に浸って、「お大尽様」になっているようだ。

     

    (2)「香港紙『明報』は26日に、中国指導者によるワクチン提供の約束は李首相が初めてではないと報じた。6月には習近平国家主席が中国・アフリカ防疫団結テレビ会議で「中国がワクチンを開発すればアフリカ諸国に率先して恩恵が行くようにする」と話した。中国のワクチン提供の約束はこれだけではない。中国の同盟国であるパキスタンには早くから4000万回分のワクチンを供給すると確約した。また、王愚駐アフガニスタン中国大使は今月中旬にアフガニスタンのメディアに中国でワクチンが開発されればアフガニスタンにまず提供するとの意向を明らかにした」

     

    習近平氏は、6月アフリカ諸国へのワクチン供給を確約した。

     

    (3)「王毅国務委員兼外交部長は、7月に開催された中国、アフガニスタン、ネパール、パキスタン4カ国外相テレビ会議で会議参加国に対して、中国のワクチンが容易に提供されるようにすると話した。またフィリピンのドゥテルテ大統領は米中対立状況で米国に軍事基地を提供しないと発表した後、中国のワクチンがフィリピンに供給されることを望むとの意向を明らかにしており、これは中国の肯定的な反応を得てもいる。中国はこのほかにも中国のワクチン開発会社が第3相臨床試験を進めている国に対してもワクチンを優先提供しないわけにはいかない立場だ」。

     

    王毅外相も負けない。アフガニスタン、ネパール、パキスタンの近隣国へワクチン供給を約束している。フィリピンでは、ワクチン欲しさに米軍との間に距離を置くとまで言い出す始末。ここまで、相手国をその気にさせてしまい、「実は、供給できません」と言えば、大変な外交問題になろう。中国は、そういう「空手形」になったときの反動を計算していないのだ。

     


    (4)「『明報』は、このように中国がワクチン優先提供を約束している国の人口を、概算でアフリカが12億人、メコン川流域5カ国が2億6000万人、ブラジルとパキスタンが2億人、ここにメキシコとフィリピンなどの人口を加えると20億人に達するとした。そして中国の人口14億人を加えると中国がワクチンを優先的に提供しなくてはならない人口は35億人となり、世界の人口75億人のほぼ半分を占める。しかし中国のワクチン生産能力はせいぜい来年まで4億回分程度で極めて不足した状況になるという話」だ。中国が、ワクチンの独自開発が難しい国に「ワクチン優先提供」という空手形を飛ばしているのではないかとの指摘が出ている」

     

    中国は、自国人口14億人を加えると、ワクチンを優先的に提供しなくてはならない人口が35億人となる。実に、世界人口75億人のほぼ半分を占める計算だ。どう見ても、実現不可能である。「空手形」は必至である。その時、どう弁解する?

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    インド政府は、中国製アプリの全面禁止に続いて、ファーウェイの「5G」導入禁止を国内通信会社に通知したとの報道が出ている。中国軍が6月15日夜、ヒマラヤ山中の中印国境でインド軍を急襲し、20名のインド兵を殺害した。その後、インド政府は中国に対して経済的報復処置が続いている。今回のファーウェイの「5G」禁止もその一環だ。

     

    ファーウェイは、「5G」の世界敷設をめざして活発な営業活動を行っている。だが、バックドアとスパイウエアが仕組まれているとして、米国が同盟国・友好国へ導入しないように呼びかけている。日本もファーウェイ導入を見送る姿勢を明らかにしているが、インドもこれに同調することになった。ヒマラヤ山中での中国軍急襲事件からも頷ける処置である。

     

    『大紀元』(8月26日付)は、「インド、5G導入からファーウェイを排除、印通信会社の幹部 政府通達=報道」と題する記事を掲載した。

     

    インド政府内部では第5世代(5G)通信網の導入計画から、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)を排除する動きに出ている。印通信会社の幹部が匿名で英紙に語った。同国の通信会社は政府関係部門から「ファーウェイをはじめとする中国企業の通信機器を採用しないよう」通知しているという。

     

    (1)「英『フィナンシャル・タイムズ紙』はインド政府関係者の話として、「インド政府は北京当局の神経を逆なでしたくないため、ファーウェイをはじめとする中国機器サプライヤーの禁止を公に発表する可能性は低いが、機密事業に関する中国企業からの投資を懸念している」「当局は大規模な政府契約や重要なインフラを含むプロジェクトは、中国以外の企業を選ぶ傾向がある」と伝えた。また同紙は、匿名の印通信会社の幹部が「インド政府が中国の通信機器の採用を認めないのはほぼ周知の事実だ。(中国にとって)ゲームオーバーだ」「すでにインド政府は5Gの試験で中国のファーウェイやZTEなどを使う事を禁じている」と明らかにした」

     

    ヒマラヤ山中での中国軍急襲事件は、インド国内に大きな衝撃を与えた。インド政府は、窮地に立たされており、国民感情からも中国製品の受入は困難になっている。ファーウェイの「5G」導入禁止もその流れである。

     

    (2)「インドは85千万人のユーザーを抱える世界第2位のモバイル通信市場だ。ファーウェイは当初、同国の3大主要通信機器サプライヤーの1つだった。インドの通信会社バーティ・エアテル、ボーダフォン、国営通信企業のバーラト・サンチャル・ニガムと契約を結んでいた。国内報道は8月中旬、バーティ・エアテルは5G建設計画からファーウェイとZTEを除外し、代わりにフィンランドのノキアやスウェーデンのエリクソンと組む計画に変更することを決定したと報じた」

     

    中国が、インド市場を失うことは大きな痛手だ。IT部門は、中国の誇る数少ない分野の一つである。今後の世界的発展がもっとも期待される分野で、「インド・オフリミット」になるのは、米国に一層の優位性を与えることになった。米中にとって、インド市場を手中にできるか否かは、世界戦略上で大きく響く。

     

    (3)「7月末、インド紙『エコノミック・タイムズ』は、情報筋の話として、ファーウェイの2020年のインドでの収益目標は当初の7億〜8億ドルが3.5億〜5億ドルへと50%削減しており、「インドの大手通信事業者の一部はファーウェイに新規発注しなくなった」と報じた。米連邦通信委員会(FCC)は7月初めに、ファーウェイとZTEの両社は中国軍部と密接なつながりがあり、米国の通信ネットワークと5Gの未来に対する国家安全保障上の脅威として指定した」

     

    ファーウェイは、すでに他の製品でもインド市場から閉出されている結果、インドでの収益目標を下方修正している。50%もの低下だ。インド人口で中国に次ぎ2位であり、27年にはインドが世界一に踊り出る。その市場を失うのは痛手であろう。

     

    (4)「これまでのところ、米国によるファーウェイ制裁措置の発表を受けて、英国、フランス、スロベニアもファーウェイの将来的な完全排除を決定した。ポーランド、チェコ、デンマーク、オランダ、ノルウェー、ポルトガルなども、ファーウェイを部分的に禁止することを決定した」

     

    欧州では、「脱ファーウェイ」の動きが広がっている。ただ、ドイツだけはこれまでの対中国輸出で深い関係にあるので、ドイツテレコムは、「ファーウェイ5G導入」の旗を降ろしていない。ただ、米国がファーウェイに対して、迂回輸出を含め全面輸出禁止措置に出たので、ファーウェイの「5G」事業は早晩、行き詰まると見られている。

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     メディアもトランプ批判集中

    選挙マジックを発揮の共和党

    トランプは白人労働者に焦点

    中国排除が最大のエポックへ

     

    11月3日は、米国大統領選の日である。共和党候補はトランプ大統領が、民主党候補は前副大統領のバイデン氏で、それぞれ党大会で正式決定した。これまでの世論調査では、バイデン氏がトランプ氏を7~8ポイント差でリードしている。2016年大統領選でも、この時期でトランプ氏は同程度のリードを許していた。前回と同じ状況である。

     

    メディアもトランプ批判集中

    現職大統領のトランプ氏が、これだけの差をつけられているのは、ひとえにトランプ氏の「品格」に問題あり、とされている。親族からは暴露本を出版され、実姉は「信用できない」とまで酷評している。片や、バイデン氏は「人柄」で売っている。「調整型政治家」と言われるのは、他人の意見をよく聞いて、一本にまとめる手腕が評価されているのだ。人格比較では、トランプ氏の敗北は明白である。

     

    米国の言論監視機関「Media Research Center」のプロジェクトである「NewsBusters」は、61日から7月31日までのABC、CBS、NBCによる夕方のニュースを分析した。その結果、トランプ氏に関する報道時間は512分で、バイデン氏の58分の9倍であった。トランプ報道は、ほとんど批判に集中。バイデン批判に比べ、件数で150倍もあったという。『大紀元』(8月22日付)が伝えた。これを見ても「トランプ不利」が明白になっている。

     

    中国には、「隠れトランプ派」が存在する。大統領選にむろん無関係だが、トランプ氏の力量を評価しているのだ。

     

    劉蘇里氏は、数少ない著名な共産党支配批判勢力の1人であり、1989年の天安門広場の抗議行動にも参加したベテランの反体制派だ。反体制派や学者が集まる北京の民営書店のオーナーでもある劉氏は、トランプ氏が「米国を建国時の理想に立ち戻らせる」役割を果たしたと指摘する。

     

    劉氏は当初、トランプ氏のふるまいを不快に思ったが、2016年に米国を訪問し、サウスカロライナ州で行われた共和党の予備選候補による討論会でトランプ氏を見たときに、気持ちが変化し始めたと話す。トランプ氏が「ポリティカル・コレクトネス(政治的妥当性を極端に重視する態度)」に異議を唱えようと、自らの政策や意向を明確かつ簡潔に表現していたことに感銘を受けたという。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月7日付)が報じた。

     

    米国でメディアに登場するニュースや世論調査結果を見れば、トランプ氏に勝ち目はなさそうである。

     

    元米共和党議員20人超が8月24日、大統領選でトランプ大統領を支持せず、野党民主党候補のバイデン前副大統領を支持する方針を表明した。バイデン陣営の声明によると、27人はトランプ大統領の「汚職や民主主義の破壊、あからさまな良識の軽視」と「米国を軌道に戻すという急務」をバイデン氏支持の理由とした。

     

    また先週には、ヘイデン元中央情報局(CIA)長官、唯一CIA長官と連邦捜査局(FBI)長官を歴任したウェブスター氏、ネグロポンテ元国家情報長官など、歴代の共和党政権で安全保障関連高官を務めた73人が、バイデン氏支持を表明した。『ニューズウィーク 日本語版』(8月25日付)が伝えた。

     

    身内であるべき共和党元議員や、歴代の共和党政権で安全保障関連高官を努めた人たちが、一斉に反トランプとなりバイデン支持にまわっている。この原因は、すべてトランプ氏の身から出たサビであろう。親族からさえ、厳しく批判されているトランプ氏である。他人になれば一層、その人間性に我慢ならないのだろう。

     

    選挙マジックを発揮の共和党

    それでは、トランプ氏の敗北は不可避であろうか。そこが、選挙の持つマジック性である。前回の大統領選でも世論調査結果で見れば、「トランプ敗北」必至であった。それが蓋を開けたら総投票数では、300万票引き離されたが、各州の選挙人獲得数では逆転した。この裏には、共和党独特の選挙運動があったという。「隠れトランプ支持者」を投票所まで足を運ばせる動機付を行っていたのだ。この部分は、メディアによる世論調査に現れなかったのである。

     

    共和党独自の世論調査では、11月3日の投票日の朝、「トランプ当選」の結果が出ていた。それは、前記の「隠れトランプ支持者」を投票所まで行かせることで確信を得ていたのであろう。戸別訪問のようなありきたりの戦術ではなかったのだ。(つづく)

     

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    中国は頻りと虚勢を張っている。デジタル人民元の試験的発行をPRしているからだ。デジタル人民元が将来、米ドルのように国際決済において広範囲に使用可能通貨になるというのだ。その可能性はあるのか。人民元の国際化も制限されている段階で、デジタル人民元が米ドルのようになれるはずがないのだ。

     

    『大紀元』(8月26日付)は、「デジタル人民元導入、米中金融デカップリングへの備え」と題する記事を掲載した。

     

    中国当局は8月14日、北京市や天津市、河北省、上海を含む長江デルタ地域、広東省深セン市や香港、マカオなどの大都市圏を中心に、デジタル人民元の試験範囲を拡大すると発表した。専門家は、中国当局は米中対立の激化で、ドル決済システムに除外されることを念頭に、デジタル人民元の導入を急いでいるとの見解を示した。

     

    (1)「中国当局のシンクタンク、中国社会科学院の余永定氏は8月13日、ロイター通信に対し、国際銀行間通信協会(SWIFT)のドル決済システムから排除されるなど、米中の完全なデカップリング(切り離し)は不可能ではないと語り、「それに備えなければならない」とした。同氏は、「大半の中国企業は、米ドルの使用が制限され、SWIFTや米国クリアリングハウス銀行間支払システム(CHIPS)から排除されるなど、様々なサービスを受けられなくなるという制裁措置に耐えられない」と述べた。余氏は、中国人民銀行(中央銀行)貨幣政策委員会の元委員だった」

     

    中国は、米ドル決済から排除されることをもっとも恐れている。習近平氏は、米中貿易戦争当初、「米国と最後まで戦う」と大言壮語したが、もはやそんなことを言える元気はなくなった。太平洋戦争で言えば、日本の「ミッドウエー海戦敗北」と同じ局面に来ている。

     


    (2)「一方、中国国家外為管理局国際収支司の元司長で、中銀証券チーフエコノミストである管涛氏はロイター通信に対して、「われわれは心の準備をしなければならない。米国が中国をドル決算システムから追い出す可能性がある」と話した。余氏らの中国人金融学専門家は、人民元国際化を一段と加速する必要があるとした。中国メディアによると、上海交通大学の胡捷教授はこのほど、人民元国際化の推進具合を検証する指標が2つあるとした。一つ目は国際貿易総取引量の中の人民元による貿易取引量だ。もう一つは各国の外貨準備の通貨別構成に占める人民元の割合だ。現在それぞれの割合は2.2%と2%だ」

     

    人民元の国際的な位置は2%見当。米ドルの60%台から言えば、取るに足らないウエイトである。この状況で、「米国と最後まで戦う」とは笑い話である。2%の人民元が、どうやって60%台の米ドルと戦うのか。戦略などあるはずがない。

     

    (3)「経済学者の呉嘉隆氏は大紀元の取材に応じ、人民元を使った国際貿易取引量が非常に少ないとの見方を示した。現状では、決済に使われている通貨の中で、人民元は、ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、スイスフランなどに次いでいる。過去十数年来、人民元国際化の大きな進展はない。同氏は、「この状況下で、中国当局はデジタル人民元を通して、ドル決済システムを迂回すると吹聴しているが、実際にできないことだ」と指摘した。呉氏は「通貨機能の面では、デジタル人民元を発行しても、他の国と取引できない可能性がある。最終的にイラン、北朝鮮、ベネズエラなど一部の国としか取引できない」とした」

     

    中国政府は、人民元を貿易決済で使用するように呼びかけている。原油の輸入では、すでに始まっているが、貿易では輸入先の力が大きいもの。「殿様商売」でもしない限り、人民元に切換えさせることは困難であろう。「最終的にイラン、北朝鮮、ベネズエラなど一部の国としか取引できない」と象徴的な話をしている。

     


    (4)「中国当局は、ブロックチェーン技術(分散型台帳技術)に基づくデジタル人民元の導入で、ドル決済システムからの脱却を図っている。一部では、中国IT大手のテンセント傘下の電子決済サービス、ウィーチャット(WeChat)ペイのように、中国人観光客や海外にいる中国人住民が、デジタル人民元を利用するようになると期待する。トランプ米大統領は8月上旬に、ウィーチャットの使用を禁止する大統領令に署名した。呉嘉隆氏は、「ウィーチャットペイが米金融当局の監督管理を受けておらず、米国への納税を回避していることが、米政府がウィーチャットの使用を禁止した主因であろう」とした。同氏によると、今後、同じく中国系電子マネーであるアリペイも米国で使用禁止される可能性が高く、「デジタル人民元が米国でさらに使いにくくなる」という」

     

    中国アプリは、個人情報漏洩リスクからすでにインドが全面禁止にした。米国もその方向で検討を進めている。米印二ヶ国が、中国系電子マネーを排除すれば、デジタル人民元など、海外では幻で終わる。すべて、中国の強硬外交のしわ寄せである。


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    文大統領は、退任まで2年を切った現在、退任後の自らの身辺に焦りがあるようだ。かつての部下で、司法関係を固めており、絶対にボロを出すまいという執念さえ感じさせるほどである。次期政権が保守派になれば、文大統領が行なってきた「積弊一掃」は、保守派で行われても文句を言う筋でなくなる。文「元大統領」は、司直の追及に合うはず。その種を自ら蒔いただけに、引退後が恐ろしくなるのだろう。

     

    『朝鮮日報』(8月26日付)は、「文在寅チルドレン」が司法機関を完全掌握、恐れるものがそれほど多いのか」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「政権発足から4年目を迎えた文在寅(ムン・ジェイン)大統領が司法機関の要職とトップの座を盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の青瓦台出身者で埋め尽くした。

    李盛潤(イ・ソンユン)ソウル中央地検長、

    趙南寛(チョ・ナムグァン)大検察庁次長検事は盧武鉉政権の青瓦台特別監察班出身で、文在寅・民情首席秘書官(当時)の下で働いた

    金昌竜(キム・チャンリョン)警察庁長は治安秘書官室

    金大智(キム・デジ)国税庁長は民情首席秘書官室の行政官

    金宗浩(キム・ジョンホ)青瓦台民情首席秘書官は国政状況室の行政官

    李錫兌(イ・ソクテ)憲法裁判官

    金善洙(キム・ソンス)大法官も民情首席秘書官室の秘書官

    文大統領が当時青瓦台で共に勤務した人々ばかりを選んで登用した格好だ。大統領が自分と縁がある人物で司法機関全体をこれほど埋め尽くした例はほとんどない」

     

    一見、「正直人間」に見える文大統領だが、どうしてどうして、身辺の警戒はもの凄い。自分の、あるいは与党の醜聞を絶対に捜査させないという姿勢を、この人事配置は示している。文氏は、仮に自分の任期中は捜査を避けられても、いずれ保守党政権が行うだろう。その時、文氏は法廷に立たされることになるのか。臭いものに蓋をしてはならない。

     


    (2)「『文在寅チルドレン』勢力が司法機関を掌握したことで何が起きたか。大統領の「30年来の友人」である与党候補を蔚山市長に当選させるため、青瓦台が繰り広げた選挙工作に対する捜査は大統領の前でストップした。兆ウォン単位の金融詐欺被害が出たファンドの事件では与党議員や青瓦台職員の関与が明るみに出たが、捜査は遅々として進んでいない」

     

    (3)「尹美香(ユン・ミヒャン)議員の正義記憶連帯(正義連)会計不正や秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官の息子の軍休暇未復帰事件も同様だ。朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長がわいせつ行為の疑いで告訴された事実が漏れた事件については、捜査が露骨に押さえつけられている。呉巨敦(オ・ゴドン)前釜山市長は強制わいせつ容疑を除き、残る容疑は嫌疑なしで処理されようとしている」

     

    文大統領は、弁護士出身である。国民は法の前に平等という精神から言えば、文氏のやっている「身辺強化」は、法の精神に反することだ。弁護士の文大統領が、それをやっていることが、絶望的な感じを抱かせるのである。

     

    (4)「文大統領の娘、娘婿と関連があるイースター航空の創業者、李相稷(イ・サンジク)氏の疑惑も覆い隠そうとした。検察に布陣された大統領系の人物が検察総長を「植物総長」に仕立て上げ、全ての事柄で率先している。検察を大統領の忠犬にした格好だ」

     

    文大統領の家族にも疑惑が噂される事態になっている。これも、前記の「文在寅チルドレン」が盾になって、捜査を阻止しているのだろうか。

     


    (5)「警察は、政権の行動隊になった。国会を訪れた大統領に靴を投げて抗議した市民団体代表を拘束しようとしたが令状請求が棄却されると、その後の集会で警察に暴力を振るったとしてついには拘束した。大統領のご機嫌取りに乗り出したのではなかろうか」

     

    (6)「自分たちの人物を司法機関に布陣した大統領は、青瓦台内部の監察機関である特別監察班を4年も任命していない。違法でもそのまま押し通している。特別監察班がなければ、せめて民情首席秘書官室でも内部の監視をしっかりすべきだが、そのポストも大統領系の人物が占めている。現在の民情首席秘書官だけでなく、金照源(キム・ジョウォン)前首席秘書官も過去に青瓦台で文大統領の下にいた。現在青瓦台で内部監視とけん制は皆無だ。歴代でこういう青瓦台はなかった」

     

    文政権は、「新積弊」になってきたようである。青瓦台内部の監察機関である特別監察班は、4年も任命していないのだ。これほど、身内にはルーズな文氏である。しかし、「親日排除」となると、目の色を変えて取り組む。価値観の基準が、常人とは違うのだろう。 

     

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