韓国は、WTO(世界貿易機関)事務局長選で大差の敗北となった。ナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ候補が104ヶ国、韓国の兪明希(ユ・ミョンヒ)産業通商資源部通商交渉本部長が60ヶ国であった。ナイジェリア候補は、日本、EU(欧州連合)、中国、カナダ、豪州などが支持した。韓国候補は、米国のみが目立っている。
こういう支持国の顔ぶれから見ても、韓国が不利であることは明白である。このまま、次期WTO事務局長の正式就任を遅らせると、韓国が世界から批判され兼ねないという微妙な地位に立たされている。そこで、韓国が撤退すべきという意見が強まってきたという。
『朝鮮日報』(10月31日付)は、「WTO事務局長選、『美しい辞退』に苦心する韓国政府」と題する記事を掲載した。
ナイジェリア人候補の楽勝が予想されていた世界貿易機関(WTO)次期事務局長選挙で、兪明希韓国産業通商資源部通商交渉本部長を米国が支持すると宣言したことにより形勢が揺れ動く中、韓国政府は同氏の候補辞退案をめぐり苦心していることが30日、分かった。「途中下車」は適切でないとする青瓦台の意向が現実的に見て逆転困難な状況の中、結果に承服せずに選出手続きを遅延させることによる外交的負担が少なくないためだ。
(1)「30日現在、青瓦台・韓国産業通商資源部・韓国外交部などは、WTO事務局長選挙の形勢や加盟国の動向をリアルタイムで分析し、協議している。外交部関係者は同日、記者たちに「11月9日に行われる理事会の時に決定するというのが(WTO議長団の)計画なので、急がなければならない状況ではなさそうだ」と語った」
韓国政府は、いくら現地情報を分析しても支持国数で大差がついている以上、どうにもならないことを承知のはず。米国が、本心で韓国を支持しているとは思えないのだ。米国は、事前に西側諸国と「韓国支持」という打合せをしていないからだ。「突発的」に韓国支持と言い出しても、困るのは西側諸国である。この戸惑いと不満が、韓国に向けられることは不可避であろう。
(2)「青瓦台は29日に「まだ公式の手続きが残っている」として、WTO内部の協議状況をさらに見守るとの意向を示していた。米国の強力な支持を得ただけに、米大統領選挙後、兪明希氏に加盟国の支持が集まる可能性もあるとの判断が作用したとみられる。しかし、得票で大きくリードしているナイジェリア人候補を米国が異例にもヴィートー(拒否)したことをめぐり、「トランプ大統領はWTOを無力化しようと試みている」という国際社会の非難が高まりつつある。外交消息筋は「膠着(こうちゃく)状態が長期化すれば、成果のないまま韓国責任論だけが広がるかもしれない」と話す。このため、政府の一部では、来月3日の米大統領選挙後に米国側と協議した上で、なるべく早く退陣決定をしようという声もある」
韓国は負け戦である。これ以上の傷を負わないためにも、自ら「撤退意思」を示してWTO事務局長の正式決定を急ぐべきだろう。だが、韓国大統領府はこういう潔い決定をするか疑問も残る。対日外交に見られるように、横車を押す国であるからだ。万に一つでも可能性があれば、絶対に「撤退」しないという予想もできるのだ。
(3)「兪明希氏と競合しているナイジェリアのオコンジョイウェアラ氏は29日、ツイッターで「一時的な問題があっても、我々は予定されている次の段階に進むだろう」と勝利に自信を見せた」
ナイジェリア候補は、圧倒的多数の支持を得ている以上、ゆとりを持っているだろう。104ヶ国の支持が、自身を深めさせたに違いない。これは同時に、韓国に向けられる不満増幅の引き金にもなる。
『中央日報』(10月29日付)は、「英紙ガーディアン、米国『圧倒的支持受けるWTO事務局長候補を阻止』」と題する記事を掲載した。
(4)「英国『ガーディアン』紙は、「WTOは伝統に基づいて164カ国のすべてが候補者を承認した場合、事務局長を選出する」とし「WTOは11月9日の一般理事会で次期事務局長を承認する予定で、それまでコンセンサスを達成するために広範囲な活動を見せるだろう」と説明した。また「11月9日まで米国がオコンジョイウェアラ候補を支持しない場合は、WTOの25年の伝統を破り、規定に基づいて投票により次期事務局長を選出す可能性がある」との見方を示した」
米国が11月9日までに、オコンジョイウェアラ候補を支持しなければ、規定に基づく投票で次期事務局長を選出する可能性もある、と示唆している。韓国は、これまでに撤退しなければ、WTO事務局長選を混乱させた責任の一半を負わされる。
(5)「ただし、専門家の言葉を引用し、「米国の意思に反する次期事務局長が任命されれば、今後のWTOの活動に大きな制約が生じるだろう」と指摘した。また、
「ジョー・バイデン民主党候補の勝利が有力な米国の大統領選挙(11月3日)の結果によって米国の立場が変わる可能性もある」と分析した」
米大統領選の結果しだいでは、米国がナイジェリア候補に賛成する可能性も指摘している。