勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年10月

    a0960_008572_m
       

    韓国政治は屈折している。同じ歴史問題でも中国への批判は遠慮しがち。日本へは速射砲で反応してくる。この違いは何か。中国へは恐怖感が先立ち、言いたいことも言えない遺伝子が、過去3000年の歴史の中で生まれているのだろう。片や日本へは遠慮会釈なく非難の矢を放つ。儒教における日本は、化外(けがい:野蛮国)扱いである。韓国政治は、現実を無視して古代の価値観に縛られて日本を見ている。歴史観にいささかの進歩もなさそうだ。

     

    『中央日報』(10月26日付)は、「また中国の顔色伺い? 同じ歴史わい曲めぐり日本には『遺憾』、中国には『疎通』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府が韓国戦争(朝鮮戦争)の責任を米国に転嫁した中国に対して一歩遅れて「ローキー(low-key)」基調の立場を明らかにして問題になっている。



    (1)「韓国外交部は25日、中国の習近平国家主席が韓国戦争を米国帝国主義侵略に対抗した戦争だと規定したことについて「韓国戦争勃発など関連事案はすでに国際的に論争が終わった問題で、このような明らかな歴史的事実は変わり得ない」とし「韓国戦争が北朝鮮の南侵によって勃発したというのは否定することができない歴史的事実」と明らかにした。続いて「韓国政府は関連動向を鋭意注視していて、われわれの関心事案について中国側と必要な疎通と措置を取っている」と強調した」

    朝鮮戦争の勃発の過程は、旧ソ連の崩壊によって「秘密資料」が公開された結果、北朝鮮と中国が開戦責任を負うべきであることが明らかになっている。中国は開戦時に朝鮮人部隊を編成して、38度線を突破させた。こういう経緯から言えば、習近平国家主席が朝鮮戦争を米国帝国主義侵略に対抗した戦争だと規定したことは、大嘘というべきだ。

     

    (2)「習主席は今月23日、「抗米援朝参戦70周年記念式」で「米国政府は国際戦略と冷戦思考から出発し、韓国の内戦に武力干渉することを決めた」と演説した。米国から北朝鮮を守るために参戦が避けられなかったという中国の韓国戦争観がそのまま反映された発言だった。朝鮮戦争の責任を否定する中国の態度は新しいものではないが、中国最高指導者の口から直接出た発言だったため波紋を呼んだ。特に、習主席のこの日の行事出席は、2000年の江沢民元主席以来、20年ぶりのことだった」

     

    習近平氏は、「抗米援朝」(米国に対抗し北朝鮮を支援)という意味で、朝鮮戦争の責任を米国に押し付けようという魂胆である。これは、現在の中国が米国の圧力を受けて身動きできない状態に陥っていることへの意趣返しである。

     

    (3)「中国最高指導者のこのような歴史わい曲発言が出てくると、韓国内では直ちに批判世論が起きたが、政府は動かなかった。満一日が過ぎた24日夕方になってから立場を表明した。「また中国の顔色伺いをしているのではないか」という指摘が自然に出てきた。一歩遅れて発表された政府の反応も水準が低かった。抗議どころか遺憾表明もしないまま疎通を強調したのは、低姿勢とは何が違うのかということだ」

     

    韓国政府は、習近平氏による歴史を歪曲する発言に対し沈黙した。この無様な態度を、韓国メディアが批判している。醜いほど、中国に傾斜しているとしか言いようがない。

     

    (4)「一部では、「日本の指導者級が歴史わい曲をしてもこのような形で対応するだろうか」という批判まで出てきた。実際、今月17日、日本の閣僚や議会関係者らが靖国神社に供物を奉納した際、外交部は直ちに報道官の論評を出して「深刻な遺憾を表す」とし「韓日関係の未来志向の発展要求に応じるよう強力に促す」と明らかにした」

     

    韓国は、靖国神社問題まで干渉してくる。厳密に言えば、韓国は日本によって「戦場」になった訳でないから、「発言権」はないのだ。戦勝国気分で、日本を批判しているにすぎない。便乗組である。

     

    話は変わるが、福島原発処理水問題で政府として抗議しているのは韓国だけである。他国からは、そのような声が聞かれないのだ。韓国という国が、日本に対していかに越権行為をしているかを物語る事例である。

     

    (5)「今回の習主席の発言に関連し、政府の立場表明の方式も釈然としなかった。外交部は政府の立場を当局者名義の論評などを通して公開するのではなく、メディアの問い合わせに回答する形式を取った。それもせいぜい3行にすぎなかった。これは日本の靖国供物奉納に対して報道官名義の論評だけではなく、フェイスブックでコメントまで出しながら強力に対応したこととは対照的だ

     

    韓国政府は、対中国については腫れ物に触るような態度だ。日本には言いたい放題。こういう矛楯に気付かないとすれば、韓国進歩派の「いいからかげん」さを象徴している。まともに相手にならない政権である。

    a0960_008567_m
       

    WTO(世界貿易機関)次期事務局長選で、日本政府は韓国候補者を支持しないと決定した。目下、空席のWTO事務局長選は、最終候補者が二人に絞られている。韓国産業通商資源部の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長と、ナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ元財務相の二人だ。ともに女性候補である。候補者選定の調査は、27日まで行われる予定という。

     

    『共同』(10月25日付)は、「日本、韓国候補を不支持へ、WTO次期事務局長選」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本政府は、韓国とナイジェリアの2人に絞られた世界貿易機関(WTO)の次期事務局長選を巡り、韓国候補を支持せず、ナイジェリアの候補を推す方針を固めた。韓国は日本による輸出規制強化を不当としてWTOに提訴しており、韓国候補が当選した場合、紛争解決手続きの公平性に影響しかねないと判断したもようだ。複数の政府関係者が25日、明らかにした」

     

    韓国は、兪明希氏の当選を目指した猛運動中である。文大統領と康外交部長官は、電話で各国首脳へ攻勢を掛けている様子が報道されている。さすが、日本へは敷居が高いと見えて、電話攻勢を控えている。韓国が、WTO事務局長ポストに執念を見せているのは、今後の日本へ圧力を掛ける目的である。

     

    日本にとって、韓国は「天敵」になった。理由の如何を問わず、「憎い日本を叩く」ことが韓国の国是である。福島原発処理水問題もしかり。科学的根拠を無視して反対する韓国だ。

     

    (2)「近くWTO側に日本の立場を伝える。WTOは各加盟国にどちらを支持するか聞き取りし、11月上旬までに次期事務局長を選ぶ予定だ。最終候補は、韓国産業通商資源省の兪明希通商交渉本部長と、ナイジェリアのオコンジョイウェアラ元財務相である」。

     

    ナイジェリアのオコンジョイウェアラ元財務相は、政治経験が豊富である。電話一本で各国首脳と話せる立場だという。

     

    『聯合ニュース』(10月24日付)は、「WTO事務局長選、韓国がナイジェリア候補を猛追」と題する記事を掲載した。

     

    世界貿易機関(WTO)事務局長選を巡り、韓国政府が初の韓国人トップを誕生させるための努力を続けている。

    (3)「韓国政府は多少不利だった状況がやや改善したとみて、欧州連合(EU)など主な激戦地に対する支持要請を行っている。韓国外交部は23日、WTOが19日から164カ国・地域の加盟国を対象に事務局長選で最終の2人に残った産業通商資源部の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長とナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ元財務相のうち、どちらを支持するかについて最後の調査を行っていると伝えた。調査は27日まで行われる予定という」

     

    27日までに、各国の意向が判明する。

     


    (4)「投票権がないEUを除いた163カ国・地域中、82カ国・地域からの支持を得れば過半数を超える。オコンジョイウェアラ氏は16日に開いた記者会見で、79カ国・地域が自身を支持していると主張した。韓国外交部はアフリカの43カ国・地域の多くはオコンジョイウェアラ氏を支持し、アジア地域の国の多くは兪氏を支持するとみている。まだ支持する候補を示していないEUから支持を受けることが重要と考え、支持要請に注力している」

     

    オコンジョイウェアラ氏は79カ国・地域が自身を支持していると発言。韓国外交部はアフリカの43カ国・地域の多くはオコンジョイウェアラ氏を支持し、アジア地域の国の多くは兪氏を支持するとみている。82ヶ国の賛成があれば「当選」である。オコンジョイウェアラ氏は、すでに79ヶ国の支持を得たという。あと3ヶ国の支持があれば当選という圧倒的に有利な立場である。

     

    (5)「EUに加盟する27カ国は慣例で同じ候補を支持するため、1人の候補に27票が集まる可能性が高い。東欧諸国の場合は韓国企業による現地への投資で良好な関係にある国がある。だが、欧州諸国は植民地支配など歴史問題のため、アフリカと特殊な関係にあることは韓国が不利と言える。韓国外交部の当局者は記者団に対し、「韓国の候補はすべての地域で均等な支持を得ている」とし、「対外的に明らかにすることはできないが、アフリカでもかなり多くの国が韓国の候補を支持している」と伝えた」

     

    EUは、候補者を一人に絞って投票する。過去の欧州とアフリカの関係から、韓国は不利とされる。

     


    (6)「WTO事務局長選は加盟国による全会一致を必要とするため、過半数の支持を得ても、米国、中国、EUなど影響力の強い国や地域の反対がないことが重要となる。WTOは調査に基づき、11月7日までに加盟国による合意を目指す。一方が圧倒的な支持を得れば合意は難しくないものの、大差がない場合、全会一致までの過程が複雑で時間がかかる可能性もある。米国は11月3日に投開票される大統領選が変数になるが、韓国に友好的で、中国は立場を明らかにしていない。米中ほどの影響力はないものの、日本が反対する可能性もある。日本は水面下で韓国候補への不支持を広めているもようだ。当初韓国政府はナイジェリア候補の国際的な評価が高いことから、苦戦を予想しており、兪氏が最終の2人に残ったこと自体が期待以上の成果との評価もある」

     

    日本が、水面下で韓国候補への不支持を広めているという。感情的に言えば、「韓国候補者支持」とは言えない立場だ。反日の韓国が、こういうときだけ日本へ接近できるはずもあるまい。

     

    a0960_001649_m
       

    中国の海洋進出が活発化するとともに、アジアでの安全保障問題が議論を呼んでいる。中国は、どこの国を侵略するかという仮定に立って、米国が最も防衛価値のある国を調査した。それによると、日本が1位であり以下、豪州、韓国、台湾という順位になった。

     

    米国の有力シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)は対中国政策について、米国や日本、欧州のオピニオンリーダー840人あまりからの意見を集約化した。回答したオピニオンリーダーたちは、経済、安全保障、人権、民主主義、教育などさまざまな分野の専門家である。リーダーたちは、国際情勢およびアジア情勢の議論に影響力のある有識者でCSISが選んだ。米国内で440人、欧州とアジアで409人から回答を得た。8月3~31日まで実施され、日本からは59人が参加した。

     

    『大紀元』(10月25日付)は、「防衛価値が最も高いのは日本、中国の軍事脅威巡りー米CSISが各国有識者に調査」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「調査によると、400人あまりの米国のオピニオンリーダーたちは、中国の軍事的脅威から同盟国や友好国を守るためにかなりのリスクを冒す用意があると考えている。中国からの軍事脅威にさらされた同盟国を防衛する価値を10段階で評価した場合、米オピニオンリーダーの間では次のような結果が出た。日本(8.86点)が最も高い。次にオーストラリア (8.71点) 、韓国 (8.60点) 、台湾 (7.93点) 、そして南シナ海における同盟国・パートナー国 (7.12点) が続いた。また、アジアと欧州のオピニオンリーダーたちの74%は、中国と関係を損なっても、米国とのパートナー協力関係を優先にしたいと答えた」

     

    米国の有識者400人は、中国の軍事的脅威から同盟国を防衛する価値を10段階で示したところ、日本が(8.86点)で1位になった。後は、豪州・韓国・台湾の順位である。韓国は、米韓同盟がありながらガタガタしているのは、決して好結果を生まないということを示唆している。

     

    (2)「米中間で軍事衝突に発展する可能性は「あり得るが、低い」と考える割合は、米オピニオンリーダー(83%)、欧州・アジアのオピニオンリーダー(74%)、米世論(60%)といずれも6割以上だった。また、国家安全保障の専門家のうち、79%が太平洋での中国との紛争では、今は米国が勝利すると考えているが、10年後の場合、勝利の確信は54%まで減っている」

     

    米中の軍事紛争を予想するのが60%以上もあるのは要注意である。ただ、「79%が太平洋での中国との紛争では、今は米国が勝利すると考えているが、10年後の場合、勝利の確信は54%まで減る」のは、中国経済を過大評価している結果だ。そのようなことになる可能性は小さい。これが、私の一貫した見方だ。中国経済の構造的な弱点を知って欲しいと思う。きょう発行のメルマガ202号をぜひ一読していただきたい。

     

    (3)「中国の人権問題については、米国、欧州、アジアのオピニオンリーダー、そして米世論ともに人権問題への促進を重視するとの意見が7割を占める。彼らは、香港、チベット、新疆ウイグル自治区に関する人権問題を優先的に取り組むべきだと考えており、具体策として、中国政府に対する非難声明と関与者への経済制裁の組み合わせが適切だとした」

     

    中国の人権弾圧は、世界への挑戦である。放置してはならない問題だ。

     


    (4)「経済政策では、オピニオンリーダーのわずか14%が、米国は中国が自由市場経済になることを奨励すべきだと信じている。また、米国のリーダーの71%は、中国共産党政権で米国の経済的利益は損なわれたとみている。CSISの報告執筆者は、10年前と比較して、考え方が著しく変化したとみている。「米国および米国のリーダーたちは、もはや中国が自由市場経済に変わることがゴールだとはみていない」とCSISのスコット・ケネディ中国経済主席は香港英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』に語っている」

     

    自由世界の識者は、中国が市場経済へ戻ることはないと見ている。習近平という独裁者の出現が、中国社会の脆弱性を雄弁に物語っている。アジア型共産主義の最大欠陥であろう。

     

    (5)「中国人民解放軍と深い繋がりのある通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の第5世代移動通信システム(5G)の排除について、米国では71%、アジアと欧州のオピニオンリーダーの67%が支持を示した。さらに、半導体事業や部品の大手メーカーを持つ国の回答者である日本(85%)、台湾(82%)、韓国(76%)は、ファーウェイの5G市場への参入禁止に強く支持を示している」

     

    日本・台湾・韓国の有識者が、ファーウェイ排除に8割前後が賛成している。ファーウェイの危険性を認識している結果だ。

     


    (6)「欧州とアジアのリーダーは、中国経済とのデカップリングには消極的な数字を示しているが、米国が主導する5Gファーウェイ排除は支持する傾向にある。ファーウェイを禁止したいと考えるオピニオンリーダーのなかで、ハイテク企業を有する台湾(54%)と日本(44%)の回答者はより強硬な立場を示しており、中国のハイテク企業との取引禁止を支持している

     

    中国経済とのデカップリングに賛成する国は、台湾と日本で40~50%台に達している。日本はTTP(環太平洋経済連携協定)への期待が強いから、中国とのデカップリングを切望する比率を高めているのであろう。TPPは本来、中国排除の目的で結成されている。中国デカップリングそのものだ。


     

    a0960_006618_m
       


    中国経済の凋落3要件

    米国と張り合い傷深く

    転換困難な投資主導型

    豪州が成長率低下予測

     

    中国の7~9月期実質GDP成長率は、前年比4.9%増となり、伸び率は4~6月期の3.2%増から加速した。ただ、事前予想の5.3%増にはならなかった。それでも、パンデミック下における主要国の経済成長率としては、唯一のプラス成長を実現した。

     

    この結果、2008年のリーマンショック時と同様に、中国経済がパンデミック下で世界経済の牽引力になるという期待を持つ向きもいる。果たして、再び世界経済を引っ張る力はあるだろうか。

     

    中国経済の凋落3要件

    結論から先に言えば、世界経済を牽引する力はなくなっている。以下に、その理由を挙げる。

     

    1)中国経済の潜在成長率を形成する生産年齢人口比は、2010年がピークであった。生産年齢人口(15~59歳)は2010年まで上昇したが、それ以降に下落へ転じている。中国の生産年齢人口は、国際標準の15~64歳を5歳も下回る。これは、健康上と定年年齢60歳がもたらして変則的なものである。それだけ、中国は「労働力の質」が劣っていることを意味する。

     

    実は、中国の生産年齢人口が国際標準よりも5歳も少ない事実は、意外と知られていないのである。名だたる国際機関が、中国の潜在成長率を計算するのに、生産年齢の国際標準を用いて計算しているのだ。中国標準は国際標準より5歳も少ない事実から計算すると、生産年齢人口は、国際標準よりも約10%少なくなるはず。この点が、中国経済の将来予測を過大にさせている。

     


    2)米中対立が、抜き差しならぬものになっている。世界経済における米中デカップリング(分断)が、現実問題として登場してきたのだ。2008年のリーマンショック時、世界経済はグローバル経済で発展した。今後は、その「逆バージョン」となる。原因は、中国の対外進出とパンデミック襲来への警戒である。中国が、世界のサプライチェーンであることのリスクは、先進国にとって安全保障面と経済面で強く認識されてきたのである。

     

    中国にとっては、一夜にして世界の舞台が変わるほどの激変となろう。習近平国家主席は、あくまでも米国と対決する姿勢を取り続けている。その結果、「長征」(逃走)という毛沢東の選んだ苦難の道を、習近平氏も「新長征」として歩む決意を表明した。米国との対決を避けながら実力を蓄え、一気に米国を叩くという構想である。

     

    この夢のような話に国民を引入れ「隠忍生活」で我慢するというものだ。共産主義と無縁の13億余の中国国民にとっては、これほど迷惑な話はないはず。道連れにされるからだ。毛沢東の「長征」は、日本の敗戦という僥倖に助けられた。習氏の「新長征」には、そういう僥倖はないであろう。米国が経済や政治の面で自然に没落することはあり得ない。制度的に言えば、独裁政治は一夜にして崩壊する。民主主義政治はその前に、政権交代という新陳代謝が「延命」をもたらすのだ。

     

    3)中国の経済政策は、生産年齢人口比の低下、米中対立の長期化に伴う「新長征」で、内需主導経済に転換する。従来の輸出主導経済から内需主導経済へ転換すると発表している。14億人の人口を抱える中国の内需市場は、活性化すれば大いに発展の可能性があるように見える。だが、中国の内需市場は空洞化しているのだ。低所得層が、次のような比率を占めている。

     

    月収 500元(約8000円)以下  国民の7.5%

       1000元(約1万6000円)以下 23.5%

       2000元(約3万2000円)以下 50.7%

    (資料:『大紀元』10月22日付)

     

    中国国民の5割が、月収約3万2000円以下で生活している。しかも、国民健康保険制度がない国である。病気にかかったときの治療費の高さは、目が飛び出るほど。医師は、患者を診察前に「金はあるか」と聞く国である。共産主義の「平等・博愛」の欠片もない国なのだ。それでも、軍備拡張には金に糸目をつけず、天井知らずの膨張を続けている。この中国が、「内需転換経済」で成功するには、生活安全ネットの国民健康保険制度を完備する。軍備拡張費を社会保障費に回す。この2点が、早急に実現できなければ、絵に描いた餅となろう。(つづく)

     

    a0960_008417_m
       

    文在寅大統領は、韓国を極めて危険な方向へ導いている。米中対立の長期化という国際問題が起こっていながら、その方向性を見通す努力がゼロである。米中が対立すると、韓国からの中国向け輸出が減って困る、という程度の認識なのだ。混迷した事態の中で、韓国の安全保障をどうすべきか、という根本的な問いかけはない。

     

    豪州は、対中貿易比率がトップでも中国の経済報復に敢然と立ち向かっている。経済的問題は一時的だが、安全保障問題は永遠の問題である。豪州には、こういう認識があるから「インド太平洋構想」に積極的に参加している。片や韓国は、豪州とは真逆で「インド太平洋構想」に背を向けている。この違いは、国際情勢への認識の差によるものだろう。もっと突き詰めれば、文大統領の「従北・反日」という民族主義で、世界を見る目が曇っているからだ。

     


    『朝鮮日報』(10月25日付)は、「反日・従北の民族主義が大韓民国を脅かす」と題する寄稿を掲載した。筆者は、ユン・ピョンジュン教授である。所属大学は不明。

     

    光復(日本の植民地時代からの解放)75周年が過ぎた今も、反日民族主義は続いている。文在寅(ムン・ジェイン)政権の「官制民族主義」により韓日関係は崖っぷちに立たされた。市民社会は、日本帝国主義の残滓清算を掲げて中学、高校の校歌を変更したのに続き、幼稚園という名称を幼児学校に変えようという動きが盛んだ。政権支持率の絶対兵器である官制民族主義は、民心に根差した反日感情と爆発的な相乗作用を呼び起こしている。反日民族主義を批判すれば、土着の倭寇(注:日本人の海賊)というレッテルが貼られ、やがて生き埋めにされる。

     

    (1)「民族とは想像された共同体」という主張がある。「民族が民族主義をつくったのではなく、民族主義が民族をつくった」というのだ。血統と言語を共有する5000年の白衣民族を誇る韓国人には驚くべきことのように聞こえる。長期にわたって持続した血統、言語、文化の上に建設された韓国民族主義と、近代の産物である西洋民族主義を平面的に比較するのは難しい。しかし、民族主義が民族を呼び起こすというのは明白な事実だ」

     

    「民族が民族主義をつくったのではなく、民族主義が民族をつくった」という指摘は、現在の文政権にピッタリの言葉である。文氏は政権就任以来、「反日一筋」である。過去3年間も「反日」を叫んできたのだから、韓国の反日感情が絶頂に達して当然だろう。一方では、虚しさもあるはず。日本を批判して何のプラスがあるのか。安全保障面で、韓国を危機に追い込むだけである。

     

    (2)「北朝鮮問題も感性的な民族主義が主流となっている。北朝鮮労働党創建75周年記念閲兵式の筋肉自慢でも、文在寅政権は金正恩(キム・ジョンウン)委員長のリップサービスによって一喜一憂する。しかし、大韓民国を焦土化する北朝鮮の核兵器と「愛する韓国の同胞たち」を慰める金正恩委員長の民族主義の修辞は、正反対の概念だ。「まさか北朝鮮が核で同族を攻撃することなどあろうものか」といった「同民族」に対する願望思考が、金正恩委員長による韓半島(朝鮮半島)統一戦略を見事なまでに覆い隠している」

     

    文大統領は、日本を危険視し北朝鮮愛に燃えているが、これほど視野狭窄症はない。ソウルの目と鼻の先では核が日々、製造されている。その核が韓国で使われない保障はどこにもない。朝鮮戦争を始めたのは中国と北朝鮮である。その中朝に燃えるような愛をたぎらせる文在寅氏とは、いかなる頭脳構造であろうか。

     

    (3)「反日感情の縦糸と従北情緒の横糸が韓国民族主義を歪曲している。北朝鮮が日本植民地時代の残滓をなくし、民族史的正統性でリードしたという偽りの歴史観が民族主義を汚染している。感傷的な民族主義は、厳しい国際政治に対する冷徹な認識を妨げる。21世紀の新冷戦時代を迎え、朝鮮半島は米中の帝国覇権競争の最前線となっている。民主主義と市場経済を共有した韓日間の相互協力は、「帝国中国」の無限なる膨張から韓国の主権を守る合従連衡の国家戦略資源だ。即物的な反日感情を超え、冷静な克日と用日が新たな韓国民族主義のキーワードにならなければならない」。

     

    文氏の民族主義は、北朝鮮出身の両親が抱いた「望郷の念」と変わるまい。それは純粋だが単純であり、米中対立の長期化という国際情勢進展の中で、正確な判断を誤らせる「邪念」になり得るのだ。火薬庫となった朝鮮半島で、韓国の安全保障をどう守るのか。文氏の頭脳を超えた問題になってきた。

     


    (4)「血統と習慣に縛られた種族的反日・従北民族感情は、歴史の退行にすぎない。種族的限界を振り切る市民的民族主義であってこそ、韓国民族主義が復活するのだ。反日・従北を超えて克日・克北に向かうとき、道が開かれる。光復75周年に実体もつかめない親日派という言葉を持ち出すのは、自由と正義の共和制の敵にすぎないのだ

     

    反日・従北と言う言葉ほど、民族感情をくすぐる言葉はあるまい。それは、一種の麻薬である。将来展望のない刹那の言葉だ。一国の大統領が、そういう麻薬言葉を使って国民を「痴呆」にさせている。無責任な政治家と言うほかない。

    このページのトップヘ