勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年11月

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    中国の愛国主義教育は、Z世代(1995年以降生まれ)で大きな効果を上げている。習近平氏の「中華民族の偉大な復興」スローガンが、若者に「中国製造」=国産品という誇りを持たせているからだという。戦前の日本が、「大日本帝国」の美名で少年たちは続々と兵役に応募していった、あの時代と雰囲気が似通っている。危険なシグナルである。

     

    『朝鮮日報』(11月30日付)は、「『メード・イン・チャイナ』という自負心」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ナムヒ北京特派員である。

     

    最近中国の10~20代の消費者が熱狂する製品がある。特定ブランドの製品ではない。どんな商品であれ、「中国製造(メード・イン・チャイナ)」というフレーズが付いた商品だ。

     

    (1)「この「中国製造」は単に中国で作ったという原産地表示としての「メード・イン・チャイナ」ではない。説明書には小さな文字ではなく、前面と目立つ場所に商品のアイデンティティーを示すように大きく「中国製造」と書いてある。過去に外国では「メード・イン・チャイナ」は無視と嘲笑の対象だった。現在の中国で「中国製造」とは、世界最強の大国となった祖国に対して中国人が抱く自負心の象徴だ」

     

    自国に誇りを持つのは当然のこと。行き過ぎた場合の弊害として、「戦争」という二字を招く危険性が高くなる。「メード・イン・チャイナ」という意味の「中国製造」に誇りを持つのは良いとしても、危険な予兆を感じるのだ。

     

    (2)「中国茶飲料のブランドのうち、茶にチーズを混ぜたチーズティー飲料を販売する「喜茶(HEYTEA)」がある。最近中国のZ世代(主に1995年以降生まれ)の間で流行するファッションを見たいならば、喜茶の店舗に行けと言われるほど若い世代に人気がある。喜茶は携帯電話ケース、かばん、靴下、カップ、バッジなどのブランド周辺商品も販売している。消費者は商品の中央に書いてある「中国製造」という文字が気に入って購入するのだという。愛国主義マーケティングが成功したのだ

     

    「中国製造」が、ロゴとして使われることで商品が飛ぶように売れるとは、愛国主義マーケッティングの成功例であろう。ただ、「中国製造」が商標登録されている場合、他社は類似行為を禁じられるので、中国社会全体に拡散されることはないだろう。

     


    (3)「『中国製造』は中国政府が米国を意識して打ち出した概念だ。中国政府は2015年に「中国製造2025」という産業政策を開始した。25年まで10年間に新エネルギー車(NEV)、ロボットなど10の先端技術製造分野で中国が世界首位を目指すとする計画だ。中国政府は補助金投入、外国企業の買収などを通じ、「中国製造2025」計画を大々的に推進した。トランプ米大統領が中国製品に関税をかけ、貿易戦争を起こしたのも「中国製造2025」政策に脅威を感じたからだという分析がある」

     

    習近平氏は当初、「中国製造2025」を宣伝して、「中国再興」と結びつけていた。だが、米中対立が激化するとともに、「中国製造2025」を取り下げてしまい目立たなくさせている。皮肉にも、ブランドとして「中国製造」が生き残った感じである。

     

    (4)「現在、外国企業は中国の消費者の愛国ムードに合わせなければ生き残れず、プライドを少しでも逆なですれば、すぐに撤退させられる。米電気自動車(EV)大手のテスラは昨年、中国・上海工場で生産したモデルを発表し、「中国製のモデル3がやってくる」と宣伝して好評を集めた。これに対し、イタリアのファッションブランド、ドルチェ&ガッバーナは2年前、中国系の女性モデルがはしでピザを食べる場面の広告を流し、中国を侮辱しているとの批判を受け、事実上中国事業を畳まなければならなかった」

     

    愛国教育が20年間続けば、国民を戦争に駆り立てられる。習政権になって8年を経ている。習氏が2022年以降も続投になれば、中国は確実に「戦争モード」になろう。習氏は、こういう若者の「好戦気運」を利用して、戦争を仕掛けるのでないか。その危険性が高まる。

     


    (5)「韓国のアイドルグループ、防弾少年団(BTS)による6・25戦争(朝鮮戦争)に関する韓米友好発言も最近、「侮辱罪」に引っ掛かり、中国の一部ネットユーザーや民族主義系メディアから集中攻撃を受けた。中国でBTSを広告モデルに起用したサムスン電子、現代自動車など韓国企業は明確な情報把握を行う前の段階で、インターネット上で批判世論が強いという理由だけでBTSとの関係を絶った」

     

    愛国主義マーケティングの拡散は、独善主義を生む危険性を孕んでいる。中国は、国家として危ない橋を渡り始めている。すべて、習近平氏ら少数の民族主義者の意図通りに取り運ばれているようだ。

     

    (6)「愛国主義と優越主義は中国の10~20代で最も強く表れる。中国が米国と二大大国と呼ばれるほど大国に浮上するのを直接見守り、学校で「中華民族の偉大な復興」という愛国思想を絶え間なく注入された影響が大きい。彼らが消費層の中心となった中国市場で外国企業の将来の不確実性は相当大きい。外国企業が堂々と声を上げて活動できるだろうか」

     

    愛国主義がマーケティングに止まっている段階から、愛国民族主義へと転化する段階へと進めば、確実に「戦争謳歌」ムードに一変するであろう。この問題は、簡単に考えるべきではない。

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    中国は、パンデミック終了後に世界中から新型コロナウイルスの賠償請求が出ることを恐れている。だから、発生源が中国でないことを言いふらしている。今年3月には、「米国発生源」を外交部報道官のSNSで言いふらし、米国の強い怒りを買った。駐米中国大使が、これを否定するという珍無類な騒動に発展したのである。

     

    その後、中国は鳴りを鎮めていたが、新型コロナウイルスの発生源を輸入冷凍食品に擦り付けている。噓に噓を重ねるのが、中国式とは言えみっともない話だ。世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するマイク・ライアン氏は27日、新型コロナウイルスの起源が中国「外」とする主張について、かなりの憶測だという見方を示した。

     

    ライアン氏は会見で、「コロナウイルスが中国で発生しなかったとの主張はかなりの憶測で、公衆衛生の観点から、ヒトの感染が確認された場所から調査を始めるべきことは明白だ」と指摘。WHOとしてウイルスの起源を調べるため、専門家らを武漢の食品市場に派遣する方針を確認した。以上は、『ロイター』(11月27日付)が、報じた。

     

    『ロイター』(11月26日付)は、「コロナ起源は『輸入冷凍食品』と中国主張、西側は反論」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスの感染者が世界的に急増している中で、中国は国営メディアを使って「コロナの起源は中国」との見方を否定する情報の拡散を続けている。ウイルスは昨年終盤に武漢の海鮮市場で確認されたが、それより前に海外に存在していたという主張だ。 これらのメディアは、ウイルスが輸入冷凍食品に付着していたと指摘。国内の科学論文なども、従来考えられていたよりも早く欧州でウイルスが出現していたと主張し、これを中国発でコロナが広がったとは言えない可能性の証拠としている。

     

    (1)「11月25日には中国共産党機関紙の『人民日報』が、フェイスブックに「#新型コロナ感染症の始まりは武漢ではなかった。輸入された冷凍食品とその包装部分に由来しているのではないか」とする専門家の見解を投稿した。 世界保健機関(WHO)は、食品や包装のどちらもコロナの感染経路だとは見られていないとの見解を示している。それでも中国は輸入冷凍食品にリスクがあると唱えて検査態勢を強化し、その結果、ウイルスが見つかったと何度も発表して輸入品の受け入れを拒否。輸出した国が異議を申し立てる事態になっている」

     

    南シナ海の中国領有説と同じ手法である。噓でも100回唱えれば真実になるという、「革命宣伝方式」を採用している。こういう噓八百な国が、地球上に存在するのは嘆かわしいことだ。

     


    (2)「人民日報系のタブロイド紙『環球時報』も、新型コロナ感染症は中国外が起源だとする見方を積極的に広めている。 かつて中国疾病対策センターで疫病分析部門トップだったZeng Guang氏は、24日の環球時報で「いつ、どこでウイルスの拡散が始まったのか。ウイルスの追跡で全て解明できるわけではないが、武漢で検出される以前に、複数の場所で同時に存在していた可能性は極めて大きい」と主張。

     

    中国は、新型コロナウイルスの賠償請求を避けるために、逃げ切りに全力を挙げている。かつてトランプ大統領は、中国が賠償金を払わなければ、中国製品に関税をかけるだけ、と言っていた。これも、一つの方法であろう。

     

    (3)「<根拠は薄弱> 新型コロナウイルスの起源を巡って、世の中にはさまざまな観測や陰謀論があふれる。中国が初期段階で情報流出を抑圧し、海外の専門家による調査も拒んだことが、これを助長している。3月には中国外務省の報道官が、米軍によって武漢にウイルスが持ち込まれたと示唆する場面もあった。王毅国務委員兼外相も、ウイルスの起源が中国かどうかは不確かだと言い続けている。中国外務省は、ウイルスの起源は科学の分野に属する問題だと述べるばかりで、中国起源を指摘する米国やオーストラリアなどを激しく非難している」

     

    中国に責任を認めさせるには、米国同盟国が同一行動を取ることも重要である。賠償させなければ、こういう事態をまた、引き起すであろう。

     

    (4)「Zeng氏や国営メディアは中国が起源とみなされない根拠として、イタリア国立がん研究所が公表した論文を挙げる。この論文によると、同研究所が昨年10月にがん患者から採取していたサンプルから新型コロナの抗体が見つかったという。 バルセロナの下水で昨年3月に採取していたサンプルから、新型コロナウイルスが検出されたとする論文も今年、別に発表されている」

     

    (5)「しかし、西側諸国では2つの論文に批判が集まっている。ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンで遺伝子学を研究するフランソワ・バルー氏はツイッターで「薄弱な証拠に基づく声高な主張が、必要な精査や、より幅広い科学的根拠を考慮に入れることなく、各方面に伝えられている」と苦言を呈した。その上で、たとえ昨年9月にイタリアで新型コロナウイルスが存在していたとしても、必ずしもそこが起源だということにはならないと強調した。 バルー氏はロイターに対し、新型コロナウイルスに最も近似するウイルス株が中国のコウモリを介して広がったという強力な科学的根拠があり、時間軸を動かしたとしてもなお、起源は東アジア、そして恐らくは中国の可能性が最も高いと指摘。そこから世界の他の地域に広がっていたとみられると説明した。つまり、新型コロナウイルスの起源を巡る従来の見解は、引き続き変わりようがないという」

     

    中国は、未だにWHOに対して武漢の現地調査を認めていないのだ。武漢が発生源であることを認識しているから、現地調査を阻んでいるのだろう。WHOも中国説である。往生際が悪い中国である。


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    日韓関係行き詰まりで、韓国が盛んに日本へラブコールを送っている。だが、日本側の反応はいたってクールである。文政権になって以来の「反日騒動」に日本側は呆れ果てているのだ。韓国側が、真に日本との関係改善を切望するのならば、旧徴用工問題賠償は韓国の責任で解決すべきである。その上で、日韓関係改善という筋道であろう。

     

    『中央日報』(11月29日付)は、「韓日指導者、『鄧小平の知恵から学ぶべき』 過去を解決する『決断』要求」と題する記事を掲載した。

     

    韓日経済人が27日、第52回韓日経済人会議を開き、両国関係の改善案について議論した。韓日経済人会議は1969年以降1年も欠かさず両国が交互に開催してきた協議体。今年は新型コロナウイルス感染拡大のため一度延期された後、ソウルのJWマリオットホテルと東京のホテルオークラを画像でつないで開催した。


    (1)「この日、基調講演をした洪錫ヒョン(ホン・ソクヒョン)韓日ビジョンフォーラム代表兼中央ホールディングス会長は、現在の韓日関係について「一つでも葛藤要因が追加で生じれば、ラクダの背中を折る最後の藁になるかもしれない」と診断し、「韓日協定60周年の2025年を目標に今から歴史和解プロセスに入るのがよい」と提案した。続いて歴史問題を直接争って解決するのではなく、未来を共有することで過去の問題を解決していく逆発想が求められると強調した」

    日韓関係をここまで悪化させたのは、すべて文政権発足以来である。日韓慰安婦合意の破棄と旧徴用工問題賠償である。いずれも解決済みの問題を蒸し返したのであるから、韓国が自ら責任を取るべき問題である。

     

    (2)「洪会長は韓日関係改善のために両国指導者が「鄧小平の知恵」を思い出す必要があると述べた。トウ小平は中国の開放・改革元年の1978年に日本を訪問した際、尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる両国の紛争について「現在の中日指導層よりさらに知恵を持つ次世代にこの問題を任せる」と明らかにした。その後、当時の中曽根康弘首相は「戦時に多大な苦難を与えたことに遺憾を表す」として中国に巨額の援助を断行した。こうした「度量が広い妥協」を通じて日本は広大な中国市場に接近でき、中国は日本の資本と技術を成長の土台にすることができた」

    鄧小平の知恵による尖閣諸島問題の棚上げは、現在の日中対立の大きな要因になっている。一時的な成果を狙った弥縫策は、決して真の解決策にはならない。その意味で、日本による「鄧小平の知恵」になぞらえる歴史問題の棚上げは、韓国側へ紛争の種を蒔くような話である。日本は乗るべきでない。日本側から法的に言えば、歴史問題はすべて解決済みである。後は、韓国の問題である。

     


    (3)「洪会長は韓日関係の懸案である強制動員被害者賠償判決については「両国の指導者が政治的リーダーシップを発揮すべき」と強調した。続いて政府が司法手続きに介入できないだけに特別立法手続きを通じて日本の退路を開くことを約束するのが現実的な手続きだと提示した。こうした前向きな措置を通じて、日本に振り回されることなく、一気に道徳的優位に立つことができるという指摘だ

     

    日韓基本条約で、旧徴用工問題は無償援助3億ドルに含まれている。韓国大法院(最高裁)の判決が「司法自制の原則」から外れた田舎判決である。日本が、これに振り回される必要はない。道徳的も非道徳的も関係はないのだ。

     

    下線部分は、日本の最も嫌う点だ。韓国が「道徳」云々する時は、非合理な要求を出す時に使うフレーズだ。韓国が、それほど日本よりも道徳国家であるならば、紊乱する性犯罪はどういう位置づけなのだ。あまりにも軽々に「道徳国家」発言をするべきでない。日本人はみな嗤っているのだ。



    (4)「洪会長は、「韓国政府は過去に2度賠償した経験に基づき、国会で特別立法を通じて3度目の賠償措置を取らなければいけない」とし「親日問題から自由であり民主化の正統性を持つ文在寅(ムン・ジェイン)政権はこうした決断を下す資格と余裕がある」とも話した。その代わり洪会長は日本政府は不法植民支配と強制徴用について謝罪して反省する立場を明確にすべきだと強調した。洪会長は「両国政府間の合意の形で韓国人を相手に明確なメッセージを送るべき」とし、菅義偉首相の決断を促した」

    韓国はまた、日韓併合について謝罪せよと言っている。もう何十回も言わされてきた。これこそ時効である。日韓基本条約ですべては終わっている。今から55年前だ。

     

    (5)「洪会長は韓国が日本と急いで関係を回復すべき理由に北朝鮮問題を挙げた。洪会長は「韓国が日本と協力的関係を復元すれば米国との関係を増進でき、中国からもより公正な待遇を受けるはず」とし「韓国が日本、米国、中国から重視されれば、北朝鮮も韓国を無視できなくなる」と述べた。実際、菅首相も最近、北朝鮮との関係改善の可能性を示唆した。特に数百億ドルと予想される対日請求権資金は、北朝鮮が開放されれば経済開発の呼び水になるはずで、北朝鮮で発生する莫大な開発需要は突破口が必要な日本経済に新たな活力を吹き込むはずだと、洪会長は予想した」

    下線部分が、韓国の本音である。韓国は、日本と関係改善が進むことで、米韓関係も中韓関係も改善すると言っている。そういう効果が見込める日本に対して、日韓併合を謝罪せよと迫るのは、あまりにも調子に乗りすぎた発言である。しかも、日朝関係が正常化すれば、日本が「数百億ドル」の賠償金を払うだろうと期待している。韓国への「おこぼれ」があると見込んでいるのだ。韓国は、玉突き同様に、日本の玉に当てれば、万事上手くいくとしている。楽観的過ぎるのだ。

     

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    検察総長追出しは死活問題

    現実課題に苦手な学校秀才

    両親と盧大統領の強い影響

    コピーは独自色打出せない

     

    韓国政界は今、異常事態に巻き込まれている。法務部長官(法相)が、検察総長(検事総長)に職務停止と解任要求を突きつけたからだ。検察総長が、政権側の犯罪捜査に力を入れていることが背景にある。韓国進歩派は、今後とも政権を継続させたい。それには、政権の犯罪が司法の場に持ち出されることを何としても避けなければならない。文政権の切羽詰まった事情が、垣間見えるのである。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官による尹錫悦(ユン・ソギョル)検察総長の職務停止命令などという異常案件に対し、なんらの意見も言わなかったという。つまり、黙認したのである。ユン検察総長は、文大統領が自ら任命した人事だ。任期の2年間は、身分が保証されている。職務停止と解任要求は、過去に遡っても前例のない暴挙である。

     

    検察総長追出しは死活問題

    文政権が、ユン検察総長追い出しに総力を挙げている主な理由は、これまで目立った功績どころか、マイナスの事態が山積していることだ。その上、ユン検察総長から月城原発停止問題を捜査され致命的な傷を負う恐怖であろう。月城原発は、黒字操業を続けていた。急に操業を中止する理由はなかったのだ。ただ、文氏が大統領選で公約に上げていた関係上、早急に原発停止をしなければ、原発反対市民団体へ顔向けできない。そいう政治的思惑が先行して、強引に操業停止に追込んだのである。

     


    その際、政権は月城原発が黒字経営であったにもかかわらず、データを赤字経営へ改竄したのである。韓国監査院(会計検査院)は、その不法性を指摘したのである。その後、検察へ告発状が出されて捜査に着手したものだ。政権は、なぜか検察捜査の不当性を指摘している。その理由が、極めて滑稽なのだ。

     

    月城原発の停止は、大統領選の公約である。文氏の掲げたこの公約は、文大統領当選で国民から承認を受けたのも同然である。よって、行政府の決めた月城原発の停止について、司法は捜査する権利がない、というのである。つまり、「司法自制の原則」を持ち出したのだ。

     

    「司法自制の原則」は、国際法で適用される条項である。国家間で結ばれた条約などについて、司法はタッチしないというもの。例えば、韓国大法院(最高裁)が旧徴用工賠償問題で日本企業に支払いを命じた判決は、すでに日韓基本条約で解決済みである。よって、「司法自制の原則」により、こういう判決を回避すべきなのだ。日本が、強硬に反対している理由だ。

     


    文政権は、日本の持ち出した「司法自制の原則」を、皮肉にも国内で適用しようというのである。これは詭弁である。検察が、月城原発の停止事件を捜査することは可能である。文政権は、常にこういう詭弁を弄して政権運営を行なってきたのである。

     

    詭弁とは、こじつけである。文在寅氏は、韓国進歩派特有の「詭弁」を政策面に多用してきた。間違いを正しいと言い曲げる「詭弁」は、聞く人を惑わすものだ。文氏が青年時代から学業に優れていたことと、この「詭弁」は無縁でない。この点について、先ず取り上げたい。

     

    文氏は高校卒業後、ソウル大学入学に失敗。1年の浪人生活をして、4年全額奨学金のあった慶煕大法科大学(法学部)法学科に志望校を変更。首席で合格したという秀才である。そして、兵役を挟んで合格率2.9%と言われた司法試験にも一発で合格したのだ。

     

    現実課題に苦手な学校秀才

    こういう学業優秀であった面から想像できるのは、文氏が真面目であることは言うまでもない。規則やルールを忠実に守るタイプであることも疑いない。ただ、「学校秀才」がしばしば落込むのは、応用問題を解く能力において難点があることだ。現実問題の解法には、これぞという方程式が存在しない。文氏は、ここで大きく躓いたのである。自から考えることよりも、外からの影響を強く受けていることだ。「1+1=2」というタイプである。

     


    文氏の両親は北朝鮮興南市の出身である。朝鮮戦争で米軍が北朝鮮まで進軍した後、撤退する際に米国の貨物船に乗船して興南を離れて韓国へ避難した。文氏は、韓国で生まれている。韓国での両親の生活は苦しいものだったという。文氏は授業料を払えず、学校から帰されたこともあったという。

     

    ここからは私の想像だが、両親は親類縁者すべてが北朝鮮で生活していたので、北朝鮮を懐かしみ「在寅少年」に愚痴をこぼしたことは一再ならずあったであろう。文氏の父親は、興南で農協の課長を勤めていた。それなりの学歴があった結果だ。

     

    当時の北朝鮮は、日本の残した製造設備を生かし、韓国よりもはるかに高い生活水準であった。それが、韓国へ避難してどん底の生活に突き落とされたのである。父は労働者として働き、母は鶏卵売りの行商をした。過労の結果か、父親は59歳で亡くなっている。母親は、文氏が大統領就任後に死去した。息子の栄達を見ることができたのは何よりであった。

    (つづく)

     

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    豪州のモリソン首相は、パンデミックの中でわざわざ日本を訪問。菅内閣で最初の外国要人訪問となった。モリソン氏は、コロナ防疫のために帰国後14日間、隔離生活を送り国会登院も見合わすという「犠牲」を払っての訪日であった。

     

    訪日目的は、日豪の防衛協力のための「円滑化協定」を協議することにあった。豪州と中国の外交関係は日増しに悪化している。そこで、インド太平洋構想で「クアッド」(日米豪印)を組む日本と、対中で防衛協力を固めるという目的である。中国は、これに敏感に反応している。日豪を結束させているのが中国である。自らの行動を棚に上げての振る舞いである。

     

    『レコードチャイナ』(11月29日付)は、「日豪『円滑化協定』に警戒心あらわ、『地域の安全と安定にも資さない』と中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    日本とオーストラリアが大筋合意した防衛協力のための「円滑化協定」に中国メディアが警戒感をあらわにしている。「中国を警戒し共にけん制する狙いがあるからだ」と批判。「中日関係と中豪関係の不確実性を高め、地域の安全と安定にも資さないことも間違いない」と反発した。

     


    (1)「菅義偉首相と来日した豪州のモリソン首相が11月17日に大枠で合意した「円滑化協定」は、両国部隊の共同訓練や災害協力を容易にするもので、両国の「準同盟国」関係を深化させた形だ。交渉は長く停滞していたが、覇権主義的な行動を強める中国への危機感が交渉進展を促した。両国は今回、司法制度などの詳細部分で折り合わず、署名には至らなかったものの、首脳合意をテコに今後、外務、法務当局が細部を詰める方針だ」

     

    日豪軍の「円滑化協定」は、互いに相手国の領海に入っても特別の手続きをしないで済むと言う、一種の「準同盟国」である。日豪軍が親戚付き合いを始めるという宣言である。

     

    (2)「協定について、『中国網』は防衛省のシンクタンク・防衛研究所が13日に発表した「中国安全保障レポート2021」に言及。「日本としては日米同盟の抑止力と対処能力の向上のために引き続き米国との関係を強化することに加えて、独自に防衛態勢の充実を図ることも重要であろう」とした上、「実際に日本は引き続き日米同盟関係の強化を外交の礎とし、日米安全協力を強化するほか、他国との協力の強化により地域における防御、特に南西方面の防御を補おうとしてきた」と伝えた」

     

    日本にとって、南西地域の防衛が手薄になりがちである。そこで豪軍の協力を仰ごうという狙いもある。これが、同盟国、準同盟国のメリットである。

     


    (3)「豪州に関しては、「中国を自国の国益への『挑戦および脅威』としている。中国への懸念により、豪州は初めて国家安全を口実とし、華為技術(ファーウェイ)による5Gネットワーク構築を禁じた国になった。豪州は今年、新型コロナウイルスの発生源と感染拡大をめぐり国際調査を行うよう求め、中国に汚名を着せることもいとわなかった」と強い調子で糾弾。「豪政府は近年、トランプ政権のアジア太平洋における一連の戦略的行動を積極的に支持し協力するほか、アジア太平洋のいわゆる豪州と同じ価値観を持つ国との安全関係の強化を求めている」と述べた」

     

    中国と豪州の関係が悪化し始めた要因は、新型コロナウイルス発生源の究明問題である。モリソン首相が、徹底調査を要求したことで中国が先手を打って経済報復をしたもの。以来、両国関係は悪化の一途だ。WHO(世界保健機関)でも最近、「新型コロナウイルスの発生源は、中国以外に考えられない」と発言するほど既知の事実になっている。中国はその汚名を被ることに我慢ならないと逃げ回っているのだ。無駄なことである。

     

    (4)「中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報はさらに一歩踏み込んで「日豪は悪い例を示したと言うべきだ」と非難。「両国は各自の最大の貿易パートナーである中国を『安全の脅威』と位置付け、かつ米国の要求に応じた措置を講じ、アジア太平洋の米国を除く初の2国間準軍事同盟の大枠をつくった」と続けた。その上で「米国と共にインドを抱き込み中国を『包囲』するのを回避するよう忠告しよう」と強調。「中国の国益が侵害され、中国の安全が脅かされれば、中国がこれを座視することは決してない。これがシンプルな道理であり、彼らは必ず代価を支払うことになる」などと警告した」

     

    日豪にとって、中国は輸出先ナンバーワンの国である。それでも、安全保障が第一、経済問題は第二の認識である。中国の軍事行動に警戒観を強めているのだ。こうなると、海洋進出第一を目指す中国との摩擦は不可避である。原因をつくったのは中国である。中国が、身のほど知らずに世界覇権を狙うという野望を捨てない限り、周辺国は結束して中国へ対抗姿勢を取るはずだ。

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