勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年11月

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    文在寅氏は、「社会派弁護士」出身とは信じられない振る舞いをしている。大統領の椅子を守るために、自らが任命したユン検察総長を辞任に追込もうという卑怯な手を使っている。文氏は、三百代言に陥ってしまった。

     

    『朝鮮日報』(11月26日付)は、「『自身の違法疑惑隠そうと検察を無力化』文大統領の総力戦」と題する社説を掲載した。

     

    秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官が尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長に対して職務排除措置を取り、懲戒を請求したことに関して、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は25日も沈黙した。自身は後ろに下がり、秋美愛長官を前面に出して、尹錫悦総長を辞任させようということだ。与党・共に民主党の李洛淵(イ・ナギョン)代表は「法務部が明らかにした尹錫悦総長の容疑は衝撃的だ」として国政調査を推し進めると言った。容疑だとも言えない容疑が衝撃的だという党代表の言葉の方がよっぽど衝撃的だ。事前に脚本を書いた上で動いている。

     


    (1)「文大統領は、「積弊(前政権の弊害)」捜査を率いた尹錫悦氏を超スピード出世させて検察総長に任命し、「生きている我々の権力も顔色をうかがわずに捜査せよ」と言った。しかし、尹錫悦総長が実際にチョ国(チョ・グク)前法務部長官一家の不正など、「生きている権力」を捜査するや、状況はガラリと変わった。文大統領を「兄さん」と呼んだ柳在洙(ユ・ジェス)元釜山市経済副市長がわいろを受け取っても、監察を回避して昇進までしていた事実も、検察の捜査で明らかになった。文大統領の「30年来の友人」を蔚山市長にするため青瓦台が総動員された選挙工作が、検察によって明らかになったのだ。検察の控訴状には「大統領」という言葉が40回近く登場する」

     

    文在寅氏は、側近を庇うために必死である。正邪の区別すらできないほど、権力を守るために、自らが任命した検察総長を追出さなければならない事態に落込んでいる。進歩派は、軍事政権を蛇蝎のように嫌い批判する。人権弾圧では許されない行為を重ねた。だが、一つだけの免罪符がある。朝鮮戦争で荒廃した韓国経済を現在の姿に立て直す基盤をつくった。文在寅氏は、その遺産を食い潰しており、何一つ功績らしきものはないのだ。深く恥じ入るべきであろう。

     


    (2)「文大統領は今年1月、秋美愛氏を法務部長官に任命した。秋美愛長官は就任するやいなや、政権の不正を捜査していた検事たちを「人事虐殺」で空中分解させた。捜査を受けている被疑者が、捜査をしている検事を空中分解させる国は世界のどこにもないだろう。そして政権不正捜査を中断させた後、「忠犬検事」たちを動員して逆攻勢に出た。1カ月の間に4回も尹錫悦総長の監察調査を指示した。与党が自ら「問題ない」と言っていた尹錫悦総長の家族の事件も「特捜部」を動員して再捜査している。そうした中、今回はお話にならないこじつけの数々を理由にして職務停止にまでした。

     

    文氏は、弁護士出身である。汚い手を知り尽くしている。それを今、すべて使って自分の身を守ろうとしている。

     

    (3)「こうした混乱は一見、秋美愛長官と尹錫悦総長の泥沼の戦いに見える。だが、それは現政権が意図する構図だ。秋美愛長官は文大統領の行動隊長に過ぎない。事の本質は、文大統領が自身の違法疑惑に対する検察の捜査を無力化させるため、秋美愛長官を前に立たせて尹錫悦総長が率いる検察を無力化させているのだ」

     

    文氏も秋法務部長官も、私大卒である。ソウル大卒業のユン検察総長を追出して、「ソウル大」への恨みを晴らす。そんなことすら空想するような不条理な振る舞いである。学歴社会の韓国である。卒業した大学が生涯の出世コースに響くという。そういう矛楯を背負っているのだろうか。

     

    (4)「既に「植物総長」になっている尹錫悦総長に対し、突然職務停止という無理筋までするのは、月城原子力発電所1号機の評価操作捜査と関連があるものと思われる。月城原発1号機の早期閉鎖・経済性操作犯罪に文大統領が関与した明白な状況が監査院の監査で明らかになった。これに対する検察の捜査の進ちょく状況を把握した青瓦台が、捜査を中断させるというショック療法を用いたのではないかということだ。大統領の最側近である議員が検察に向かって「一線を越えるな」と言ったが、検察が収集した証拠が「一線」を越えた可能性がある。ライム資産運用・オプティマ資産運用詐欺事件の捜査も政権にとって脅威となっている」

     

    文大統領は、月城原発廃止の決め手にされた経営データねつ造を最も恐れているという。黒字であった月城原発を赤字に改竄して廃止に決めたからだ。検察捜査によって、その証拠が握られているという。こうなると、ユン検察総長に「消え」てもらわなければならないのだろう。

     


    (5)「文大統領は、何とかして尹錫悦総長を追い出し、すべての捜査を阻まなければならない状況にある。しかし、自ら乗り出す考えはなく、秋美愛長官を前面に立たせたのだ。尹錫悦総長職務排除の本質は、自身の違法疑惑に対する捜査を何とかして覆い隠し、阻もうという文大統領の総力戦、それ以上でもそれ以下でもない」

     

    文氏は、ここでユン検察総長を追出しても、政権が変れば必ず追跡されるはず。「人権に時効はない」と徴用工問題で名言を吐いた文氏。データねつ造による国家へ損害を与えた罪も消えるはずはない。保守派が政権へ返り咲けば、文氏は最初に検察の取り調べを受ける身であろう。

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    憲政史上初となる現職検察総長の職務排除という事態を受け、一線の検事の反発が「検察の反乱」に拡大する兆しを見せている。大検察庁(最高検)の研究官らは25日、会議を開き、「秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官の指示は違法で不当な措置だ」とする声明を出したのに続き、釜山地検東部支庁の検事らも全国の検察庁で初めて、末端検事による会議を開き、同様の立場を表明した。

     

    政権支持メディアの『ハンギョレ新聞』は、これまで法務部長官サイドの情報を流してきたが、検察官の反発が全国的な規模になる動きを見て狼狽える様子を見せている。

     

    『ハンギョレ新聞』(11月26日付)は、「韓国の検事ら、法相による検察総長の職務停止命令に反発する声明を発表」と題する記事を掲載した。

     

    憲政史上初の現職検察総長の職務執行停止命令に、検事たちが集団行動に出た。一般の検事たちの反発が激しくなるにつれ、集団行動の形である「一般検事会議」が開かれる可能性も取りざたされている。

     

    (1)「検察総長の参謀組職である最高検察庁検察研究官約30人は25日に会議を開き、検察内部の掲示板にユン・ソクヨル総長の職務停止の見直しを求める声明を発表した。彼らは「納得しがたい手続きと過程を経て電撃的に(ユン総長が)職を遂行できなくなった。検察業務の独立性を侵害するだけでなく、法治主義を深刻に傷つける行為で、違法であり不当だ」としたうえで、「検察が憲法と良心によって与えられた職務と責任を全うできるよう、法務部長官が今からでも職務執行停止処分を再考してくださるよう切に要請する」と書いた」

     

    (2)「釜山(プサン)地検東部支庁の一般検事約20人も「事実関係が十分に確認されていない現時点で検察総長に対して懲戒を請求するのは、違法であり不当な措置」だとし、「真相を確認する前に検察総長の職務を排除したのは納得しがたい」という意見を示した」

     

    ユン検察総長の業務停止という韓国で初めての「事件」に韓国の検察官に激震が走っている。身分のいかんを問わず、政権に不利な捜査をすればこういう仕打ちを受けることへの怒りだ。

     


    個別の検察庁から全国的に拡散する兆しも表れている。他地域の一部検察庁でも検事らの動きがあったとされる。ある検事は「政権の不正疑惑を捜査していた検事をあぶり出す『虐殺人事』、尹総長の辞任を迫る相次ぐ捜査指揮権発動、検察への不当な指示反発など秋長官に対して募っていた検事らの怒りが爆発するのではないか」と話した。これは、『朝鮮日報』(11月26日付)記事である。

     

    (3)「検察内部の掲示板には、幹部級の検事らの公開批判も相次いだ。ユン総長とともに国政壟断の捜査に参加した釜山地検東部支庁のキム・チャンジン刑事1部長は「政権の利益にならない事件を捜査すれば、総長も懲戒を受け、職務から排除される可能性があるというシグナル」とし、「事実上、検事たちに対する警告」だと指摘した。キム部長検事は「検事も過ちを犯した場合は懲戒を受けなければならず、総長も例外ではないが、(総長が)何の対応もせず職務から排除されれば、怖くてものも言えなくなるのではないか」と反問した。清州(チョンジュ)地検のチョン・ヒド部長検事も「長官一人でこうした驚くべきことができるだろうか。政権に寄生する政治検事と協力者がいたからこそ可能なことだ」と一喝した」

     

    部長検事という幹部クラスが、自分の身に降りかかる政権からの圧迫をものともせずに立ち上がっている。これは、韓国社会の特色であるが、怒りの火が一挙に燎原の火になる可能性を秘めている。政権にとっては、命取りにもなりかねない動きだ。

     


    (4)「検事らはチュ長官が掲げたユン総長の職務排除の事由に「根拠がない」と主張した。済州地検のキム・スヒョン人権監督官は「総長を職務から排除するにはそれにふさわしい根拠、正当性と名分がなければならないが、職務排除の事由のどこにもそのような内容はない。憂鬱で惨憺たる気持ちだ」と書き込んだ。匿名希望のある部長検事は「汚職で起訴されたチョン・ジヌン光州(クァンジュ)地検次長検事は引き続き一線で事件を決裁するのに、総長は明確でない事由で退かなければならないのが理解できない」とし、「検察改革ではなく検察掌握だ」と反発した」

     

    文政権が掲げる「検察改革」は、「検察掌握」であると非難されている。政権は、検察改革という名目によって検察を骨抜きにして刃向かわないようにする意思だ。文大統領が、この権について沈黙しているのは、自らが退任後に検察捜査を受けないように予防策を張り巡らしている結果であろう。

     

    (5)「同日、ソウル中央地検のいくつかの部署は、部長検事の主宰で会議を開き、対策を協議した。会議に出席したある検事は「一般検事や副部長級以上の幹部たちがこの問題にどう対応するかについて議論したが、まだ明確な解決策は見つかっていない」と述べた。地方検察庁では「一般検事会議」が召集される可能性もあると見られる。ある検事は「光州や大田(テジョン)などで一般検事会議を計画中だと聞いている。集団声明はこれから始まるだろう」と予測した。若手検事たちの集団行動である「一般検事会議」は、ファン・ギョアン法務部長官がチェ・ドンウク検察総長を婚外子疑惑を口実に監察を指示したときの2013年以来招集されていない

     

    「一般検事会議」とは、ヒラ検事の会議である。この段階まで火が燃え移ると、事態の解決は容易でなくなろう。文大統領は、今回の騒動を黙認しているが、いずれ自身に飛び火するリスクもでてきた。

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    西村経済再生担当相は25日、有識者らによる新型コロナウイルス対策分科会後に記者会見し、強い危機感を発表した。分科会全体として強い危機感が共有されたとしたうえで、「この3週間が勝負だと。いまの感染拡大を抑えられるかどうか。その大事な、大事な3週間だということだ」と訴えたのだ。これまで日本政府は、日本的な防疫体制で新型コロナに立ち向かってきたが、コロナ第3波襲来で医療機関が収容能力を超える瀬戸際にあることを国民に訴えている。

     

    にわかに危機感が強まっているが、11月23日までのデータによって、米国経済通信社『ブルンバーグ』が、COVIDレジリエンス(耐性:回復力)ランキングを行った。それによると、日本は世界2位という好成績を収めている。この実績に自信を持って、これからの3週間を乗り切ろう。必ず、乗り切れるはずだ。

     

    『ブルンバーグ』(11月25日付)は、「コロナ時代、世界で最も安全・危険な国・地域-レジリエンスランキング」と題する記事を掲載した。

     

    ランキングは、経済規模が2000億ドル(約20兆9100億円円)を超える53の国・地域を10の主要指標に基づいて点数化した。その基準は症例数の伸びや全体の致死率、検査能力、ワクチン供給契約の確保状況などだ。国内医療体制の能力、ロックダウン(都市封鎖)などコロナ関連の行動制限が経済にもたらす影響、市民の移動の自由も考慮した。こういう総合的な評価において、日本が高得点をマークしたのは、大いに自信を持つべきであろう。

     

    1位 ニュージーランド 85.

    2位 日本       85.

    3位 台湾       82.

    4位 韓国       82.

    5位 フィンランド   82.

    6位 ノルウェー    81.

    7位 オーストラリア  81.

    8位 中国       80.

    9位 デンマーク    77.

    10位ベトナム     74.

     

    (1)「ランキング2位は日本だが、1位のニュージーランドと異なる道を歩んだ。日本にはロックダウンを強制する法的手段がないが、別の強みを素早く発揮した。過去に結核が流行した日本は保健所制度を維持しており、追跡調査が新型コロナでも迅速に採用された。高いレベルの社会的信頼やコンプライアンス(法令順守)を背景に国民は積極的にマスクを着用し、人混みを避けた」

     

    日本人特有の「人に迷惑をかけるな」という自己規制が、他国のようなコロナ蔓延を防いでいるのかも知れない。だが、国内の移動が精神的に自由になると共に、日本列島全体が再び警戒信号を打ち出す雰囲気になってきた。この「信号弾」が、必ず、自主規制効果を上げるだろう。

     

    (2)「米国や英国、インドなど世界で最も優れた民主主義国家の一部が後れを取った一方で、中国やベトナムなど全体主義的な国家が新型コロナウイルス抑え込みに成功したことは、民主的な社会がパンデミック(世界的大流行)への対応に適しているのかという疑問を投げ掛ける。しかし、ブルームバーグCOVID耐性ランキングはその疑問を否定する。トップ10のうち8つは民主的な国・地域だ。悪影響を最小限に抑えて新型コロナを封じ込めることに成功している政府は、市民に命令し服従させる力によってではなく、高い信頼と社会のコンプライアンスを引き出すことによってそれを可能にしているように見受けられる」

     

    市民に命令を下す社会よりも、高い信頼関係に結びついた社会は、「他人に迷惑をかけない」という自己規律が生まれる。中国のような規制社会では、必ず抜け駆けが始まる。この差が、社会の発展において大きな違いを生むのであろう。

     


    (3)「メルボルン大学で世界疾病負担(GBD)グループのディレクターを務める アラン・ロペス名誉教授によれば、社会的結束もこのパンデミックへの対応の成否を分ける要素だった。市民が当局とその指針を信頼している場合、ロックダウンは不要かもしれない。日本や北欧の社会を見ると、不平等がほとんどなく、非常に規律が行き届いていることが分かる」とロペス氏は述べた。「これが、国としてより結束した対応につながり、優れたコロナ対応ができた理由だ」と分析した」

     

    このパラグラフで、日本は北欧並みの規律がよく行き届いている社会と評価されている。いささか「褒めすぎ」でないかと思うが、海外からそう見られているならば、これから3週間は期待に応えて頑張らなければならない。

     

     (4)「米国から効果的な対応が見られなかったことが、今回のパンデミックで最も驚くべき展開の1つだった。超大国の米国が感染者数と死者数で世界最多となり、危機への対応は最初から出遅れていた。医療機器および個人防護具(PPE)の不足、検査と追跡システムにおける協調の欠如、マスク着用の政治問題化など不備が目立った。トランプ米政権はむしろ、治療とワクチンを主に重視した。「ワープ・スピード作戦」と銘打った取り組みの下、ワクチンを開発する製薬会社などに約180億ドルを配分した。一方、国内の各州は危機対応のための資金を求めていた」

     

    米国は、科学の国であるから治療とワクチンを重視した。ワクチンを開発する製薬会社などに、約180億ドルを配分するという偏りがあった。

     

    (5)「この異例な対応が、ブルームバーグのランキングで米国の順位を上げた。感染者と死者数の多さから、この点がなければ米国の順位はさらに11段階下だっただろう。メッセンジャーRNA(mRNA)という技術に基づくワクチンは米国で来月にも緊急使用許可(EUA)を得られる可能性があり、このワクチンの際立った有効性が転換点となるかもしれない」

     

    メッセンジャーRNA(mRNA)という遺伝子を注射し、これが体内で免疫力を作り出しコロナを封殺する、「人類初めて」の実績を上げた。体内が医薬品工場になるようなシステムである。多分、来年のノーベル賞候補に挙げられるほどの実績であろう。この手法が成功したので、ガンやリュウマチなどの免疫力低下によって引き起こされる疾病治療に道を開いたと専門家は見ている。これを支援したきっかけは、米国に生まれた30人のボランティアが、米国政府へ強く働きかけた成果である。米国ならではの「自由な社会」が、生み出した快挙である。 


     

     

     

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    米ダウ史上初3万ドルへ

    米を見誤った背景は何か

    長期低金利がドル安円高

    構造的な円高を覚悟せよ

    為替のプロが見る円相場

     

    11月24日の米ダウ平均は、史上初めての3万ドルを突破(3万46ドル)した。新型コロナウイルスの死者が増え続ける中で、株式市場は、米国経済の力強い回復に自信のほどを示した。2016年の大統領選の日、ダウ平均は1万8332ドルが終値。トランプ大統領が、次期政権への事務引き継ぎを認めた日を、大統領選終了日と見れば、この間に1万1714ドルもの値上りである。率にして64%の上昇率だ。トランプ氏が大きく貢献した成果も含まれる。

     

    米ダウ史上初3万ドルへ

    一挙に3万ドル大台突破の株高を実現させたのは、次のような事情が、影響を与えたと見られる。

     

    1)11月3日の米国大統領選挙後の混乱は、トランプ大統領の次期政権への引き継ぎ承認で終息に向かい始めた。肝心の敗北宣言が出ないままに、引き継ぎ開始という異例の形である。トランプ氏は、4年後の大統領選を目指すとされており、周辺では最後まで「敗北」を認めないだろうと取沙汰されている。

     

    2)米議会選挙では、下院で民主党が多数で変らずだが、共和党が議席を増やしている。上院では、共和党が多数の見通しだ。こうなると、バイデン次期大統領が過激な左派主張の政策を実現することは不可能になる。

     

    3)ファイザーのコロナワクチンが、最終治験を経て95%超の有効性という「神がかり的」な最高データが発表された。米国で12月11日から、実際に接種される段階にこぎ着けたことで、長く苦しめられた「コロナ禍」から脱出可能になる。

     

    以上のような背景で、ニューヨーク株式市場はダウ工業株30種平均が、史上初めて3万ドルの大台を突破した。3月に記録した安値からの上昇率は62%にも達した。

     


    株価という先行指標で米国経済が、将来の成長性の明るさを世界に示すことになった。私は一貫して米国の持つ経済システムの成長性に注目し高く評価してきた。この5号前の「メルマガ206号 混迷した大統領選 『弱い米国』の前兆という悲観論はこれだけ間違っている!」において、米国経済に対する悲観論に異議を申し立てた。

     

    米を見誤った背景は何か

    『ロイター』(11月6日付)は、「混迷極まる米大統領選、『強い米国』はもう戻らない」と題するコラムを掲載した。筆者の鈴木明彦氏は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究主幹である。

     

    先ず、要点を紹介する。

     

    1)米国は、今年がマイナス成長不可避であるのに対して、中国は小幅ながらプラス成長を維持する。2019年には米国の3分の2であった中国の経済規模が、20年には4分の3にまで高まる。2030年ごろには米中の経済規模が逆転するとの見方が一段と現実味を帯びてくる。

     

    2)経済規模が接近してくるのに伴い、国防費や研究開発費でも中国が米国に迫って凌駕してくるかもしれない。米中の対立はすでに、貿易戦争から安全保障や技術覇権での対立に重点が移っているが、コロナショックで大きなダメージを受けた米国は、中国との関係においても劣勢になってくる。

     

    3)今回の米国大統領選ではどちらが勝利しても、自由と民主主義を掲げて世界をリードしたアメリカが戻ってくることはなさそうだ。世界に貿易戦争を仕掛けて、中国との関税引き上げ合戦を始めたのはトランプ大統領だが、その前から米国は、WTO(世界貿易機関)による多国間の枠組みでの自由貿易の推進に距離を置いていた。2国間主義に転じている米国が、グローバルな自由貿易を推進することはない。また、世界の警察官の役割に後ろ向きになっている米国は、これからもアジア太平洋における存在感を低下させるだろう。

     

    4)中国は、新型コロナ対応や大統領選を巡る米国内の混乱を見て、自国の政治体制や政策対応に自信を深めているはずだ。米国と正面から対決しなくても、国力を高めていくことに専念し、米国の力が徐々に衰えていくのを待った方がよいと思っているのではないか。

     

    5)中国共産党は、2035年に1人当たりGDPを中等先進国並みにする、という目標を示した。2万ドル(約209万円)ぐらいの水準を想定しているとすると、15年間で現在の2倍目標となり、年5%弱の成長を続けていれば達成可能だ。もっとも、15年間安定した成長を維持するのは簡単ではない。それでも、米国の弱体化がこれからも続き、中国が米国を上回る成長を続ければ、米国を抜いて世界一の経済大国になることは十分想定できる。

     

    前記の5項目に対する私のコメント採録は省くが、一点だけ指摘したい。それは、市場経済が価格機能によって自動的な「バランス回復機能」を持っていることである。価格をシグナルにして動く市場経済の有利性を理解すれば、米国経済が史上二度のバブルによってもたらされた恐慌(世界恐慌とリーマン・ショック)を克服した理由が分かるであろう。米国経済は、不死身とも言える。その原点が市場経済システムの尊重である。その裏には、健全な市民社会を守ろうとする「ピューリタニズム」(清教徒精神)が健在であることだ。

    (つづく)

     

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    中国の見境のない領土拡張主義に対して、欧州もアジア各国と共同で対応すべきという動きが強まっている。すでに、ドイツ外務省もアジアに関与する姿勢を発表している。今度は、英国のシンクタンクが同様の趣旨の報告書をまとめた。

     

    『大紀元』(11月25日付)は、「英シンクタンク報告書『英国はインド太平洋に参加すべき』安倍晋三前首相が寄稿」と題する記事を掲載した。

     

    英国は、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)後もインド太平洋地域に関与すべきだと提案する英シンクタンクの報告書が1122日、発表された。報告序文は、安倍晋三前首相が執筆した。報告は、世界秩序に対する中国の脅威に対抗するため、軍事、財政、外交に資源を投入して、主要国による民主主義的勢力を構築しようと呼びかけている。

     

    カナダのハーパー前首相は報告書の監修役をつとめ、日本の安倍晋三前首相が序文を担当。ほかにもオーストラリアのダウナー元外相、英国のファロン元国防相、ニュージーランドのマッカリー元外相、鶴岡公二前駐英国日本大使が参加している。

     


    (1)「英保守系シンクタンクである『ポリシー・エクスチェンジ(Policy Exchange)』が発表した報告は、「2020年以降の世界的な英国の姿を描いた公約」と銘打たれた。この報告は、英国やカナダ、オーストラリア、日本の識者からなる同シンクタンクのインド太平洋委員会が、地域と英国の関わりについて、英政府に政策提言を行った。報告発表に際して、オーストラリアのモリソン首相が「英国のインド太平洋関与を歓迎する。地域に戦略的比重を置き転換する時期が来ている」と、コメントを出している」

     

    英連邦と日本の政治家が、執筆に参加する異色の報告書が発表された。英国が、アジア外交で何をすべきかを解き明かしているもの。豪州のモリソン首相は、英国のインド太平洋関与を歓迎するとしている。

     

    (2)「報告は、英国がインド太平洋地域にあるオーストラリア、インド、日本、韓国、台湾などの友好国と緊密な連携を提案し、これらの国々とともに、1941年に英国と米国が署名した大西洋憲章と同様の21世紀の民主主義憲章にコミットすることを提案している。大西洋憲章は、第2次世界大戦後の世界平和回復のために英米の両国が合意した基本原則。互いに領土の拡大を求めないことや、妨害のない通商の開放の維持、さらには国連憲章にも通じる、侵略の脅威を与える国の武装解除と安全保障体制の構築に務めることなどを約束している」

     

    英米が、1941年に発表した「大西洋憲章」と同様なものを、インド太平洋構想についての「憲章」にまとめるべきとしている。これは、欧州とアジアの主要国を網羅して、中国への対抗を鮮明にし、自由と民主主義の砦にすることだ。これを基盤に「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」という軍事同盟へ進めれば、中国を完全に包囲できる。

     


    (3)「遠いインド太平洋地域への関与は、英国財政の大幅な資源移転が必要となり、英国は膨張する中国共産党対応の決断が迫られている。すでに、フランスとドイツは、インド太平洋における関与と平和的戦略を発表している。安倍前首相は序文の中で 、「英国はこの地域の国々と協力して、民主主義の価値を維持し、近年影響が大きくなった多国籍機関を支援することができる。安全保障面では、英陸軍、特に英海軍がインド太平洋海域で歓迎すべき存在となるだろう」と書いている」

     

    アジア版NATOを結成するには、特別の財源も必要ないであろう。各国の共同防衛であるから、中国はアジア版NATO加盟国全体を敵にすることになる。中国にとって、その軍事負担は並々ならぬ規模に膨らむはずだ。中国は、人口高齢化で経済成長率が低下する。アジア版NATOは、その中国にとって逆に脅威となろう。いずれは、中国が「白旗」を掲げる時期がくるはずだ。戦わずして中国を屈服させるには、アジア版NATOによる結束力が要になる。

     

    (4)「報告書はこう指摘する。「すべてのインド太平洋地域の友好国は、英国が地域にもっと関与することを期待している」「英国の完全な国際化のためには、東インド洋から西太平洋、オセアニアに広がるインド太平洋地域が優先されなければならない」「英国は、米国およびインド太平洋地域、他地域の同じ考えを持つ国々と協調して、世界的な協力、開放性、法の尊重および一般に認められた行動基準の遵守を擁護すべきである」と主張している」

     

    EU(欧州連合)から離れる英国にとって、アジアを経済取引の主要相手先に育て上げなければならない。それには、防衛面でも密接な関係を築くことだ。現在は、そのチャンスであろう。

     


    (6)「具体的には、英国が地域の自由貿易パートナーシップへ参加を申請し、日本、米国、インド、オーストラリアによる4カ国の安全保障対話QUAD(クアッド)への参加を求め、インド洋の中心に位置し米軍基地を構える英国領のディエゴガルシア島のような軍事協力を考えるべきだとしている。ほかにも、中国共産党が70ほどの国々と提携した経済構想「一帯一路」の影響を抑えるために、代替案である米国と同盟国などが主導する「クリーンネットワーク」を通じて、インド太平洋地域に援助することを求めている」

     

    英国が、クアッドに加わることも一法であろう。そうなると英国は名実ともに、インド太平洋同盟の一員になる。英国の新たな生きる道だ。

     

    (7)「香港については、英国の旧植民地であり人権侵害行為にリーダーシップのある行動を取るよう進言。香港の実質的な自治権を侵害した中国共産党幹部に制裁を科すべきだと提案している。さらに、国際的なサイバーセキュリティや公衆衛生などの問題で評価の高い台湾とは、中国をけん制しながらも、関係の正常化を図るべきだとしている

     

    英国は、台湾との関係を密接にすべきだろう。中国には、香港で裏切られた以上、台湾との関係強化で、その失われた外交的利益を回復させることである。米台のほかに英台の関係を強化できれば、台湾の国際的な地位はより強固となろう。

     

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