勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年12月

    a0960_008707_m
       

    日本は、ワクチン購入について控え目な発表をしてきた。韓国の文大統領は逆である。交渉中を「合意」と発表して先方との食い違いが表面化している。韓国が、このように大統領自らが交渉するという異例の形を取っているのは、ワクチン購入が出遅れたからだ。それを挽回すべく「パフォーマンス」に転じている。とんだ、ピエロとなった。

     

    昨日(12月30日)、文大統領は米モデルナから来年第2四半期に2000万人分のワクチン購入で合意と発表したが、モデルナによると「交渉中」である、としたのだ。

     


    『朝鮮日報』(12月31日付)は、「青瓦台が『合意』発表した翌日、モデルナ社『韓国政府と協議中』」と題する記事を掲載した。

     

    米国の製薬会社モデルナ社と2000万人分のコロナ・ワクチン供給で「合意した」とする青瓦台(韓国大統領府)の発表とは異なり、モデルナ側は「韓国政府と協議中」と説明した。そのため「青瓦台はワクチン供給契約についてやや先走ったのではないか」との指摘が出ている。

     

    (1)「モデルナは29日(現地時間)「韓国に4000万回接種分のコロナ・ワクチン供給に向けた韓国政府との協議を確認する」という見出しのプレスリリースを公表した。その中でモデルナは「韓国政府と潜在的に4000万回接種分あるいはそれ以上のモデルナ・ワクチンを供給するため協議中であることを確認する」として「提案された合意内容によると、配布は2021年の第2四半期に始まるかもしれない」と伝えた」

     

    供給側のモデルナが、下線のような発表をしている以上、契約として確定したものではない。文大統領は、それを「確定」のようなイメージで発表したもの。韓国の慌てている事情が透けて見えるのだ。

     

    (2)「モデルナが米国、英国、シンガポールなどとワクチン供給で合意した際に発表した内容と比較しても明確な違いがある。モデルナは今年8月11日「米国政府と早期に1億回分供給で合意」という題目のプレスリリースを出した。これによるとモデルナは「米国政府は1億回分を確保したと発表する」という表現を使った。これに対して韓国に関する発表には「確保」という言葉がない」

     

    モデルナ発表の文書には「確保」という文言がない。

     

    (3)「11月17日、英国政府とワクチン供給で合意した際にもモデルナは「英国政府との供給合意を発表する」と伝えた。英国の規制当局が使用を承認すれば、2021年3月から供給を開始する」という具体的な文言もその内容に含まれていた。12月14日にシンガポールとワクチン供給で合意した際には「シンガポール保健省と契約を結んだ」と説明した。モデルナが韓国について使用した「協議を確認する」という表現は、通常であれば交渉中であることを正式に認める際に使う言葉のようだ」

     

    モデルナは、韓国と協議中であることを認めたに過ぎないのだ。

     

    (4)「モデルナは8月24日「欧州に8億回分を供給するため、欧州連合執行機関との協議が進展していることを確認する」と発表した。それから3カ月後の11月25日「欧州連合が早期に8億回分の事前購入契約を承認したことを発表する」と説明した。協議から契約まで3カ月以上の時間を要したのだ

     

    下線のように、協議から契約まで3ヶ月以上の時間がかかっている。韓国もこの例から言えば、4月以降の契約となりそうだ。

     

    (5)「モデルナは日本と交渉を行っていた今年8月28日「4000万回分を日本に供給するため、日本の厚生労働省と協議中であることを確認する」と発表した。それから2カ月後の10月29日、最終契約が結ばれた後に厚生労働省は「契約を締結した」と発表した。青瓦台がモデルナとの協議について「合意した」という断定的な言葉を使ったこととは対照的だ」

     

    日本の場合、協議から最終契約まで2ヶ月間を要している。こういう状況を見れば、韓国大統領府の発表は「オーバーラン」したことは否めない。韓国国内は、ワクチン確保遅延で焦っている。31日発表の大統領不支持率は、59.8%で就任後最高を更新した。次第に、「藁をつかむ」心境になってきたのだろう。4月の総選挙で与党が、6割の議席を得た「勢い」は消えかかっている。

     

     

    あじさいのたまご
       

    韓国経済は、ワクチン接種の時期が遅れるほど、マイナス成長率が拡大するリスクを抱えていることがわかった。家計債務の対GDP比が、101%(7~9月期)にも達しており、消費支出にブレーキを掛けることが理由である。

     

    文大統領は29日、米国モデルナ社のトップに直接掛け合い、ワクチン確保に乗出すなど、国民のワクチン導入不安を鎮めるべく「パフォーマンス」せざるを得ない羽目に陥っている。

     

    『中央日報』(12月30日付)は、「韓国、コロナワクチン接種4~6月期に遅れれば、GDP最大230兆ウォン損失」と題する記事を掲載した。

     

    全国経済人連合会傘下の韓国経済研究院は、新型コロナウイルスワクチン導入遅延の経済的影響報告書を12月30日に発表した。ワクチン導入時期と新型コロナウイルスの感染拡大傾向が国内総生産(GDP)に及ぼす影響をシナリオごとに分析した。

     

    (1)「来年の新型コロナウイルスワクチン導入時期によっては、経済損失が数百兆ウォンに達することもあるとの調査結果が出た。特に新型コロナウイルスワクチンの一般接種が4~6月期以降にずれ込み感染者数が減らなければ経済成長率がマイナス2~マイナス8%まで落ち込みかねないという」


    ワクチン導入時期によって、経済成長率がマイナス2%~マイナス8%まで拡大する危険性が高いという。これは、22年の大統領選に大きく響くことになろう。与党「共に民主党」候補者は、かなりの逆風を覚悟する必要がありそうだ。

     

    (2)「最も楽観的なシナリオは新型コロナウイルス感染者数が10~12月期水準の1日平均337人を維持し、2021年1~3月期にワクチンが導入されるというものだ。このシナリオで流れる場合、一般人を対象にしたワクチン接種が4~6月期に行われ、2022年7~9月期には新型コロナウイルスが終息するものと研究院は予想した。このように流れる場合、来年の経済成長率は3.4%を記録するものと研究院は予想した」

     

    このケースは、最も楽観的な想定である。2022年7~9月期には新型コロナウイルスが終息するという仮定である。この場合は、来年の成長率は3.4%になろう。

     


    (3)「シナリオ1の「拡散」は1日平均新型コロナウイルス感染者が1200人に増加した状態で楽観シナリオと同じようにワクチン接種がなされることを仮定した。1~3月期にワクチンが導入され4~6月期に一般接種が始まるというものだ。研究院は「シナリオ1で流れる場合、来年の成長率は0%を記録する見通し」と予想した」

     

    1日平均の感染者数は、1200人想定。1~3月期にワクチンが導入され、4~6月期に一般接種が始まるケースでは、来年はゼロ成長率になる。文大統領の広言しているケースは、これであろう。となれば、「ゼロ成長」である。

     

    (4)「シナリオ2の「深刻」とシナリオ3の「非常に深刻」は拡散シナリオと比較して経済的打撃が大きい。シナリオ2の「深刻」は1日平均新型コロナウイルス感染者1500人を仮定した。来年4-6月期にワクチンが導入され、一般接種は7-9月期に始まるシナリオだ。この場合、来年の経済成長率はマイナス2.7%に落ちるものと研究院は予想した。2年連続マイナス成長を記録するということだ」

     

    1日平均感染者数が1500人。ワクチン導入が来年4~6月期、一般接種7~9月期に始まるとすれば、来年の経済成長率はマイナス2.7%にとどまる。

     

    (5)「シナリオ3の「非常に深刻」は最悪の状況を仮定して作った。1日平均感染者が2500人に増加し、4~6月期と7~9月期にそれぞれワクチン導入と一般接種が始まるものと仮定した。この場合経済成長率はマイナス8.3%に落ち込む」

     

    1日平均感染者が2500人に増加し、ワクチン接種が4~6月期と7~9月期にワクチン導入と一般接種がそれぞれ行われると、経済成長率はマイナス8.3%に落込むという。

     

    (6)「年末基準の新型コロナウイルス感染者発生は1日平均1000人水準だ。中央防疫対策本部は30日午前0時基準で新型コロナウイルスの新規感染者が1050人増えたと発表した。現在まではシナリオ1の状況だ。だが状況の悪化でシナリオ2あるいは3に進む場合、経済損失はどれだけになるのか。研究院はこれに対する答も出した」

    (7)「来年のGDP追加損失はシナリオ2で53兆ウォン、シナリオ3で230兆ウォンに達する。感染者増加傾向の中でワクチン導入の遅れはあらゆる経済主体の経済活動を制約し、経済システム全体に致命的になりかねない」と説明した」

     

    最も現実的なケースは、シナリオ2と見られる。マイナス2.7%で損失幅は53兆ウォン(約4兆8000億円)となろう。悪化すれば、シナリオ3のマイナス8.3%に落込む懸念の消える訳でない。家計債務比率が、101.1%(7~9月期)となっている重荷が、個人消費のブレーキになる。

     

    a1320_000160_m
       


    韓国外交部は、日韓政府による日韓慰安婦合意を一方的に破棄しながら、まだ謝罪を求める破廉恥な発言をしている。政府間の合意が、いかに重い意味を持つか理解しない戯言にしか聞えないのだ。米国でバイデン次期政権発足を前に、一芝居打っているに違いない。

     

    日韓慰安婦合意は、オバマ政権時代にバイデン副大統領が日韓双方に強く働きかけて合意した経緯がある。そのバイデン氏が、次期大統領である。韓国は、極めて困った事態が到来したのだ。そこで、韓国外交部はその責任を回避すべく、あたかも日本に責任があるような振る舞いをして、「謝罪」を求めているに違いない。

     

    『朝鮮日報』(12月30日付)は、「韓国外交部、慰安婦問題の解決『日本の自発的な謝罪・反省精神に応じる行動が大事』」と題する記事を掲載した。

     

    チェ・ヨンサム外交部報道官は29日、定例ブリーフィングで「(慰安婦)問題の真の解決のためには日本政府が自ら表明したことがある責任痛感や謝罪・反省の精神に応じる行動を自発的に見せることが大事だ」と話した。

    (1)「チェ報道官は、「2015年慰安婦合意は被害者中心のアプローチが欠如しており、旧日本軍慰安婦被害者問題が解決されることができないというのが国内外の評価」と話した。また「人権蹂躪問題の克服の核心は被害者の救済にある」として「2015年合意は被害者意見が十分に収れん・反映されず、主な被害者をはじめとして合意の受け入れは不可能だという国民的なコンセンサスが形成されていたのは周知の事実」と明らかにした」

     

    文政権は、日韓慰安婦合意2周年だった2017年12月27日、「朴槿恵政府の合意検討結果報告書」を出した。報告書では、「被害者中心的アプローチが欠如し、秘密交渉で民主的統制を逃し、外交政策決定権限が青瓦台(チョンワデ、大統領府)に集中して主務部署である外交部が助演にとどまった」と批判している。

     


    外交交渉は、すべてを公開して行われるのではない。政府の責任において行われるものだ。外交部が「助演」に過ぎなかったと批判しているが、日韓交渉に加わった韓国外交官をすべて「追放」したことと矛楯している。外交部の責任で行われた証拠である。大統領府が交渉したから破棄する理由にならない。国家の責任に帰す問題である。

     

    文政権は、朴政権を否定する目的で行った、慰安婦合意の一方的破棄である。文大統領は当時、日本と再交渉しないと明言している。いまさら、「謝罪せよ」とはとんでもない外交音痴ぶりを世界に晒している。日本では、解決済みの問題である。

     


    (2)「また、「日本が主張する国際社会評価も合意の詳しい内容がきちんと公開されたりする前に出てきたもの」とし、「国連人権委員会は合意の不十分さを指摘し、合意履行の際、被害者意見の権利を十分に反映したり合意内容を修正したりすることなどを勧告した」と説明した。チェ報道官は「それでもわが政府はこの合意が政府間ですでに結ばれた合意ということから、これを破棄せずこの問題が本質的にやりとりするような式の交渉で解決される事案でないという点も考慮して再協議を求めなかった」と述べた」

     

    国連人権委員会は、朝日新聞のねつ造記事に基づく認識である。朝日は、国内記事では謝罪して取り消したが、英文記事では黙殺している。こういう不見識な報道姿勢によって、海外では慰安婦問題を誤解しているのだ。韓国政府も、朝日の記事を拠り所にしている。強制連行ではなかったのだ。

     


    (3)「同時に、「だが、政府は紛争下の性暴行根絶への努力の主導と参加などを通してこの問題が韓日二国間の次元を越えて普遍的人権侵害問題という国際社会内の認識を強固にして追悼教育を実施するなど被害者の方々の名誉と尊厳回復と問題の真の解決に向けて引き続き取り組んできたし、今後も続けていくだろう」と話した。一方、茂木外相は29日、読売新聞とのインタビューで韓日慰安婦合意について「例えば、政権が代わったとしても国同士の約束」とし「責任を負って履行しなければならない」と話した」

     

    戦時下の性暴力根絶は、ぜひとも実行しなければならない。そういう視点で見ると、韓国は同罪である。ベトナム戦争では、日本以上に酷いことをしているのだ。しかも、第二次世界大戦後の行為である。最近では、語学留学したフィリピンで、韓国系児童が万単位で放置されている。これは、平時での性暴力である。韓国は、日本を非難する前に自国男性による醜態を深く恥じ入るべきだ。

    a0960_008564_m
       


    来年2月12日からの春節(旧正月)で、国民の大移動が始まる。これが、コロナ再感染の起爆にならぬよう、封じ込め戦略が始まった。PCR検査の徹底化である。ロックダウン(都市封鎖)のような手荒な措置を避けて、経済と防疫との両立をはかるソフト戦術を取る。自慢の中国製ワクチンは登場しない。接種しても効果が足りず、マスクや手洗い励行が必要とワクチンを入れた箱に書かれているのだ。とんだワクチンが、製造されたものである。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月30日付)は、「中国のコロナ感染再発、春節にらみ対策に試練」と題する記事を掲載した。

     

    中国で新型コロナウイルスの新たな感染が複数発生し、的を絞ったアプローチが試練にさらされている。同国では何億人もが親族を訪ねて移動する旧正月(春節)の休暇が近づいている。

     


    (1)「中国当局はここ数週間、内陸部で最初にコロナ感染が発生した今年初めの全面的なロックダウンや事業閉鎖は避け、一段と選択的で打撃の少ない措置を堅持している。これまではそうした措置によって、景気回復を損なうことなくウイルスの拡散が抑制されてきた。北京市の関係者は先週、旧正月に言及し、「人々の移動や集まりが増え、感染予防と制御は大きな試練に直面するだろう」と述べた。2021年の旧正月は2月12日に始まる」

     

    春節は、民族の大移動である。年一回、親類縁者が里帰りする一大イベントである。細心の注意を図っても、新型コロナウイルス感染者を増やさないことは不可能である。最小限の増加に止めるにはどうするか。防疫当局は、頭をひねっている。昨年は、この春節がコロナ感染拡大のトリガーになった。

     

    (2)「遼寧省の北東部で12月28日、国内で感染した発症例が8人確認された。国家衛生健康委員会が29日、明らかにした。そのうち6人は省都の瀋陽で、2人は同省の港湾都市である大連で確認された。大連では感染者が出た12月半ば以降、住民560万人が検査を受けた。29日に報告された2人を含め、ここ2週間で発症例は35人に上っている。瀋陽と大連ではここ数日、さらなる感染拡大を防ぐため数百の航空便が運航停止となった」

     

    中国製コロナワクチンの有効性には大きな疑問符がついている。ワクチン接種後も、マスクや手洗いを励行せよという「代物」だ。ワクチンの役割を果たしていないのだ。この「無」に等しいワクチンに頼れず、相変わらずPCR検査を多用する。

     

    (3)「これとは対照的に、北京市はより精密なアプローチに徹している。北京ではここ2週間に国内で感染した16人の感染者が報告され、そのうち2人は無症状だった。当局はこれを受け、29日までに2000万人超の市民のうち170万人に検査を実施した。公式データで明らかになった。北京はこのところ新型コロナ関連の一部規制を強化しているものの、市当局はあくまで「適度な厳密さ」で規制を実行するとし、措置の多くは自主的なものにとどめ、大半の市民の日常生活を巡る混乱は最低限に抑えている。学校や幼稚園は閉鎖せず、代わりに検温やマスク着用の義務化を再導入するなどしている」

     

    PCR検査の「絨毯爆撃」である。これまでの予防法と抜本的な変わりはない。

     


    (4)「北京政府は旧正月を祝うことを禁止するのではなく、個人的な集まりや不要な移動を自主的に減らすよう住民に訴えている。政府関連企業や作業部門に対しては、従業員が祝日前後にスケジュールをずらして休暇を取ることを容認し、一斉に大移動が起こるのを防ぐように勧告している。人々は例年、帰省や休暇のために連休の始めに移動している。中国では昨年、旧正月の旅行シーズンが始まるのと時を同じくして新型コロナ感染が広がり始めた。これが急速な感染拡大の一因になったと疫学者はみている」

     

    春節では一斉休暇でなく、休暇・旅行のスケジュールをずらすという。

     

    (5)「中国当局者は感染拡大の防止や抑制策と、経済および日常生活への影響を最小化する必要性という、バランスの重要性を繰り返し強調している。11月に上海浦東国際空港で感染が発生した際には、上海発着の何百という航空便がキャンセルされ、何千人もの空港スタッフが検査を受けた。対策を主導する専門家は、市全体の検査実施が必要か、それとも混乱の少ないアプローチを取るべきかを議論したという。華山医院の感染病部門ディレクターで公衆衛生専門家のザン・ウェンホン氏が、中国国営テレビで26日放映されたインタビューで明らかにした」

     

    中国は、過去のロックダウンが、多大の代償をもたらしたことから、これを回避する方針を立てている。

     


    (6)「上海疾病予防管理センターのサン・シャオドン副所長によると、結局は限定的な制限を導入し、地元住民への影響を抑えることになったという。北京のアプローチの精密さは29日にも、ケンピンスキーホテルが運営する高級アパートで発揮されていた。アパートの住民1人が韓国を訪れて戻ったところ、検査で陽性になった。感染が報告されると、感染者と同じエレベーターを利用する隣人たちは2週間の隔離措置に入った。住民の1人が明らかにした」

     

    最低限の隔離措置に止めている。中国も、全面封鎖がいかに大きな痛手であったかを経験したのだ。

    a0960_008572_m
       

    EU(欧州連合)で、コロナワクチンの接種が始まったものの、拒否する者も出ている。英国では、4人に1人が「受けたくない」と調査に答えているほど。フランスでは59%にも達している。特に若者の間でワクチンへの興味は冷ややかだという。超スピードのワクチン開発であったので、不安感もあるのだろう。

     

    スペインでは、ワクチン接種を拒否した者をリストにして、EUと共有すると強硬姿勢だ。一日も早くコロナを収束させて経済の正常化を図りたい当局には頭痛の種になっている。

     

    『東亜日報』(12月30日付)は、「スペイン、拒否者名簿『EUと共有』 ワクチン『ブラックリスト』論議」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)加盟国であるスペインが、新型コロナウイルスのワクチンの接種拒否者の名簿を作成し、他の加盟国と共有する案を推進している。「英国発のウイルスの変異種が流行する欧州の状況を考慮すると、避けられない措置」という意見と「過度なプライバシー侵害」という反論が拮抗する。



    (1)「AFP通信などによると、スペインのイジャ保健相は28日、「ワクチン接種拒否者の名簿を作成してEU加盟国と共有する計画」とし、「ワクチン接種は義務ではないが、他の欧州国家との情報共有は必要だ」と明らかにした。ただし、この名簿は外部に公表せず、拒否者の勤務先や雇い主にも非公開にすると強調した」

     

    スペインでは、「新型コロナウイルスワクチンカード」、「新型コロナワクチンパスポート」または「新型コロナウイルス電子証明書」の名の下にワクチンを接種した者の情報が集められるデジタルデータベースの作成に対して政治的論争が続けられている。新型コロナウイルスに悩まされているスペインとしては、ワクチン接種で局面打開を図りたいところだ。当局の気持ちもよく分かるのだ。

     

    当該の新型コロナウイルスワクチンカードは特に渡航やビジネス環境での使用が可能であるとされている。スペインの一部企業が新型コロナウイルスワクチンの接種を拒否する従業員の契約を破棄する報道ある。ここまでくると、行き過ぎの嫌いもある。先ずは、説得が重要だ。世界保健機関(WHO)も新型コロナウイルスデジタルカードに関する取り組みを進めている。

     


    (2)「27のEU加盟国は今月27日から医療従事者や介護施設の入居者に米製薬大手ファイザーとドイツのバイオテクノロジー企業ビオンテックが共同開発したワクチンの優先接種を実施している。まだ大規模な一般市民への接種は始まっていないが、欧州全般に「ワクチンを打たない」という意見が少なくなく、各国保健当局が頭を痛めている。EU加盟国は域内の自由な移動を保障した「シェンゲン協定」により、国境の移動に制約を受けない。一国家が国内の感染対策をうまくしても、域内の他国で新型コロナウイルスが流行すれば、一瞬にして欧州全体に感染が拡大する恐れがある。イラ氏の名簿作成の方針も、このような懸念によるとみられる」

    欧州は、全般的に保守的な気風の強い地域である。米国のように、新しいものを躊躇なく受入れる精神的な土壌とは異なっている。米国は、次期大統領と同副大統領が公開で接種するなど広報に躍起となっている。接種しても大した副作用はなく、メリットの大きさが理解されるようになれば、接種する人々は増えるに違いない。

     


    (3)「多くの大衆は、新型コロナウイルスのワクチンが短期間に開発されたとして、安全性を懸念している。はしかや小児麻痺など過去のワクチン開発には少なくとも数年を要したが、新型コロナウイルスのワクチンは1年も経たずに完成された。医療界は、「技術の進歩を考慮しなければならない」と接種を促しているが、市民の不信感は依然として強い」

     

    従来型のワクチン開発と違って、ファイザーやモデルナによる「mRNAワクチン」は、これまで承認されたワクチンがないことから不安視されるのだろう。ただ、最終治験の結果では95%という有効性を示し、ほとんど副作用がないとされている。仮にあっても、すぐに対応できるなど、「不安対策」は万全である。

     


    (4)「累計感染者が約190万人にのぼるスペインでは、先月の世論調査で「ワクチンを打たない」という回答が47%に達した。今月の調査では28%に減少したが、依然として約3人に1人がワクチンを拒否している。累計感染者が約260万人のフランスと約130万人のポーランドでは、最近の世論調査で「ワクチンを打つ」という回答は、それぞれ41%、20%にとどまった」

    最初は、誰でも不安がある。時間が経てば冷静に受入れられるものだ。韓国では、ワクチン入手が遅れて政治問題化している。文大統領が昨日、米モデルナの経営トップと直談判して入手を確約させたほど。欧州も、自然に接種を受入れるムードになろう。


    このページのトップヘ