勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年12月

    テイカカズラ
       

    韓国国民は、今回のユン検察総長追放劇の不条理さを観察していた。毎月1回行っている「次期大統領候補好感度調査」(12月)で、ユン検察総長が1位に踊り出た。今回のユン検察総長追放劇では、ユン氏が前記の世論調査でランクされるのが政治的行為と「因縁」をつけられたほどだから、与党には別の意味でも気になる存在だったのだ。仮に、ユン氏が次期大統領候補に名乗り出れば、与党は手強い相手になる。そこで、事前にユン氏の芽を摘んでしまえという思惑があった。

     

    だが、国民は明き盲ではない。文政権の邪悪な行動と見ていたのだ。むろん、ユン氏はこういう形で世論調査に名前がでること自体、迷惑として世論調査会社へ削除するよう、2回も要請したという。それでも、こういう高い「好感度」を獲得していることは、検察の公明性を期待・評価している証拠であろう。

     

    『ハンギョレ新聞』(12月29日付)は、「韓国検察総長、次期大統領候補の好感度調査で首位」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の次期大統領選挙候補者の好感度調査で、ユン・ソクヨル検察総長が首位に立ったという結果が出た。イ・ナギョン共に民主党代表とイ・ジェミョン京畿道知事がその後を追っている。

     

    (1)「リアルメーターは、今月21~24日の4日間、全国有権者2041人を対象に調査した結果、次期大統領選候補好感度調査でユン総長が23.%を記録し、イ・ナギョン与党代表(18.%)とイ・ジェミョン知事(18.%)を抑え、トップになったと発表した。ユン総長の大統領選候補好感度は先月(19.%)より4.1ポイント上がっており、3ヵ月連続上昇したと、リアルメーターは明らかにした。共同2位との格差は5.7ポイントで、誤差範囲外だ」

     

    ユン検察総長のこれまでの好感度推移は、次の通りである(リアルメーター調査)

     

             ユン検察総長   イ与党代表

    2020年6月   10.1%    30.8%

         7月   13.8%    25.6%

         8月   11.1%    24.6%

         9月   10.5%    22.5%

        10月   17.2%    21.5%

        11月   19.8%    20.6%

        12月   23.9%    18.2%

     

    上記のユン検察総長とイ与党代表の好感度推移は、12月で逆転している。これは、理不尽なユン検察総長追放劇に対する国民の怒りを表わしている。ユン検察総長が、大統領選へ出馬するかどうかは全く不明だが、国民は現政権への不満と不安を表明していると受入れるべきだろう。

     


    (2)「ユン総長の好感度は、すべての地域でまんべんなく上昇した。年代別では30代(+7.%ポイント)で大幅に上昇した。進歩層(+2.8ポイント)よりは保守層(+3.6ポイント)で大幅に上昇した」

     

    ユン検察総長の好感度は、地域別では全地域で上昇した。年代別で、30代(+7.%ポイント)が大幅に上昇した。また、進歩層も保守層もまんべんなく上昇している。これを見ると、今回のユン検察総長追放劇はいかに理屈に合わなかったかを示している。


     

    前記のような結果に、大統領府はまだ反省していないのだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(12月27日付)は、「ブーメランとなった『検察総長懲戒』 文大統領、16時間後に謝罪、残るカードは」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「大統領府内部では、来年1月に高位公職者犯罪捜査処(公捜処)を設置し、早ければ来年旧正月前にチュ長官を含めた追加の内閣改造を断行することで、巻き返しを図るものとみられる。これと共に、大統領府秘書陣の再編が同時に進められる可能性も取りざたされている。大統領府関係者は「来年1月から検察と警察の捜査権調整が本格的に施行されるが、まだ検察に残っている直接捜査を完全になくすことが目標」だとし、「いわゆる『検察改革シーズン2』を任期内に完了し、完全な検察改革を成し遂げれば、支持層も結集すると思う」と見通した」。

     


    下線のように、まだ「悪巧み」をしている。「検察に残っている直接捜査を完全になくすことが目標」と検察の骨抜きを狙っている。韓国の検察から捜査権を奪い、起訴権だけ残すというもの。捜査権は警察に移し政権の影響下に置くという構想だ。こうして、検察を有名無実化して、文政権の疑惑捜査を防止するという恐るべき「腐敗推進」政権を実現させようとしている。ここまで来たら、韓国民主主義は死亡する。韓国国民は、「火焔瓶」を持って軍事政権に立ち向かったように、「言論」で立ち上がるべきだ。

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    今年の中国GDPは、主要国で唯一の2%台のプラス成長と喧伝されている。さらに来年も、8%台成長と景気の良い予測が語られている。本当に、それほど好調であろうか。肝心の個人消費が振わず、金融機関は、小売業に対して38%もの融資拒否をしているというデータが発表されているのだ。

     

    中国のGDP成長率を支えているのは、不動産需要である。すでに長いことバブル状態が続いている。だが、国民の主な貯蓄手段は、貸家投資という歪な資産形成になっている。都市部では、すでに2割の空き家が出ており早晩、これも行き詰まることは必至だ。住宅投資が無限に続くはずがない。その幕引きがいつか、という状況になっている。

     

    2割の空き家が出ているように、建設期以降のマクロで見る住宅投資効果はマイナスになる。住宅ローン返済が、家計を直撃するからだ。すでに、消費不振となってはねっ返っている。最早、住宅需要と個人消費の堅調という「二兎」は追えないのだ。

     

    『ブルンバーグ』(12月29日付)は、「中国で小売企業への融資拒否急増、個人消費の弱さ浮き彫りーCBBI」と題する記事を掲載した。

     

    中国では個人消費の回復が弱く、小売業などの中小企業が融資確保に苦しんでいることがチャイナ・ベージュブック・インターナショナル(CBBI)のリポートで示された。「ベージュブック」とは、米地区連銀経済報告(ベージュブック)のことを指すが、これと同じ調査手法を中国で生かしていることから、「チャイナ・ベージュブック」と言われている。克明な調査で知られている。

     

    (1)「独自の経済データを提供するCBBIがまとめた最新四半期リポートによれば、10~12月の融資拒否率は小売業で38%と、前四半期の14%から大きく上昇した」

     

    金融機関は10~12月期に、小売業への融資拒否率が38%にも及んだ。7~9月期の14%から見れば2.7倍もの急増である。小売業の販売実績が、悪化している結果だ。もっと煎じ詰めれば、個人消費の不振を不信を表明している。

     

    中国政府が現在、アリババ系の金融会社アント・グループを独占禁止法容疑で調査している。本当の目的は、フィンテック企業の肥大化を防ぎ、正規金融機関の融資能力を回復させることだ。つまり、IT系金融会社には、「決済機能」だけに特化させ、預金・貸出の機能を銀行に移させる狙いであろう。

     

    (2)「中小企業の融資拒否率は10~12月に24%に上昇し、大企業の倍になった。CBBIは「大企業は入手可能な融資を吸収し続け、中小企業よりずっと安価な資本コストの恩恵を受けている」と指摘。「中小企業の苦境とは反対の状況」との認識を示した」

     

    国有企業は、国有銀行が融資しているので「借入れ難」という問題が起こらない。だが、中小企業の融資拒否率は10~12月に24%にも上がっている。こういうアンバランスは、中国の金融システム自体に問題もあるが、信用不安で「信用創造」能力が低下していることを示唆している。中国経済の末端は、このように極めて不安定な状況に追込まれているのだ。

     

    7~9月期は、高級ハンドバッグや化粧品、乗用車への支出が増えた。だが、スポーツ用品やビール、飲食関連の大衆消費は低迷していた。10~12月期は、この大衆消費の停滞が一段と鮮明になっている。

     


    (3)「CBBIの分析で分かるのは、中国の景気回復が公式統計の示すよりもずっと勢いを欠き、個人消費がまだ弱いことだ。中小・民間企業への融資拡大を奨励する中国政府の取り組みに逆風が吹いていることも示唆されている。リポートは11、12両月に行った企業幹部や銀行スタッフとの3400を超えるインタビューを基にしている」

     

    IMF(国際通貨基金)のビトール・ガスパール財政局長は10月、中国の新型コロナウイルス感染拡大に対応する財政刺激策について、焦点を財生産のための投資から消費支援と社会的安全網の拡充に移す必要があると指摘していた。現実に、中国政府が行ったのは、逆であって財生産のための投資を重視し、消費支援策は行わなかった。これは、当面のGDP押し上げだけを狙った結果である。今年のGDPが、プラス成長になる主因はこれだ。

     

    ガスパール局長は、中国の長期的な潜在成長力は新型ウイルス感染拡大の影響を免れないと指摘している。中国が今年、金融の量的緩和に力点を置いたので、不動産バブルのリスクがさらに高まっていることを示唆するものだ。バブル崩壊を防ぐ金融の安定化が今や、中国にとって大きな課題になったのである。金融超緩和(不動産バブル)と金融逼迫(小売業への融資拒否)という、相反する事態に見舞われている。要警戒の末期的段階になった。

     

     

     

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    来年1月20日、米国はバイデン次期政権が発足する。秒読み段階に入った。バイデン氏は、次期外交スタッフと話合いの機会を持った。同盟国を結束して対中国外交を進めるという基本方針の確認であろうが、韓国文政権は「二股外交」の将来について危惧し始めている。

     

    『中央日報』(12月29日付)は、「バイデン氏『中国との競争で同盟と連合』、韓国への選択要求予告」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン次期米大統領が28日、次期政権の外交・安保チームとテレビ会議を行い、対中圧迫原則を再確認した。

    バイデン氏はテレビ会議後の記者会見で、中国政府が貿易悪習と技術、人権に責任を負うようにし、中国と競争する中で考えが似たパートナー・同盟と連合を構築する時にわれわれの立場はさらに強くなるだろう」と話した。続けて、「われわれは国際経済でほぼ25%を占めているが民主的なパートナーらと一緒なら経済的レバレッジは倍以上になるだろう」とした」



    (1)「これは、来月発足するバイデン政権が中国牽制に向け同盟を糾合するという事前予告だ。韓国は米国と中国の間で選択を明確にするようにとの圧迫がバイデン政権でさらにはっきりとする見通しだ。これに先立ち行われたテレビ会議には、国務長官に指名されたアントニー・ブリンケン氏、国防長官に指名されたロイド・オースティン氏、国家安全保障担当大統領補佐官に指名されたジェイク・サリバン氏ら対外政策の核心となる参謀陣が参加した。バイデン政権発足に先立ちあらかじめ開かれた国家安全保障会議(NSC)のようだった」

     

    米中関係は、中期的な目で見れば一段と緊迫化する見通しである。中国が、習近平氏の国家主席「永久化」を狙って、米中対立をバックに自己の権力基盤を固めると見られるからだ。敵(米国)に背中を見せる訳にいかない状況に変ったからだ。

     

    米国は、同盟国の力を結集させる方針である。幸い、EU(欧州連合)の核である、ドイツとフランスが、軍艦を西大平洋へ派遣する方針を決定した。英国は、新鋭空母『クイーン・エリザベス』について日本を母港にして派遣するという大胆な決定までしている。こういう状況下で、韓国だけが「二股外交」で中国と誼を通じることが許されるはずがない。中国について、白黒をはっきりするように迫られるであろう。もはや、曖昧な姿勢は認められない状況になってきたのだ。

     


    (2)「米国は、すでに日本、オーストラリア、インドと4カ国の安保協議体であるQUADを構成して中国包囲戦略を現実化している。先月インド洋で4カ国が参加した大規模海上合同軍事演習を実施して中国を軍事的に牽制した。米国は、QUADを「QUADプラス」に拡張し参加国を増やそうとしている。トランプ政権に続き、バイデン政権でもQUADプラスに韓国も参加するよう要請するものと観測される」

    韓国が、具体的に白黒を迫られるのは、「QUADプラス」としての参加であろう。韓国は前述のように、中国と経済的に密接な関係にあるドイツが、戦艦を西太平洋へ派遣することの意味を覚るべきである。経済は経済、安全保障は別という割り切り方を学ぶべきなのだ。

     

    文政権が、中国に「未練」を見せるのは、中国に思想的な親近感を持っている結果だ。これは、韓国世論と大きくかけ離れている。韓国の世論調査では8割が「親米派」である。「親中派」は数%に過ぎないのだ。

     


    (3)「バイデン氏は記者会見で、米中会談が開かれれば人権問題も取り上げると言及した。中国が内政問題で敏感に反応する香港民主化と新疆ウイグルの人権問題を提起するものと示唆した。バイデン氏はこの日北朝鮮には言及しなかったが、就任後には人権問題で北朝鮮を圧迫する可能性が大きいという見方が多い。また「対北朝鮮ビラ散布禁止法」を強行した韓国政府に向けても基本権侵害議論を取り上げるのではないかとの懸念が続いている」

     

    自由主義諸国と中国との対立点の一つは、中国の人権無視である。EUが、中国を対立軸に据えたのは、香港問題に端を発する人権弾圧である。これが、EUを急速に「反中」へ向かわせている。共産主義=人権弾圧という構図ができあがっており、EUは黙認しないという強い姿勢で統一したのだ。中国による東欧への「一帯一路」支援の空約束も、中国離れを強めている。金の切れ目が縁の切れ目になった。

     

    韓国は、こういうEUの対中認識の変化も知るべきである。中国経済と縁の深いEUが、中国へ背中を見せ始めたのである。韓国の「二股外交」が、許される状況でなくなったことを事実として受入れるべきである。

     

     

     

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    韓国は、ワクチン接種希望が8割と高いが、肝心のワクチンの手当ができずに四苦八苦している。とりわけ、日本が早ければ2月末に接種開始計画だけに、韓国政府は浮き足立っている。国民の不安を抑えるために、根拠不明のワクチン接種計画が飛び交っているのだ。

     

    韓国政府はこれまで、ワクチンの安全性を確かめるため、急いで接種する必要はないと発言してきた。だが、この発言はワクチンへの恐怖感を煽るとして批判されると一転、早期の接種計画を矢継ぎ早に打ち出している。安全承認期間を大幅に短縮するというのである。

     


    韓国政府は12月27日、ワクチン承認にかかる期間を規制当局が通常の180日程度から40日にまで短縮すると発表。通常数カ月かかる供給・販売の承認手続きも約20日に短縮すると明らかにした。『ロイター』(12月28日付)が報じた。

     

    この安全性確認期間の大幅短縮は、これまでの政府見解と180度も異なるのだ。こうした、場当たり的な方針転換の裏には、日本との「ワクチン競争」という宿命的な問題が潜んでいる。日本には負けられない、という小児的競争心が存在するのだ。

     


    『朝鮮日報』(12月29日付)は、「文大統領『ワクチン心配しなくてもいい』 疾病管理庁長『不確実性かなりある』」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は28日、「『韓国は(新型コロナ)ワクチンを十分に確保できていない』『接種が遅れるだろう』という懸念が一部にあるが、事実ではない」と述べた。

     

    (1)「文大統領は同日、今年最後の首席補佐官会議で、「政府は来年2月から医療施設や老人介護施設などの集団収容者・従事者ら優先順位対象者から接種を開始できるものと予想している」「すでに十分な量(のワクチン)を確保しており、突発的な状況に備えた追加ワクチン確保を推進している」と明らかにした」

     

    文大統領は、来年2月から接種開始と発言したが、極めて政治的ニュアンスが含まれている。政府高官が、思いつきのバラバラ発言をしているので「まとめた」という感じだ。ワクチン入手の確実なメドは立っていないのだ。

     


    (2)「この前日の27日、盧英敏(ノ・ヨンミン)大統領秘書室長は、「来年2月には接種が開始され、4~6月期には一般国民を対象に(ワクチン接種が)可能だろう」と述べた。丁世均(チョン・セギュン)首相は、「導入時期を断定することはできない」と発言して騒動になった。このため、青瓦台と政府間の足並みの乱れが指摘されるや、大統領が乗り出してきて「2月に接種」とクギを刺したものだ」

     

    大統領秘書室長や首相の発言は、天と地ほどの違いがある。首相発言の「ワクチン確保のメドがついていない」が、正しいであろう。現実のワクチン手配は、大統領府でなく内閣が行っているからだ。大統領発言の「2月接種」は、実現可能性のない業務命令であろう。

     

    (3)「疾病管理庁の鄭銀敬(チョン・ウンギョン)庁長は28日の記者会見で、「(新型コロナワクチンは)1~3月期から入ってくると予定されているが、(使用承認)許可や供給時期などを引き続き調整しているところだ」「ワクチンの生産量や流通問題など、不確実性がかなりある」と述べた。ただし、ハイリスク群の医療従事者や療養病院・介護施設などの集団施設に居住する高齢者など約100万人から優先接種を始め、来年7~9月期までに集団免疫を形成する水準まで接種するのが目標だとした」

     


    疾病管理庁トップの鄭銀敬氏の発言内容の詳細は、次のようなものだ。

     

    「24日に発表した通り、政府は合計4600万人分(8600万回分)のワクチン購入を決め、このうち3600万人分(6600万回分)は購入契約締結を完了し、1000万人分(2000万回分)は契約締結が進められている。政府はワクチンの種類と導入時期に対するポートフォリオをまとめてワクチン購入を推進しており、事前購入したワクチンは来年2~3月から相次ぎ韓国に入ってくる予定だ」と明らかにした。以上は、『中央日報』(12月28日付)が伝えた。

    要約すれば、韓国政府が希望するスケジュールは上記の通りであるが、確約されたものでないこと。また、国内での安全性確認という期間が必要になる。こうした諸条件を勘案すれば、文大統領の「来年2月接種開始」の実現性は、極めて怪しくなる。まだ、ワクチン購入予定先から一社も韓国政府へ「承認申請」が出ていないのだ。日本ではファイザーから提出され、厚労省での承認作業が始まっている。こういう日本側の状況と比較して、韓国の「2月接種」は不可能であろう。

     

    (4)「高麗大学医学部予防医学科のチェ・ジェウク教授は、「ワクチン確保が遅れたことに対する謝罪と認定、依然として主要国の承認が出ていない英アストラゼネカ社のワクチンを先に導入する経緯からまず透明性をもって明らかにすべきだ」と言った」

     

    韓国が輸入予定のアストラゼネカ社のワクチンは、まだ主要国で使用承認が出ていないのだ。それにも関わらず、韓国が独自判断で接種するのは余りにも冒険過ぎる。物理的に韓国での2月接種論は、政治的発言と言わざるを得まい。

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    東南アジア諸国は、来年1月20日までの任期である米国トランプ政権と駆け込み合意を急いでいる。次期バイデン政権が、人権問題など厳しいことを要求される前に、トランプ政権下で合意を済ませようというものだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月28日付)は、「東南アジア・米国、安全保障や経済分野で駆け込み合意」と題する記事を掲載した。

     

    米国の政権交代を前に、安全保障や経済などの協力でトランプ政権と合意に持ち込む東南アジア各国の動きが相次ぐ。実利を重視するトランプ大統領の在任中に、駆け込みで成果を得たい東南アジア側の思惑がのぞく。人権や民主主義などの理念を優先しそうなバイデン次期米大統領のアジア政策への不安も背景にある。

     


    (1)「12月8日、フィリピンのロレンザーナ国防相は、マニラを訪れたミラー米国防長官代行との会談で、米国から2900万ドル(約30億円)相当の武器の供与を受けることで合意した。ライフルや即席爆発装置(IED)対応装備などで、フィリピンのドゥテルテ大統領の治安対策を強化する狙いだとみられる。フィリピンは11月にも、オブライエン米大統領補佐官(安全保障担当)が同国を訪れた際に1800万ドル相当の武器システムを譲り受けることを申し合わせた」

     

    フィリピンは、米国から4700万ドルもの武器供与を受けることになった。中国による南シナ海での軍事強化に備える面もあろう。

     

    一方で、中国はこれに水を差すニュースを流している。ドゥテルテ大統領が、米国に2000万回分の新型コロナウイルスワクチンの提供を求め、「提供できない場合、訪問軍地位協定(VFA)を破棄する」と述べた、というもの。『人民日報海外版』ニュースサイトが27日付で報じた。真偽のほどは分からない。

     

    (2)「インドネシアのルフット海事・投資担当調整相は11月中旬、同国が新たに設ける政府系ファンドに米国の政府機関である国際開発金融公社(DFC)が20億ドルを出資する契約にワシントンで署名した。ルフット氏はジョコ大統領の腹心だ。このファンドは新型コロナウイルスで打撃を受けたインドネシア経済の回復の起爆剤として、ジョコ氏が各国に資金拠出を求めている。インドネシア側は総額150億ドル規模を目指し、米国は早々に拠出を表明した」

     

    米国は、中国の「一帯一路」に対抗して中国よりも安い金利の開発資金提供を約束している。その一環である。

     

    (3)「東南アでは損得勘定で取引ができる現在のトランプ政権下だと、安保や経済の協力が進みやすいとの見方が根強くある。米国は今秋にインドネシアに適用してきた関税優遇制度を延長した。南シナ海を巡り中国との対立が激化しており、沿岸国のインドネシアの協力を得る狙いもあったとみられる。ミラー国防長官代行は12月7日、ジャカルタを訪れ、インドネシア側と合同軍事演習を増やすことで一致した」

     

    トランプ政権は、大雑把という印象なのだろう。それだけに、インドネシアはトランプ氏の在任中に懸案の経済問題を解決しようという思惑が働いている。

     


    (4)「トランプ氏は、「アジア軽視」といわれてきたものの、一定の実利はもたらした。米国から東南アジア諸国連合(ASEAN)への直接投資は19年が約245億ドルで、オバマ前米政権末期の16年の約1.6倍に達した。インドネシアやベトナム、カンボジアの対米輸出は17年のトランプ政権発足後、増える傾向だ」

     

    米国は、オバマ時代に比べるとトランプ政権になって、ASEANへの投資が増えている。これが、「トランプ株」を上げている。「花より団子」である。

     

    (5)「ベトナムでは10月に、南部のビントゥアン省で液化天然ガス(LNG)基地の建設に米電力会社のAESが参画することが決まった。署名式にはオンライン形式でポンペオ米国務長官も参加した。ロイター通信によると、ポンペオ氏は「毎年数十億ドル相当の米国産LNGの輸入の道が開かれる」と強調した。ベトナムは10月に、今後3年間で5億ドルの米国産豚肉を輸入することでも米側と合意した」

     

    (6)「ベトナムは12月16日、米財務省から制裁措置の対象になる「為替操作国」の認定を受けたものの、関連制裁を回避するため、対ベトナムの貿易赤字に懸念を示すトランプ氏が大統領の間に、赤字削減を急ごうとした意図が透けて見える」

     

    ベトナムは、米国との関係が良好であるので、さらに関係強化に動いている。米国から、液化天然ガスと豚肉の輸入を増やして、急増している対米貿易黒字の解消をアピールしているのだ。

     

     

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