勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年12月

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    韓国文大統領は25日、今回のユン検察総長の「停職2ヶ月」騒動を巡る混乱で国民に謝罪した。しかしこれまで、ユン検察総長を追放して政権側の犯罪を阻止し、議員身分の安泰を願っている面々にとっては切実である。まだ、ユン氏を国会で弾劾し追放すると息巻いているのだ。

     

    普通、罪を犯した側は雲隠れしているものだが、韓国は別である。当事者と思われる連中が、前面に出て来て喚き散らすという異常な光景を見せている。民族性の違いとはいえ、大勢で騒げばそれが「正統化」するという信念を持っているようだ。中国で、ウソを100回言えば真実になるという屁理屈と同じだ。中国人と韓国人は、実に良く似た部分を持っている。

     


    『ハンギョレ新聞』(12月26日付)は、「検察総長弾劾を準備『今回の事件は司法クーデター』韓国与党、懲戒停止決定に反発」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の裁判所がユン・ソクヨル検察総長の懲戒処分執行停止申立てを受け入れる決定を下すと、与党ではユン総長を弾劾すべきだという声が出始めた。

     

    (1)「共に民主党のキム・ドゥグァン議員は25日、自身のフェイスブックに「ユン総長の弾劾案を準備する。ユン総長が大統領の人事権を裁判所に持ち込んだときから国会が弾劾を準備すべきだと考えていた。周りが止めたので裁判所の決定まで見守ることにしたのだ。しかしこれ以上待つことはできない」とし「検察と裁判所が掌握した政治を国会に持ち帰る」と書いた」

     

    韓国与党は、ユン検察総長を国会で弾劾すると言いだした。国会で絶対多数を占めている力を借りて、無法を通そうという理屈だ。狂気の沙汰としか言いようがない。「検察と裁判所が掌握した政治を国会に持ち帰る」とまで言い出す始末だ。

     

    民主主義には、三権分立という制度がなぜ必要か。それは、司法・立法・行政がチェック・アンド・バランスによって、権力の濫用を防ぐためである。現在は、司法府が立法府と行政府の独走を抑制している構図である。このままでは、韓国の民主主義は死滅する。

     


    (2)「キム議員は、「裁判所が荒唐無稽な決定をした。政治検察のトップ、裁判官査察の主犯のユン総長が復帰した」とし、今回の事件を「国民が選出した大統領の権力を停止させた司法クーデター」だと述べた。さらに「国民が選出した大統領の統治行為が検察と裁判官によってめった切りにされるのを必ず防ぐ」と述べ、ユン総長弾劾案を主導する意志を重ねて示した」

     

    韓国進歩派は、皮肉にも三権分立の建前を崩そうとしている。これが、進歩派の看板を掲げた政党の発言である。「進歩派独裁」が、当然という驕った意識である。文大統領の「十八番」は、三権分立なのだ。

     

    (3)「検察総長弾劾訴追案は在籍議員3分の1以上の発議と過半数の賛成で議決が可能だ。現在174議席の民主党は、単独でユン総長弾劾訴追案を議決できる。民主党では裁判所の決定に対する批判の声も相次いだ。キム・ナムグク民主党議員はこの日、自身のフェイスブックに「『判事査察文書』作成は非常に不適切で危険だと判断しながら執行停止認容を決定したことは、感染病拡散が懸念されるとしながら8月の光化門(クァンファムン)広場での集会を認めた前回の決定と同じように荒唐無稽だ」と書き込んだ」

     

    進歩派議員が、絶対多数を拠り所にして「何でも立法できる」という極めて奢り昂ぶった意見を恥ずかしげもなく言っている。これが、韓国進歩派の実態である。保守派は市場主義である。市場主義は、

    自由主義=民主主義である。韓国の進歩派は、保守派に劣る非合理な民族主義者集団である。

     


    (4)「民主党最高委員のシン・ドングン議員もフェイスブックに「特権集団の同盟として刑事、司法権力を固守しようとする法曹カルテルの強固な抵抗に対し、強度の高い検察改革と司法改革を体系的に強力に推進し、民主的統制、市民的統制をシステム的に構築する」と書き込んだ。ミン・ヒョンベ民主党議員もフェイスブックに「大統領の(検察総長懲戒の)裁可を覆す裁判、これは明白な三権分立違反ではないか」とし「検察が罪だと思うことだけが罪になり、裁判官が見たいことだけを見ながら下す判決。このようなことがいわゆる司法壟断なのだ」と明らかにした」

     

    下線部分では、「司法壟断」と言い出した。だが、司法は、憲法と法律に則って判断している。勝手な尺度を持ち出して「壟断」しているのではない。法律は、立法府の国会が定めたものだ。要するに、最終的には国民がつくった法的な尺度に基づく。それゆえ、政治が司法判断に影響を与えてはならないのである。これを以て、「司法壟断」とは笑止千万である。

     


    (5)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領はこの日、カン・ミンソク大統領府報道官の書面でのブリーフィングを通じて「裁判所の決定を尊重する」と明らかにした。さらに「法務部と検察は安定的な協調関係を通じて、検察改革と捜査権改革など後続措置を支障なく推進していかなければならない」と指示し、両機関の協業を強調した」

     

    文大統領は、「司法判断を尊重する」と発表した。当然すぎる言葉である。この文氏は、今回のユン検察総長「停職2ヶ月」問題では、行政裁判所の判断が出る直前、大法院(最高裁判所)と憲法裁判所のトップを大統領府に招いて圧力を掛けた。まさに「行政壟断」をやろうとして失敗したのである。嘆かわしいことだ。



    『ハンギョレ新聞』(12月26日付)は、「韓国検察総長をめぐる議論、これ以上政治運営の負担になってはならない」と題する社説を掲載した。

     

    (6)「“国民により選出された大統領”が政務職の公務員である検察総長を懲戒したことを受け、“選挙で選ばれていない判官”である司法府が最終判断することがはたして適切かという指摘には一理ある。この問題は大統領制の起源の米国でも長い論争の種だった。三権分立と大統領権限および責任に関する建設的な論争は今後も必要だろうと思われる」

     

    三権分立は、18世紀のロックやモンテスキューの主張である。世界の近代憲法の基礎になっているのだ。米国で、三権分立に疑義を挟む話は断片的なものだろう。そういう「つまみ食い議論」を韓国に導入して、ユン検察総長追放を正統化してはならない。『ハンギョレ新聞』の自殺行為である。

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    これまでの文大統領は、難問に突き当たると「沈黙」して時間稼ぎをしてきた。ところが、今回のユン検察総長の「停職2ヶ月」問題では対応が異なった。行政裁判所が、停職処分を不当と決めたからだ。大統領が人事権を発揮した停職問題が、裁判所によって覆されたのは「弾劾」に相当するとの見方ができたほど。これに慌てて、文大統領が「謝罪」する羽目に陥った。文氏の権威もジリジリと低下し始めている。

     

    「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は25日、ソウル行政裁判所が24日夜に尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長に対する停職2カ月の懲戒処分の効力を停止する決定を下したことを巡り、混乱を招いたとして国民に向け謝罪した。行政裁の決定翌日のこのような対応は、今回の事態を早期に収拾して国政を安定させ、防疫などの懸案解決に注力するとの意思を示したものと受け止められる」 以上は、『聯合ニュース』(12月25日付)が報じた。

     


    『中央日報』(12月25日付)は、「韓国野党、検察総長を復帰させた裁判所『事実上の文大統領弾劾決定』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国最大野党「国民の力」の議員が25日、ユン検察総長に対する裁判所の決定について「事実上、文在寅(ムン・ジェイン)政権に対する審判」と主張した。

     

    (1)「元判事の金起ヒョン(キム・ギヒョン)議員はフェイスブックにコメントを掲載し「(裁判所の判決は)文大統領に対する弾劾決定と言っても過言ではない」とし「事実上、弾劾を受けた文大統領の謝罪と秋美愛(チュ・ミエ)長官の更迭を要求する」と話した。同じく元判事の全珠惠(チョン・ジュヘ)議員も「その目標が真の検察改革ではなく『政権捜査無力化』だったため、今回の懲戒処分は無理なものにならざるをえなかった」と記した」

     

    大統領の人事権が、裁判所によって覆されたのは尋常なことではない。ユン検察総長追放が検察改革の目的のように言いふらしてきた与党にとって、逃げ場のない痛打を浴びせられる結果になった。

     

    (2)「元検事の郭尚道(クァク・サンド)議員は、「文大統領と秋長官に職権乱用罪の責任を問うべきことだけが残った」と主張した。法司委員の張済元(チャン・ジェウォン)議員も「『これ以上法治を踏みにじるな』という意味で文大統領の面前にイエローカードを突き付けたもの」としながら「回復できない打撃を与えた」と加勢した」

    今年1月のチュ法務部長官就任以来、1年間もユン検察総長追放問題で明け暮れしてきた。その挙げ句が、法務部長官は辞意を表明し、文大統領は国民に謝罪する羽目に陥った。こういう醜態がなぜ起こったのか。権力の傲慢が最大の理由である。政権の犯罪を捜査させないという発展途上国でも珍しい事件が、GDP世界12位の国家で繰り広げられたのである。「嘆かわしい」の一言であろう。韓国の民主主義が、未成熟であることを余すところなく示している。

     

    さらに驚くのは、政権支持メディア『ハンギョレ新聞』が、こういう騒動を「検察改革に不可欠」というとんでもない認識で報じていることだ。進歩派の牙城というべきこのメディアの認識が、これほどずれていることに呆れるのである。

     

    『ハンギョレ新聞』(12月25日付)は、「文大統領のリーダーシップに打撃、衝撃受けた大統領府、本日立場発表なし」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「文大統領の「原則論」が傷つけられただけでなく、大統領府はユン総長に代表される検察権力の制御に失敗したという評価を受けることになった。文在寅政権は検察の民主的統制や検察権力の牽制・分散のために孤軍奮闘したが、「チュ長官対ユン総長(法務部vs検察)」の衝突を経て、「検察改革」の大義は「ユン・ソクヨル総長との戦争」に矮小化された」

     

    行政裁判所は、検察の政治からの独立の重要性を強く指摘している。検察総長の任期が2年で再任のないことが、それを保障しているのである。ところが、ハンギョレ新聞はそういう政治からの独立問題を全く理解していないのだ。「検察権力の制御に失敗したという評価」である。政治が、検察を制御するというとんでもない思考である。ハンギョレ新聞の描く民主主義は、半ば北朝鮮思想に染まっているのであろう。

     


    (4)「ユン総長に対する監察・職務停止・懲戒などチュ長官が主導した一連の措置が荒っぽく不備があったという批判が多かったが、文大統領はチュ長官に自制を要請する正確なシグナルを出さなかった。結局、チュ長官は大統領府と十分な事前協議なしにユン総長に対する職務排除・懲戒請求を決定し、ことあるごとに裁判所の判断によって妨げられた。チュ長官が起こした渦に大統領府が巻き込まれたわけだが、チュ長官がすでに辞任の意思を表明したため、その責任もそのまま大統領府のものとして返ってくるほかない。これまで検察が節制なく振り回してきた捜査の刃すらも、「生きた権力」に向けたものだったと正当性を主張する口実を作った

     

    ここでは、チュ法務部長官を悪者にしている。チュ氏に罪をなすりつけて、文大統領を救うという戦法である。人事権を握る文大統領が、最高責任を負うべきものなのだ。下線をつけた部分では、政権にまつわる犯罪捜査を「節制のない捜査」と非難している。韓国の進歩派メディアと言っても、この程度の認識である。韓国の民主主義が、未成熟と判断せざるを得ない理由はここにある。

     

     

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    中国は、国中がスパイ活動で狂ってしまったようである。先には、中国に進出するドイツ企業が、中国当局が指定する税務ソフトウエアを導入したら、いつの間にか情報を抜き取る裏口(バックドア)ができていた、という事件が発生した。今度は米国で、中国家電大手のTCL製テレビにバックドアが設置されていることが判明し、米国土安全保障省(DHS)が国民に警告する騒ぎだ。

     

    TCLは1981年に設立し、中国の広東省恵州市に本社を置く総合家電メーカー。扱っている製品は、テレビ、スマートフォン、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど幅広い。世界160以上の国と地域で事業を展開している。2019年のテレビ出荷数は3200万台で、サムスンに次ぐ世界シェア2位に位置している。日本では、2015年にTCLジャパンエレクトロニクスを設立し、2017年にはテレビ販売を開始している。

     


    『大紀元』(12月25日付)は、「
    米国土安全保障省、中国家電メーカーTCLを調査 『テレビにバックドア』」と題する記事を掲載した。

     

    米国土安全保障省(DHS)のチャド・ウルフ長官代行は12月21日の演説で、テレビ製品にバックドア(裏口)が設置されているとして、米当局が中国家電大手のTCL電子ホールディングスなどの動向を注視していると述べた。

     

    (1)「ウルフ氏は、TCL製テレビは、バックドアが設置されているため、ユーザーはネットワークへの侵入やデータ流出の危険にさらされている。中国と提携する企業が提供するデータサービスや機器を使用しないよう警告。国土安全保障省は関連企業の活動を見直しており、近日中に勧告書を発行するとした。同氏によると、米国にとって中国共産党の脅威が高まっており、米当局は中国共産党に対する更なる制限的措置を検討している。これらの措置には、中国共産党員に対するビザ規制の強化や、強制労働によって製造された商品の輸入禁止などが含まれている」

     

    世界2位のシェアを誇るTCL製テレビに、バックドアが設置されているとは驚きである。家庭に入り込んで情報を盗むというものだ。中国であれば、やりかねない話だ。

     


    (2)「TCL集団は21日夜、声明を発表し、この脆弱性の影響を受ける対象製品はごく一部にとどまっているとし、「当社が米当局の審査を受けていることは報じられているが、TCL集団は現在、米政府の通知を受けていない」と述べた。TCL集団の株価は22日、一時17.8%下落し、約15%安で終了。TCLの李東生会長は、同社の安定した発展を図り、投資家の信頼感を高めるため、当社株式最大500万株(約2600万香港ドル)の出資比率を引き上げる意向だと、ロイターが23日に報じた」

     

    TCL集団は、一部TVにバックドア装着を認めた。なぜ、そのようなことをしたのか。「手違い」という説明では済まされない。

     

    (3)「11月16日付テック系メディア「トムズガイド」によると、独立したセキュリティ研究者「シックコーズ」とセキュリティエンジニアのジョン・ジャクソン氏は、Shutterstockアプリに対して3カ月間の共同研究を行い、Androidを搭載したTCLスマートテレビに巨大なセキュリティ脆弱性を発見し、世界中のユーザーの情報を盗むために意図的に設計された可能性があることを明らかにした。それによると、研究チームは1016日から、メールやツイッター、電話などでTCL社に連絡し、脆弱性の存在を知らせていたが、TCLから情報を受け取ったと返事があったのは10月26日のことだった」

     

    Androidを搭載したTCLスマートテレビには、巨大なセキュリティ危険性を発見した。これは、世界中のユーザーの情報を盗むために意図的に設計された可能性があるという。となると、日本で販売されているTCL製TVにも同様な危険性がある。即刻、利用を再検討すべきだろう。

     

    (4)「研究チームは10月29日、TCLがテレビの脆弱性を予告せず、そしてユーザーの同意なしに修正したことをテストで明らかにした。シックコーズの研究者は「彼らがテレビに忍び込んで裏口を閉めた。これは一部の機種のセキュリティ脆弱性と同様に心配だ。彼らが望むならば、テレビやカメラ、マイクの電源を入れたり切ったりできる」と指摘した。トムズガイドがTCLにコメントを求めたところ、同社は「プライバシーとセキュリティを非常に重視しており、独立した研究者がテクノロジー・エコシステムの中で果たす重要な役割を高く評価している」と回答した」

     

    下線部のように、外部操作によって無断で脆弱性が修正されているという。北京で茶の間にあるTVが、家庭の会話や映像を盗み出している。ゾッとする話だ。

     

    (5)「ウルフ長官代行は演説の中で、TCLが中国政府と密接な関係にあることも指摘した。「TCLは、世界のエレクトロニクス市場で競争力を高めるために、中国共産党の国家支援も受けている」とした。中国国営メディアによると、TCL集団は2014年上半期に5億6000万元(約88億6000万円)の中国政府の補助金を受け取った。その額は、上半期の収益の24.3%に相当。補助金は主に同社の技術開発や液晶テレビの製造に投入されたという」

     

    TCLは、中国政府から補助金を受けている。ファーウェイと同じ立場だ。諜報活動で政府へ協力している見返りであろう。 

     

     

     

     

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    文政権が、ユン検察総長を排斥するきっかけは、前法務部長官チョ・グク氏の不正を暴いたことにあった。以来、ユン検察総長は政権・与党の不正を暴き続けて、ついに「停職2ヶ月」という事態を迎えた。その逆風は、行政裁判所によって吹き飛ばされた。

     

    いわゆる「チョ・グク事件」は、チョ氏が妻のチョン・ギョンシム氏(東洋大学教授)と共謀して娘の不正入試を手助けしたことや、私募ファンド違法投資で得た不正利益が糾弾されたもの。裁判所は12月23日、妻に「懲役4年 罰金5億ウォン(約4680万円)」という厳しい判決を言い渡した。これで、ユン検察総長の指揮した捜査が間違っていなかったことを裏付けた。夫のチョ・グク氏も共犯として起訴されている。同様の実刑が、科されると見られる。

     

    文政権は、与党と共に「チョ・グク事件」を擁護してユン検察総長を非難してきただけに、苦しい立場に追込まれている。24日には、行政裁判所からユン検察総長に対する「停職2ヶ月措置」も違法とされ却下された。文政権は、手痛い「2連敗」を喫したことになる。

     


    『朝鮮日報』(12月25日付)は、「裁判所『反省せず、真実言った人に苦痛与えた』 この政権がまさにそうだ」と題する社説を掲載した。

     

    韓国与党と親文(親文在寅〈ムン・ジェイン〉大統領)勢力がチョ国(チョ・グク)被告=前法務部長官=の妻チョン・ギョンシム被告=東洋大学教授=に懲役4年を言い渡した裁判所に対して一斉に攻撃に出た。これらの人々の行動を見ていたら、予想できたことだった。論理的な判決文への批判はなく、低質な悪口ばかりだ。これも彼らの典型的な姿である。

     

    (1)「与党の議員たちは「司法改革」と「裁判官弾劾」も取りざたした。チョ国無罪を主張していた親文サイトには、(判決を下した)判事の個人情報と共に、「街中をむやみに歩き回るな」という脅迫文まで掲載された。「急死しろ」というのろいの言葉もある。チョ国一家の破廉恥な行為を包み隠して回るという過ちに対する反省は一つもなく、裁判所の判決をおとしめようという政治攻勢ばかりだ」

     

    韓国は、相手を批判する言論が暴力になっている最低の国である。とても、民主主義国と胸を張れる状況ではない。この「輩」が、反日運動でも登場するから、日本の受けるしこりは大きく「嫌韓」が尾を引くのだ。

     


    (2)「570ページ余りにわたる今回の判決文には、重要な罪状で有罪と判断した根拠とその理由がぎっしり書かれている。その中でも特に目を引いたのが、今回の裁判に臨んだチョン・ギョンシム被告の態度を指摘した部分だ。裁判所は、チョン・ギョンシム被告が「一度も過ちを率直に認めて反省した事実はない」としている」

     

    「事実、チョン・ギョンシム被告とチョ国被告夫妻は今回の判決で、すべてが虚偽と偽造であると判明した娘の入試のための「7つのスペック(資格)」について、一つも過ちを認めたことがない。チョ国被告は今回の判決で、チョン・ギョンシム被告との「共謀」とウソが明らかになったのにもかかわらず、「さらにいばらの道を歩まなければならないようだ」と依然として殉教者ぶっている」

     

    チョ・グク氏は、ソウル大学教授である。夫婦揃って大学教授である家庭で、娘を一流大学医学部へ入学させようと企んだ事件である。推薦入試制度を悪用して、事実でない「賞状」など偽造した罪に問われた。韓国は学歴社会である。一流大学でなければ幅が効かない。そういう見栄も手伝って、引き起された事件だ。違法投資ファンドで、不正利益を得たことも追及された。

     

    (3)「判所はまた、チョン・ギョンシム被告側が、「真実を話した人々に精神的苦痛を与えた」とも言った。事実を述べたのにもかかわらず、「虚偽の陳述」に仕立てて攻撃したということだ。チョ国一家の表彰状偽造を暴露して教育部の監査の標的となり、とうとう辞表まで出した東洋大学総長のケースがその代表的な例だ」

     

    被告が、一度も真実を語らなかったことも裁判所の心証を悪くした。

     

    (4)「驚くべきことに、裁判所のこの2つの指摘は現政権の特性をそのまま指摘していると感じた国民も少なくなかっただろう。現政権が発足して3年半もの間、大統領とその周辺の勢力者たちは自分たちの過ちを認めて謝罪したことがない。その反対に、政権の過ちを暴いたり、真実を言った人々に腹を立てて攻撃したり、そうした人々を罪人に仕立てたりした」

     

    文大統領は25日、今回のユン検察総長の一件で初めて国民に謝罪した。さらなる支持率下落に、危機感を募らせたに違いない。

     


    (5)「蔚山市長選挙工作、柳在洙(ユ・ジェス)元釜山市経済副市長監察打ち切り、ライム・ファンドやオプティマス・ファンド捜査など、政権の不正が発覚する危機を迎えると、反省どころか検察捜査チームごと空中分解させた。検察総長(日本の検事総長に該当)には濡れ衣を着せて懲戒処分した」

     

    ともかく文政権は、進歩派の看板を背負いながら、あくどいことばかり行っている。韓国の進歩派は、体の良い暴力団と同じ感覚の持ち主である。反省しない。責任は擦り付ける。言葉の暴力で人権無視の振る舞いをする。呆れた存在なのだ。

     

    (6)「原発の経済性操作を監査した監査院長も人身攻撃した。慰安婦被害者をだまして利益を得ていたことが明らかになった尹美香(ユン・ミヒャン)議員は今も金バッジをつけたままワインパーティーを開き、真実を語った慰安婦被害者を認知症だと言った。不動産価格高騰やワクチン確保の失敗を案じる報道を「フェイクニュース」だとしてメディアのせいにばかりしている。「過ちを一度も反省せず、真実を語った人に苦痛を与えた」という裁判所の判決文は、まさにこの政権に対するものだ」

     

    ともかく、人身攻撃が酷い国である。身内には優しく敵方には暴力的である。韓国の民主主義は未熟なのだ。

    テイカカズラ
       

    文在寅(ムン・ジェイン)氏は、正義の味方として「積弊一掃」など、やりたい放題の政治を行ってきた。皮肉にも自らが溜め込んだ「積弊」を検察が捜査すると、その検察総長を追放するという朝鮮李朝並みの横暴を行なってきた。

     

    ユン検察総長の「停職2ヶ月」処分は、行政裁判所によって覆された。文大統領にとってこれ以上の屈辱はあるまい。自らが裁可した停職処分人事が、裁判所によって否定されたのである。大統領権力のシンボルというべき人事権が、「正義に反する」という審判を受けたのだ。司法人でもある文在寅氏にとって、これに勝る屈辱はないだろう。「大統領失格」の判決にも見えるのだ。

     

    文大統領は22日、大法院長(最高裁長官)ら5府のトップを青瓦台に招いた。その席で、ユン総長の懲戒処分に関する裁判所の決定を控え、「権力機関の改革問題で対立が多い。それを克服し、改革を前進させる上で力を合わせてもらいたい」と発言した。この発言は、明らかに裁判所への圧力であった。それだけに、今回の行政裁判所の決定は、「大統領vs検察総長」という側面を浮き彫りにし、裁判所はユン総長を支持した形である。

     

    『朝鮮日報』(12月25日付)は、「『尹検察総長復帰』判決は文大統領に対する法の審判だ」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「ソウル行政裁は24日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長の「停職2カ月」の懲戒処分に対する執行停止の申し立てを認め、総長職への復帰決定を下した。尹総長は月城原発1号機の経済性評価ねつ造、蔚山市長選工作など政権の違法行為に対する捜査を再び指揮できるようになった。尹総長の弁護士は「法治主義が何かを問うた歴史的事件」と評した。尹総長の懲戒は文在寅(ムン・ジェイン)大統領が直接主導したものだ。執行停止の申し立ては「大統領を相手取った訴訟」だった。裁判所の復帰決定は「大統領に対する審判」だ。尹総長の懲戒事由は完全に強引ででたらめであり、手続きは違法を通り越し、工作に近かった

     

    司法人でもある文大統領が、行政裁判所の前に膝を屈した形になった。自らの誤りを糺されたに等しいことだ。弁護士バッジを返上すべきほどの痛手である。法治主義を破ろうとした行為は、深く恥じるべきだろう。

     

    (2)「政権は過去1年間、「検察改革」を名分に掲げ、「尹錫悦追放」に没頭した。理由はただ一つ、蔚山市長選工作、月城原発1号機の経済性評価ねつ造など政権の違法行為に対する検察の捜査を阻止することだった。いつものように文大統領自身は陰に隠れ、秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官を立てた。そうして政権を捜査した検事に対する4回の制裁人事、検察総長に対する3回の指揮権発動、総長の職務排除、懲戒請求を強行した。最後には大統領が直接乗り出した」

     

    チュ法務部長官は、判事出身である。自らの政治的利益を追って、墓穴を掘る形になった。チュ氏は、すでに大統領に対して辞意を表明している。この上は、一刻も早く離任すべきだろう。ムン大統領とチュ法務部長官は、揃いも揃って司法人出身である。政治の泥水が、彼らの感覚を狂わせてしまった。

     

    (3)「文大統領が素直に自分たちの違法行為に対する捜査を受け入れるはずはない。当面は、来年1月の検察人事で月城原発1号機の経済性評価ねつ造事件の捜査を行っている大田地検の捜査班を空中分解させるはずだ。尹総長に対するさまざまな疑惑提起など攻撃も続くとみられる。次には高位公職者犯罪捜査処(公捜処)を最大限速やかに発足させ、政権の不正に関する捜査を検察から強制的に移管させ、もみ消そうとするはずだ。公捜処長候補は早ければ今月中にも推薦される。民主党が強行した法改正で公捜処長候補に対する野党の拒否権は削除された。国会の人事聴聞会で野党が反対したとしても、大統領は任命を強行するだろう。「新年初めの正式発足を期待している」という文大統領の言葉通りになるはずだ」

     

    ユン検察総長が、政権の犯罪を暴いても公捜処によってもみ消されるだろう。ただ文政権が、進歩派の看板を掲げながら保守派政権ですら行わなかった「悪事」を働いてきた事実を明らかにしなければならない。これによって、進歩派政権はいずれその命運を絶たれるに違いない。

     


    (4)「警察は野党の蔚山市長候補が公認を受けた日、候補の事務所を家宅捜索し、泥水を浴びせた。背後には青瓦台がいた。そうやって文大統領の30年来の友人を当選させ、大統領の願いをかなえた。この重大な選挙犯罪に対する捜査は現在ストップしている。月城原発1号機は7000億ウォン(約658億円)をかけ、真新しい設備と同様に改修した原発なのだが、「いつ廃炉にするのか」という大統領の一言で稼働できなくなった。それによる国民の損害は語り尽くせない。いくら時間が流れても、こうした事件は必ず究明し、責任者を処罰しなければならない」

     

    このパラグラフに、文政権の行なってきた悪事が示されている。約658億円も掛けて改修した原発をウソのデータで赤字にさせ廃止する言語道断の振る舞いを行っている。支持団体である市民団体に、太陽光発電を増やさせるのが目的であった。これは、利益誘導政治である。文政権は、今回の行政裁判所によるユン検察総長「停職2ヶ月」失効命令で、政治生命に限りない打撃を受けるであろう。 

     

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