「Kワクチン」に固執する
シンガポール首相と比較へ
保守・中道が早期接種希望
ワクチン契約は国民の7割
政治家の運命ほど恐ろしいものはない。韓国文大統領はこれまで、「反日」、「積弊一掃」、「K防疫モデル」が、国民の支持を得て順風満帆であった。だがそれは、情緒的なもので風向きが変れば一瞬に真逆のものになる。現在、文在寅(ムン・ジェイン)氏には大きな逆風が吹き付けているのだ。退任まで17ヶ月を残すのみの段階で、予期せざる「ワクチン突風」に見舞われたのである。体制立直しは、不可能と見られる。
「反日」は、旧徴用工賠償問題で暗礁に乗り上げている。日韓基本条約で解決済み問題だけに、日本が応じるはずがない。米国のバイデン次期大統領は、同盟国の結束を呼び掛けている。それだけに韓国にとって、旧徴用工賠償問題は自ら解決しなければならなくなった。
「積弊一掃」は、ユン検察総長「停職2ヶ月」問題である。文政権への捜査を中止させるという露骨な検察への介入だ。こういう行為こそ「積弊」に当るもので、自らが「積弊一掃」対象に身を落とす矛楯に陥っている。
「K防疫モデル」は、PCR検査の徹底化で感染者を減らしたことを「自画自賛」したもの。これは、韓国でMERS(中東呼吸器症候群:2015年)が流行した際、検査体制を整えた結果である。朴槿惠(パク・クネ)前政権時の遺産を活用しただけなのだ。それを、あたかも文政権の手柄として内外に宣伝した。文大統領は、辣腕な「広報マン」である。
「Kワクチン」に固執する
文大統領は、「K防疫モデル」を拠り所に今年4月の総選挙で大勝した。これで、新型コロナウイルス第1波を乗り越えたが、「ワクチン入手」で大きな判断ミスを冒した。韓国国産の「Kワクチン」に期待して、海外で進むワクチン開発に目を向けなかったのだ。文氏は、「K防疫モデル」と「Kワクチン」によって、内外で金字塔を打ち立てようという夢を持っていたのである。
韓国大統領府が公開した資料によれば、文大統領は国際共助と輸入を通じた海外ワクチン確保よりも、ワクチン・治療薬の自国開発、いわゆる「Kワクチン」を強調してきたのである。あたかも韓国に、ノーベル賞級受賞者が山ほどいると錯覚したような認識であった。米国大統領並みの夢に酔っていたのである。
だから他国が、自国のワクチンの開発と並行して、6~7月から海外ワクチン確保競争に参入していたのに対して、韓国だけはK防疫に自信を持ち、いつ完成するかわからない自国のワクチンのことばかり話してきた、と指摘されている。
ワクチンは、軍備や食糧と並んで安全保障の「3要素」とされている。軍備・食糧・ワクチンが揃えば、その国の安全が保障されるという意味である。文大統領は、肝心のワクチンについての認識が欠如しており、「Kワクチン」の空夢に期待をつないでいたのである。まさに、これは米国大統領並みの夢であり、韓国では早期実現が困難であることの自覚がなかったのだ。
文氏がこういう空夢を見ていたのは、民族主義者特有の現象であろう。「反日」、「積弊一掃」、「北朝鮮との統一」などは、すべて合理的根拠による合理的判断でなく、情緒的なものである。合理的根拠による判断であれば、法的に解決した問題を蒸し返すことはない。情緒的で曖昧な理屈付した判断では、「抜本解決」という区切りがつかないのだ。持病と一緒で、必ずぶり返してくる。
「北朝鮮統一」も合理的に考えれば不可能であろう。人権弾圧の北朝鮮と、民主主義の看板を掲げる韓国がどうやって「同居」するのか。統一には、北朝鮮の民主化が実現するという大きな前提があるはず。文氏は、それを無視した闇雲な「統一論」である。こういう飛躍した話は、韓国が早期の「Kワクチン」出現を期待するところとなんら変らない点である。文大統領に、真の政治家としての「素質」があるのか疑問視される理由である。
シンガポール首相と比較へ
韓国メディアでは、ワクチン輸入を巡って文大統領批判が活発である。とりわけ、シンガポールが、間もなくワクチンを輸入すると発表したことで、「シンガポール首相と韓国大統領」比較論で賑わっている。『中央日報』(12月21日付)が報じた。
シンガポールのリー・シェンロン首相が12月14日、次のように語った。「最初の(ワクチン)物量は今年12月末に到着する予定で、これでシンガポールはファイザー・ワクチンを導入した最初の国家の一つになった」。国民向け談話で語った言葉である。リー首相はこの日、「計画が順調に進めば、2021年7~9月期内にシンガポール全国民にワクチンを供給できることになるだろう」とも話した。(つづく)





