勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年12月

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    Kワクチン」に固執する

    シンガポール首相と比較へ

    保守・中道が早期接種希望

    ワクチン契約は国民の7割

     

    政治家の運命ほど恐ろしいものはない。韓国文大統領はこれまで、「反日」、「積弊一掃」、「K防疫モデル」が、国民の支持を得て順風満帆であった。だがそれは、情緒的なもので風向きが変れば一瞬に真逆のものになる。現在、文在寅(ムン・ジェイン)氏には大きな逆風が吹き付けているのだ。退任まで17ヶ月を残すのみの段階で、予期せざる「ワクチン突風」に見舞われたのである。体制立直しは、不可能と見られる。

     

    「反日」は、旧徴用工賠償問題で暗礁に乗り上げている。日韓基本条約で解決済み問題だけに、日本が応じるはずがない。米国のバイデン次期大統領は、同盟国の結束を呼び掛けている。それだけに韓国にとって、旧徴用工賠償問題は自ら解決しなければならなくなった。


    「積弊一掃」は、ユン検察総長「停職2ヶ月」問題である。文政権への捜査を中止させるという露骨な検察への介入だ。こういう行為こそ「積弊」に当るもので、自らが「積弊一掃」対象に身を落とす矛楯に陥っている。

     

    K防疫モデル」は、PCR検査の徹底化で感染者を減らしたことを「自画自賛」したもの。これは、韓国でMERS(中東呼吸器症候群:2015年)が流行した際、検査体制を整えた結果である。朴槿惠(パク・クネ)前政権時の遺産を活用しただけなのだ。それを、あたかも文政権の手柄として内外に宣伝した。文大統領は、辣腕な「広報マン」である。

     

    Kワクチン」に固執する

    文大統領は、「K防疫モデル」を拠り所に今年4月の総選挙で大勝した。これで、新型コロナウイルス第1波を乗り越えたが、「ワクチン入手」で大きな判断ミスを冒した。韓国国産の「Kワクチン」に期待して、海外で進むワクチン開発に目を向けなかったのだ。文氏は、「K防疫モデル」と「Kワクチン」によって、内外で金字塔を打ち立てようという夢を持っていたのである。

     


    韓国大統領府が公開した資料によれば、文大統領は国際共助と輸入を通じた海外ワクチン確保よりも、ワクチン・治療薬の自国開発、いわゆる「Kワクチン」を強調してきたのである。あたかも韓国に、ノーベル賞級受賞者が山ほどいると錯覚したような認識であった。米国大統領並みの夢に酔っていたのである。

     

    だから他国が、自国のワクチンの開発と並行して、6~7月から海外ワクチン確保競争に参入していたのに対して、韓国だけはK防疫に自信を持ち、いつ完成するかわからない自国のワクチンのことばかり話してきた、と指摘されている。

     

    ワクチンは、軍備や食糧と並んで安全保障の「3要素」とされている。軍備・食糧・ワクチンが揃えば、その国の安全が保障されるという意味である。文大統領は、肝心のワクチンについての認識が欠如しており、「Kワクチン」の空夢に期待をつないでいたのである。まさに、これは米国大統領並みの夢であり、韓国では早期実現が困難であることの自覚がなかったのだ。

     


    文氏がこういう空夢を見ていたのは、民族主義者特有の現象であろう。「反日」、「積弊一掃」、「北朝鮮との統一」などは、すべて合理的根拠による合理的判断でなく、情緒的なものである。合理的根拠による判断であれば、法的に解決した問題を蒸し返すことはない。情緒的で曖昧な理屈付した判断では、「抜本解決」という区切りがつかないのだ。持病と一緒で、必ずぶり返してくる。

     

    「北朝鮮統一」も合理的に考えれば不可能であろう。人権弾圧の北朝鮮と、民主主義の看板を掲げる韓国がどうやって「同居」するのか。統一には、北朝鮮の民主化が実現するという大きな前提があるはず。文氏は、それを無視した闇雲な「統一論」である。こういう飛躍した話は、韓国が早期の「Kワクチン」出現を期待するところとなんら変らない点である。文大統領に、真の政治家としての「素質」があるのか疑問視される理由である。

     


    シンガポール首相と比較へ

    韓国メディアでは、ワクチン輸入を巡って文大統領批判が活発である。とりわけ、シンガポールが、間もなくワクチンを輸入すると発表したことで、「シンガポール首相と韓国大統領」比較論で賑わっている。『中央日報』(12月21日付)が報じた。

     

    シンガポールのリー・シェンロン首相が12月14日、次のように語った。「最初の(ワクチン)物量は今年12月末に到着する予定で、これでシンガポールはファイザー・ワクチンを導入した最初の国家の一つになった」。国民向け談話で語った言葉である。リー首相はこの日、「計画が順調に進めば、2021年7~9月期内にシンガポール全国民にワクチンを供給できることになるだろう」とも話した。(つづく)

     

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    黎智英(ジミー・ライ)氏は、香港で最も人気のある新聞『蘋果日報』(アップル・デイリー)の創業者である。中国が、香港で強行導入した新たな国家安全維持法に違反した罪などに問われ、収監されていた。

     

    ところが、香港の裁判所は23日、保釈を認める決定をした。保釈金は1000万香港ドル(130万米ドル)である。予想外の柔軟な姿勢の裏に何があるのか。中国がこれ以上、米国との対立を望まないというシグナルであろう。

     

    米商務省は12月18日、半導体受託生産の中国最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)に対して事実上の禁輸措置を発動すると発表した。最先端の半導体を生産するのに必要な製品の輸出を認めないという強硬姿勢である。トランプ大統領が政権交代前に、中国が目指す半導体の国産化を阻止することを狙ったもの。米次期政権を担うバイデン氏も、対中強硬策を貫くことは確実である。

    SMICへの禁輸措置は、ファーウェイへの禁輸措置と同じ内容である。米国が、中国への半導体技術移転を絶対に阻止するという姿勢を改めて示したものだ。これによって、中国の半導体産業自立化は事実上、大きな打撃を受けるはずと推測されている。米国のこの強い姿勢に対して、中国は対抗しないというジェスチャーを示す必要がある。それが、今回の黎智英氏の釈放措置と見るべきだろう。

     


    『ロイター』(12月23日付)は、「
    香港紙・黎智英氏の保釈決定、外国政府との面会禁止など条件」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「外国勢力と結託して香港国家安全維持法に違反した罪で起訴された香港紙『蘋果日報』(アップル・デイリー)の創業者、黎智英氏について、香港の裁判所は23日、保釈を認める決定をした。保釈金は1000万香港ドル(130万米ドル)。黎氏は8月に逮捕され、12月3日から拘留されていた。会社の建物の賃貸契約に関する詐欺罪でも起訴されている。保釈の条件として外国政府の職員との面会やインタビュー、記事の発表、ソーシャルメディアへの投稿などが禁じられる。またパスポートの提出を義務付けられ、自宅を離れることは許されていない」

     

    黎智英氏の逮捕・拘束は、言論弾圧の象徴的な事件である。欧米にとっては、中国批判の絶好の材料である。それだけに、中国は米国の出方を見るべくあえて拘束したと見られる。だが、米国からはSMICへの禁輸措置という予想以上の強い締め付けを受け、黎智英氏を保釈する妥協策に出て来たと見るべきだろう。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月21日付)は、「黎智英氏の収監、バイデン氏試す中国」と題する社説を掲載した。

     

    ジミー・ライ(黎智英)氏(72)をはじめとした香港の民主主義支持の中心人物らの収監が何を意味するのか、見誤ってはならない。中国はジョー・バイデン次期米大統領を試しているのだ。

     

    (2)「黎氏が2019年の訪米の際にマイク・ペンス副大統領、ナンシー・ペロシ下院議長ら米国の政治家と会ったことに、中国が激怒したことをわれわれは知っている。国家安全維持法違反容疑の元になったのは、同氏が外国政府に対し、香港と中国政府への制裁実施を促したことだ。黎氏は、保釈請求を却下され、拘束された姿を市民の目にさらされた。香港で発行されている中国共産党の機関紙「大公報」は、裁判のため黎氏を中国本土に移送すべきだと伝えている。黎氏の友人らは、それが同氏への死刑宣告になるのではないかと懸念している」

     

    中国は、黎氏の収監がこれほど早く米国の反応を引き出したことに驚いたに違いない。バイデン次期政権でなく、トランプ現政権がSMICへの禁輸措置を決めて、中国の産業心臓部へメスを突きつけたからだ。中国の最も嫌うところへ刃が飛んだのだ。こうなると、バイデン次期政権も中国へ甘い顔を見せられない。中国は、黎氏を保釈して対米外交仕切り直しに出てきたに違いない。

     


    (3)「中国の習近平国家主席は、これによって香港市民をおびえさせ、沈黙させたいと考えている。また、バイデン氏とその側近たちが、今回の措置を含めた中国のさまざまな権力乱用について、見て見ぬふりをするかどうかを試している。これまでのところ習氏は、バイデン氏らの反応がないことを喜んでいるに違いない」

     

    バイデン氏が反応する前に、トランプ氏が反応した。中国にとってはいやな前兆であろう。

     

    (4)「トランプ政権の功績の1つは、中国が米国の1番の敵対勢力になったとの認識を示したことだった。中国は米国の技術を盗み、米国の大学構内の批判勢力を監視および威嚇し、大がかりなスパイ行為に従事して、南シナ海の新たな海域で主権を主張し、台湾とオーストラリアという米国の同盟相手を脅した。マイク・ポンペオ国務長官は、中国によるウイグル人の拘束を非難したり、香港の弾圧の責任を負う当局者に制裁を科したりして、それに対抗した」

     

    トランプ政権にも多くの功績がある。米中対立によって、中国の脅威を世界中に知らしめたのだ。特に、欧州の「親中ムード」をひっくり返し、米国と共同歩調を取らせる結果になったことは、日本の安全保障上でも大きなプラス材料である。

     

    (5)「中国政府は、バイデン氏の選出により、米国との関係が「正常」に戻ることを期待している。正常とは、かつての米中関係では意味をなしたが、習近平時代では意味をなさない妥協的なアプローチを指す。中国問題を専門とする学者、ペリー・リンク氏は、「ジミー・ライ氏を公然といたぶる行為は、そのプロセスの進め方に関する中国政府の見方を示すものかもしれない」と述べる

     

    下線部は、中国が黎氏を丁重に扱うことによって、米国との関係悪化を望んでいないというシグナルであろう。

     

    (6)「黎氏に対する扱いは、米国の市民権を持つ香港系中国人にとって、とりわけ懸念をもたらしている。黎氏は英国のパスポートを保有しているが、中国が二重国籍を認めていないため、領事館での保護は認められなかった。このことは、米国の市民権を持つ何千人もの香港人にとって、米国のパスポートが彼らの考えていたような保護の役割を果たさないとの警告を受けたことを意味する。彼らのうちの1人が逮捕された場合、どうなるのか?」

     

    黎氏は、英国国籍の持ち主でもあったが逮捕された。ならば、米国国籍の香港人も同じ扱いを受けかねない。その際、米国は断固として立ち上がって米国籍者を守るのか。米国は多分、中国と渡り合うだろう。中国は、それを読み始めている。だから、柔軟対応に転じたのだ。

     

     

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    韓国の国家元首である大統領は、あらゆる権利を握った超法規的な存在である。その文在寅大統領が、コロナワクチンの購入を指示したにもかかわらず、政府が動かなかったためにワクチン購入契約が遅れた。文氏は、こういう主旨の発言をして話題が沸騰している。

     

    この「大統領発言」は、自らの責任逃れのために行ったことが判明した。文氏が、政府にワクチン購入をすべきと指示したのは9月であった。それから2ヶ月後の11月になって、海外の製薬会社と交渉が始まったというのである。

     


    『朝鮮日報』(12月23日付)は、「9月になってようやく指示した文大統領、11月に始動した公務員」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「新型コロナワクチン導入に関する韓国政府の「後手後手の対応」の実体が少しずつ明らかになってきた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「海外のワクチンを十分に確保せよ」という指示は9月になってようやく出て、保健福祉部をはじめとする政府部処(省庁)がワクチン導入の過程で予想される法的な問題の検討など、実際の行動に出たのはそれから2カ月後の先月下旬だった」

     

    韓国では、文大統領発言は「神の声」である。『朝鮮日報』社説(12月23日付)では、次のように指摘している。

     

    「韓国は、大統領が「月城原発1号機廃炉はいつか」と聞いたら即座に廃炉作戦に取りかかる国だ。産業通商資源部長官が部下に「お前、死にたいのか」と言い、今後2年半稼働させることにしていた方針を変え、直ちに閉鎖を指示した。担当職員が深夜に事務室に入り、公文書を削除・改ざんするほど公務員たちが大統領の指示を王の命令のように受け止める国だ。大統領がワクチン購入契約を確実に指示していれば、我々は「ワクチンのない島国」のように(孤立することに)はならなかった。米国・英国・カナダなどほぼすべての国々で新型コロナワクチン問題は国の最高司令塔の核心課題だ。あまりにも当然だろう」

     

    すべての責任は、文大統領にあるのだ。

     

    (2)「米国・欧州連合(EU)をはじめとする主要国は、今年6月から積極的にワクチン導入契約を相次いで締結していた。韓国は、それよりも35カ月後になって契約締結のための事前準備作業をかろうじて終えた段階だった。大統領の指示も遅かったが、政府の対応はそれよりもさらに遅かったということだ」

     

    米英のワクチン・メーカーの開発状況は逐一、報道されていた。有効性が高いことが分かるとともに各国は一斉に購入契約に動いたのだ。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、韓国だけ購入の動きを見せないことを不思議がっていたほど。韓国は、主要国の動きとかけ離れていたのである。その舞台裏が、こうして明らかになった。

     

    (3)「野党・国民の力の白宗憲(ペク・ジョンホン)議員が22日に入手した政府文書によると、疾病管理庁は先月27日、「第1次積極行政委員会」を開いた。この会議では、英アストラゼネカ社、米ファイザー社、米モデルナ社など海外の製薬会社が開発したワクチンを疾病管理庁の公務員が積極的に導入推進した際、問題が発生しても免責するという決定を下したという。疾病管理庁はこれに先立つ先月23日に監査院に公文書を送り、「ワクチン購入契約をしても問題はないか」「ワクチン導入時の税金賦課をどのようにすればいいのか」と質問し、先月27日に「問題ない」という内容の回答を得ていたことが分かった。政府はこうした手続きが終わった直後の先月末、アストラゼネカと最終購入契約を締結した」

     

    韓国特有の責任の擦りあいに懲りている官僚機構は先ず、後々に責任問題が発生しないように「手続き」をしている。その間に、各国が購入契約を結んだので、韓国は後の祭りとなった。

     


    (4)「ワクチン導入と関連して事実上、手をこまねいていたが、後手後手の対応を批判する世論が高まると、先月下旬になってやっと最小限の法的手続きの検討を慌てて終わらせたということだ。これに対して疾病管理庁関係者は「汎部処(政府部処全体)の次元で綿密に検討する過程を経たもの」とした。青瓦台は同日、「ワクチン関連書面ブリーフィング」資料を出し、「文大統領が915日に内部参謀会議で『十分な量のワクチンを確保しておくように』と指示した」と明らかにした」

     

    下線のように文大統領によるワクチン購入指示は、9月15日であった。

     

    (5)「この資料によると、文大統領は9月前までは国内でのワクチン開発のみ言及し、海外ワクチン購入に関する指示は事実上、していなかったという。しかし、この時点ではファイザーやモデルナなど安全性が検証されたワクチンの確保が既に難しくなっている状況だった。政府も先日、「今年7月に海外の製薬会社と購入交渉をする際に『物がなくて』大変だった」といった。大統領の指示がそれだけ遅かったということだ」

     

    文大統領は、国内ワクチン開発に期待をつないでいた。「K防疫モデル」を宣伝してきた手前、国産ワクチンを開発できれば「文大統領の業績」になると見たのだろう。そういう淡い夢を見ていた結果、肝心のワクチン確保が大幅に遅れたのだ。文氏は、あくまでも「夢追い人」である。実践的な政治家ではない。

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    中国のやることは、何ごとも乱暴である。中国自身が基準の国であるから、平気で国際標準を無視する。コロナワクチンの開発も、「中国基準」で通している。開発基準の国際的透明性を確保するという手続き(最終治験)を踏まずに、勝手にコロナワクチンを外交の具に供しているのだ。大胆といえば、これ以上に大胆な振る舞いもない。傍若無人なのだ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(12月20日付)は、「中国の『ワクチン外交』 拭えない懸念」と題する記事を掲載した。

     

    中国は西側諸国が開発する新型コロナウイルスのワクチンの入手が難しい国々に自国製ワクチンを提供する計画だが、開発プロセスの透明性に関する国際基準を逸脱しているため懸念が生じている。12月になってバーレーンとアラブ首長国連邦(UAE)が中国国営の中国医薬集団(シノファーム)製ワクチンを承認したと相次いで発表したものの、懸念はさらに深まっている。両国ともワクチンが中間分析で86%の有効性を示したという短い声明しか発表していない。基になるデータや同社または規制当局が行った分析の詳細は公表されていない。

     


    (1)「世界各地の専門家は開発プロセスの不透明さや、中国がワクチン開発で必要な手順を省いたとの疑惑が世界的なワクチン接種の取り組みを妨げるリスクがあると懸念している。「これは過ちであり、容易に裏目に出るだろう」。ジュネーブ国際開発高等研究所グローバル・ヘルス・センターのスーリー・ムン共同センター長は話した。「いずれかのワクチンに安全性の問題がある、または期待されたほどの効果がないと判明すれば、ワクチン接種を受けたいという市民の希望やパンデミック(世界的大流行)を制御する取り組みが大きな打撃を受ける」と指摘する」

     

    ワクチンは、安全性と有効性に最大の関心が寄せられている。中国は、その肝心のデータを公表せずに「ワクチン外交」を行っている。データを公表すれば、評価が下がって「外国手段」に使えないと危惧しているのだろう。自信があれば、率先して好評するに違いない。

     

    (2)「中国は、「ほほえみ外交」の一環として4種類のワクチンを後発国に提供すると表明している。そのうち2つはシノファームが、残りは科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)と康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)がそれぞれ開発する。西側では米ファイザーと独ビオンテック、英アストラゼネカと英オックスフォード大、そして米モデルナがそれぞれ開発の最終段階である臨床試験(治験)のフェーズ3(第3相)を終了している。公表されたデータは欧州と英米の規制当局が検証している」

     

    中国が開発したとされるワクチンは4種類ある。だが、データは発表されていない。米英3社のワクチンは最終治験を終えてすべてのデータが公表された。

     

    (3)「中国の低・中所得層の多くは、これら(欧米)のワクチンには手が届かないとみられる。上海のカイフォン・インベストメント のアナリスト、チャン・トン氏は、「米製薬各社の生産能力分は先進国にほぼ買い占められている」ため、アジア、アフリカやラテンアメリカ諸国は中国製ワクチンを購入せざるをえないと話した。世界保健機関(WHO)は、貧困国にワクチンを届けるための国際枠組み「COVAX(コバックス)」を主導しているが、高所得国の参加があまりにも少ないため取り組みは後退し修正を余儀なくされた」

     

    中国は過去、ニセ物商品が氾濫していた。その理由は、正規商品が高価で買えないのでニセ物で我慢している、というものだった。ワクチンについても同じ理屈のようだ。正規品の欧米ワクチンは高価で買えないので、中国の「代替ワクチン」で我慢するというニュアンスである。WHOは、データも公表されない中国製ワクチンを大量購入して、発展途上国へ配分することは不可能だ。この段階にいたって、WHOと中国の利害関係は分かれるだろう。

     


    (4)「開発が最終段階に来ているにもかかわらず、中国の後発国へのワクチン輸出には障壁が立ちはだかっている。ペルー政府は被験者の1人に「深刻な事態」が生じたことを受け、11日にシノファーム製ワクチンの治験を中止した。その後同社と協議が行われ治験は再開された。ブラジルではシノバックと協力している地元企業が23日にフェーズ3の中間報告を行う予定だが、ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)は、中国が自国でワクチンの緊急使用を許可したことの説明を受けていないと批判している」

     

    中国製ワクチンについては、中国が自国でワクチンの緊急使用を許可したことの説明を受けていないとして、ブラジルから批判されている。国際社会を納得させるには、それなりの正規の手続きが必要である。

     


    (5)「中国は、世界のワクチン市場では新規参入者といえる存在で、同国製ワクチンを購入する国はWHOから「厳格な」規制を導入していると見られていない。ソウルにある多国籍機関「国際ワクチン研究所」のジェローム・キム所長は、UAEやバーレーンの規制当局は、欧州や北米ほど厳密に中国のワクチン開発企業が提供するデータを分析しないとの見方を示した。同氏は、懸念に対応するため、中国製ワクチンをWHOまたは規制の厳しい複数の国の専門家からなる委員会で検証することを提案した」

     

    中国製ワクチンは、世界のワクチン業界では新参者である。中国製ワクチンは、分析データが公表されない限り「日陰者」なのだ。世界の厳格な機関による安全性や有効性のデータ分析を済ませていない限り、中国製ワクチンは正規の扱いを受けないであろう。WHOは、こういう中国製ワクチンを購入できないはずだ。

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    韓国の未来は闇に包まれている。今年から人口減社会へ突入するからだ。出生数よりも死亡数が多いいため人口減になる。日本と韓国の経済データは、ほぼ20年のタイムラグ(時間差)があった。韓国の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に出産する子どもの数)は、日本よりも急速に低下している。韓国は本来ならば、2030年頃に人口減社会になるべきなのが、10年も繰り上がってしまった理由は、急速な出生率低下に見舞われている結果だ。

     

    韓国の合計特殊出生率は、すでに世界最低値である。昨年で「0.92」であったが、今年は「0.8台」が予想されている。世界最低値を更新するのだ。日本の合計特殊出生率は、昨年で「1.36」。日本と韓国は、「0.44」もの差がある。端的に言えば、この合計特殊出生率の差は、日韓の未来に対する「希望値」が異なることを示している。

     


    韓国は、文政権になって合計特殊出生率が急減している。過去の推移を示したい。

    2015年 1.24

      16年 1.17

      17年 1.05(文政権登場)

      18年 0.98

      19年 0.92

      20年 0.8台

    (資料:世界銀行)

     

    朴政権の弾劾騒動は、2016年10月頃より始まった。2017年5月に文政権が誕生したが、韓国社会は政治的混乱に極めて敏感な社会である。これが、出産抑制要因になった。18年以降は、文政権による経済政策の失敗が出産抑制要因として働いた。雇用不安による失業者増大である。就職も意のままにならぬ状況では、結婚・出産を望むべくもないのだ。

     


    文政権の嵐が去った後、韓国の未来は荒涼とした光景であることが分かるだろう。労働側を擁護し企業に圧力を加える政策が、韓国経済の基盤を荒廃させたのである。雇用不安がつきまとい、韓国の雇用はOECD(経済開発協力機構)の中でも最悪事態に陥っている。これでは、結婚・出産は先細りになるばかりだ。韓国の未来に希望が託せなくなった結果、出産は減る一方である。そして、予測よりも10年前倒しで「人口減」社会へ突入した。

     

    『ハンギョレ新聞』(12月21日付)は、「合計特殊出生率0.8人「人口の絶壁」現実のものに」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のシン・スングン論説委員である。

     

    (1)「韓国は、1980年代まで続いた強力な産児制限政策は奏功した。出生率は落ち、1990年代には人口減少の懸念が現実のものとなった。政府は1996年、出産奨励へと政策目標を転換した。「子どもが未来です」「寂しい一人っ子、心温まる2人きょうだい、心強い3人きょうだい」などの新たな標語が登場した。にもかかわらず、1人の女性が妊娠可能な期間(15~49歳)に産むことが期待される平均出生数である「合計特殊出生率」は、2002年に1.30人以下となり、「超少子化時代」が到来した」

     

    韓国の公務員家庭では、平均した子どもの数が3人といわれている。生活が安定しているからだ。若者が、公務員志望の理由はこの生活の安定にある。政府が、そういう環境をつくるべきところ、労働側に偏りすぎた最低賃金の大幅引上げで、失業者を生むという逆の結果を生むことになった。

     

    (2)「深刻さを認識した政府は2005年、タスクフォースを立ち上げ、対策に乗り出した。2006年には「少子高齢社会基本計画」が初施行され、「3人以上の多子女特別供給」などの、子どもが多い世帯に住宅当選の優先権を与える制度も導入された。実に、30年を経ての反転だ。政府は2006年から今年までに、計225兆ウォン(約21兆2000億円)の予算を出産奨励政策に充ててきた。しかし、合計特殊出生率は2018年に0.98と、初の1人以下となり、2019年には0.92人を記録した。今年はさらに下がって0.8人台となると予測される。世界で最も低い数値だ」

     

    韓国は、2006~20年までに約21兆2000億円の出産奨励金を出してきた。その効果はゼロだった。理由は、安定した雇用先を生み出すことができなかったからだ。韓国の産業構造は、大企業偏重で中小企業との格差が大きい。それは、大きな賃金格差を生んでおり、結婚・出産の障害になってきた。出産奨励金が、出産を増やすのでないのだ。産業構造における不可避的な賃金格差是正という根本的な問題に取り組まなかったからであろう。

     

    (3)「統計庁が先月25日に発表した「人口動向」によると、今年1~9月の出生児数は21万1768人、同期間の死者は22万6009人だった。人口の自然増加はマイナス1万4241人で、このままでは今年は人口が初めて減少する「人口の絶壁」の初年として記録されるだろう。政府は今月15日、「生後24カ月以前の乳児に対する手当の支給」「多子女住居支援基準を2人に緩和」などの対策を追加した。効果は未知数だ。いくら産めと言われても、厳しい環境でどうやって子どもを産み育てるのかという叫びは大きくなるばかりだ」

     

    韓国は、予測よりも10年早く人口減社会へ突入する。社会保障計画が、それだけ狂いを生じるのだ。予想以上に早まる超高齢社会への準備はできていない。これからの韓国は、どうするのか。「反日騒ぎ」で時間を費やす余裕はなくなるはずだ。

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