朝鮮の王たちは、正月初日に中国の皇帝に礼をささげる望闕礼(ぼうけつれい)を行ったという。1898年に廃止されるまで1回も欠かさず行われたのである。こういう歴史が、韓国人のDNAとなっている。文政権が、中国を恐れ付き従うという盲従ぶりには、「民族の自主性」の一片も感じられない。
朝鮮は、一貫して世界情勢の激浪に揉まれてきた。その意味では、極めて気の毒な民族と言えるが現在、日本だけには居丈高に立ち向かってくる。中国や北朝鮮に対する姿勢とは真逆である。これは、日本側にも責任の一半はある。余にも韓国の言いなりになってきたことだろう。韓国が、息を抜いて気楽に外交できる唯一の国であったのかも知れない。
こういう状況が75年も続いてきた後に、日韓に大きな溝が生まれている。韓国からすれば、従来と全く異なる日本の対応に驚きとまどいを感じている。米国にSOSを発しても、「お前が悪い」と言わんばかりの対応である。韓国は正直、どうしていいか分からない状況である。こういう状態を適確に表わすコラムが登場した。「日本へどう対応すべき」を問うているのだ。
『朝鮮日報』(2月28日付)は、「誰も助けてくれない世界の崇中事大」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の鄭権鉉(チョン・グォンヒョン)先任記者である。
崇中事大(注:中国を崇め奉る事大主義)の妄想から目を覚まさせる本がつい先日発刊され話題になっている。『Disunited Nations(各自図生の世界と地政学、韓国語訳)』という書籍で、著者のピーター・ゼイハン氏は世界的な地政学戦略家だ。
(1)「彼の分析によると、バイデン大統領が就任した米国はトランプ前大統領当時以上に世界の秩序から手を引くという前提で「中国は10年以内に失敗し、成功神話の終焉を告げる」と予想している。「中国は過大評価された。アジアのトップは日本になるだろう。米国は日本をアジア地域の盟主として選んだ」とも主張している」
世界的な地政学戦略家とされるゼイハン氏は、「中国が10年以内に失敗し、成功神話の終焉を告げる」と見ているという。これは、本欄が繰り返し取り上げている生産年齢人口の急激な低下が、経済成長率を急減させることを指しているのであろう。その低下は、「劇的」と言って良いほどだ。これに合せて中国国内で市場経済派が権力を握るという構想を描いていると思われる。米国シンクタンク「大西洋評議会」中国報告書は、こういう道筋を描いている。
ただ、米国がアジアから手を引くという想定は、非現実的である。「インド太平洋戦略」は、米国の世界覇権を守る城壁である。「城主」が、ここから引き揚げることはあり得ない。米国経済は今世紀中、ずっと生産年齢人口が小幅ながらも、増加を続けるという国連予測が発表されている。米国覇権は揺るがないのだ。
(2)「日本の海軍力と空軍力は中国を圧倒するため、中国は一対一の戦いでも勝つのは難しいと分析している。著者は「韓国は再び浮上する日本と経済的に融合する道が最も賢明な選択だ」と主張する。戸惑う提言だが、日本の再浮上に伴う国際的な力学の変化に備えよと注文しているのだ」
日中が単独で戦うことはない。日米は合同戦略で戦闘態勢を組む。中国軍の最大の弱点は、海上における現代戦の経験がないことだ。もう一つ、士気の問題がある。日清戦争では、戦線離脱の軍艦が出ており、「中国人」特有の負け戦から逃げる特性が表われないか。
日本が軍事力で浮上することはない。裏付けになる経済力がピークを打って久しいからだ。それよりもインド太平洋戦略による同盟軍や、NATO(北大西洋条約機構)との共同作戦が、最も現実味のある安保体制となろう。
(3)「(朝鮮時代)日本に滞在していた朝鮮通信使一行は思わぬ屈辱を受けた。当初の使臣派遣の目的とは異なり、徳川家康をまつる日光東照宮を参拝するよう求める江戸幕府の要求に従わざるを得なくなったのだ。吹雪と厳しい寒さの中を、通信使一行214人は江戸から日光まで往復1週間かけて行き来した。ある意味譲歩だった。「清との関係が厳しくなった状況で、日本との関係まで悪化させるわけにはいかなかったため」と日本には記録が残っている。通信使一行は1643年と1655年の2回にわたり日光東照宮を参拝した」
過去には、日本は朝鮮に無理強いした。だが、通信使一行に日光東照宮参拝を強いてから380年近い歳月を経ている。もはや、当時の日本ではない。海洋国家日本として、視野を世界に展開している国家へ発展している。
(4)「ゼイハン氏の予想通り、「米国が手を引き、海上で強大な力を持つ日本が今後数十年にわたり空と海で東北アジアの全てを仲裁するようになった場合」にはどのようなことが起こるだろうか。朝鮮通信使一行が日光東照宮の参拝を強要されたように、太平洋戦争の戦犯たちが神として祭られている靖国神社への参拝が求められる事態が起こるのではないだろうか。最近になって現政権関係者による問答無用の行動を見ていると、このようなとんでもない悪夢まで思い浮かんでしまう」
米国が手を引き、日本が海上で強大な力を持ち、今後数十年にわたり空と海で東北アジアの全てを仲裁するようになることはない。そうなれば逆に米国は、日本の存在に疑いの目を向けるはずだ。米国が、1980年代から2000年代にかけて、徹底的に日本経済を痛めつけてきた事実を忘れてはいけない。米国は、経済力2位の国家を警戒するという「用心深さ」を備えている国である。それが、米国覇権を長続きさせている理由である。
日本は、米国と争っては生きていけない国である。明治維新以降、身を以て体験したことである。日露戦争の勝利と太平洋戦争の敗北は、米国との関係が雌雄を決した。戦後の急速な復興は、米国市場開放のお陰だ。日本は、「市場経済と民主主義国」米国を敵に回す愚をいやというほど知らされた。今度は、中国がその愚に挑んでいるのである。
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2020-12-10 |
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