勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年02月

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    朝鮮の王たちは、正月初日に中国の皇帝に礼をささげる望闕礼(ぼうけつれい)を行ったという。1898年に廃止されるまで1回も欠かさず行われたのである。こういう歴史が、韓国人のDNAとなっている。文政権が、中国を恐れ付き従うという盲従ぶりには、「民族の自主性」の一片も感じられない。

     

    朝鮮は、一貫して世界情勢の激浪に揉まれてきた。その意味では、極めて気の毒な民族と言えるが現在、日本だけには居丈高に立ち向かってくる。中国や北朝鮮に対する姿勢とは真逆である。これは、日本側にも責任の一半はある。余にも韓国の言いなりになってきたことだろう。韓国が、息を抜いて気楽に外交できる唯一の国であったのかも知れない。

     

    こういう状況が75年も続いてきた後に、日韓に大きな溝が生まれている。韓国からすれば、従来と全く異なる日本の対応に驚きとまどいを感じている。米国にSOSを発しても、「お前が悪い」と言わんばかりの対応である。韓国は正直、どうしていいか分からない状況である。こういう状態を適確に表わすコラムが登場した。「日本へどう対応すべき」を問うているのだ。

     

    『朝鮮日報』(2月28日付)は、「誰も助けてくれない世界の崇中事大」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の鄭権鉉(チョン・グォンヒョン)先任記者である。

     

    崇中事大(注:中国を崇め奉る事大主義)の妄想から目を覚まさせる本がつい先日発刊され話題になっている。『Disunited Nations(各自図生の世界と地政学、韓国語訳)』という書籍で、著者のピーター・ゼイハン氏は世界的な地政学戦略家だ。

     

    (1)「彼の分析によると、バイデン大統領が就任した米国はトランプ前大統領当時以上に世界の秩序から手を引くという前提で「中国は10年以内に失敗し、成功神話の終焉を告げる」と予想している。「中国は過大評価された。アジアのトップは日本になるだろう。米国は日本をアジア地域の盟主として選んだ」とも主張している」

     

    世界的な地政学戦略家とされるゼイハン氏は、「中国が10年以内に失敗し、成功神話の終焉を告げる」と見ているという。これは、本欄が繰り返し取り上げている生産年齢人口の急激な低下が、経済成長率を急減させることを指しているのであろう。その低下は、「劇的」と言って良いほどだ。これに合せて中国国内で市場経済派が権力を握るという構想を描いていると思われる。米国シンクタンク「大西洋評議会」中国報告書は、こういう道筋を描いている。



    ただ、米国がアジアから手を引くという想定は、非現実的である。「インド太平洋戦略」は、米国の世界覇権を守る城壁である。「城主」が、ここから引き揚げることはあり得ない。米国経済は今世紀中、ずっと生産年齢人口が小幅ながらも、増加を続けるという国連予測が発表されている。米国覇権は揺るがないのだ。

     

    (2)「日本の海軍力と空軍力は中国を圧倒するため、中国は一対一の戦いでも勝つのは難しいと分析している。著者は「韓国は再び浮上する日本と経済的に融合する道が最も賢明な選択だ」と主張する。戸惑う提言だが、日本の再浮上に伴う国際的な力学の変化に備えよと注文しているのだ」

     

    日中が単独で戦うことはない。日米は合同戦略で戦闘態勢を組む。中国軍の最大の弱点は、海上における現代戦の経験がないことだ。もう一つ、士気の問題がある。日清戦争では、戦線離脱の軍艦が出ており、「中国人」特有の負け戦から逃げる特性が表われないか。

     

    日本が軍事力で浮上することはない。裏付けになる経済力がピークを打って久しいからだ。それよりもインド太平洋戦略による同盟軍や、NATO(北大西洋条約機構)との共同作戦が、最も現実味のある安保体制となろう。

     


    (3)「(朝鮮時代)日本に滞在していた朝鮮通信使一行は思わぬ屈辱を受けた。当初の使臣派遣の目的とは異なり、徳川家康をまつる日光東照宮を参拝するよう求める江戸幕府の要求に従わざるを得なくなったのだ。吹雪と厳しい寒さの中を、通信使一行214人は江戸から日光まで往復1週間かけて行き来した。ある意味譲歩だった。「清との関係が厳しくなった状況で、日本との関係まで悪化させるわけにはいかなかったため」と日本には記録が残っている。通信使一行は1643年と1655年の2回にわたり日光東照宮を参拝した」

     

    過去には、日本は朝鮮に無理強いした。だが、通信使一行に日光東照宮参拝を強いてから380年近い歳月を経ている。もはや、当時の日本ではない。海洋国家日本として、視野を世界に展開している国家へ発展している。

     


    (4)「ゼイハン氏の予想通り、「米国が手を引き、海上で強大な力を持つ日本が今後数十年にわたり空と海で東北アジアの全てを仲裁するようになった場合」にはどのようなことが起こるだろうか。朝鮮通信使一行が日光東照宮の参拝を強要されたように、太平洋戦争の戦犯たちが神として祭られている靖国神社への参拝が求められる事態が起こるのではないだろうか。最近になって現政権関係者による問答無用の行動を見ていると、このようなとんでもない悪夢まで思い浮かんでしまう」

     

    米国が手を引き、日本が海上で強大な力を持ち、今後数十年にわたり空と海で東北アジアの全てを仲裁するようになることはない。そうなれば逆に米国は、日本の存在に疑いの目を向けるはずだ。米国が、1980年代から2000年代にかけて、徹底的に日本経済を痛めつけてきた事実を忘れてはいけない。米国は、経済力2位の国家を警戒するという「用心深さ」を備えている国である。それが、米国覇権を長続きさせている理由である。

     

    日本は、米国と争っては生きていけない国である。明治維新以降、身を以て体験したことである。日露戦争の勝利と太平洋戦争の敗北は、米国との関係が雌雄を決した。戦後の急速な復興は、米国市場開放のお陰だ。日本は、「市場経済と民主主義国」米国を敵に回す愚をいやというほど知らされた。今度は、中国がその愚に挑んでいるのである。

     

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    韓国与党議員は、軍隊の演習まで北朝鮮へご機嫌伺いする属国的な行動を取っている。38度線の向こうには、北朝鮮軍が虎視眈々と韓国を狙っているのだ。この敵に対して、いかに防御するかという趣旨の米韓軍合同演習について、韓国与党議員35名が連名で「延期要請」を大統領に提出したという。

     

    与党議員は、国家の安全保障にどのように考えているのか。北朝鮮は、韓国を攻撃する核やミサイルなどを日夜開発している。その相手に対して行う米韓軍合同演習を中止せよと要請するのは、常識を外れているとしか言いようがない。

     


    『朝鮮日報』(2月27日付)は、「敵が嫌がるから軍の訓練をやめようという国、韓国のほかにあるか」と題する社説を掲載した。

     

    韓国の与党系国会議員35人が、「北朝鮮が反発するから」という理由で、来月に予定されている韓米合同演習を延期せよと要求した。これらの議員は「金正恩(キム・ジョンウン)委員長まで自ら乗り出して強力に反発している」として、「韓半島の対話の局面作りとコロナ防疫のため、韓米合同演習の延期を求める」と主張した。この世の中に、敵が嫌がるから軍事演習をやめようという国は韓国のほかにはないだろう。

     

    (1)「金正恩は先月の労働党大会で、36回も核に言及した。韓国を攻撃する戦術核や原子力潜水艦、極超音速兵器の開発も公言した。軍事パレードでは、韓国を狙った新兵器を続々と披露した。そんな金正恩が要求しているという理由で、韓米合同演習を延期しようというのだ。北朝鮮の労働党が言っていることを、韓国の与党議員らが堂々と声明まで出して主張している」

     

    北の金正恩氏は、国内経済の疲弊を隠すべく韓国を攻撃する兵器開発を喧伝している。北朝鮮が、韓国を威圧する姿勢を強めているのに対して、韓国は卑屈になって揉み手をしているのだ。何とも不思議な構図で。

     


    (2)「韓米合同演習は、北朝鮮を攻撃するためのものではない。北朝鮮の脅威を防御するためのものだ。国家代表サッカーチームでも練習しなかったら町のサッカーチームと化してしまうように、軍隊もそうだ。ところが3大韓米合同演習は、2018年のトランプ・金正恩「シンガポール・ショー」以降、全て中断された。連隊級以下の小規模な訓練も、実弾を一度も使わないコンピューターゲームとして行われた。北朝鮮の顔色をうかがって演習の名前も付けられずにいる。海外で開かれる多国籍対潜水艦演習にも参加しなかった。その間に、北朝鮮の核と軍事力は休むことなく増強された」

     

    韓国は、北朝鮮の言動に恐れおののいている。「主人」は北朝鮮であり、韓国は「下僕」の地位にある。韓国が、ここまで卑屈になっているのは、文政権の思想的母国が北朝鮮であるからだ。北の「チュチェ思想」に被れており、南北統一が朝鮮民族最高の幸せという感覚に囚われているのである。韓国の自由と民主主義は、二の次になっている。

     

    (3)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、韓米合同演習中断問題を北朝鮮と協議できると言った。金正恩が「合同演習を中止しろ」と言ったことに対する回答だった。敵の脅威に対する防御訓練を、敵と協議したいというのだ。初歩的な警戒任務一つも遂行できない韓国軍は、北朝鮮が新型ミサイルを撃つと「脅威ではない」と言ったり、韓米合同演習を延期しても対応態勢に問題はないと言ったりしている」

     

    韓国へ恐怖を与えている北朝鮮に対して、その防御のための米韓合同演習を実施してよいかを問い合わせる。漫画のような話である。

     


    (4)「訓練しない軍隊は、軍隊ではない。訓練なき同盟は抜け殻だ。米国防総省は「韓半島以上に演習が重要な場所はない」と言った。韓国政府・与党は、こうした声に耳を塞ぎ、今や「金正恩が怒るから訓練をやめよう」という声明まで出している。金正恩を怒らせる根本的な問題は韓米合同演習ではなく、韓国の存在自体と韓国の繁栄だ。金正恩がやれと言ったら何でもやるこの政権が何をしでかすか分からないという恐怖を抱く」

     

    韓国進歩派は、完全に腑抜けになっている。北朝鮮と交流したいというただ、それだけの理由で、国家の基本である安全保障を忘れている。韓国は、国家の体裁をなさなくなっている。こういう国家は崩れるのが早いであろう。朝鮮李朝の末期を想起させるのだ。

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    米バイデン政権は、政権発足後1ヶ月を経ても北朝鮮との接触はないと伝えらる。対北朝鮮政策が、まだ固まらないのであろう。これに一番、焦りを感じているのは、韓国の文政権である。文氏は、7月の東京五輪を舞台にした、日本・米国・韓国・北朝鮮の4ヶ国首脳会談を構想しているからだ。

     

    元々、この構想自体に何らの必然性もないのだ。韓国は、この夢の話が実現できれば、文氏にとって最大のメリットをもたらす、という構想に過ぎない。バイデン政権は、トップダウン外交でなくボトムアップ外交である。トランプ式で、降って湧いたような首脳会談は滅多に起こるものでない。こうして、文氏が描いた起死回生の4ヶ国首脳会談構想は、日に日に実現不可能をはっきりさせている。韓国外交は、完全に道を塞がれた。

     

    『中央日報』(2月27日付)は、「米紙、『バイデン政権、まだ北朝鮮と接触せず、文政権と衝突も』」と題する記事を掲載した。

     

    新しい北朝鮮政策を検討中のバイデン米政権が先月20日の発足以降、北朝鮮と公式接触をしていないという主張が出てきた。米国内では、新政権発足後に北朝鮮が挑発してきた前例があるだけに対北朝鮮メッセージを出すべきだという声があるが、まだこうした作業は進行していないという意味と解釈される。

    (1)「『ワシントンポスト』(WP)は25日(現地時間)、外交・安保コラムニスト、ジョシュ・ロギン氏のコラム(タイトル「北朝鮮に関する時計が動いている。バイデンが先に動くべき」)から米当局者の言葉を引用し、このように報じた。このコラムで政府当局者は、「北朝鮮の弾道ミサイルと核兵器プログラムは過去4年間にさらに大きくなった」とし「その政権と武器ははるかに大きな脅威になった」と明らかにした」

     

    北朝鮮も、全く沈黙を守っている。これまでは、米国新政権が発足直後、ミサイル発射などの「徴発」があった。今回は、それが全くないのだ。国内経済が、コロナ禍で相当の疲弊状況に見舞われている。特別待遇を受けているとされる平壌ですら、物資不足が進んでいる。外国大使館で撤収の動きが広がる。ロシア大使館員が家族揃って、帰国する際の難行ぶりが報じられ同情を集めている。

     

    こうなると、北朝鮮自身が挑発行為に出て、さらなる制裁を恐れているのかも知れない。韓国政府は、必死になって「人権問題と人道問題は別」という妙な理屈付で、北朝鮮支援の必要性を訴えている。

     


    (2)「また、「バイデン政権と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権の間の公式的な接触はなく、中国ともこの問題に関する実質的な意思疎通はほとんどなかった」と話した。この当局者は、「我々はある時点にはこの問題に対して中国と関与する必要があるだろう」とし「しかし我々は現在、同盟とパートナーに焦点を合わせている」と伝えた」

     

    バイデン政権は、日本・米国・韓国の三ヶ国実務会議を開いた。同一の認識の下に同一行動を取るという結論に達したと発表している。米国は、韓国の「抜け駆け」を懸念して日米韓三ヶ国会議で縛りを入れているのだ。

     

    (3)「コラムでロギン氏は、「バイデン政権の新しい対北朝鮮政策の検討は夏まで続くかもしれない」という見方を示した。また、米国の沈黙は北朝鮮の新たな核実験で終わる可能性があり、この場合、実質的な関係進展は難しく緊張が続くだろうと予想した。ロギン氏は、任期末期を迎えた文在寅(ムン・ジェイン)大統領の政治的切迫性が、バイデン大統領の慎重な態度と衝突する可能性があると指摘した。また、ロギン氏は「平壌(ピョンヤン)とソウルの忍耐心は弱まっている」とし「バイデンチームはオバマ元大統領時の『待ちながら見守る』接近法の反復が作動しないことを知る必要がある」と指摘した」

     

    下線の部分は、韓国の夢の構想である日米韓朝4ヶ国首脳会談が不可能であることを示唆している。東京五輪開催は7月である。バイデン政権が、それ以前に対北朝鮮政策の結論を出さないとすれば、韓国の夢の構想は不可能となる。

     


    (4)「続いて、「バイデン大統領は戦略的忍耐を避けて外交的にまた関与すべきだが、今回は現実的な目標を持つ必要がある」とし、「バイデンチームは米国と同盟に対する脅威がはるかに悪化するのを防ぐため可能なすべてのことをしなければいけない。早いほどよい」と強調した」

     

    このパラグラフでは、対北朝鮮政策の結論を早く出すべきと催促している。北朝鮮が痺れを切らして核実験をすれば、事態はさらに悪化するというのだ。その場合、北朝鮮は米国へ何らの働きかけもしないで、突然「ドカン」とやるのだろうか。それは、北朝鮮にとってさらなる制裁強化を招くだけである。そういう愚かな手を使うとは思えない。

     

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    中国は、昨年10月下旬に開かれた中国共産党第19期中央委員会第5回総会(5中総会)で策定した第14次5か年計画(2021~25年)の間に、「法定の定年退職の年齢を段階的に実施する」との方針を固め、大きな波紋を広げている。

     

    現在の定年年齢は、男子60歳、女子55歳である。これでは、2035年に年金財源が枯渇するということも大きな理由であり、定年年齢を引き揚げざるを得ない事情に直面している。これへの反対論が根強くて驚かされる。早く年金を貰って「楽隠居」したいという層が多いのだ。若者も反対している。就職難がさらに拍車を掛けると言うもの。

     

    パールバックの小説『大地』に登場する農民たちは、農閑期に全く作業せず、一日2食という「ぐうたら生活」を送っている。勤労意欲が、極端に乏しい国民性が表われているのだ。この伝で言えば、勤労生活を早く切り上げて年金生活を送りたいということになろう。

     

    中国人は、日本人の勤労観と全く異なることに驚かされる。日本では元気な間、ずっと働きたいというのが常識であるから、中国の定年年齢引上げ反対に、国民性の違いを実感する。

     


    『人民網』(2月27日付)は、改めて2021~25年中の定年年齢引上げを報じた。その理由について次のように説明している。

     

    第14次五カ年計画の提案の中で、法定の退職年齢を段階的に延長することが打ち出された。中国の経済社会の発展に伴って、定年が全体として早すぎるという問題が非常に目立つようになってきた。

     

    (1)「今後、寿命が延びると予想される。2019年の中国の予測寿命は77.3歳で、都市部ではさらに長く80歳を超える。また教育を受ける期間が長くなっている。現在、中国の新たに増加した労働力のうち、高等教育を受けた人の割合はすでに半分を超えた。労働者の平均就学年数は13.7年に達し、働き始める年齢がどんどん遅くなっている。退職年齢が変わらないため、平均勤続年数が短くなり、人的資源の浪費や人的資本の利用率の低下がもたらされた」

     

    定年年齢の延長は、政府の主張が正しい。今後の生産年齢人口の急減を考えると、早急に対策を立てるべきである。

     


    国連統計を用いて中国の生産年齢人口(15~59歳)推移を示したい。国際標準の生産年齢人口は15~64歳だが、中国は健康上の理由で15~59歳である。定年60歳(男子60歳、女子55歳)を反映したものだ。

     

    生産年齢人口推移(国連調べ)

    暦年     生産年齢人口       変化率

    2010年 9億4639万1000人   100.00

    2020年 9億3461万6000人    98.73

    2025年 9億1165万8000人    96.30

    2030年 8億6993万6000人    91.86

    2035年 8億3119万8000人    87.84

    2040年 8億0866万8000人    86.50

    2045年 7億7790万2000人    82.13

    2050年 7億1852万7000人    75.89

    2055年 6億8818万7000人    72.72

    2060年 6億6791万1000人    70.50

    2065年 6億5071万1000人    68.71

     

    この推移を見ると、2025年以降に急減することが分かっている。早く「楽隠居」したいとか、就職難だからという理由で定年年齢延長が許される状況ではなくなっている。尻に火がついている状態だ。

     

    『東方新報』(2020年12月1日付)は、「中国 定年年齢引き上げで波紋」と題する記事を掲載した。

     

    中国の60歳以上の人口は2018年現在、約2億5000万人で、全人口の約18%だが、この比率は今後、少しずつ高まり、2050年には30%を超えることは確実といわれている。

     

    (2)「『このままだと年金と社会福祉が維持できなくなる』と懸念する声が高まっている。こうした声を受け、共産党指導部は「定年延長の方針」を固めた。延長方法の具体案は発表されていないが、外国と同様、数年ごとに1歳ずつ定年の年齢を引き上げる経過措置を取る可能性が高いといわれている

     

    数年ごとに、1歳ずつ定年の年齢を引き上げるという。こういう経過措置を取れば、影響を受ける人の数を減らせるが、中国経済への生産年齢人口減少の影響は大きい。中国のGDP成長率は急速鈍化である。

     

    (3)「定年延長の方針決定に対し、中国のインターネットには賛否両論が寄せられている。「年をとっても社会貢献できることはいいことだ」「老後の不安を解消できる」といった賛成の声のほか、「保険料の負担が増える」「孫の面倒を見る人がいなくなる」といった反発の声も寄せられている。中国の規定では、定年後すぐに年金の支給が始まるので、定年延長すれば納付期間が長く、もらえる期間が短くなるため、上の世代と比べて不公平感を覚える人が多いようだ」

     

    「保険料の負担が増える」という反対理由は、極めて近視眼的である。定年延長で給与を貰うのだから、プラスの方が多いいはずだ。こういう理屈に合わない反対論が多いのだろう

     

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    テイカカズラ
       

    文在寅(ムン・ジェイン)氏は、政治には不向きな人物であった。あえて「あった」と過去形にするのは、韓国大統領の残り任期1年余で日韓関係打開の時間的ゆとりがなくなっているからだ。金大中(キム・デジュン)氏と比べれば、文氏の狭量さと日本に対する知識がゼロであったことが目立っている。金氏は、日韓併合時代の経験がある。文氏にはそれがないので、一方的な日本批判で凝り固まるという歴史感覚の相違がもたらしたものだろう。

     

    在日コリアン2世として生まれ、日本で政治学者となった姜尚中(カン・サンジュン)氏の著作である『朝鮮半島と日本の未来』が韓国で出版された。以下はその書評であるが、文大統領の日本への知識のなさを指摘している。

     


    『ハンギョレ新聞』(2月27日付)は、「『朝鮮半島の平和のためには日本を引き入れなければならない』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「著者は、(南北)分断体制の解体と韓日関係の悪化という二つの流れの間に、必然的な関連まではないとしても、無視できない構造的な関連があると診断する。この本は、二つの流れの間にそのような関連が生じることになった地政学的な背景を考察し、韓日両国がこの悪循環から脱し、互恵の関係を回復する道を探る」

     

    著者の母国は韓国である。だが、在日コリアン2世として日本で暮らしてきた。その経験から日韓和解の道を探っている。

     

    (2)「北朝鮮が願ったのは、「核兵器保有」自体ではなく「体制の安全の保証」であったことがわかる。体制の安全を保証される最も確かな道は、米国と平和協定を結び国交を樹立することだ。北朝鮮がドナルド・トランプ政権に期待をかけ首脳会談に出たのも、そのような理由だった。朝鮮半島の南に目を向けてみれば、文在寅(ムン・ジェイン)政府の前に朝米交渉を最も積極的に後押しして南北関係の改善に向け邁進したのは、金大中(キム・デジュン)政権と盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権だった」

     

    北朝鮮は、「核兵器保有」自体でなく「体制の安全の保証」を願っていると指摘する。そうであるなら、なぜ米国と交渉している最中に核開発を秘かに始める背信行為を行ったのか。北朝鮮を擁護し過ぎている。「体制の安全の保証」とは、金王朝の安全の保証である。国民を弾圧する政権を擁護するのは理解を超えた見方である。

     


    (3)「南北関係と朝米関係が再び前進のアクセルを踏みはじめたのは、文在寅政権になった後、特に2018年以後だ。あいにくこの時期に韓日関係は最悪に突き進んだ。もちろん、両国関係がこじれ始めたのは李明博政権の時であり、朴槿恵政権でも冷ややかな関係は続いたが、韓日関係が前例のない対決の泥沼に陥ったのは2018年以降であることは事実だ」

     

    文大統領は、南北関係ではアクセルを踏み、日韓関係ではブレーキを踏むという二律背反的な外交戦術に出た。これは、反日=国内の保守派叩き=南北交流促進という構図を描いていたに違いない。文氏の頭の中には、親日派=保守派=南北交流反対という方程式ができあがっているはずだ。南北交流は、国民的な課題である。野党とも十分に意思疎通して取り組むべきテーマである。それを、進歩派の専売特許と誤解している。

     

    (4)「著者は、(日韓)両国関係がこのようになるまで文在寅政権が事態の悪化を防ごうと積極的な努力をしないのは、明らかに外交的な失敗だと指摘する。南北関係を進展させ朝米交渉を促進しようとするならば、朝鮮半島を取り囲む隣国を協力者として引き入れなければならないが、その点で未熟さを示したということだ。金大中政権が南北首脳会談の前に日本を訪問し、当時の小淵恵三首相と「韓日パートナーシップ共同宣言」を行い、日本を朝鮮半島問題の味方にしたことを忘れるべきではないという指摘だ」

     

    文氏は、独立後の人間であるから「日本は極悪」という学校教育の中で育っている。こういう偏った教育によって、日本を知るという「知的営為」を放棄させられた犠牲者であろう。その意味では同情するが、文氏自身に国際情勢を知ろうとする欲求もなかったのだ。「学校秀才」の決定的な弱点である。「学校秀才」とは、与えられた物だけを習得し、自ら疑問を持たない「飼育型人間」を指す。

     

    (5)「安倍首相は南北が近づき協力する雰囲気が強くなることに危機感を抱き、そのような流れを妨害するような態度を示した。そのような日本をいさめて朝鮮半島の平和が日本の得になるという点を説得しなければならなかったが、韓国政府はそのような努力を十分には行わなかった。著者は「文在寅大統領には『知日』が必要だ」ときっぱりと述べる」

     

    安倍首相(当時)の国際感覚は抜群である。米中対立の長期化を想定していたように、「インド太平洋戦略」を構想し、トランプ大統領(当時)に賛同させた外交手腕は歴史的評価を与えるべきだ。この安倍氏の対北朝鮮認識は、北朝鮮が核を安易に放棄しないという見通しである。その点で、文氏の甘い認識をはるかに超えている。

     

    南北が交流することは、紛争予防で歓迎すべきである。だが、日本として韓国が北朝鮮化する危険性を座視することはできないだろう。その意味で、文氏は日本との交流を絶っていたことが、日本の疑心暗鬼を拡大した。

     


    (6)「著者は、今の日本政府に必要なのは、北朝鮮核問題を解決し北朝鮮と米国が関係正常化を果たすことが、東北アジアの平和の土台になり、日本の平和に繋がるという事実を深く認識することだと強調する」

     

    このパラグラフを実現するには、韓国が反日を止めることである。歴史問題を持ちだし、仇討ち精神で対抗するならば、日本は従来どおりの姿勢で臨むほかない。外交とは、そういうものなのだ。

     

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