勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年02月

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    世界一の自動車市場である中国で、日本車が快走している。昨年の中国市場での日本車シェアは、26%に達した。4台に1台は日本車である。外資系シェアで首位を維持してきたドイツ車を抜いた。

     

    日本車が、外資系でトップに立ったのは、今後の中国市場で大きな収益チャンスを握ったにも等しい。2030年には、EV(電気自動車)とHV(ハイブリッドのほかにプラグインも含む)のみが許される。日本車が、HVで独走態勢を固めるので絶対的有利と言えよう。

     

    『朝鮮日報』(2月7日付)は、「コロナでも善戦した中国自動車市場、日本車快調・韓国車後退」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「世界の新車販売で3台に1台が売れる中国市場で今、日本車が快調に走り続けている。日本の自動車メーカーは昨年、中国だけで520万台を売り上げ、シェア約26%を記録した。中国で売れた乗用車の4台に1台が日本車だったことになる。これにより、日本車はドイツ車を抜き、昨年の中国市場で外国車のトップ(現地生産車と輸入車の合計)に立った。日本車が外国車でトップとなったのは2012年に尖閣諸島を巡る中日外交紛争の影響で販売が減少して以来8年ぶりのことだ。中国で外資系最古参のドイツ車は509万台(シェア25%)にとどまった」

     

    日本車が有利なのは、故障が少ないことや中古車価格が崩れないことである。つまり、コスト・パフォーマンスが抜群である。長い間、日本車は悪い噂に悩まされてきた。薄い鉄板が弱い証拠とされてきたが、高張力鋼という最高品質を理解できなかったのだ。その誤解も解けたのであろう。

     


    (2)「トヨタが180万台を売り上げ、昨年を11%上回ったのが目立った。昨年、中国の乗用車市場(セダン・SUV・バン)が6%縮小したのと対照的だ。トヨタは中国での販売増でフォルクスワーゲンを抜き、5年ぶりに世界でも販売台数首位に返り咲いた。ホンダも163万台を売り上げ、前年より5%販売を伸ばした。中国の『愛国マーケティング』にも動じなかった。地場メーカーの販売台数は774万9000台(シェア38%)だが、前年を8%下回り、全体平均よりも減少幅が大きかった」

     

    中国の民族系が、前年より8%も減った中で、トヨタは11%増、ホンダは5%増と好調であった。日本車の評価の高さを裏付けている。

     

    (3)「自動車メーカーは現在深刻な資金難に直面している。トヨタ、フォルクスワーゲンなど優良メーカーも電気自動車(EV)、自動運転車など未来技術の開発費を確保しようと苦慮している。自動車メーカーが実際に収益を上げるまでにはまだ5~10年を要する。収益源が減る中、投資需要だけが雪だるま式に増えている。こうした状況で自動車メーカーが多額の収益を上げられるのは中国しかない。欧米は環境規制が厳しくなり、自動車メーカーは収益を上げるどころか、規制に伴う罰金が上回りかねない。このため、日本車が中国で年間500万台以上を売り上げるということは、各社が未来に備えた資金力を蓄えるという意味でもある」

     

    日本車が、中国で26%のシェアを確保したことは、将来の経営戦略で大きな橋頭堡を築いたことになる。日本車が、中国で年間500万台以上を売り上げる基盤ができたからだ。

     


    (4)「日本車の躍進が恐ろしいのは、中国が現時点で最大の自動車市場であるのみならず、未来のエコカー市場で「金のなる木」に等しいからだ。
    中国市場で劣勢に立てば、自動車メーカーとしての未来がないと言える理由は、中国のエコカー市場の成長はこれからだからだ。中国政府は2030年から内燃機関車の販売を禁止し、新車販売の50%をEV、残る50%をハイブリッド車とする方針だ」

     

    トヨタは、HVの基本技術特許を無料で公開している。HVの動力源は、電気とガソリン併用であるので、簡単にEV(電気自動車)に転換できるのだ。これは、2030年以降の中国自動車市場で、トヨタが強い競争力を確立したことを意味する。トヨタの部品を地場の自動車企業に供給できるメリットがある。トヨタ系部品企業が潤うのだ。

     

    (5)「2030年時点の中国の自動車市場を3000万台規模と仮定しても、年間でEV1500万台、ハイブリッド車1500万台の市場が形成されることになる。ハイブリッド車の技術力が高いトヨタ、ホンダには絶対に有利だ。日本車は現在のペースで販売を伸ばすだけでも、中国市場で巨額の収益を上げる可能性が高い」

     

    2030年でHVが1500万台売れるとすれば、トヨタとホンダがほぼ100%占めることになろう。日本車が、絶対的な強みを持つ理由である。

     


    (6)「数年前からトヨタなどが中国の提携先のハイブリッド車開発まで支援しているのもそうした布石だ。日本が、30年時点で1500万台という中国のハイブリッド車市場を独占できるわけでもなく、中国がそれを座視するはずもない。中国と協力し、彼らにも利益を上げさせることで、未来の中国のハイブリッド車市場で日本も恩恵にあずかる計算が働いている」

     

    トヨタがHVで特許を無料公開したのは、中国企業にもメリットを与え、トヨタも得られるという共存共栄路線である。

     

    (7)「トヨタが昨年、中国企業5社と燃料電池開発に取り組む合弁会社を設立したこともその延長線上にある。トヨタが65%を出資し、習近平国家主席の母校である清華大学や北京汽車、第一汽車、東風汽車、広州汽車という中国の自動車メーカー4社もそれぞれ5~15%を出資した。合弁会社が開発した水素自動車システムは22年から中国製のトラック、バスに搭載される。トヨタとしては、技術を握って市場を独占するという戦略を捨て、中国に与えるものを与え、最終的な勝者を目指す狙いだ」

     

    究極の無公害車であるFCV(水素燃料電池車)では、トヨタが強力な布陣を固めた。韓国の現代車も競っている。この燃料電池開発で、トヨタは中国で合弁会社を設立し、EVやHVの先を見据えた中国戦略を構築している。

     

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    米国アップルが開発中の自動運転EV(電気自動車)製造を巡り1月8日、韓国の現代自動車株価は急騰する騒ぎになった。アップルといえば、世界一のスマホ企業である。この連想から、「アップルEV」への期待が高まるのは当然だ。

     

    アップルは、EV関連情報について極度に神経質であり、先の現代自動車の株価急騰の事態を嫌っている。今回の韓国での騒ぎについても一切のコメントを拒否する徹底ぶりだ。アップルは韓国での情報漏出を嫌い、その後の交渉をストップさせているとの情報が出てきた。一方、日本企業への打診説も流れている。アップルが、どこへEVの生産委託するのか、依然として白氏状態である。

     

    『ブルンバーグ』(1月8日付)によれば、米アップルが進める自動運転の電気自動車(EV)開発は依然として初期段階にあるため、投入は5~7年先になりそうだ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。従来のプロジェクトの重点は基盤となる自動運転システムの開発が中心だっただけに、一段と野心的な目標を掲げている。同社はEVメーカー、テスラの元幹部も同プロジェクトにより多く参加させている。

     

    『ブルンバーグ』(2月6日付)は、「アップル、現代・起亜とのEV生産巡る協議が最近中断-関係者」と題する記事を掲載した。

     

    アップルは電気自動車(EV)の生産に向け、韓国の現代自動車と同社傘下の起亜自動車と協議を行ったが、話し合いは最近中断された。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。同関係者によると、アップルは他の自動車メーカーとも同様の計画について協議してきた。情報が公開されていないことを理由に匿名で語った。

     


    (1)「アップルが秘密裏に進めるEV開発プロジェクトは、この数カ月で勢いづいた。アップルが消費者向け端末市場をつくり変えたように、同プロジェクトは自動車産業とそのサプライチェーンに大きな影響を与え得る。アップルはコメントを控えた。現代自動車は今年1月、アップルと自動運転のEVを巡る開発協力で協議中との報道を認めた当初の発表文を修正し、アップルへの言及を削除した」

     

    つい一月前、韓国株式市場は沸きに沸いた。だが、これは、現代自動車の早とちりが原因で、同社は一日に2度も訂正情報を出す混乱に陥った。アップルからの問合せを、「交渉」という現実味のある内容にしてしまった結果だ。

     

    (2)「この発表や、協議に関するその他の報道にアップルは不快感を抱いたという。同社は開発プロジェクトを長年にわたって秘密にし、サプライヤーとの関係を容赦ない効率性を持って管理している。アップルと現代自動車の協議が再開するかどうかや、その時期は不明。車両を大量生産する能力を有する世界的な自動車メーカーの数は限られ、そのうち何社がアップルとの提携に関心を持つかも不明だ」

     

    前記の韓国の騒ぎについて、アップルは不快感を抱いているという。このため、「口の軽い」韓国企業を敬遠しており、その後の交渉が中断した。

     


    (3)「関係者1人によると、アップル向けにEVを生産するのが「現代」「起亜」のどちらのブランドになるかを巡り、現代自動車グループ内で対立があるという。交渉が再開された場合、起亜となる可能性の方が高く、同社は米ジョージア州の工場で「アップルカー」を組み立てることを目指していると、同関係者は語った」

     

    韓国では、現代と起亜の話合いで、起亜が「アップルカー」を担当することで話合いがついたという。肝心のアップルは、中断している交渉を再開するかどうか不明である。目下、日本企業へ打診しているとのニュースが出てきたのだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(2月5日付)は、「
    アップル、日本勢にEV生産打診か 水平分業の決断迫る」と題する記事を掲載した。

     

    米アップルが電気自動車(EV)を巡り、日本を含む複数の自動車メーカーに生産を打診しているもようだ。サプライヤー幹部は「少なくとも6社くらいで交渉が進んでいる」と指摘する。自動車各社は設計・開発と生産を分担する「水平分業」モデルを受け入れるかどうかの難しい判断を迫られている。

     

    (4)「あるサプライヤー幹部は、「韓国メーカーで決まるか分からない。(アップルが)どこにつくらせるか、交渉を進めている段階だ」と明かす。ファブレス(工場なし)経営で知られるアップルは、スマートフォン「iPhone」の生産を台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業などに生産委託するなど、水平分業モデルを採用する。EVへの参入にあたっても自身はデザインや設計に特化し、生産は自動車メーカーなどへ委託する方向で交渉が水面下で進む」

     

    「アップルカー」の製造を引き受ければ、水平分業となる。アップルから設計図とデザインを渡され、カー・メーカーがそれに従い製造するもの。大量の台数が保証されれば別だが、少ない台数で指導権をアップルに奪われることのデメリットも考えなければならない。トップ企業としては、難しい選択であろう。スマホのような数万円単価の製品と、数百万円単価のEVでは話が異なるのだ。

     

    (5)「日本では、アップルが横浜市に構える研究拠点が国内の完成車メーカーや部品メーカーとの接点になっているようだ。アップルからの打診について、ホンダマツダは「コメントできない」(広報)と説明。三菱自動車は「そのような事実はない」(同)とし、日産自動車はコメントを控えた」

    コメントしない企業は、アップルからの打診があるのだろう。ホンダ・日産・マツダは打診を受けていると見られる。

     

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    中国のアキレス腱である出生数が、地域では2~3割以上もの急減に見舞われている。昨年は、コロナ感染の拡大という予期せざる要因に見舞われたが、一時的な減少に止まらない人口動態の悪化が起こっている。中国経済楽観論者には、要注意のシグナルが登場した。

     

    中国国家統計局は1月18日の記者会見で、2020年の出生数の公表を延期すると発表した。一部の地方自治体が発表した出生統計によると、本土の出生数は減少しており、一部の地域では20%以上も減少している。

     

    『大紀元』(2月6日付)は、「中国、人口減少が加速 出生数前年比3割減の地域も」と題する記事を掲載した。

     

    北京大学光華管理学院の教授である梁建章氏は、同国主要経済メディア『財新』に発表した1日付の記事で、中国の人口崩壊が始まったと警告した。複数の地方政府のデータによると、中国の人口は減少しており、出生数が30%以上減少した地域もある。

     

    (1)「各地方政府の発表によると、広州市の昨年の出生数は約19万5500人で、前年比9%減となった。浙江省温州市の昨年の出生数は約7万3230人で、前年より19.01%減少した。安徽省合肥市は前年より23%減少し、浙江省台州市は32.%減少した。出生数の増加を報告した地域はまだない。昨年の広州市の出生数は過去10年間で最も少なく、温州市は過去6年間で最も低い出生数を記録した。梁教授は出生率を大幅に改善できなければ、人口の減少が止まらないだろうとの見解を示した」

     

    主要都市の昨年の出生数は、軒並み大幅な減少に見舞われた。浙江省台州市は32.%もの減少である。コロナ禍が大きな負担になったことは否めないが、今後もこれまでの傾向から見て減少傾向に歯止めは掛るまい。

     

    (2)「中国共産党は1955年に人口抑制政策を導入し、1979年には「一人っ子政策」を開始した。しかし、2013年以降は政策を緩和し、「両親の1人が一人っ子なら、2人の子どもを持つことができる」とした。2016年には全家庭に対して、法律で認められている子どもの数を2人に改正した。しかし、公開データによると、中国の出生数は2016~2020年にかけて減少している。最近

    5カ年の出生数は次の通り。

    2016年 1786万人

    2017年 1723万人

    2018年 1523万人

    2019年 1465万人

    2020年 1380万人」

     

    2016年に比べ、2020年は22.8%も減少している。4年間で約23%の減少は、年間平均で5.75%にも達する。大変は減り方である。

     


    (3)「中国の公式の出生数が最も低かったのは1961年の大飢饉の後で、1180万人だった。米メディア『ラジオ・フリー・アジア』(RFA)は2月2日、米メリーランド大学社会学科の陳緋念教授の分析を。陳教授によると、中国では女性の出産のピークは25~29歳だが、この年齢層の人口は、30~34歳の人口より約1400万人も少ない。「出産能力のある女性や、出産適齢期の女性の数が大幅に減少している」と陳教授は述べた。また、今後も出生率の低下が続けば、高齢化が加速し、経済だけでなく、高齢者の介護などの社会問題も発生すると話した。政府が出生率を回復させようとしているが、今のところ効果はみられていないという」

     

    過去の出生数の最低は、1961年の大飢饉後の1180万人である。2020年が1380万人とすれば、今年にほぼ同水準まで落込む可能性が出てきた。ここまで落込めば、世界の目が注がれよう。1961年の大飢饉は、毛沢東による「大躍進政策」(1958~61年)の失敗で起こった人災である。約4500万人が餓死したともされる空前の危機であった。今年、その当時に匹敵する出生数に落込めば、習近平氏の政策責任が問われかねない事態だろう。

     


    (4)「台湾の学者、瑟致氏は『Newtalkニュース』への最近の投稿で、中国には「二人っ子政策」以外に、国民にもっと子どもを産むよう促す計画はないと書いている。氏は、新型コロナの大流行の影響に加え、国際的な情勢によって中国経済が弱体化しているため、中国共産党が打てる手は限られているとした。呉氏は、「長期的には中国の高齢化が経済発展に大きな影を落とすだろう」と述べた。彼は、中国は依然として都市と農村の貧富の差が非常に大きく、産業発展が不完全だと話した。そのため、人口減少が中国に与える影響は、他の国々よりも深刻になるだろうと予測している」

     

    私は、中国の人口動態が異常な歪みを発生させていることを、機会あるごとに指摘してきた。今年の出生数が、過去最悪の1961年の大飢饉後に接近する事態となれば、中国国内で深刻な論争を巻き起こしかねないだろう。中国経済を取り巻く状況は年々、悪化している。

     

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    2021-02-01

    メルマガ228号 「暴走中国」 安保と経済で落とし穴に嵌まり 自ら危険信号発す

     

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    韓国進歩派は、世界に通用する革新派でない。民族主義が、進歩派の仮面をつけただけである。「敵・味方論」に立っており、敵を排除して味方を徹底的に擁護する意味で、反民主主義の集団である。言論の自由さえ圧迫する動きを見せるのだ。『ハンギョレ新聞』は、文政権支持を鮮明にしたメディアである。

     

    今回の韓国大法院(最高裁長官)のウソ証言は、司法が政権・与党と密着化していることを証明した。『ハンギョレ新聞』は、「司法壟断の一掃」という旗を掲げ、文政権の「積弊一掃」に全面協力し、メディアの中立性をかなぐり捨てている。

     

    韓国大法院(最高裁長官)のウソ証言は、下記の記事を参照していただきたい。

    2021-02-05

    韓国、「呆れた」大法院長が噓の証言、国会での裁判官弾劾に協力し判事の辞表受理「断る」


     

    『ハンギョレ新聞』(2月6日付)は、「『司法壟断の清算』おろそかにした司法府が自ら招いた難局」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「司法壟断事件に関与し、弾劾訴追された釜山(プサン)高裁のイム・ソングン部長判事が、事前に辞表を出して弾劾を免れようとした事実が明らかになった。また、辞表を突き返す過程についてキム・ミョンス最高裁(大法院)長官が虚偽の釈明をしたうえ、イム部長判事との面会を録音したものが公開されるなど、不適切な品行が続き、司法府が総体的難局に陥っている。司法壟断の断罪をめぐって繰り広げられるこの乱脈ぶりは、司法壟断が暴露された当時に劣らぬ衝撃を与え、司法府への信頼の危機を招いている」

     

    イム・ソングン部長判事が辞表を出したのは、病気のためである。イム氏は、健康上の理由で何回も辞表を提出したが受理されず、その後は休暇を取っている。決して、弾劾逃れではない。録音したのは、キム大法院長官が国会で弾劾の動きのあることを挙げて辞表を受理しない政治的動きをしたことへの「自己防衛」である。日本では、この録音行為は認められている。

     

    イム判事が、他の裁判の判決文を事前に見た件では無罪判決が出ている。与党は、これを不服として弾劾に持込んだもの。韓国憲政において裁判官弾劾は初めてである。これから、憲法裁判所で審理される。立法府が司法府へ干渉したことは、司法の中立性という厳粛な分野へ足を踏み入れたことを意味する。いかなる判決が出るか。韓国の民主主義が問われている。

     

    (2)「この3年間、司法壟断事件の処理過程は「絶望的」という言葉以外には表現できない。起訴された裁判官らは「100%無罪判決」を言い渡された。国会で弾劾訴追案が可決された4日にも、もう一つの無罪判決が出た。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の「秘密の医療スタッフ」の特許訴訟の状況を最高裁事務総局に渡した疑いで起訴されたユ・ヘヨン元最高裁首席裁判研究官が、一審に続き控訴審でも無罪を言い渡されたのだ」

     

    司法は、憲法の定めによって正邪を判定するものだ。それゆえ、裁判官の中立性が保障されなければならない。与党が、政権を掌握しているという特権を生かして、我田引水の振舞をすれば、裁判所がそれを拒否することは当然である。「三権分立」は、民主主義の原点である「チェック・アンド・バランス」機能に不可欠である。立法府の暴走は、司法によって「待った」がかかるのだ。『ハンギョレ新聞』は、これに不平不満を言い立てている。

     

    このパラグラフの主張は、韓国進歩派メディアが、いかに権力に寄生しているかを自ら認める証拠として永久に忘れてはならない部分である。

     

    (3)「裁判所は現行法と法理では処罰できないとか、検察が容疑事実を十分に立証できなかったとして、判事らに免罪符を与えている。“身内”に対する特別寛大な物差しではないかという疑念を抱かざるを得ない。たとえ裁判による処罰が難しいとしても、重い懲戒などで断罪すべきだった。しかし一部だけが譴責(けんせき、一番軽い懲戒処分)や停職6カ月などといった軽い懲戒処分を受けており、すでに退職した者もいる」

     

    キム大法院長官は就任後、文政権の要請を受けて「積弊一掃」の名の下に、約100人の裁判官を左遷・辞任・検察へ告発した。告発された裁判官は、上記のように「100%無罪判決」となった。『ハンギョレ新聞』は、これが不服で「司法壟断」と無茶苦茶な判断を下している。自らが、政治的に中立であるべき言論の府に席を置いている自覚を欠いた表現なのだ。実に嘆かわしく、与党「共に民主党」の機関紙に堕したと言うほかない。

     

    (4)「このように、司法府が司法壟断に対する清算の意志を示さなかったからこそ、国会が乗り出して、司法府牽制の手段である「裁判官弾劾」を持ち出すことになったのだ。これにはキム最高裁長官の責任が大きい。キム長官はイム部長判事に会った際も、司法壟断に断固たる態度を示さず、政界のせいにした。また面会の際、弾劾関連対話はなかったと偽りの釈明まで行った。司法府の首長として恥じるべき行動だ」

     

    下線部分は、裁判官に保障されている中立性を侵害していることに気付かない暴論である。『ハンギョレ新聞』は、社説において「裁判官狩り」を宣言した恐るべき言論弾圧紙に成り下がった。言論の府は、与党による絶対多数を武器にした振舞をチェックする機能を発揮すべきである。『ハンギョレ新聞』が、それを放棄し与党に加勢している姿は、韓国の未来に限りない影を投げかけている。韓国の民主主義は、未成熟である。

     

    あじさいのたまご
       

    米韓首脳電話会談は、バイデン大統領就任の14日後の2月4日に行われた。冒頭、カトリックの話で盛り上がり和気あいあいで始まったが、中身は薄かったようだ。文氏は、例の調子で「米韓関係はグレードアップする」するとお世辞を言って見たが、ホワイトハウス発表によれば「96単語」と最短部類である。日米首脳電話会談の「150単語」の最長から見ると、中身がなかったことが歴然としている。

     

    米韓関係は、現実にどうなっているのか。米韓首脳電話会談から浮かび上がるのは、米国が「インド太平洋戦略」から韓国を外したと見られることだ。米国外交にとって、「インド太平洋戦略」は、安全保障政策の要である。韓国がここから外れることは、米韓同盟の役割が低くなることを意味する。この問題は今後、しだいに文政権の地盤沈下をもたらすであろう。

     

    『中央日報』(2月5日付)は、「文―バイデン大統領、最初の電話会談から見解の違い鮮明に」と題する記事を掲載した。

     

    ジョー・バイデン氏の大統領就任から14日が経過した4日、韓米首脳電話会談が行われた。会談直後、文在寅(ムン・ジェイン)大統領はすぐにツイートを上げた。文大統領は「私とバイデン大統領は共同の価値に基づく韓米同盟を一次元アップグレードすることを約束した」と明らかにした。

     

    (1)「文大統領が自ら価値同盟を強調して「アップグレード」と表現したことは、バイデン政府の対中圧迫政策に呼応しようとする趣旨ではないかとみられる。バイデン大統領はこれまで自由や人権など民主主義の核心価値を共有する同盟・友好国と連合して中国を牽制(けんせい)するという意思を明らかにしてきたためだ。国立外交院のキム・ハングォン教授は「『アップグレード』という表現は、韓米同盟を中心に南北関係と対中政策に取り組んでいくという意志表明だとみることができる」と話した。

     

    文氏が、米韓同盟を「アップグレード」しようと表現したのは、言葉の遊びである。具体的な中身がないからだ。友人同士が、「これからも協力しょう」と言うようなもので、リップサービスの一種である。

     


    (2)「電話会談後のホワイトハウスの発表をみると、両国間の温度差が明らかになった。対中牽制を念頭に置いた概念や表現がほぼ抜けていた。代表的な例が「インド太平洋」だ。ホワイトハウスはこの日、報道資料を通じてバイデン大統領が韓米同盟をインド太平洋ではない「東北アジアの核心軸(リンチピン)」と表現したと伝えた」

     

    米国は、韓国について「東北アジアの核心軸(リンチピン)」と位置づけている。「インド太平洋」でないのだ。

     

    (3)「これは先月27日、バイデン大統領と菅義偉首相の電話会談後の発表内容と比較される。当時ホワイトハウスは「両首脳はインド太平洋の平和と繁栄のための礎(コーナーストーン)で米日同盟の重要性を強調した」と明らかにした。バイデン大統領はこの日、オーストラリアのスコット・モリソン首相とも電話会談に臨んだが、ホワイトハウスは「バイデン大統領が米国・オーストラリア同盟をインド太平洋と世界の安定を守るための錨(アンカー)として重視した」と明らかにした」

     

    バイデン政権は、同盟の関係を次のように色分けしている。

    米韓同盟=東アジアの核心軸(リンチピン)

    日米同盟=インド太平洋の礎(コーナーストーン)

    米豪同盟=インド太平洋と世界の錨(アンカー)

     

    上記のリンチピン・コーナーストーン・アンカーの言葉を見比べれば、米韓同盟のリンチピンが、「輪留め」という意味から役割が小さいことを示唆している。

     


    (4)「梨花(イファ)女子大学国際学部の朴仁フィ(パク・インフィ)教授は、「インド太平洋戦略に入る態度が不明確な韓国と違い、積極的に参加する日本とオーストラリアを最も重要なパートナーと感じるのは当然のことだ」と説明した。経済社会研究院外交安保センターの申範チョル(シン・ボムチョル)センター長も、「韓国が安保協議体『日米豪印戦略対話(QUAD=クアッド)』などインド太平洋戦略次元への参加が不明確なため、韓米同盟をインド太平洋の核心軸と呼ぶことは難しいのが現実」と分析した」

     

    このパラグラフでは、米国にとって韓国の位置が日豪より低いことを指摘している。これまでの韓国は、米韓同盟は朝鮮戦争を共に戦った「血の同盟」と誇ってきたが、それも昔のことになったようだ。


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